テンセント,Supercellを買収へ

オンラインゲームの巨人はソフトバンクが手放した「クラッシュ・オブ・クラン」のメーカーの株を102億ドル分取得し,ソフトバンク副社長は退いた。

 公式情報として,Supercellがテンセント(中国名:騰訊控股有限会社)に買収されつつあることが明らかにされた。ここ数週間のウワサ(英文記事)を経て,中国ゲーム市場の巨人であるテンセントが,日本のテレコム企業であるソフトバンクから,「クラッシュ・オブ・クラン」の開発チームの所有権過半数を獲得するという合意に達したというのだ。

 この取引は,Supercellの企業価値を,当初考えられていたよりも倍以上となる102億ドルに押し上げた。テンセントは同社の84%に及ぶ所有権を獲得し,残りはSupercellの雇用者たちが分けることになる。

 Supercellはまた,テンセントのゲームビジネスにおいても「League of Legends」のメーカーであるRiot Gamesと並んで大きな位置を占める。テンセントは,これまでにもEpic Games,Activision Blizzard,Paradox Interactive,Miniclip,Glu,Discord,Robot Entertainment,そしてArtilleryといった大小のゲーム企業に投資してきた。

 ソフトバンクのCEO,孫 正義氏は「我々は,Illla Paananen氏やSupercellのメンバーとは非常に良い関係を享受してきましたし,同社の驚くような急成長に関わることができて非常に光栄に思っております」とし,「我々の投資期間中,Supercellは独立した企業として運営され,何度もユニークな企業文化を持つ開発メーカーとして実績を積んできました。ゲーム業界でリーダーシップを発揮するテンセントに敬意を払っておりますし,今後もSupercellの独立性に献身していかれることでしょう。Supercellの経営が次のレベルに達するためにも,テンセントは理想的なパートナーであるはずです」と話している。

 この買収に関する独自のブログポスト(関連URL)において,SupercellのCEOであるPaananen氏は,取引についての四つの論点を掲載している。第一に,テンセントがSupercellを独立した企業として経営を続けていくことを許可しているということ。それに加えて,テンセントの企業文化とゲームビジネスに対する情熱はSupercellによっては良いマッチングであるとPaananen氏は見ており,テンセントのRiot Gamesに対する扱いが,いかに良いかを述べている。この買収はまた,Supercellが単独の株主によって所有されることになり,多くの株主や株式市場のプレッシャーを受けて短期的な利益を出す必要がなく,より長期的な戦略でゲームを開発,運営できることを可能にする。

 Paananen氏は,「中国市場は,どの国よりも多くのゲーマーを抱えています」と語り,「テンセントのプラットフォームは10億人のプレイヤーにサポートされています。その中では,3億人ものユニークプレイヤーがゲームを楽しんでいるのです。これの意味することは,テンセントと共により多くのゲーマーに向けて我々のゲームを発信できるということで,ソーシャルプレイなど我々になかった新しい要素ももたらしてくれます。これは非常にエキサイティングなことなのです」と続ける。

 ソフトバンクは,当時ガンホー・オンライン・エンターテイメントの傘下企業であったSupercellの51%の株式を2013年に30億ドルで取得していた(英文関連記事)。しかし,ここのところソフトバンクは資金運用に苦慮しており,それがSupercellの売却につながったとされている。ソフトバンクは今月初めにも,ガンホー・オンライン・エンターテイメントに6億8000万ドルでの株式買戻しに応じているほか(英文関連記事),中国のオンライン企業アリババ株100億ドル分も売却している。

 The Wall Street Journal誌(関連URL)によると,ソフトバンクではニケシュ・アローラ副社長が退任したことが報道されている。一時は孫氏の後継者として知られていたアローラ氏だが,この2年間のソフトバンクの投資戦略や,グローバルIT企業のスタートアップ支援がうまくいかなかったことが理由であるという。アローラ氏は,彼の投資戦略と過去2年間で2億ドルという報酬について投資家たちから批判を浴びていた。

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