PlayStation VRの次の一手

ソニーのコンテンツロードショウは有望なインディゲームを展示していたが,ファーストパーティのマイルストーンは示されなかった。

 先週金曜日の朝に行われたPSVR Showcase in Londonは,西ヨーロッパでの短期ツアーの最後の行程となるものだった。ソニーは汎用性とパワーに焦点を当てて設計されたゲームやアプリを選んで,このデバイスの直近のロードマップを展開していた。

 1ダースほどのHMDの青い光を浴びた白いステージで,ジャーナリストの波は宇宙船や実験施設,古代の海底,遠く離れた星,そして南海のビーチに飛び込んでいた。多くのプレイヤーにハードウェアの購入を促すようなAAA VRタイトルと呼べるようなものはなかったものの,ソニーの明快なメッセージはプラットフォームへのコミットメントといえるものであった

※過去のRob Faheyの記事を念頭に置いたものと思われる

 ショウのトップを飾ったのはFarpointだ。CO-OPに焦点を当てたSFシューターで,新しいAimコントローラを最大限に活用するために作られたゲームである。Aimコントローラはプラスチック製のライフルだ。トラッキング機能を内蔵しており,先端にMoveでお馴染みのふわふわした電球がついている。ボディとハンドルは滑らかな曲線 −わずかにずれた菱形−で形作られており,手に持つと丈夫で快適に感じられた。グリップの裏側には方向ボタンとアナログスティック,そしてL/Rボタンが組み込まれている。

 ヨーロッパではAimとFarpointはセットで79.99ユーロ(約9400円)となる。現時点ではAimをこのセット以外で使えるようにする予定はないと聞かされたが,アメリカではAimはゲーム抜きで購入することができる。価格はDual Shock 4と横並びになるだろうとのこと

※日本での発売予定はいまだ発表されていない

 Farpoint自体はかなり洗練されたCO-OPアーケードシューターで,スコアとシンプルなシューティングギャラリーの楽しさを強調したものとなっている。テレポートは使わず,スティック操作による動きはスムースで,最初に感じるアイススケートのような印象はコントローラに馴染むにしたがって消えていく。動き回りつつ手前側のスティックで銃撃を行う一方で,旋回はヘッドセットのトラッキングによって行われ,スティックでは回転操作は行われない。


 物理的にしゃがむこともサポートされており,岩などのカバーの後ろにしゃがんで身を隠すことが推奨されている。それができるくらい太腿が若ければの話だが。このように,本作はかなりフルボディの体験を提供しており,驚くほど多彩な動きとそれにうまく対処することが推奨されている。そこにはViveで見られるような自由度はないが,PSVRはリリース当初のようにじっと椅子に座っている体験だけではないと実演で示している。

 Farpointは正真正銘,Aimのためのショーケースである。―― Aimを構えると武器の上に出てくるホログラフないし照星のようなものがよく反応し,旋回はスムースで正確 ―― といった具合によく動作しているが,周辺機器のバンドル用に作られたゲームといった感覚は残る。面白く,滑らかで,完成度が高い。しかしおそらく少しAim自体が提供する機会にフォーカスしすぎている。

 誤ってロケットランチャーをチームメイトの後頭部に直撃させてしまい,フレンドリファイアがオンになっていると言われた直後に私のデモは終了した。その結果,私はなにか殺人/自殺しにくいものに転嫁された ― David Attenborough氏がナレーションをしている生命の起源への旅は,以前は博物館でしか見られなかったが,いまではPlayStation Storeで利用できる。

 FuzzyCGIは,最先端のVR体験というよりは,学校の先生が持ち出してくるようなビデオを彷彿とさせる作品だ。しかしそれはコンセプトがよい証拠でもある。私はデモを見ただけだが,15分間のフル体験ができるバージョンが現在PS Storeで利用可能だ。かなりアグレッシブな5.35ドルで提供されている。

 数匹の巨大な肉食節足動物のあとで,私はYouTube 360のブースに行き,Gorilaz(※バーチャルバンド)の360度ビデオを見る前にグランドキャニオンをハンググライダーで渡ったりした。どのビデオもPSVRに最適化はされていなかった。しかし,これらはどれもYouTube 360から直接起動できるものであり,品質はアップロードした人次第となる。

 次に行ったのはマルチプレイヤーシューターのStarblood Arenaだ。これはDescentのように宇宙船の周りを6自由度で漂っていくようなゲームだ。実際にDescentのプロジェクトに関わった開発者が何人かチームにいると聞かされた。これは少し精彩を欠いた早期デモに希望をもたらしている。しかし,この作品は真面目に評価するにはまだ時期尚早だった。


 SFステルスシューターのThe PersistenceはPSVRに新たな体験をもたらしている。VRプレイヤーを宇宙船上のプロシージャルに生成された小さな一連の部屋に入れ,スマートフォンやタブレットを使った最大3人までのプレイヤーとリンクして遊べるようになっている。リンクしたプレイヤーたちは環境を操作して,HMDを装着したプレイヤーがゴールにたどり着くのを助けたり妨害したりできる。すべてのプレイヤーはローカル接続されている必要があり,フェアにも汚くもプレイできる仕様はゲームにスリルを加えている。しかし,コンセプトはよいのだが,実装はちょっと不器用だ。ラウンドが短くて,友情やいじめといった要素がうまく実現できていない。

 最も興味深い2つのゲームは奥の部屋に隠されており,あやうく見逃すところだった。それは軽量なストラテジであるKorixとパズルゲームStatikだ。

 Korixはちょっと風変わりで,モバイルゲームのRymdkapselを思い起こさせる。まったく幾何学的でミニマリストな作風であり,プレイヤーは,空間に浮かんだ通路の反対端から絶え間ないウェーブをなして襲いくる小さな敵の群れから基地とエネルギー源を防衛しなくてはならない。本作は本質的にタワーディフェンスだ。ときどき反対側の基地へ向かうユニットを生成しつつ,壁と砲塔を配置していく。頭を動かしてプレイフィールド全体を見渡すこともでき,すべてがより快適さを誇示するように作られている。

 Moveコントローラによる操作はうまく機能しており,ユニットを作るためにバーチャルメニューを上にフリックし,バーチャルフィールド上の配置する位置を指定する。シンプルだが魅力的だが,Korixが提供しているものを十分に説明することは難しい。しかし非常に面白い方向への実験的な一歩であることは確かだ。

 その後,私やロビーで話をしたほかの数人のライターにとって,Statikは今回のショウの真の目玉といえるものだった。RoomのようなパズルとVRが生来持つ没入性との組み合わせは非常にすばらしい結合だ。さらにStatikはそれをよくできたシナリオとすばらしい頭の体操で補完している。

 DualShock 4を使ってプレイすると,中央にある奇妙な機械はいくつかのパズルボックスにプレイヤーの両手を閉じ込めており,手でコントローラを握っていなければならない状況を作り出し具体化している。DS4を捻ると,ボックスのほかの面が見えるだろう。すべてのボタンとスティックはこの精巧な手かせの別々のパーツを操作できるようになっている。皮肉で萎縮させるイギリスの抗議の代わりに流血ポルノのノコギリを想像してほしい。それでだいたい合っている。


 Statikを構成しているパズルには非常にデリケートなバランスがある。―環境的な手がかりと,狭い裂け目の中でやりがいのある実験的な振る舞いを利用しているので,単純作業になることも予測できなさにイライラすることもない ―そしてTarsier Studiosはこれを楽しめるようにしている。私は2つの自己完結型のパズルを最後までプレイした。それぞれ10分くらいを要したのだが,私の心の中でStatikのリリーススケジュールにつけたマークが消えることはない。注目すべき一作だ。

 ということで,今後ソニーのVRデバイスには厳選され,印象的な多彩さのリリース作品群が予定されている。非常に楽しく実験的なコンテンツが続々登場する。にも関わらず,非所に高予算で作られた穴が発売予定カタログには存在する。私にとっては,このデバイスにソニーが思い切ってAAAクラスのファーストパーティタイトルを推し進めてくれるかどうかは重要な問題となっている。

 噂によると,コンテンツ戦略部門はこのようなコンテンツを生み出すために,ほぼVRゲームにフォーカスしているという。しかし,いまだに大物開発者が何か作っているというニュースは聞こえてこない。そして開発期間とソニーの発表の熱意から考えると,おそらく直近では大作は存在しない。ソニーのトレードマークともなっている気まぐれさは見ていて清清しいほどだ。とくにXboxがほとんど挑んでこないときには。しかし,もしPSVRをメインストリームにしたいのであれば,プラットフォーマーはインストールベースとコンテンツ予算の悪しき環を打ち砕かねばならない。

 ソニーは確かに現在の位置に単独でいるのではない。SteamもOculus Storeのどちらもまだキラーアプリを提供してはいない。おそらく,現在のラウンドでのハードウェアの勝者はソフトウェアのキャンペーン抜きで単純に決まることになるのだろう?

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら