【月刊総括】衝撃の220万件応募。Switch 2はいつ頃手に入るのか?

 今月もSwitch 2の話題を取り上げたい。
 4月23日の夜に任天堂の古川社長が任天堂公式Xでポストした。

 内容は以下の3点である。

(1)任天堂の公式オンラインストアであるマイニンテンドーストアで実施している抽選販売の応募者数が220万件となった
(2)220万件に対応できる台数を第1回,第2回の抽選では確保できなかった
(3)よって,相当数が落選する見通し


 「プレイ時間50時間」「オンライン加入期間1年以上」という条件を課したにもかかわらず,220万件もの応募が集まったのは驚きだ。


 過去のゲーム機の初週推定販売台数(ファミ通調べ)は

  • Switch 33万台
  • PS4 32万台
  • PS5 11.8万台
なので,220万応募は,文字通り桁違いだ。

 任天堂も同じ受け止めだったと思われ,前述のようなポストに至ったのだろう。

 以前も言及したように,任天堂はリスクをとって発売日に過去最大級の出荷をすると予想していた。しかし,初回の出荷数量は,過去の30万台の水準からみて2倍から2.5倍程度が限界と考えていたので,桁違いの申し込みには対応できない。

 しかも直販サイトであるマイニンテンドーストアは販売チャネルの一つでしかなく,220万件の応募はまさに青天の霹靂だったと思われる。

 さらに,マイニンテンドーストアに続き家電量販店でも抽選が始まっているが,一部の量販店では購買実績のハードルが高く,Switch 2がまるで高級品であるかのように扱われている。

 小売店の印象が,ソニーグループのPS5と同様に任天堂のゲーム機が高級でたくさん買ってくれる既存客に売るべき優先販売アイテムに進化しているのだ。

 これ自体が良いとは思えないが,任天堂がAppleやそのほかのブランド品のような扱いを受け始めていることは非常に興味深い。任天堂自身はあまり自覚していないと考えているが,ハイブランドに評価が変わってきているのである。

 今後はSwitch 2の高精細な映像が,任天堂のブランド価値をさらに高めるはずだ。その要因はDLSSにある。
 ネットではDLSSの採用有無が議論になっていたが,「サイバーパンク2077」では採用されている。

 NVIDIAもSwitch 2に搭載していると発表しているので,使われない理由が良く分からないと個人的には思っていたのだが,やはり使われていたのだ。

 筆者は技術の細部までは詳しくないが,小さなアセットを大きく描画する目的でDLSSが使われていると見ており「動けば十分」というユーザーが大半であることを考えると,DLSSの有無は大きな問題ではないだろう。とはいえ,DLSSで多くのAAAが動くようになりそうだ。

 さらに言えば,「サイバーパンク2077」「ELDEN RING」「Borderlands 4」「WILD HEARTS」など,PS5/Xbox Series X|S世代のタイトルが動く時点で,AAA級が稼働するという事実は十分に示されている。

 筆者はSwitch 2のサイバーパンク2077を体験したが,グラフィックスもPS5と同じとは言わないが,十分だったと感じた。Switch 2は,PS5世代の綺麗な絵のゲームが普通に動くという事実が,さらにSwitch 2の価値を高めることになると言いたい。

 ここでいつものグラフとなる。
 繰り返し述べているが,ゲーム機は最初に売れないと挽回できないのである。逆に言うと,最初に売れたゲーム機が後で失敗した事例は過去に一度もない。


 まだ出荷数は分からないものの,筆者が成否ラインとしている,発売後2週間で40万台前半の数量は余裕で超えそうである(入稿直前に米国も予約販売が瞬く間に終わったとニュースがでた)。

 こうなるともはやロケットスタートというレベルではなく,いきなり大成功ゾーンに入ることが発売6週間前に確定してしまった,と考えている。

 初動が強いことが分かり,ゲームソフトも幅も広がる可能性が高くなったことを考えると,今後はSwitch 2の最終的な着地がどうなるかに関心が移るだろう。

 筆者は不定期にVTuberの日向猫めんまさんと動画配信を行っているが,4月の配信で初回の販売は相当厳しいものになるだろうとコメントした。

 しかしこの見通しは甘かったと言わざるを得ない。普通に買えるようになるにはSwitchと同じように1年近くの時間が必要になるのではないだろうか。

 その理由はサプライチェーンにある。
 おそらく2026年3月期のSwitch 2の出荷は2000万台程度が可能と見ているが,ここから1000万台増やすのは,もはや至難の業だ。

 そもそも半導体のリードタイムが3か月以上あり,ウェハを今すぐ投入してもできるのは8月ごろである。それを組み立ててから出荷となると欧州で4か月,米国で2か月弱は時間がいる。

 4月時点で増産の意思決定をしても,Switch 2として完成するのは早くて年末ぎりぎりなのである。さすがにもう少し早く意思決定をしていたと思うが,それでも年末に高まる需要に対応することは大変難しそうだ。

 今期2000万台の予想のうち,日本は400万台程度を想定しているが,現時点で需要は少なく見積もっても500万を超えている印象である。しかも,古川社長の謝罪ポストはバッドニュースなので恐るべきスピードで拡散してしまった。人間の基本行動として,多くの人が持っているものを持っていないことを損と感じるので,需要は大幅に増加しているだろう。

 しかも,全世界で数百万台の増産をしても,日本に回せる量には限りがあるので,増産を迅速にお願いしたいところだ。

 先月も任天堂はSwitchの倍の売上高,利益を狙っているのではないかと書いたが,いよいよ現実味が増してきたと言っていいだろう。
 下図のグラフを見ても,発売から3年目までは成長が続くことがゲーム機は多い。このことを考えるとSwitch 2の最終的な着地は2億台を超えて来るはずである。


 こうなると困るのはPlayStationビジネスだ。
 PS5はもう仕方ないとしても,PS6も相当苦しくなったと言わざるを得ない(発売されるのであれば)。日本で初週50万台以上の供給は,巨大化した据置機での達成は不可能に近い。報道された携帯機も入れれば可能かもしれないが,携帯機がどんなものになるのかも分かっておらず,なんとも言えない。

 一部コアゲーマーの優越感を満たすと考えると,高い性能はいいことだろう。だが,開発費の増大もあり,ゲーム文化はサブカルチャーからメインカルチャーに変わる歴史的転換点にあると言える。ソニーグループやSIEは,よく考えるべき事態になっていると思う。

 繰り返すが,任天堂の2030年ごろの業績はSwitchのピークの倍以上になっているはずだ。稼ぐ力に差がつくと任天堂はさらに在庫投資できるようになる。さらなる次世代機の頃には,他社との差がさらに広がっているだろう。ゲーム業界の迷信から脱却に成功した任天堂の強さが際立つことになるはずだ。

 SIEは,筆者の意見が批判ばかりで建設的でないとしているからこんなことになってしまったのである。
 おそらく,もうPS6での路線変更は難しいので,このままいくと厳しい結果になるだろう。

 筆者のような批判ばかりするアナリストには思いもつかないような素晴らしい施策を,SIEの経営陣は必ず出してくるはずだ。筆者の予想が外れることを祈りつつ,それを楽しみに待ちたい。