「No Man’s Sky」は独立系ゲーム開発者とパブリッシャの関係を変化させる可能性を持っている
「No Man’s Sky」が,通常であればAAAタイトルだけに見られるような大きな期待と注目を集める中,Hallo GamesのCEOであるSean Murray氏は,その成功が独立系ゲーム開発者と大手パブリッシャの関係を変えてしまう可能性を感じている。
これまで,2010年の「Joe Danger」,そして2012年の「Joe Danger 2: The Movie」と,廉価なダウンロード型ゲームソフトの開発を行ってきたHallo Gamesだが,No Man’s Skyはパッケージ版もゲーム小売店で販売されるだけでなく,AAAタイトルと同じ60ドル程度の価格帯で販売される。プロジェクトの規模や野心的な内容は,その価格になっても十分に正当化されるものであるが,消費者からの関心の高さと同じくらいの成功をもたらすのであれば,Murray氏は独立系のゲーム開発者と大手のパブリッシャが,今後はより綿密に協力し合えるような,目に見えるほどのインパクトをもたらすと信じているのだ。
もしNo Man’s Skyが成功を収めたら,おそらく大きなパブリッシャの大勢の人がインディーズゲームをどのように見るかという点で本当に大きなインパクトをもたらすと思うよ
RedditのAMA(参考URL)においてMurray氏はファンの質問に答える形で,「No Man’s Sky」の開発においてまったく口を出さなかったSony Interactive Entertainmentのアプロ―チについて高く評価した。「ソニーとは本当に働きやすかったです。その一番の理由は開発にまったく口出ししてこなかったからなのです」というMurray氏は,「もちろん,それでもソニーには我々の実力を証明しているわけでなく,AAAタイトルの中でも格下の下なんですけどね」と書き込む。「もし成功すれば,大手のパブリッシャの中のかなりの人が,独立系ゲーム開発についての考えを変えてしまうほどの大きなインパクトになると思います。多くの皆さんはNo Man’s Skyがソニーに出資されたゲームだと考えているようですが,我々Hallo Gamesは自主資本のスタジオでしかありません。本当に,考えられないような状況が起きているんです」とMurray氏は続けた。
それは確かに真実であるようだ。ここしばらくのTwitterの書き込みにおいて,Sony Interactive EntertainmentとHello Gamesのパートナーシップを構築するのに大役を果たしたShahid Ahmad氏は,No Man’s Skyがいかに稀なケースであり,前代未聞のことであったかを繰り返して発信した。内情そのものについては多くを語ることはしなかったものの,Ahmad氏によると「Hello Gamesに私やPlayStationプラットフォームを信用してもらうということは,いかなる独立系デベロッパも取ったことのないほどのリスクだった」と言うほどなのだ。
There were many dark nights when the only thing that kept the deal alive was the energy, drive and total belief held by me and Ben.
— Shahid Kamal Ahmad (@shahidkamal) 2016年8月7日
そうして開発が続けられたNo Man’s Skyは,この開発者自身が熟考したコンセプトのポテンシャルを引き出すことを可能にし,そのことが結果として多くの消費者を興奮させることにもつながったはずだ。しかしながら,Murray氏の視点では,そうした熱狂はとても不鮮明にしか見えていなかったという。
彼はAMAの質問で,Hello Gamesの開発者たちはRedditのような場所でファンの意見に目を通していたかと聞かれて,「とくに開発がなかなか進まずに悶々としていたときなど,何度か覗いたことはあります。嬉しくなって,開発に集中することを可能にしてくれたのです。しかし,その一方で書き込みを読んで途方にくれたこともありました。もし,3年も待っている皆さんの期待に応えられなかったどうしようかって」と,その心のうちを明かしている。
注目されるほど怖くなっていくのです。ゲームの制作が発表されてから3年という間,そのことは常に私の意識の中にあったのです
今のところ,まだ多くのレビュー記事がリリースされるほどローンチから長くは経っていないが,Murray氏のそうしたファンの期待に対する複雑な心境は,ゲーム業界に“大きなインパクト”をもたらすNo Man’s Skyの潜在性とも強く関係しているらしい。Hello Gamesが,これほどまでに注目されることになったことは,それだけでも注目に値すべきことであるが,同時に小さな開発チームにとっては,そのプレッシャーを重く受けやすいはずだ。「注目されるほど怖くなっていくのです。ゲームの制作が発表されてから3年という間,そのことは常に私の意識の中にあったのです」とMurray氏は続ける。「つまり,それはジレンマですとね。あの時にゲームの制作を発表することがなければ,このプロジェクトはファンのサポートを受けずして途中で頓挫することになっていたかもしれません。(結果として大きく注目された)テレビ番組からのオファーを断っていればどうなったか。E3に出展していなければどうなっていたのか。今から考えれば,どうやってここに辿りついたのか分からないのです」
Murray氏はまた,「ゲームの途中経過を発表するたびに,ファンから突然嫌われたらどうしようかとずっと心配していましたが,その注目度は高まるばかりだったのです。もし別の次元があるのであれば,明日リリースするために今日発表するってこともやってみたかったなんて妄想もします。面白いことになっていたでしょうね」と冗談めかして書き込んでいた。
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)