「3D&バーチャルリアリティ展」開催,産業用VRの最新動向を見る

 2016年6月22日,東京ビッグサイトで「3D&バーチャルリアリティ展」が開催された。今年で24回となるVR(仮想現実)業界でも歴史のあるイベントである。
 今年は「VR元年」と言われているように,民生用に高性能なVRヘッドセットが発売されてしまい,一気に産業用VRを追い抜いてしまったような感もある。元々産業用VRを扱っていた本イベントでは,最新のデバイスやVRコンテンツをどう作るかといったあたりを中心に展示を行っていた。ざっと回ってきたので早速レポートしてみよう。なお,展示会は24日まで開催されているので興味のある人は,公式サイトを確認しよう。

「3D&バーチャルリアリティ展」公式サイト

●4K裸眼立体視ディスプレイ
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 レッツコーポレーションは,4Kパネルを使った裸眼立体視ディスプレイを展示していた。これは4Kパネルを使った液晶ディスプレイとレンチキュラー方式の光学フィルタを併用したもので,HDMI入力によるサイドバイサイドなどの2視差映像から8視差の映像を作って表示している。聞き忘れていたが,遅延は多少あるかもしれない。
 昔,フルHDの液晶パネルが出てきた時期にも感じていたことだが,高解像度のパネルが出てくると裸眼立体視は一気にグレードアップされる。フルHDパネルでは,視差数が少なめで画像もちょっと粗い感じがしていたものだが,4Kパネルを使うことで8視差が実現されており,片目あたりでだいたいフルHD画像程度の画質も確保されている。左右に動きながら見ると,ちょっとうにうにすることはあるのだが,だいたいどの位置からでも素直に立体視ができる。「立体テレビ」としての完成度はかなり高い感じだった。
 お値段は受注生産なので50インチ版で150万円程度とのことだった。これは民生用でも十分いける製品だと思う。4Kテレビと言ってもほとんどコンテンツはないのだから,こういった方向性でどこか民生品を製品化しないものだろうか。

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●360度ステレオ映像制作ソリューション
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 ZENKEIは,360度立体映像を制作するソリューションを展示していた。
 リコーのTheta登場以来,360度映像は一気に普及してきている。VRヘッドセットで閲覧するようなツールも定番だ。ただ,VRヘッドセットを使っても立体には見えないのがちょっと残念だった。
 360度で立体映像を作るのはかなり難しい。Thetaのようなカメラを2台使えばいいじゃないかと考える人もいるだろうが,2台を左右に並べて撮影しても,想定された正面を見ているときはいいのだが,横を向いて視聴すると視差はなくなってしまうのだ。あらゆる方向で左右の視差を確保した映像を撮影するためにはかなりの台数のカメラが必要になってしまう。
 ここで展示されていたのは,6台のTheta-Sを使ったソリューションだ。6つの360度映像を束ねて4K映像にしている。Thetaの画面は1920×1080ピクセルだから,本来であれば4K解像度には4枚しか収まらないわけだが,横方向を短くすることで上下に3枚ずつ,6枚の画面をつないだ4Kストリームを作り上げている。それを専用プレイヤーアプリで再生することで,立体視状態の360度映像ストリームを実現するわけだ。
 360度を6視差ではちょっと粗いような気はするのだが,ちゃんと立体感を得られ,もっとも効率的なフォーマットであるという。現状ではもっともリーズナブルなソリューションかもしれないのだが,6台のTheta-Sが放射状に配置されているヘルメットはインパクトが強すぎる。もう少し手軽に扱えるとよいのだが。

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●ウェアラブルアイトラッキングデバイス「Tobii Pro グラス2」
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 Tobiiでは,同社の視線トラッキングセンサーを搭載したノートPCなどとともに,ウェアラブルデバイス「Tobii Pro グラス2」を出展していた。メガネタイプの機器で瞳がどこを見ているかを測定するものなのだが,これをVRヘッドセットに組み込んだ展示も行われていた。
 視界をほぼ完全にふさいでしまうVRヘッドセットをかぶった状態では,アプリの操作などもインタフェースが限定されてしまう。現在でも,「中央を凝視」といった操作法はよく使われているのだが,もっと自由に視線を追えるようになればインタフェースも改善されるかもしれない。

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●ホログラフィックディスプレイ
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 ホログラフィックディスプレイとされていたハーフミラーを使った映像の空間投影装置。4方向から見られるものと,正面1方向から見られるものの2タイプが展示されていた。映像も2次元なのでホログラフとはあまり関係ないとは思うのだが。
 この手の空中に映像が表示されているかのように見えるデバイス自体は珍しいものではないのだが,今回は表示空間内に商品を置き,そこに映像を重ねて表示できる展示方法として出展されていた。
 デモで使われていたのはガラスのコップだったのだが,表示面がコップを横断するように設置されており,立体的なコップと映像の組み合わせが不思議な効果を上げていた。

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こちらは本物のホログラフ
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スマホを入れるタイプのありがちなVRヘッドセットではあるが,光学系がカール・ツァイス
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GearVRとムービングシートを使ったVRコンテンツの体験デモ
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3Dデータをクラウド上にアップロードし,Webベースで編集することで,さまざまな機種に対応したVRアプリを作成できるという「DropInVR」
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●3Dプリンタ関係
 3Dプリンタではストラタシスが圧倒的だった。カラープリンタの新モデルはなかったようだが,事例を見れば他社とはまったく別次元のことをやっていることが分かる。

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透明材料や柔軟性のある樹脂をブレンドできるので,作られるものも実に多彩になっている。左の人体模型はともかく右は説明の必要があるかもしれない。これは,靴の中敷をカスタマイズできるというソリューションだ。足型に合わせ,色も自在
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3Dプリンタで部品が作られている原寸大の「タチコマ」
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ロボットアニメを基に日本を代表するものづくりを目指す全日本製造業活性化計画では,大河原邦夫氏デザインによるオリジナルメカの3Dプリントモデルなどをストラタシスブースで展示していた。大河原氏によるラフ画から3Dデータを作成し,3Dプリント,金型制作などを行い,プラモデル化のプロジェクトが進んでいる。頭部を見る限り,なんかに似ているような気がするのだがデザインした当人が「問題ない」と断言しているので大丈夫らしい。同じ人がデザインするとある程度似てしまうのはしかたない
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3Dプリントの積層模様が消えるというPolySmoothとPolysherによるソリューション。溶剤を使って表面を軽く溶かすタイプのものだが,通常この手のソリューションではアセトン系の溶剤が使われるのだが,身体によくないため,エチルアルコールで運用できるフィラメントとの組み合わせで手軽に使えるものを作っているとのこと。モアイの右側はこの装置を使って15分ほど処理した結果だそうだ
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