業界向けChinaJoyガイドイベント開催,中国でビジネスをするときに気をつけるべきこととは
ChinaJoy 2018開催まで1か月となり,まだ参加を迷っている人や,今年でなくてもいずれ行ってみたいと思っている人も少なくないだろう。現時点でもエアもホテルもまだ間に合う状況だ。かなり細かなことも語られたイベントだったが,主な点をまとめて紹介してみたい。
「ChinaJoy」と一口にくくられるイベントは,いくつかのイベントに分かれている。おそらく正確にはChinaJoyと併催イベントがたくさんという体裁だろう。構造的にはCEDECやGDCなども同じといえば同じだ。全体を指して大雑把にChinaJoyと呼ばれている感じである。
上記のようにスライドで一覧が示されたのだが,公式サイトの分類のほうが分かりやすいかもしれないので,それも挙げておこう。
上の段から順に,4つの展覧会(ただし中国数字娱乐产业年度高峰会は来年から),4つのカンファレンス(ただし,右2つは賞の発表会),4つの大型イベントがある。
まとめ直しておくが展示イベントとしては以下のものがある。
- 中国国际数码互动娱乐展览会(中国国際数碼互動娯楽展覧会) ChinaJoy本体となるChina International Digital Interactive Entertainment Expoは,さまざまなゲームの展示会だ。B2CとB2Bの部分に分かれ,会場のほとんどはChinaJoy本体で埋められている。昔はこれだけだったのだが,カンファレンスや付帯イベントがどんどん追加されて全体規模が拡大されている。なんとなく最初に加わったのはコスプレイベントだった気もする……。B2Bが加わるより前からあったよなあ。
- 中国国际动漫及衍生品牌展览会(中国国際動漫衍生品牌展覧会) Comic & Animation World Amazing Expo:C.A.W.A.Eは,ライセンスものやキャラクターなどを中心とした展示会だ。
- 国际智能娱乐硬件展览会(国際知能娯楽硬件展覧会) Global Smart Entertainment Hardware Conference,いわゆるeSmartは,スマートフォンやVRデバイスなど,ハードウェア製品を中心としたイベントだ。カンファレンスとエキスポに分かれて行われるはずだが,まだ今年の情報は明らかにされていない。
- 全球游戏产业峰会(全球遊戯産業峰会) 英語にするとGlobal Game Industry Summitとなる業界向けのカンファレンスだが,その前身が世界移动游戏大会及展览会(世界移動遊戯大会及び展覧会)つまりWorld Mobile Game Conference and Expoだったこともあって,WMGCと呼ばれている。モバイルゲームの会議と展示会が業界全体のものになったらしい。
- 中国区块链技术与游戏开发者大会(中国区塊鏈技術与遊戯開発者大会) 今年から加わったブロックチェーンゲーム系のカンファレンスと展示会である。すでに中国では多くのブロックチェーンゲームが展開されている。
カンファレンスはゲーム産業系のCDECと開発者向けのCGDCが中心となる。そのほか,モバイルゲームのWMGCや,上記のようにハード系のeSmartやブロックチェーン関係もカンファレンス部分を持っている。
イベントでは,コスプレ大会,動画ジャンルのひとつ,いわゆる「踊ってみた」の全国大会,e-Sportsの決勝大会,ゲーム音楽のライブなどが行われる。そのほか,金翎奖という中国のゲーム大賞とデベロッパの発表会と表彰式も行われる。
それぞれの会期と予想混雑状況は以下のスライドにまとめられている。一般的なChinaJoyの会期である8月3日からではなく,カンファレンスは2日から始まっている。カンファレンスについては,ほぼ中国語のみなので,語学力に自信のある人向けだ。
展示会系は3日から始まり,B2Bは5日まで,それ以外は6日まで行われるが,土日が激混みになるのはしかたないだろう。
会場は大きくNorth,West,Eastに分かれた三角形になっている。三角形の1辺は500mちょっとだと思っておけばいい。NorthとEastのB2Cエリアを外周に沿って1周するとだいたい3km弱歩く計算になる。会場内は冷房されているが,外通路などはそれなりに暑い。気温は40度くらいになると考えておこう。三角形の中心部はショートカットすると距離的に有効な場合も多いが,やっている人は少ない。
一般入場口はWestの一番下から,関係者入場口はWestの一番上からとなる。B2Bチケットで入場する場合は,Trade Visitorなので上の2号入口だ。ちなみに1号だとW1ホールをぐるぐるして会場に入るらしいのだが,入るまで2時間くらいかかるとのことで,必ず2号入口から入るようにしよう。全体的な人の流れについていかないように。
また,混雑するのは朝だけなので,午後からくるというのも推奨されていた。
チケットの買い方
サイトの日の丸マークを押していると日本代理店に問答無用で案内されるので,案外気にしていない人もいるかもしれないが,イベントでは英語ページからのチケットの購入方法が紹介されていた。
