[Unite]個人ゲームアプリ開発者はいかにして生きていくのか? 「和尚」が語るゲーム作家の生き方指南

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 2017年5月8日,Unityが主催する大型カンファレンス「Unite 2017 Tokyo」にて,個人ゲームアプリ開発者に向けた「いかにして個人制作ゲームで生きていくか 〜スマホゲームレッドオーシャンの泳ぎ方〜」という講演が行われた。

 Uniteは基本的にUnityエンジンを使った開発事例や最新技術紹介が主だった内容であるが,こうしたゲームクリエイティブに直接関係した話ではないセッションも毎年いくつか設定されている。
 今回のセッションは,会社組織に属さず,個人でゲームを作って生きていきたい人のための戦略ガイドである。スマートフォンアプリ市場は「レッドオーシャン」と言われ始めて久しい。そうした中で生き残っているアプリを分析し,個人ゲーム作家がいかに生き残っていくかを探っている。
 なお,いたのくまんぼう氏が語る話は無料&広告モデルのゲームアプリ向けとなっているが,基本的な戦略や考え方はほかのビジネスモデルでも応用できるものだ。
 本稿では濃厚な講演内容を圧縮してお届けする。


和尚(?)が個人ゲームアプリ界の"生き方"を説くセッション


いたのくまんぼう氏
 本講演を行ったのはゲーム作家のいたのくまんぼう氏(以下くまんぼう氏)だ。
 くまんぼう氏は,和服に坊主頭の住職然としたいでたちで登壇したが,別に本物の住職というわけではない。その正体は,コンシューマゲームのプログラマとして長くゲーム開発に関わってきた実力派の開発者である。「不思議のダンジョン」シリーズの開発に携わり,セガサターンの「街」でチーフプログラマーを務めたのち,独立。アプリの受託開発を経て,現在では個人でのアプリ開発を主な事業として行っている。また近年では,「Unityで始めるC# 基礎編」というUnityの超初心者向け書籍を手掛けるなど,個人ゲームアプリ開発に関わったことがある人にはよく知られている人物だ。

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これまでの代表作
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在りし日のくまんぼう氏


ゲームで生きていくこと,すなわち開発を続けていくこと


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 初めにくまんぼう氏は,「個人ゲーム開発で生きていく」ということを「続けていくこと」だと定義した。生きていくとは続けていくこと,続けていくには生活基盤を守ること。それにはお金が必要だ。しかしながら,作ったゲームで十分な収益を得ることは簡単ではない。「世界的ヒット」や「アプリストア1位」などは,ごく一部の成功事例であり,宝くじのようなものである,という現実を語った。

 では,そんな宝くじに当たるためにはどうしたらよいのだろうか? 答えは簡単で,宝くじを買い続ける=ゲームを作り続ければいいのだ。

 Rovioの大ヒット作「Angry Birds」は,同社の52本めのゲームであったというのは有名なエピソードだ。
 ゲーム作りが宝くじと異なる点としては,工夫を重ねれば当たる確率を上げることができるという点がある。当たるその日まで作り続けるには,ゲーム開発者のヒエラルキーの中で,まだ芽が出ていない開発者の生存率を上げていかなくてはいけない。

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 そして,個人ゲーム開発者にもさまざまなバランスが存在する。会社に勤めながらゲームを作る人,フリーランスとして受託の仕事をしながらゲームを作る人,そして完全にゲーム開発に振り切る人。それぞれにメリット,デメリットがあり,完全独立の難度が一番高い。

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 ここでくまんぼう氏が主張するのは,ゲームで食べていくためには「完全独立」でないとだめだ,ほかの仕事もやるなんてカッコ悪い!という考え方が危険であるということだ。憧れだけでいきなり完全独立してしまっても,その後のゲーム開発が続けられなくなったら元も子もない。

 おすすめのスタイルとしては,会社に勤めながら余暇の時間でゲームを作り,ゲームが売れてきたら独立,収益が安定にするまでは受託業務もこなすなど,徐々に個人開発のエリアを広げていく形だそうだ。そして,必ず完全独立を目指すのも間違いで,どこかで自分のやり方に合ったバランスで落ち着いて,ゲームを続けていける環境を保つことが大切だという。いきなり完全独立=サバンナへ突っ込むのはとにかく危険とのことだ。


アプリストアの歴史をひもとく


 くまんぼう氏はここで,これまでの個人ゲームアプリのルーツについて振り返った。スマートフォンが登場し,誰でも自由にゲームが販売できるアプリストアが登場して以降,ゲームにはさまざまなトレンドがあった。
 iPhoneの黎明期には,一発ネタ系エンタメアプリや出オチアプリがはやり,しかもそれが何百万とダウンロードされていた。続いてシンプルなカジュアルゲームや,数々のヒットを生んだ棒人間ジャンルのゲームを経て,一大ブームになった放置ゲームやクリッカー系ゲームなどの定番ができていった。今現在ブームになっているのは脱出ゲームなのだそうだ。
 そして無料広告系のゲームは,1ダウンロード当たりの収益性がジャンルによってかなり異なっているという。

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 最も収益率の幅が大きいのはクリッカー系で,これは1ダウンロード当たりの収益が100円を超えることもあるそうだ。100円というと有料ゲームを作っている者から見れば一見安いように思えるが,無料アプリのダウンロード数は,有料アプリのそれと比べてはるかに大きく,そうした中で,DL単価が100円を超えるというのはかなりの強さを誇る数字といえる。

 収益率の高い「放置系」「クリッカー系」は,スマホのユーザー層と相性がいい。電車移動や待ち時間などに少しずつ遊ぶことができ,またゲームのルールがある程度明確なので,プレイヤーに新しい操作を覚えさせる必要がないためだ。
 そして,このジャンルのもう一つの強みはアプリの継続性が高いことである。基本無料広告モデルのゲームアプリにとって,広告を目にする機会を増やすためにはアプリの生存期間が非常に重要だ。


どんなプレイヤーをターゲットにしなくてはならないか?


 さて,スマホゲームを作っていく中で,どういったゲームユーザー層を考えていかなくてはならないのだろうか。定番的に言われていることとしては,スマホゲームプレイヤーはゲーム機のプレイヤーとは異なり,「ゲーマーでない人」のほうが圧倒的多数だというものがある。すなわち,いわゆる「暇つぶし」として小さなゲームを好むユーザー層のほうが分厚く,大きい。くまんぼう氏は加えて,さらに「アプリをダウンロードしない」というスマートフォンゲーマーが存在していることにも触れた。

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 このユーザー層の違いに対し,くまんぼう氏はSNSで観た意見として「能動的に映画館に映画を見に行く人と,受動的にテレビから流れる映像を楽しむ人のような関係性」と述べていた。
 自らお金を払って娯楽を楽しみに行く層と,テレビという無料のシステムでやってきたコンテンツを消費する層では,ゲームの捉え方が大きく違なるのである。


個人ゲーム開発者がお金をかけずにできるプロモーション


 それでは,スマホゲーマーの大多数を占める受動的なユーザーに向けてどうやってアプリを届けるのか。それはずばり「宣伝」である。ゲーム開発者のほうからゲームの情報をどんどん押していかなくてはならないのである。

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 個人ゲーム開発者としては,やはりプロモーションよりも「ゲーム制作だけをしていたい!」というように思いがちだろう。くまんぼう氏はその気持ちを「わかる〜」とフォローした直後に「死にたいのか!!」と一刀両断した。

 曰く「知られていないゲームは存在していないのと同じ」だ。そして,法人のようにマーケティング部門があればいいが,個人開発ということは販売担当もまた自分なのである。もちろん魅力的なゲームを作ることも大事だが,「売ること」という努力も大切であり,この二つがバランスよく揃う必要がある。

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 しかしながら,個人ではプロモーションに莫大な宣伝費をかけることはできない。具体的に個人でできるプロモーションとは何があるだろうか? ということで,くまんぼう氏は個人でもできるプロモーション手法を順に紹介した。

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 まず第一にやらなくてはならないことは「メディアにプレスリリースを送る」ということだ。
 ここでいうプレスリリースは,各種メディアに対して「ゲームをリリースした」ということを知らせるものだ。長らくプレスリリースは個人で送ってもいいのか,という誤解があったが。ゲームメディアのすべては個人からのリリースを歓迎している。
 くまんぼう氏は,書き方が分からない場合は「[アプリ プレスリリース](https://goo.gl/x5vZ8C)」などでググれば例文が出てくるのでぜひ,と付け加えた。

※GamesIndustry.bizではゲーム単体の紹介は扱わないが,4Gamer.netのほうではアプリの情報も受け付けている(参考URL)。

 第二には,アプリのレビューサイトに連絡することによって,記事化してもらうという手法だ。一昔前は大手のレビューサイトに乗りさえすればダウンロードランキングを駆け上がる時代もあったが,残念ながら現在のレビューサイトはそこまで影響力が強いものではない。しかし,いろいろなメディアとレビューサイトで取り上げられることによってSNSで何度も話題が流れ,プレイヤーから「前も見かけたな」ということでダウンロードの動機になるそうなのだ。「話題になっている」という空気感を作ることができればベストである。

 定番なのはTwitterやFacebook,自分のBlogなどでリリースを告知することだ。ゲームアプリ開発者は開発者同士でリリースツイートをRTして応援してくれる優しい世界を築いており,これには意外と無視できない効果があるそうだ。実際,くまんぼう氏の「a[Q]ua」リリース時には300RTされ,Twitterのインプレッションは20万弱で,ダウンロードクリック数は1000弱あったという。くまんぼう氏はこれを通称として「開発者ブースト」などと言っているらしい。


個人アプリでは必ずストアフィーチャー獲得をめざせ!


 個人でもできるアプリのプロモーションで宣伝効果がかなり高いのが「ストアフィーチャー」である。フィーチャーとは,App StoreやGoogle Playストアトップページの「おすすめ」にアプリが掲載されることを指すものだ。

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 フィーチャーには「今週のおすすめ」と,毎回テーマが違う「特集」がある。トップに載るため受動的なゲームプレイヤーにも届きやすく,ダウンロード数は1日数千から1万数千以上は増加するそうだ。「a[Q]ua」は水をテーマにしたゲームであったため,App Storeの「水で遊ぼう」という特集に掲載されたそうで,2週間の掲載期間で10万ほどのダウンロードがあったとのこと。

 もっとも,フィーチャーは自分から権利を買うことはできず,基本的には各国のストアを管理しているプラットフォーマー側が選んでいくものだ。それでは,どうやったらゲームを選んでもらえるのだろうか? はっきりした条件はないが,傾向から選んでもらいやすいように仕込むことはできるという。
 一つは「高クオリティ」であることだ。これは基本中の基本だ。また,App StoreとGoogle Playそれぞれで好まれるゲームのデザインや雰囲気の傾向があるので,それを研究するとよいだろう。そして実は,フィーチャーされるのを待つだけではなく,Apple, Google共に自分からアピールする窓口もある。それがこの二つだ。

App Store: AppStorePromotion@apple.com
Google Play: http://goo.gl/VrdbMc

 App Storeはメール,Google Playはフォーム式の窓口だ。ここから申し込んでもフィーチャーへの掲載は約束されないが,ストアの担当者が見つけてくれる可能性は上がる。どちらも英語で書く必要があることに注意が必要だ。

 くまんぼう氏は登壇の前日にこのリンクについてTwitterでアンケートを取り,300弱の回答を得た。結果25%の回答者がこのリンクを知っており,そのうち1/4がフィーチャーに選出されたことがあるとのことだ。


クチコミでバズる仕掛けとは?


 狙ってできれば苦労しない方法ではあるものの,超効果的な宣伝手法が「クチコミ」だ。ゲームの中に,友達に自慢したくなるような仕掛けを作っておいて,SNSでのシェアを促したり,とにかくプレイヤーがほかの人に見てほしい! と思うようなネタを入れることが重要だ。いわずもがなだが,SNSでバズると爆発的な拡散力がある。

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 クチコミ力で最もヒットしたのが,昨年の「ひとりぼっち惑星」だろう。このアプリはゲームに一方通行のメッセージ交換機能が搭載されており,まったく知らない誰かからメッセージが届くのだ。Twitterなどでメッセージの内容をスクリーンショットでアップすることが大流行し,最終的にApp Storeでは総合ランキング2位,Google Playでは3位まで上り詰めた。

 最後の手段が,テレビ番組やYouTuberに紹介されることだ。これも狙ってやるのは難しいものだが,受動的スマホプレイヤーはこうした動画コンテンツから情報や娯楽を受け取る機会が多い。最近ではYouTuber自体も持ち込み企画を募集していることがあるそうだ。


これからのゲーム開発者に求められる「作家性」


 くまんぼう氏は,こうしたプロモーションを効果的にする要素として,「作家性」を挙げた。作家性とは,ゲームから感じるその人独特の強いこだわりや,世界観,一貫したイメージなどを指すキーワードだ。作家性を感じるゲーム人々の記憶に残りやすく,メディアにも取り上げられやすくなる。
また,そうした個性がアプリへの「ブランド」となり,ファンがついてくれるようになる現象が起こる。実際にそうしたファンのいる開発者は何人か存在している。

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 くまんぼう氏は付け加えて,ブランドとは「約束」であると話した。約束は,ゲームプレイヤーがその人が作るアプリに対して求めているものが保証されている状態である。「シュールで笑える」「感動するストーリーがある」「アートワークが好み」そういった暗黙の了解がプレイヤーとの間にできたとき,それがブランドになるのだそうだ。
 ブランドの源泉は開発者の個性だ。個性は開発者自身が好きなものほど武器になる。昨年の個人開発者向けセッションでも「狂気を個性にせよ」という話があった。

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講演概要のプロフィールは「和尚」
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 また,ブランディングのもう一つの手法として,開発者自身を覚えてもらえるようにする「セルフブランディング」というものも存在する。例えばUniteのようなイベントには何千人というゲーム開発者が集まるが,その中から自分は認識してもらえるだろうか? という問いかけがあった。
 くまんぼう氏は自身に「和尚」というイメージを作り上げ,いつも和装でイベントや飲み会にやってくるスタイルを貫いている(筆者は何度もお会いしているが,ほかの服でいる状態を見たことがない。数人の飲み会でも和装風シャツであった)。この努力の積み重ねで,くまんぼう氏は名刺交換したあとに「この人誰だっけ?」と思われることがほぼない自信があるそうだ。


 自分を覚えてもらうことが何の役に立つのか? といえば,多くの人から知ってもらうということによってゲームを知ってもらうチャンスが広がることになる,ということだそうだ。ゲーム単体ではなく開発者で覚えてもらうことで,次のゲームへの誘導にもなる。またアプリのコラボレーション話がやってきたり,企画を持ち込んだりするときにも話が早くなるのだそうだ。セルフプロモーションはそうした縁と運を引き付ける一つの方法なのだという。


新しいアプリプロモーション手法? 「コラボ」のススメ


 続いてくまんぼう氏は,「コラボ」のすすめについて紹介した。
 まずはゲームアプリ開発におけるコラボについてだ。ゲームの企画を作る,絵を描く,プログラムをする,そうした技術を一人ですべてやるのではなく,複数の開発者でコラボして作り上げるやり方がある。開発チームを組むというよりも,アプリ単発でセッションを組むように一緒に作るスタイルだ。

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 ただし開発者コラボは「人に頼る」ということではなく,あくまで才能の等価交換であることを忘れてはいけない。
 こうした仲間を探すためには,基本的にはゲーム開発者が集まるイベントや,不定期に行われる開発者同士の飲み会で見つけていくとよいだろう。くまんぼう氏自身も,開発者が集まるイベントや飲み会を開催しており,大きいものでは100名も集めている。個人開発者こそ,孤独にならずに仲間がいたほうがいいのでは,と述べた。

 もう一つのコラボは,キャラクターIPなどをアプリに組み合わせることだ。これは,より多くのプレイヤーにアプリのことを知ってもらうための作戦だ。よくあるパターンとしては,アプリでヒット作が生まれたら,そのキャラクターなどをIPものに置き換えた「コラボバージョン」を横展開していく方法である。こうしたIPのコラボはソーシャルゲームでよく見られたが,個人開発においても可能な範疇になってきたそうだ。例えばオープンにコラボ相手を募集している「カタログIPオープン化プロジェクト(http://open.channel.or.jp/)」などがあり,アプリがヒットしたあとにIPを持つ側から声をかけてくれるパターンもある。

 くまんぼう氏自身の場合,ゲームではないが「江頭ジャマだカメラ」のコラボレーションは大きくヒットし,無料総合1位まで上り詰めた実績をあげている。


 また,最新作である「a[Q]ua」も,Amazonダンボーとコラボを行っている。この作品はほかにも前述の「ストアにフィーチャーされる工夫」をほぼすべて盛り込み,結果App Store, Google Play, Amazonのすべてのストアでなんらかのおすすめコーナーに選出されることができたそうだ。

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ゲーム開発を続けていくには「楽しい」が大事


 くまんぼう氏は,今回紹介したさまざまな手法を駆使することで,アプリ開発で「食べていっている」状態を維持している。ただし,今日紹介したことをすべて実践しようという話ではなく,自分のスタイルに合うものを無理なく取り入れていくとよいでしょう,と話した。長く続けていくには「楽しい」という気持ちがなにより大事だ。

 また,ゲーム開発者がゲームを作る理由はさまざまだが,一つのゲームに複数の目的を入れようとすると途端に難度が上がってしまう。「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざ通り,そのゲームが自分の個性を出したいのか,お金を儲けたいのか,一つの目的に集中しなければどっちつかずになってしまうおそれがあるそうだ。

 くまんぼう氏は,個人でゲームを作っている人を「ゲーム作家」と呼称してはどうか,と話した。言葉のニュアンスは小説家,漫画家,画家と同じようなイメージなのだそうだ。少し前はゲームを作ってそれで生計を立てていく=ゲーム会社に入る,という選択肢しかほぼなかった時代があったが,これは,ゲームエンジンの登場により,制作に挑戦しやすい環境が生まれたこと,デジタルディストリビューションによる個人から世界への配信が可能になったことで一変した。今後も個人で作ったゲームで食べていっているゲーム作家は続々と生まれ,次々と新しい才能が生まれていくはずだ。

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 本セッションは個人ゲーム開発者に向けてのものだが,くまんぼう氏は,会場に来ている企業に対してもまた,個人でゲームを作る人たちを応援してほしい,コンシューマゲーム機でも,もっと 個人がリリースしやすい環境を作ってほしいと呼びかけた。コンシューマゲームでは開発機材の問題や,レーティング審査料に関するハードルは依然高いままだ。

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 個人がもっと活躍できる場所が増えることは,ゲームの未来を築いていくことにつながるはずである。くまんぼう氏は,逆に個人ゲーム開発者に対しては,「ゲーム作家」という道を我々の世代で確立することが使命かもしれない,そのためにゲームを作り続けましょう! と会場に呼び掛けてセッションを締め括った。