「Uncharted 4」はゲーム業界が苦闘するクランチにインスパイアを受けていた

Naughty Dogはゲームアクションの“つまらない時間帯”を受け入れ,一部のファンの悔しい思いをバネに楽しさの重要性を再認識した。

 過去の大冒険における熱中してしまうようなスリルからの決別というネイサン・ドレイクの心の戦いが,「Uncharted 4: A Thieves’End」の物語のコアにあり,人生を模写する試みであったとクリエイティブ・ディレクターのNick Druckmann氏は語る。

 ファンならすでに聞き知っていることや新しい情報を交えたRolling Stone誌とのインタビューに(関連URL)おいて,Druckmann氏は「自分の情熱と,家庭を築くことを天秤にかける」という本作のテーマについて,多くのゲーム開発者たちが体験するであろう,クランチ(ゲーム開発プロセスの最終段階で起こりえる佳境)を照らし合わせてみたものであったと語る。

 「我々ゲーム開発者たちは,それぞれが誰かの心に何かを残そうという希望を持って業界に足を踏み入れるのです。だからこそ,より良いものを意味だそうと懸命に努力し,ときおり自分の生活を破壊してしまうことだってあるのです」という彼は,「ですからこのゲームでは,そうした我々の思いを重ねてみたかったのです。もちろんアクションアドベンチャーをバックドロップにしたフィルタを掛けていますが,我々の人生の目標をメタファーしたものなのですよ」と話した。

 Naughty Dogがこうしたアイデアを模索するというのは実に興味深いことだ。より大きな購買客を狙ってさまざまな妥協が行われ,最終的に似たようなゲームが量産されてしまうということはよくある。「Uncharted 4」では,Naughty Dogは“楽しさ”を創造することを最終的な目標にするという予想を超えて,より意図的に考慮された部分を残すことによって,ネガティブなフィードバックを受けかねないことにチャレンジした。

NeoGAFなどの投稿サイトには,「Uncharted 4」の序盤に不満を持つ人の書き込みが目立ちます。そうしたゲーマー層を失ってしまうことは仕方ありません

 Druckmann氏は,「フォーカステストにおいて,我々は“楽しさ”という言葉を考慮しないようにしたのです。みんなゲームをプレイしたときによく使うけど,実に奇妙な言葉ですよね。最初のダイビングシーンをどのように評価するのか。“楽しかった”のだろうか? それほど深いチャレンジはありません。酸素ボンベが減っていくとう危険性はあるにせよ,このシーンはストーリーを進める役目しかありません。酸素ボンベを空にしてしまうことはできないのですし」と続ける。

 「しかし,このレベルはネイサンの人生がどれほど平凡なものになってしまったのかを表現するという意味において非常に重要なのです。テスターたちに1から5までの評点をつけてもらうと,ここはいつも低い評価しか得られませんでしたが,それで良いのです。それを変えようとも思いませんでした」

 質問を,「このレベルはどれくらい楽しかったですか?」というものから,「全体的に見て,このレベルをどう評価しますか?」に変えることだけで,テスターたちはレベルの意図を理解して,その評価もすぐに上がったという。ネイサン・ドレイクは,賞金狙いのアドベンチャーやワイルドなアクションにはもう飽きていた。それがゆえに,彼は彼自身の個人的な問題を映し出すような体験を欲していたわけだ。

 Druckmann氏は,さらに「Uncharted 2: Among Thieves」のヒマラヤの寒村のシーンをして,「我々にとっては,あれがスタジオとしての進化の瞬間でした」と語り,「ゲームというメディアが,こうしたアクションの“つまらない時間帯”を持つことが可能であるということに,さらなる自信を深めていくことができました」と説明した。

 しかしながら,ネイサン・ドレイクのストーリーを利用しながあらゲーム開発の知識を得ていくにしたがい,成熟は大きな犠牲を払わなければいけないことも認識した。Druckmann氏は,これについては明確に感じており,「The Last of Us」や「Uncharted 4」でNaughty Dogが取ったクリエイティブな方針は,何人かのプレイヤーには過剰なものであったことも理解していた。

 「私が言いたかったことは,こうした方針によってファンを失うことも考えられていたということなのです。NeoGAFなどの投稿サイトには,「Uncharted 4」の序盤に不満を持つ人の書き込みが目立ちます。私が読んだ限り,そのスローなテンポが嫌われているようです。何人かのゲーマーは,こうしたセットアップは必要なく,銃を手にして撃ち合いを始めるまではゲームではないと信じているようですね」

 「もし,それが彼らにとってのゲームであるというのなら,そうしたゲーマー層を失ってしまうことは仕方ありません。より意図的なゲームのペースに共感してもらえる新しいファンを増やすことだけを意識するのです」

 Rolling Stone誌のインタビュー集には,最終的にゲームに利用されなかった部分など,非常に興味深い記事(関連海外記事)なども掲載されている。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら