猫は日本らしさか? Indie Games Festival 2018ファイナルイベントレポート

ファイナルイベントが行われたイベントスペース「Tabloid」
 2018年4月28日,東京日の出のイベントスペース「Tabloid」にて,Google主催の「Indie Games Festival 2018 ファイナルイベント」が開催された。これは,Android上で動くインディーズゲームのコンテストだ。2017年以前は韓国,米国,英国でも開催されたこのコンテスト,日本での開催は今回が初となる。

 Googleが2月までに募集したインディーズ(ここでは,個人,家族,友人,部活,サークルといったグループ,または正社員30名以下の日本法人が作成したゲーム)作成のゲームから,事前審査で20タイトルまで絞られていた。

Indie Games Festival 2018 ベスト20ゲーム


 選ばれた20本のゲームは,今回,このスペースで試遊可能な状態で展示された。今回のイベントはコンテストの最終審査も兼ねている。会場は人いきれのする状態だったが,多くのプレイヤーが次々と展示されたゲームをプレイしたり,展示員の説明を熱心に聞いたりしていた。

※ちなみに,今回のレギュレーションにはVR,ARゲームの場合はGoogle VR SDK または ARCore SDKの使用が義務づけられていたが,これらに類するゲームの参戦はなかった。

スペース内は,多くのゲームプレイヤーたちが詰めかけ熱気ムンムン。それぞれがゲームをプレイし,どのゲームに投票するか吟味していた

 審査の流れとしては,まず,会場に来てプレイした参加者,と審査員の投票でポイントが集計され,そのトップ10が選ばれる。そしてそのトップ10作者によるプレゼンテーションからトップ3と特別賞が決定する。

 会場参加のプレイヤーたちと一緒に審査した審査員はメンバーは以下の通りだ。

●ファイナルイベント審査員
  • 安藤武博氏(シシララ代表取締役 ゲームDJ)
  • カイロくん(カイロソフト プログラマー 兼 アイデアマン)
  • 川島優志氏(Nianticアジア統括本部長 兼 エグゼクティブプロデューサー)
  • キズナアイさん(バーチャルYouTuber)
  • 中畑虎也氏(SELECT BUTTON Director)
  • 林 克彦氏(Gzブレイン 週刊ファミ通編集部 編集人 / 編集長 )
  • 細野修平氏(集英社 第3編集部 少年ジャンプ+編集長)

●Google審査員
  • Chongsa Kim氏(Head of Japan Games Business Development,Google Play)
  • Hyunse Chang氏(Partner Development Manager, Google Play Games)
  • Sarah Thomson氏(BD Lead, Indie Games, Google Play)
  • 松田白朗氏(Developer Advocate, Google)

 審査員の審査基準は,以下の基準および比率を参考にしてエントリー作品を評価している。

  • a. Innovation/革新性 30%
  • b. Fun/楽しさ 30%
  • c. Design/デザイン 20%
  • d. Technical&Production quality 20%

 20本のゲームの中からプレイヤー投票によってピックアップされたトップ10の作者によるプレゼンテーションが行われた。
 トップ10通過のゲームは以下の通り。

  • BQM - ブロッククエスト・メーカー(作:Wonderland Kazakiri)
  • Craft Warriors(作:Translimit)
  • Million Onion Hotel ?ミリオンオニオンホテル?(作:Onion Games)
  • Ninja Flicker(作:東京工業大学デジタル創作同好会traP)
  • PARADE!(作:内田達也)
  • 怪異掲示板と7つのウワサ - 完全無料のチャットノベルゲーム(作:Entabridge)
  • クリスタル・クラッシュ【超攻撃的パズル合戦!】(作:Cold Fusion)
  • ねぇAI,本当の事がしりたい(作:Kotoriyama)
  • ねこかわいい ぼくゆうれい(作:HARAPECORPORATION)
  • ネコの絵描きさん(作:waken)

Indie Games Festival 2018 ベスト10ゲーム


 これらの作者がステージに立ち,5分間のプレゼンテーションを行った。それぞれのゲーム作者から,ゲームのプレイ方法,ゲームシステムの特徴,実際のゲームプレイ,ゲームプレイしてもらえるようにどんな工夫を行ったか,ゲーム制作中の苦労話,などが語られた。

 そして,作者ごとに一般審査員による採点がゲームごとに表示された。
 トップ3やジャンプ+賞は,この点数で決まるわけではない(それぞれ特別審査員のジャッジが入る)が,ゲームの面白さだけでなくプレゼンテーションがうまいかどうかも考慮された点数として納得の数値が表示されたようだった。

