業界未経験者が1年半で派遣社員から契約社員に登用,ゆくゆくは正社員にも。セガゲームス「ファンタシースターオンライン2」チームへの転職事例を紹介
今回話を聞いた山本氏は,シリコンスタジオエージェントを介し,派遣社員としてPSO2チームに参加し,そしてセガゲームスの登用制度を利用して,2016年10月から契約社員として勤務している。
合わせて,セガゲームスの人材採用に対する考え方や意見などについて,部門長および人事部門にも話を聞いてみた。回答してくれたのは,セガゲームス コンシューマ・オンラインカンパニーのオンライン研究開発部 部長 兼 第二企画セクション セクションマネージャー 田中俊太郎氏と,経営管理部 人事チーム 塚本真紀子氏のお二人である。
各自が持つさまざまな資質や知識を“武器”として活用できるPSO2のプランナー
「ゲームバランスの調整にあたっては,プレイヤーとしての知識や経験と,各モーションのフレーム値などから導き出される理論値の双方を考慮しています。具体的には,PSO2チームのほかのパートが仕様に沿って開発したバージョンをテストプレイし,その結果に基づいて各種パラメータの細かい調整をしています」(山本氏)
「以前は新コンテンツを本実装したときに,プレイヤーの評価がよくないためにバランスを再調整することもあったのですが,山本が関わるようになってからはそういったことはほとんどなくなりました。頻繁に調整が入るようだと,プレイヤーの不満も高まりやすくなりますから,山本のおかげで安定していると言っていいでしょう」(田中氏)
しかし,オンラインゲームのバランス調整といえば,「あちらを立てればこちらが立たず」でどう調整しても誰かから恨まれがちな役回りでもある。山本氏はどのような方針で調整しているのだろうか。
「バランス調整に関しては,ユーザーの皆さんからのご意見は当然参考にさせていただいていますが,人によって異なるさまざまな考え方があるため,すべての要望に応えることは非常に難しいです。そのため,元々私自身がPSO2というゲームが好きだったということもあって,自分の考える理想というか,どうすればより面白くなるのかということも考え合わせてて,より多くの方に楽しんでいただけるような調整を目指しています。
例えば,PSO2では各武器ごとに多くのフォトンアーツ(必殺技のようなもの)がありますが,状況によってそれぞれを使い分けれるような特徴を持たせ,なるべくすべてのフォトンアーツが選択肢に挙がるように,いわゆる「死にフォトンアーツ」と呼ばれるものをなくそうと意識しています。
これまでにその点はだいぶ改善できたとは思っていますが,フォトンアーツに限らずまだまだ改善が必要な点は多く残っていることは認識していますので,今後もバランス調整は継続して行っていきたいです」(山本氏)
山本氏が参加した2015年春頃のPSO2チームでは,プレイヤーとしてPSO2に精通している人材を探していたと田中氏。人材要件としては「プレイヤーとしてPSO2に何を求めるか」「どうすればもっとPSO2が魅力的なものになるか」といった見解を明確に持っているかどうかを重視したという。
なお,プランナーと一口に言っても,PSO2チームの場合,シナリオや演出を手がけるパート,マップの設計(レベルデザイン)をするパートなどさまざまな専門分野に分かれている。
どのパートのプランナーも,基本的にはディレクターが打ち出したコンセプトや方針を踏まえて,各自が立てた企画をもとに仕様書を作成し,プログラマやデザイナー(アーティスト)に必要な作業を発注してコンテンツを組み立てていく。ただし山本氏のようにゲームバランスに関わるパートでは,仕様書を作らずに直接数字をいじるということもあるそうだ。
一方,PSO2チームでは,あらかじめどのパートに人材を配属するか決めておくことはほとんどないという。田中氏によると,チームでは常に広く門戸を開いて優秀な人材を得るチャンスをうかがっているとのこと。そのため参加するプランナーをどのパートに配属するかは,その人のそれまでの職歴を確認し,実際に話を聞いたあとで決定するとのことだ。
現在は,PSO2チームのスタッフを募集するにあたり,PSO2に詳しいことは必須条件ではないという。PSO2以外のオンラインゲームをやり込んでいる,コンシューマRPGなどゲーム開発の経験がある,あるいはまったくの未経験でもゲーム開発への強い熱意を持っているといった“武器”さえあれば,参加できるチャンスがあるそうだ。
「ゲームのロジックや本質を掴んでさえいれば,PSO2に詳しくなくとも十分活躍できるパートもありますし,プレイヤーの評価をSNSなどで細かくチェックし分析して次に活かすことが重要なパートもありますから」(田中氏)
「ゲームをいろいろ知っているのであれば,特定のタイトルに詳しい必要はないと思います。実際,PSO2チームにも,ほかのさまざまなゲームで培った知識を武器に活躍している人がいます。実を言うと,私自身は,PSO2以外のゲームに関しては一般的な知識しか持ち合わせていないのですが,80人もプランナーがいると誰か一人は話題のゲームをやり込んでいるので,今世間でどんなゲームが流行っているのか,何が求められているのかを知るのに非常に助かっています」(山本氏)
ちなみにPSO2チームでは,ゲーム市場に日々投入されるさまざまなタイトルの情報を共有するべく,定期的に勉強会を開催しているという。その中では話題のスマートフォンゲームや,魅力の全貌を理解するために長時間のプレイを必要とするオンラインゲームなどプラットフォームを問わずさまざまなタイトルを実際にプレイしたスタッフがレポートを発表しているとのことだ。
シリコンスタジオエージェントを介して,さまざまな人材が集まるPSO2チーム
PSO2チームでは,こうしたスタッフの採用にサービスイン前からシリコンスタジオエージェントを活用している。その貢献度は極めて高いそうで,田中氏は「シリコンスタジオエージェントがなければPSO2は成り立たなかったかもしれない」と話す。
「シリコンスタジオエージェントの強みは,現場に近いことだと思います。やはりシリコンスタジオさん自体がコンテンツの開発を手がけているので,人材サービスも開発現場のことをよく分かったうえで展開しているんですよね。今すぐ人材が必要,というような危うい局面も何度かあったのですが,スピーディに対応してくださって助かっています。これがほかの人材サービスだと,なかなか現場の実態を理解してもらえなかったりするんです」(田中氏)
またシリコンスタジオエージェントでも,人材募集を掛けている各社の性格やニーズに合った人材を紹介するよう心がけているとのこと。紹介する人材がどのような職歴やスキルを持っているのかはもちろんのこと,どの会社の風土に合いそうかというある種の感覚的な部分まで把握しているという。ちなみにセガゲームスに紹介するのは,どちらかと言えば職人肌の人材が多いそうだ。
そうやってさまざまな人が集まってくるPSO2チームには,ゲーム業界以外の他業種出身の人材が多数在籍している。彼らに共通しているのは,昔からゲームが好きだった,一度ゲーム開発に関わってみたかったというゲームへの熱意である。
「PSO2チームには,そういったさまざまな人達や考え方を受け入れる風土があるんですよ。年齢も関係なく,40代と20代のスタッフが同じゲームの話題で盛り上がることも珍しくないですし,新参者の意見は聞かない,みたいなこともありません。ですので,今回山本は,派遣社員から契約社員になりましたが,派遣社員のときからMTGなどで意見や提案をしていましたし,その環境が変わることはないですね」(田中氏)
山本氏もまた,セガゲームスがシリコンスタジオエージェントを介して出したスタッフ募集の広告を見てPSO2チームに入った他業種出身の中の一人である。もともと技術職で,熱心なPSO2プレイヤーだった山本氏は,「PSO2に関わる仕事をしたい」という思いだけでシリコンスタジオエージェントに登録したとのことで,それ以前はゲーム業界を志望したことはなかったそうだ。
「当時の私はPSO2を楽しんでいる半面,もっとどうにかできないかという思いも強かったんです。そんなところにちょうどスタッフの募集があり,条件も合致したので思い切って応募してみました」(山本氏)
PSO2チームに入った山本氏は,OJT(On-the-Job Training,オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通じて実践的に業務を学んでいった。これはほかの未経験者も同様で,中には直近のコンテンツ配信に関する作業もあり,ビックリする人もいるそうだ。
また,山本氏が加わった前後あたりから,チーム内で業務のマニュアル化にも取り組んでおり,未経験者を含め初めてチームに加わったスタッフが,すぐに業務に馴染めるよう努力しているとのことである。
「実際にゲームの開発に携わってみると,スケジュールや予算,人的リソースなど一人のプレイヤーだったときには分からなかった制約がたくさんあり,なかなか思うようにはいかないですけれども,その中で何を優先すべきか,どうすれば最善の手になるのかを考えています」(山本氏)
「とにかく初めての経験ばかりでしたから,分からないことや疑問に思ったことはすべてチームのスタッフに聞いて回って解決していったんです。ですから最初は,自分の席にいることが少なかったですね」(山本氏)
こうした山本氏の姿勢を,田中氏は「すごくプランナー向きで,かつPSO2チームにも向いている」と高く評価している。分からないことを後回しにしないことにより,山本氏自身のチームへの理解が高まるばかりでなく,その場で思ったことを指摘することで質問を受けたスタッフに気づきがあったり,忘れていた課題を再認識したりするケースも多々あったそうだ。
セガゲームスでの契約社員の登用・採用は,のちのち正社員にチャレンジできるような人材を見越したもの
上記のとおり,セガゲームスでは派遣・アルバイト社員を契約社員に登用する制度を設けている。山本氏もこの制度を利用して契約社員となったわけだが,その内容はいったいどのようなものなのだろうか。
「セガゲームスでは年1回,派遣社員・アルバイト社員を契約社員に登用する機会を設けています。そこでは部門長の推薦を受けた派遣社員・アルバイト社員が,適性検査と面接を受けて,それに合格すると契約社員として勤務することになります。能力を発揮できているかが推薦基準でもありますので,勤務期間などの制限はとくにございません」(塚本氏)
なお適性検査とは,一般的な企業で入社時に受けるものと同じく,一般教養を問うものになっており,セガゲームスとしては面接だけでなく,適性検査も重要と考えているとのことである。
セガゲームスにとって,派遣社員を契約社員に登用するメリットは,何よりもスキルや人となりが周囲のスタッフに理解されていることだ。また本人にとっても,業務や職場環境を理解したうえで登用を希望するため,お互いにミスマッチが少なく,将来的に長くセガゲームスで働きたいという意思を見せる人が多いという。
「契約社員というと,有期雇用で期間が終わったら契約終了というイメージも多いですよね。でもセガゲームスでは,契約社員採用をする際は、のちのち正社員にチャレンジできるような人材を期待して登用をしています。ですから登用や採用にあたっては,長期的に活躍できるような人,将来リーダーとしてのポジションを担ってくれそうな人を厳選して採用しています。
そうやって厳選した人材は,目標とするところが高いんですよね。たとえば山本であれば,契約社員登用の面接で将来的にはメインプランナーやディレクターをやりたい,ゆくゆくはゲームデザインをやりたいと言っていました。そういった高い目標を持つ人は自発的に成長して,自らの力で道を切り開いて活躍していくんですよ」(田中氏)
ちなみに,ゲーム業界未経験だった頃の山本氏がセガゲームスの中途採用募集に応募したとして,契約社員になれたかというと,かなり厳しかったのではないかと田中氏と塚本氏は語る。やはりまったくの未経験者がゲーム業界に足を踏み入れたいのなら,最初はシリコンスタジオエージェントなど人材サービスに派遣登録したほうが確実なようである。
「基本的に中途採用は,ゲーム業界の経験があり,そのうえでセガゲームスで新しい挑戦をしたいという人向けの制度です。セガゲームスとしても,それまでの実績を重視しますから,やはり未経験ではなかなか難しいですね。
一方,派遣社員というと良くないイメージがあるかもしれませんが,セガゲームスなら山本のようにステップアップを図ることが可能です。働きぶり如何で重要な職務を任されることもありますので,道が開けるかどうかは本当に本人次第です」(田中氏)
「人事からすると,応募の際にはとくに職務経歴を詳しく書いていただきたいです。たとえばプロジェクトの規模,スタッフの数,その中でどんなポジションを務めたのか,などです。世に出ているプロジェクトであれば概要を把握できることもありますが,未発表のものや小規模のものだとなかなか判断することが難しいです。またリーダーを務めたのか,それともメンバーの一人だったのかというところも記載していただきたい事項です」(塚本氏)
ちなみにプログラマであれば,どんな言語が扱えるのかを記してほしいとのこと。セガゲームスでは,コンシューマゲームでもサーバープログラムでも,C++を扱えると有利だという。
また,派遣にしろ中途採用にしろ,入社にあたって転職者が気になるのは,職場の環境だろう。とくにゲーム業界には,「ゲームが完成するまで徹夜続きで帰れない」といったイメージが漠然と存在しており,転職先としては敬遠してしまう他業種の人もいるかもしれない。
しかし,田中氏によると,そうしたイメージはかなり昔のものだという。PSO2チームが所属するオンライン研究開発部ではスタッフのケアにも十分な配慮をしており,たとえば週1日を目安に,リフレッシュをするための日として,19:00には退社するという施策を打ち出している。
「ゲーム開発のようなモノづくりの仕事は、本人がこだわればこだわるほどどこまでも作り込めてしまうので結果、長時間労働になりがちです。しかし、それが本人も気づかないうちに、体や心への負担になってしまうこともあるため週に1日は,早く帰ってリフレッシュしようという施策なんです。ところが,当初は現場のスタッフの評判が悪くて……。今やっていることに打ち込みたいという気持ちがあるのか,『なぜ早く帰らないといけないんですか? もっと作業がしたいですよ』と言うんですよ(笑)。今は理解が進んで,19:00になるとスッと帰って仲間内で一緒に食事を取るなど,皆が有効に活用しています」(田中氏)
「今後もPSO2のサービスは続いていきます。その中でゲームバランスがいいから続ける,あるいは一度離脱してしまった方でも復帰しようと思っていただけるようなゲームにしていきたいです。
また,私はチーム内の人間なので次にPSO2がどんな展開を迎えるのか,当然皆さんより先に知ることができるのですが,今後出てくる内容には,同じゲームを作っているはずなのにビックリさせられることも少なくないです。ぜひ今後のPSO2の発表に期待してください」(山本氏)
「セガゲームスでは2016年から公式サイトをリニューアルするなど,積極的に中途採用活動を実施し,広く募集をさせていただいております。
新しいことにチャレンジしてみたい方や,大規模開発を経験してみたい方にとっては,本当にやりがいのある職場だと思いますし,まずは様子を見てみたいということでも結構ですので,興味がある方は,ぜひご応募いただきたいと思います。
また,内定後入社までの入社手続き,ご質問,入社時のオリエンテーションなどにつきましても,しっかりとした体制を取っておりますので,安心して御入社していただけるかと思います」(塚本氏)
「セガゲームスでは現在,感動体験を作って皆さんに届けていこうと事業に取り組んでいます。また私自身も20数年前,同じ思いを持ってこの会社に入ったという経緯があります。とくにオンラインゲームはほかのプレイヤーとの出会いがあったり,1年2年と長い期間遊んだりするものです。それと並行して,各プレイヤーもリアルの生活の中で進学したり就職したりしていきます。そうした意味において,オンラインゲームは人生とともに歩むものだと私は捉えており,その中で感動を提供することには大きな意味とやりがいがあると考えています。今,日本で大型のオンラインゲームを作れる会社といえば,数えるほどしかありません。とくにセガゲームスは広く門戸を開いていますので,オンラインゲームで感動体験を多くの人に届けたいと考えている人には,ぜひ来ていただきたいです」(田中氏)