チケットにはB2CとB2Bの2種類があり,B2CではB2Bエリアにはまったく入れない。B2BではB2Bエリアに入れるものの,B2Cエリアには一度しか入れない。イベントでは,ビジネス目的なのでB2B前提で話が行われていたのだが,一般ページからB2Bチケットを買おうとするといろいろ複雑ではあるらしい。ここ押してこれ書いてというのが逐一説明されていた。最初のB2CとB2Bの分岐さえクリアすれば,そこまで難しくはないだろう。
英語ページから購入するのは,日本の代理店を通すとちょっと高くなるからというのがその理由だったのだが,実際のところ,522元≒8706円に消費税分を加えると9402円で,ほぼ日本版の価格9400円になることが分かる。代理店経由だとオンラインではないので手間はかかるが,一般の会社であれば消費税分安くなることよりも,ちゃんと領収書もらえるといったことのほうが大事だと考える人は多いのではないだろうか。
航空券とホテル
いきなり語られたのは「AirBnBは位置の偽装に注意」だった。
普通の会社だと出張でAirBnBは使わないだろうというか,許可が出ないのではないかと思うのだが,話としてはとても面白かった。上海は大都市なのだが,通り1本違うとさっきまでキンキラキンの街だったのに,一転して半スラムぽい様相になり,軒先のカゴでニワトリ飼ってるよ! みたいな光景が現れたりする。つまり位置をちょこっとごまかすだけでも,ピカピカの街中みたいに見せることができるわけだ(Google Mapの航空写真で確認すると実際の地図とはかなりずれてるので,その手の問題なのかもしれないが)。
航空券やホテルの取り方についてはスライド1枚でまとめられていたが,普通の人は,横に「・」の付いた項目だけ参考にすればいいだろう。
一般的なホテル以外での宿泊では申請を忘れるとお縄になる話や申請を取っていても現地の警察で中国語で警官とお話が必要な場合もあるなど,ハードルは高そうだ。
そのほか,一般のホテル検索サイトなどを使わずにホテルの公式サイトを見つけて直接予約する場合の注意も挙げられたが,これもハードルは高そうだった。加藤さんちょっとチャレンジャーすぎはしないか?
加藤氏の推薦している地下鉄7号線というのは濃いオレンジの線で会場近くの「花木路」から下に伸びている路線だ。乗り換えなしで1駅2駅行くとリーズナブルなホテルがいくつか見つかる。私もこっち方面で探していたことはある。
高橋氏は,世紀大道近辺もお勧めだという。世紀大道は地下鉄2号線で「龍陽路」から3つめの駅だが,花木路からは乗り換え含めて4つめの駅となる。乗り換えの手間はあるが,場所的には7号線沿いより便利そうでホテルも多い。このあたりからタクシーを使うことを推奨しているが,中国語ができないとタクシーはちょっとハードルが高いかもしれない。
イベント内容から離れて恐縮だが,私は地下鉄7号線が花木路まで延長されていなかった時期は,世紀公園近辺で探していた。会場からなんとか徒歩圏内だ(10分程度)。
中国での航空券と宿を安く探すならSkyScannerとCtripの組み合わせというのはまったく同意であるものの,旅行サイトで航空券とホテルの組み合わせ割引を使うほうが安くつく場合もある。
海外出張で手間をかけたくないなら旅行代理店に丸投げというのもアリだろう。代理店の担当者がよければ無茶な日程で投げてもなんとかしてくれたり便利で確実ではある。問題はそういったデキのよい担当者はすぐに出世してしまうということなのだが。
交通事情
上海には虹橋(ホンチャイ)と浦東(プードン)の2つの空港があり,浦東(プードン)のほうが圧倒的に便利だ。会場での話もほとんどが浦東に関するものだった。マグレブ(リニア)の使い方などが細かく説刑されていた。運賃は片道40元なので浦東空港からならばマグレブが楽なようだ。
浦東が便利とは思うのだが,ほとんどが成田便となるため,羽田を利用したい人には虹橋を使わざるを得ない場合もある。「浦東のほうが便利」という言葉の裏には「虹橋は不便」という意味があるのだが,虹橋利用者のために補足しておこう。
虹橋で地下鉄を利用する場合,会場方面に行くには地下鉄2号線で移動するのが望ましいのだが,国際線ターミナルのあるターミナル1は地下鉄10号線に接続しており(結構歩くが)南京東路で乗り換えなくてはならない。一方で,ターミナル2の駅は直接2号線がつながっている。ターミナル1からターミナル2へはシャトルバスがあるとかないとかいろいろ話があり実際よく分からない。地下鉄10号線でもターミナル2に行けるのだが,なぜか乗換えができなかった(最新の路線図だと乗り換え可能にも見える)。虹橋火車站まで行く必要があるようだ。結論としては,虹橋空港からはタクシーが楽である。
タクシーは空港以外では使いにくく,とくに会場からの帰りではとても利用できる状況ではない。
日本人相手だとボッタクリも多く,あまりお勧めされていないようだ。メーターをリセットせずに回していることがあるので注意するようにとのこと。車内にはドライバーの情報が掲示されているので,相手に分かるように写真に撮っておくと(嫌がられるが)ボッタクリはある程度防げるという。まあこれはどこの国でも同じかもしれない。
通信環境
中国ではいわゆる金盾があるため,GoogleやTwitterをはじめとした海外のネットサービスはほぼ使えない。SteamもGoogle Playも使えない。なぜかSteamなどを前提にした話がされることも多いのだが,基本的に中国からはそういったものにはアクセスできない(ことになっている)。
中国国内には,そういった海外製ネットサービスの同等品が普及しており不自由は内容だが,外国人はそうはいかない。そこでたいていの場合は,VPNなどを使うことになる。
昨年の段階でも中国国内でのVPNの使用が禁じられているため,どうなのかとは思うのだが,やはりまだVPNを使って回避というのが一般的であるようだ。
それ以外では,携帯電話のローミングを使うと金盾を回避できる。コストはかかるが,比較的手軽な解決法ではある。
会場では日本のAmazonでも購入できる香港市民向けのプリペイドSimが推奨されていた。SIMロック解除済みの端末は必要になるものの,一定容量のものを日本で購入でき,必要であれば容量はチャージできるとのこと。
会場内には無料のWi-Fi回線も提供されているがちょっと怪しいとのことだった。無料の携帯充電設備も開放されているが,つなぐと変なアプリを3本くらいインストールされるそうなので気をつけよう。
なお,日本から持っていくレンタルWi-FiルーターではVPNサービスを追加できるものもある。昨年はイモトのWi-FiでVPNを追加したが問題なく使えていた。手間なく確実に使えるのでVPNとか馴染みのない人にはお勧めしたい。
またホテルによっては,なにもしなくてもGoogleやLineなどに接続できる場合もある。余裕がある人はJumeirah Himalayasに泊まろう。
お金
中国で最強といわれるAliPayやWeChatPayでの支払いは,中国の銀行口座が必要になったため現状では厳しいという。ホテルなどでは海外のクレジットカードも使えるものの,あまり使えないらしい。代わりにお勧めされていたのが,日本でも見かけることの多い銀聯(UnionPay)だ。いくつかのクレジットカードでは提携カードが作れるのと,デビットカードなども作れるとのこと。
取材ではホテルと会場周辺しか使わないので現金(とクレジットカード)だけで困ったことはないのだが,あちこち行く場合はUnionPayなども用意しておいたほうがいいのだろう。コンビニなどは現金も普通に使える感じではあるが。
ビジネスにつなげるために
続いて中国で必要になるツールなにはなくてもWeChatとQQだ。WeChatだけでほぼ十分とは思うのだが,QQが指定されることもあるようだ。これらは中国に渡る前にインストールしてアカウントを取得し,すぐに使える状態にしておくことが望ましい。
そのほか,翻訳には百度翻訳,Google Mapに代わるものとして高徳地図,オフラインでも使える乗り換え案内としてNavitime Transitがお勧めされていた。
連絡を取るにもWeChat,資料を送るにもWeChatが基本になるので,ビジネス目的の人は必携,「名刺交換とセットで」といった勢いでビジネスをする気はない人も一応入れておいたほうがいいアプリではある。
ChinaJoyでは公式にビジネスマッチングサービスも行っているが,あまり使い物にはならないようだ。自前で連絡先を探してコンタクトを取ることがお勧めされていた。連絡先を手に入れてWeChatとQQで担当者に連絡を取るのがよいそうだ。
今年はどんなトレンドが来るのかについては,B2CではVRやe-Sports,B2Bではブロックチェーンが注目とのことだ。
確かに昨年などもあちこちのブースで対戦は多く行われていたのだが,そのほとんどが王者栄耀であり,e-Sportsが盛んになったのか,単にゲームが盛り上がっているのかの判断はつけにくい感じではあった。状況的にはe-Sportsが伸びているはずではあるのだが。
ひとつの流れとしてブロックチェーンがくるのは間違いないのだが,日本でのビジネスにつながるかは未知数だ。ブロックチェーンを前面に押し出すようなゲームは展開しにくい土壌があるものの,ブロックチェーンもさまざまな使い方があるので,Microsoftのようにバックエンドで使うという展開も十分にありうる。とりあえず注目しておいて間違いはないだろう。
会期中に商談が進んだ場合は,早めに相手の会社を訪問することが推奨されていた。中国には客を歓待する文化があるのでなかなかの大歓迎になるようだが,見返りとして行く場合には手土産を渡すのがマナーとなっているようだ。また,具体的な商談以外で行くのは避けたほうがよいとのことだった。
ChinaJoy取材に行く人,中国でビジネスをしたい人は参考になる話が多かったと思う。このところ,世界のゲーム市場でも中国の勢いは無視できないものがある。豊富な開発力に加えて,質的にも日々改善が行われており,ゲーム業界の今後の動向を左右するような存在となってきている。主な注意点はスライドで挙げられているとおりなので,ChinaJoyに行く人は参考にしてみるのがいいだろう。