[CJ2017]画像処理による新しいルームスケールの形「ANTVR 2S」

ANTVR 2S
[CJ2017]画像処理による新しいルームスケールの形「ANTVR 2S」
 2017年7月27日に開幕した中国最大のゲームショウ「ChinaJoy 2017」。これに併催される形でVR機器が多く出展されるイベントが,「eSmart」だ。ここでは「SO REAL」の紹介記事に続き,会場で目立っていたケーブルレスなVRソリューションを取り上げる。

 会場で見かけたバックパックPC用VRソリューションの2つめとして紹介したいのが,「ANTVR 2S」だ。ANTVR 2SはPC向けの独自仕様のVRヘッドセットで,2160×1200ドットの有機ELディスプレイを搭載し,90Hz駆動で視野角は110度と,一般的なハイエンドVR機材と完全に同スペックになっている。カメラも1基付いており,構成的にはViveにかなり近い。もっともViveで最大の特徴となる外部ポジショントラッカーはない。
 ルームスケールは最近の潮流の一つであり,当然ANTVR 2Sも対応している。外部トラッカーなしでどうやっているのかというと,秘密は床に敷くタイル状のマットにある。マットには等間隔にドットが打たれているほか,一定間隔でARマーカーのような模様が貼り付けられており,VRヘッドセット側のカメラでこれらを読み込み,自分の位置を算出するわけだ。

ANTVR 2Sレンズ部。見てのとおりフレネルレンズが使われているが,四角っぽいのは珍しい。両サイドのカバーのような部分は非使用時に折りたたまれて,レンズ面をふさぐ
[CJ2017]画像処理による新しいルームスケールの形「ANTVR 2S」

 カメラが処理しているのは床のマーカーだけではない。ANTVR 2Sには専用のハンドコントローラが付属しており,光る球体の付いたコントローラをカメラで追うことで手の動きをトラッキングするという仕掛けだ。

ハンドコントローラは有線でVRヘッドセットにつながっている
[CJ2017]画像処理による新しいルームスケールの形「ANTVR 2S」

 ただし,このハンドコントローラの仕上がりはまだまだだった。一見してPS Moveを思い起こす人が多いと思うが,操作感はかなり異なり,3Dポジショニングはそこそこできるが,コントローラの向きが反映されにくい感じだ。両手に銃を持っても,思う方向に弾が出ないことが多く,すでに市販されているのだが,このあたりは改善が必要という印象だった。

 Project Tangoなどでは外部の状況を撮影して3Dモデル化し,自分の位置を推定するようなことも行っているが,参照点の少ない場所では使えず,負荷も軽くない。場所を選ばないアプリでない限り,特徴のはっきりしたパターンを使うのは正解だろう。
 このような,外部トラッカーを使わないソリューションは,多くの可能性を秘めているように思われる。広大な範囲になるとトラッカーの配置は結構大変な作業になりコストもかかるが,マットを敷き詰めるだけであれば簡単だ。マーカーレスでいければそれに越したことはないのだが,精度などを考えると,ANTVR 2Sの手法は意外と現実的だろう。先に紹介したSO REALのようなシステムと違って,こちらは一般家庭でも(広い部屋さえあれば)広範囲の自由移動VRを実現できるのだ。

[CJ2017]画像処理による新しいルームスケールの形「ANTVR 2S」

これがANTVR 2C
[CJ2017]画像処理による新しいルームスケールの形「ANTVR 2S」
 なお,ANTVR 2Sには簡易型の「ANTVR 2C」という姉妹製品がある。こちらは有機ELパネルなどのスペックは同じだが,カメラのないものとなっている。価格はANTVR 2Sが4399人民元(約7万3000円),ANTVR 2Cが2199人民元(約3万6000円)とのこと。
 ANTVR 2Sには,VRヘッドセットとハンドコントローラのほかマットも付属する。面白いソリューションではあるだけに,つくづくハンドコントローラが惜しいところだ。