【月間総括】Switch 2の驚異的な販売数を発売前に見込めるワケ
今回は,何よりもSwitch 2について話したい。1月16日の22時2分,任天堂はSwitch後継機としてアナウンスしていた新しいゲーム機「Nintendo Switch 2」(以下,Switch 2)を突然発表し,同時に動画を公開した。内容はすでにご存じの人も多いだろう。
動画の内容を筆者から述べておくと,ハードの違いを説明し,その魅力を伝えるというものになっている。PS5の初披露動画を貼っておくので,見比べてほしい。
どちらの動画も解説はまったくないが,内容は随分違う。PS5の動画はデザインのみにフォーカスしていて,PS4と何が違うのかがまったく分からない。
これに対してSwitch 2は画面が大きくなったことから始まり,狭額縁になり,Joy-Conのサイズ変更,スタンドの変更,USB Type-Cコネクタを上部に追加したこと,おそらくJoy-Conにマウス機能の追加など,挙げるとキリがないほどSwitchとの違いを強調している。
しかしその直前,CESでも周辺機器メーカーがSwitch 2用とするアクセサリとともに,Switch 2の動画を出していた。
Switch 2が発表されたあと,再度確認して驚いたのだが,このCGと実際に発表された動画のSwitch 2はほとんど同じであった。デザインだけでなく色までである。
事前に漏れていた情報とほとんど違わないものが出てきたこと,そしてSwitchとスタイルの変更がないことで多くのゲーム愛好家や識者が落胆したのも事実だ。とても今まで驚かせることで商品を売ると言っていた会社の行動とは思えない。
実際,平林氏やブルームバーグの望月記者もこの点を紹介している。
「任天堂は驚かせることで売る」,と多くのゲーム愛好家や識者が思っているし,故岩田氏もそういっていたからだ。
だが、Switchまでと比較すると,今回のSwitch 2はリークが多くなった結果,発表されたときにはリーク通りであるという失望感が多かったように思う。実際,翌日の任天堂の株価は下落している。
人間は胡散臭い不正確な情報(噂)が本質的に好きである。そのためX(旧Twitter)では,正確な情報ではないと言いつつリークが大量につぶやかれ,トレンドを席巻していた。そんななかでSwitch 2を発表すれば,当然驚きは半減してしまうだろう。失望したというのは当然の反応だったのだ。
それでも,任天堂のXの閲覧数はSwitch 2発表から11日目で5500万を超えており,YouTubeの再生数も730万以上という驚くべき拡散度合いだ。
さらに多くのYouTuberが競ってSwitch 2を紹介しており,関心の高さと情報の拡散の速さが分かる。
YouTuberの視点で考えると,自身が作成した動画をたくさん見てもらうには,想定される視聴者が知っていること,興味があることが必須条件だ。
その点Switch 2はSwitchと同じスタイルでデザインも大差なく,多くの人が知っている。ネタとして最適だったのだろう。
一方,ソフトについてはマリオカートの新作らしきものの紹介だけであり,詳細はまったく語られていない。
Switchの初報の際は,「The Elder Scrolls V: Skyrim」や「スプラトゥーン2」などいろいろなタイトルが遊べることが強調されていたことから考えると随分違う。
ハードはソフトのために買われていると一般的には思われているので,ゲームの違いを紹介しないといけないはずである。実際PS5 Proを発表した際にSIEは,PSSRの機能としてゲーム画面の比較を行っていた。
しかし今回,任天堂は画面での違いは出していない。ゲーム映像の専門家集団Digital Foundryは,DLSSなど新しい技術がマリオカートの画像には使われていないと指摘している。
Switch 2がDLSSといった技術に対応していて,高度なグラフィックスを出せるのであれば,Switchとのゲーム画面などの違いを良く分かるようにするはずである。だが任天堂が行ったことは,Switch 2本体のデザインや,機能の変化を紹介しただけで終わった。これはとても奇妙だ。
しかも最近,任天堂は驚かせることで売るとは言わなくなっている。
年末からのリークと称される多数の情報から併せてSwitch 2の動画を考えると,任天堂のマーケティングがハード重視に変わってきているのではないかと思う。
さて,これだけ拡散されてはいるものの,「見た目がそう変わらないようにも見えるSwitch 2は成功するのだろうか?」と思う人は多いだろう。
かつて筆者は,PS5は大きくて白く,丸いものなので売れないのではないかと予測したことがあり,大変批判をいただいた。当時の筆者は「大きい」と「厚い」の区別ができていなかったのだが,Switch 2はPS5とは真逆の「黒く,四角く,薄い」なので大いに売れるはずだ。