 このあと審査員のジャッジが入り,賞が発表された。

少年ジャンプ+ 賞
ネコの絵描きさん(作:Nukenin)
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Google Play:ネコの絵描きさん


 まずは,少年ジャンプ+賞。この賞は一般参加者・Google審査員らが選ぶ賞とは別枠で,ジャンプ+の発行元である集英社が独自に選出するものだ。どのような観点から選ばれたのかなどのコメントはなかったのだが,Webで公開されているジャンプ+に合うものという観点で選ばれたと思われる。

 そして,トップ3は以下のように発表された。

Craft Warriors (クラフト・ウォリアーズ) (作:Translimit)
猫は日本らしさか? Indie Games Festival 2018ファイナルイベントレポート
猫は日本らしさか? Indie Games Festival 2018ファイナルイベントレポート

Google Play:Craft Warriors


PARADE! (作:内田 達也)
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Google Play:PARADE!


ネコの絵描きさん (作:Nukenin)


 シシララ 安藤氏とNiantic川島氏に,審査員審査の過程や受賞の決め手となったのは何かなどを聞くことができたので最後に掲載しておこう。

●シシララ 安藤氏
 結論からいうと,どのゲームの点数も非常に僅差だった。
 今回選ばれた20作品は,どれもゲームの発想がさまざまなベクトルに進化していて,いろいろと感じさせられるものがあった。どの作品も,ゲームデザインの際に,「面白さ」をゴールにしたことが勝因なのかなという印象だ。「面白さ」を追求していくとさまざまな方向にゲームは進化する。
 大手のゲームメーカーであれば,どうしても「ガチャの呪縛」というか,「売上」が企画のメインにきてしまい,そこで止まってしまうのだなと感じさせられる。

 具体例で言うと,今回トップ10に選ばれた中では「ねこかわいいぼくゆうれい」のように「ゲームが苦手な人が作ったゲーム」などは,プレイも意外な発想で,ゲーム好きから見るといい意味で衝撃以外の何物でもなかった。大手やゲーム好きからは作れないもので,そういう意味で革新性について満点を付けた。
 インディーズゲームに求めるモノはやはり「遊んでビックリするモノ」だと思う。面白さがプレイしてみるまで,あるいはプレイしてみてさえしばらくは分からないものなどもあって衝撃を受ける。ぜひ,このインディーズゲームをプレイしてみて,衝撃を受けてほしい。

●Niantic 川島氏
 一番気に入ったのは,「ネコの絵描きさん」。ただ,アイデアあるなしではなく,どんな年代の人でも遊べそうな,無駄なく綺麗にゲームデザインされているのはすごいと思った。「絵でのコミュニケーション」がテーマなので,日本以外の国にも展開できそうな可能性を感じる(多少,ローカライズは必要だとしても)。
 また,今回の受賞作品については,プレゼンテーションの上手さが非常に印象に残っている。「ねぇAI,本当の事がしりたい」のKotoriyamaさんだが,ゲームを作ったきっかけを紹介していたが「仕事に失敗した旦那さんを励ますために,尻の絵を描いてみた」というような個人的なエピソードを入れて,ゲームへの興味とともに参加者の共感を得られたのが,好例だと思う。

 今回Top3で選ばれたゲームは三つでそれぞれバランスが取れていると思う。例えば「Craft Warriors」はそれなりの人数でしっかりと作り込まれた大作だが,もう一つの「PARADE!」に関して言えば一人でもこういう作り方もできるのか,音ゲーでアリながらも,ゲームシステムに新しさを含んだゲームデザインに新鮮さがありという驚きがあった。

 また,今回20タイトルの中に猫関係のゲームが三つ入っている。ネコを愛でるだけのゲームの何が楽しいんだろうとハードコアゲーマーは思ってしまいがちだが,ゲームが苦手な人にも届くゲーム,そういう人にも共感を持たせるという意味で「ねこ」が集中したのは,ディスイズ日本だね,と印象深かった。

 海外ゲームクリエイターには日本に対してのリスペクトがあると思う。ファミリーコンピュータに始まって日本が作ってきたゲーム文化がある。
 インディで見ると,欧米はアーティスティックな表現のゲームが多く,日本のゲームはそういうところはない。が,それは日本の良さなのかもしれない。

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