「3D&バーチャルリアリティ展」開催,産業用VRの最新動向を見る
今年は「VR元年」と言われているように,民生用に高性能なVRヘッドセットが発売されてしまい,一気に産業用VRを追い抜いてしまったような感もある。元々産業用VRを扱っていた本イベントでは,最新のデバイスやVRコンテンツをどう作るかといったあたりを中心に展示を行っていた。ざっと回ってきたので早速レポートしてみよう。なお,展示会は24日まで開催されているので興味のある人は,公式サイトを確認しよう。
「3D&バーチャルリアリティ展」公式サイト
●4K裸眼立体視ディスプレイ昔,フルHDの液晶パネルが出てきた時期にも感じていたことだが,高解像度のパネルが出てくると裸眼立体視は一気にグレードアップされる。フルHDパネルでは,視差数が少なめで画像もちょっと粗い感じがしていたものだが,4Kパネルを使うことで8視差が実現されており,片目あたりでだいたいフルHD画像程度の画質も確保されている。左右に動きながら見ると,ちょっとうにうにすることはあるのだが,だいたいどの位置からでも素直に立体視ができる。「立体テレビ」としての完成度はかなり高い感じだった。
お値段は受注生産なので50インチ版で150万円程度とのことだった。これは民生用でも十分いける製品だと思う。4Kテレビと言ってもほとんどコンテンツはないのだから,こういった方向性でどこか民生品を製品化しないものだろうか。
●360度ステレオ映像制作ソリューション
リコーのTheta登場以来,360度映像は一気に普及してきている。VRヘッドセットで閲覧するようなツールも定番だ。ただ,VRヘッドセットを使っても立体には見えないのがちょっと残念だった。
360度で立体映像を作るのはかなり難しい。Thetaのようなカメラを2台使えばいいじゃないかと考える人もいるだろうが,2台を左右に並べて撮影しても,想定された正面を見ているときはいいのだが,横を向いて視聴すると視差はなくなってしまうのだ。あらゆる方向で左右の視差を確保した映像を撮影するためにはかなりの台数のカメラが必要になってしまう。
ここで展示されていたのは,6台のTheta-Sを使ったソリューションだ。6つの360度映像を束ねて4K映像にしている。Thetaの画面は1920×1080ピクセルだから,本来であれば4K解像度には4枚しか収まらないわけだが,横方向を短くすることで上下に3枚ずつ,6枚の画面をつないだ4Kストリームを作り上げている。それを専用プレイヤーアプリで再生することで,立体視状態の360度映像ストリームを実現するわけだ。
360度を6視差ではちょっと粗いような気はするのだが,ちゃんと立体感を得られ,もっとも効率的なフォーマットであるという。現状ではもっともリーズナブルなソリューションかもしれないのだが,6台のTheta-Sが放射状に配置されているヘルメットはインパクトが強すぎる。もう少し手軽に扱えるとよいのだが。
●ウェアラブルアイトラッキングデバイス「Tobii Pro グラス2」
視界をほぼ完全にふさいでしまうVRヘッドセットをかぶった状態では,アプリの操作などもインタフェースが限定されてしまう。現在でも,「中央を凝視」といった操作法はよく使われているのだが,もっと自由に視線を追えるようになればインタフェースも改善されるかもしれない。
●ホログラフィックディスプレイ
この手の空中に映像が表示されているかのように見えるデバイス自体は珍しいものではないのだが,今回は表示空間内に商品を置き,そこに映像を重ねて表示できる展示方法として出展されていた。
デモで使われていたのはガラスのコップだったのだが,表示面がコップを横断するように設置されており,立体的なコップと映像の組み合わせが不思議な効果を上げていた。
●3Dプリンタ関係
3Dプリンタではストラタシスが圧倒的だった。カラープリンタの新モデルはなかったようだが,事例を見れば他社とはまったく別次元のことをやっていることが分かる。