発表された翌日に筆者は毎日新聞の取材に,オーソドックスな進化であるSwitch 2は成功するだろうとコメントした。
成否の確認は発売されて2週間経たないと確実にはできないだろうが,遊び方(スタイル)が分かっているかつ,薄いと感じられるデザインから見ても失敗するとは考えにくい。
筆者は形仮説や行動経済学をもとに,Switchの次世代機は平凡なデザインで良いのではないかと繰り返し述べてきた。値段も関係無いと考えているので,6万円程度でも大成功に終わるだろう。発売時期がまだ分からないので来年度の販売台数を正確に予測するのは難しいが,7月発売でも1600万台程度は十分可能だと見ている。
これだけだと勝手な予想だと思われてしまうので,毎日新聞にコメントした理論的な背景も述べておく。
平凡なデザインで良いとしたのは,心理学を用いた行動経済学でも指摘されていて,多くの人は変化を嫌うためだ。人間は,大半の人が小さな変化でも嫌うことが実験で分かっている(現状維持バイアスという)。
ゲーム機はファミコンからでも40年以上が経過しており,もはや遊び方は出来上がっている。しかも日本での人口普及率は30%程度にまで増えている。
かなりの幅広い年齢層にまで普及していることを考えると,Switchは変化させないほうが適切に思う。
Switch後継機というのを全面に出し,ディスプレイを大きくしたデザインは変化も分かりつつ,やることは変わらないことを説明できる点が,今回の発表で非常に優れているポイントだったと思うのだ。
もう一つ長い間謎だったことがある。上記グラフにあるように「最初に売れないとゲーム機はなぜ成功できないのか?」という命題である。
最初に売れないとどうやっても挽回できず,しかも,ハードの供給が滞ってもだめなのである。
一般的には需要があるなら品薄のほうが良いと思われているのだが,これは日本のPS5がとてもよく表していて,10万円で転売されるほど需要が強いように見えたが,結局PS4と同じような推移に落ち着いてしまい,国内の販売台数はさっぱりである。
この理由がこれまで筆者には説明できなかったが,行動経済学の観点から考えた結果,多くの人が最初に売れたゲーム機を持っていないと,そのことが損失になってしまっていると受け止めるのではないか,と考えている。
つまり最初の2週間で40万台前半がラインとして形成されているのは,この水準を超えると持っていることがステイタスになり,持っていないことが損だと認識されるためということだ。
持っていないことが損だと感じられると,何がなんでも手に入れたいと考える。
これも行動経済学では検証されていて,人間は利益が出るよりも損失がなくなったほうが喜ぶことが分かっている。
ステイタスになるゲーム機を手に入れれば損がなくなったと感じるわけなので,どんなに高くても買ってしまう。
以上の考えであれば,最初に大量に供給しないといけないことが非常にうまく説明できると思う。
Switch 2は転売対策として大量に供給すると古川社長はたびたびコメントしている。これが事実であれば,Switch 2は最初に大量供給されて売ることができたら,それはそのまま大成功になるだろう。
あとは価格と性能となるのだが,筆者は価格や性能の影響はまったくないと捉えているので,いくらになっても性能が低くても,売れるだろうと言っているのである。この点は納得できない人も多いので,発売前までには解説したい。
ここまでの理論的な背景からいえることは,Wii Uの失敗と損失で惑わされることなくハードビジネスを続けて良かったということだ。SIEと違って批判や,失敗から学べるのはいいことだと思う。故岩田氏の学びは古川社長の下で大きく花開くはずだ。
動画の内容を筆者から述べておくと,ハードの違いを説明し,その魅力を伝えるというものになっている。PS5の初披露動画を貼っておくので,見比べてほしい。
どちらの動画も解説はまったくないが,内容は随分違う。PS5の動画はデザインのみにフォーカスしていて,PS4と何が違うのかがまったく分からない。
これに対してSwitch 2は画面が大きくなったことから始まり,狭額縁になり,Joy-Conのサイズ変更,スタンドの変更,USB Type-Cコネクタを上部に追加したこと,おそらくJoy-Conにマウス機能の追加など,挙げるとキリがないほどSwitchとの違いを強調している。
しかしその直前,CESでも周辺機器メーカーがSwitch 2用とするアクセサリとともに,Switch 2の動画を出していた。
Switch 2が発表されたあと,再度確認して驚いたのだが,このCGと実際に発表された動画のSwitch 2はほとんど同じであった。デザインだけでなく色までである。
事前に漏れていた情報とほとんど違わないものが出てきたこと,そしてSwitchとスタイルの変更がないことで多くのゲーム愛好家や識者が落胆したのも事実だ。とても今まで驚かせることで商品を売ると言っていた会社の行動とは思えない。
実際,平林氏やブルームバーグの望月記者もこの点を紹介している。
「任天堂は驚かせることで売る」,と多くのゲーム愛好家や識者が思っているし,故岩田氏もそういっていたからだ。
だが、Switchまでと比較すると,今回のSwitch 2はリークが多くなった結果,発表されたときにはリーク通りであるという失望感が多かったように思う。実際,翌日の任天堂の株価は下落している。
人間は胡散臭い不正確な情報(噂)が本質的に好きである。そのためX(旧Twitter)では,正確な情報ではないと言いつつリークが大量につぶやかれ,トレンドを席巻していた。そんななかでSwitch 2を発表すれば,当然驚きは半減してしまうだろう。失望したというのは当然の反応だったのだ。
それでも,任天堂のXの閲覧数はSwitch 2発表から11日目で5500万を超えており,YouTubeの再生数も730万以上という驚くべき拡散度合いだ。
さらに多くのYouTuberが競ってSwitch 2を紹介しており,関心の高さと情報の拡散の速さが分かる。
YouTuberの視点で考えると,自身が作成した動画をたくさん見てもらうには,想定される視聴者が知っていること,興味があることが必須条件だ。
その点Switch 2はSwitchと同じスタイルでデザインも大差なく,多くの人が知っている。ネタとして最適だったのだろう。
一方,ソフトについてはマリオカートの新作らしきものの紹介だけであり,詳細はまったく語られていない。
Switchの初報の際は,「The Elder Scrolls V: Skyrim」や「スプラトゥーン2」などいろいろなタイトルが遊べることが強調されていたことから考えると随分違う。
ハードはソフトのために買われていると一般的には思われているので,ゲームの違いを紹介しないといけないはずである。実際PS5 Proを発表した際にSIEは,PSSRの機能としてゲーム画面の比較を行っていた。
しかし今回,任天堂は画面での違いは出していない。ゲーム映像の専門家集団Digital Foundryは,DLSSなど新しい技術がマリオカートの画像には使われていないと指摘している。
Switch 2がDLSSといった技術に対応していて,高度なグラフィックスを出せるのであれば,Switchとのゲーム画面などの違いを良く分かるようにするはずである。だが任天堂が行ったことは,Switch 2本体のデザインや,機能の変化を紹介しただけで終わった。これはとても奇妙だ。
しかも最近,任天堂は驚かせることで売るとは言わなくなっている。
年末からのリークと称される多数の情報から併せてSwitch 2の動画を考えると,任天堂のマーケティングがハード重視に変わってきているのではないかと思う。
さて,これだけ拡散されてはいるものの,「見た目がそう変わらないようにも見えるSwitch 2は成功するのだろうか?」と思う人は多いだろう。
かつて筆者は,PS5は大きくて白く,丸いものなので売れないのではないかと予測したことがあり,大変批判をいただいた。当時の筆者は「大きい」と「厚い」の区別ができていなかったのだが,Switch 2はPS5とは真逆の「黒く,四角く,薄い」なので大いに売れるはずだ。
発表された翌日に筆者は毎日新聞の取材に,オーソドックスな進化であるSwitch 2は成功するだろうとコメントした。
成否の確認は発売されて2週間経たないと確実にはできないだろうが,遊び方(スタイル)が分かっているかつ,薄いと感じられるデザインから見ても失敗するとは考えにくい。
筆者は形仮説や行動経済学をもとに,Switchの次世代機は平凡なデザインで良いのではないかと繰り返し述べてきた。値段も関係無いと考えているので,6万円程度でも大成功に終わるだろう。発売時期がまだ分からないので来年度の販売台数を正確に予測するのは難しいが,7月発売でも1600万台程度は十分可能だと見ている。
これだけだと勝手な予想だと思われてしまうので,毎日新聞にコメントした理論的な背景も述べておく。
平凡なデザインで良いとしたのは,心理学を用いた行動経済学でも指摘されていて,多くの人は変化を嫌うためだ。人間は,大半の人が小さな変化でも嫌うことが実験で分かっている(現状維持バイアスという)。
ゲーム機はファミコンからでも40年以上が経過しており,もはや遊び方は出来上がっている。しかも日本での人口普及率は30%程度にまで増えている。
かなりの幅広い年齢層にまで普及していることを考えると,Switchは変化させないほうが適切に思う。
Switch後継機というのを全面に出し,ディスプレイを大きくしたデザインは変化も分かりつつ,やることは変わらないことを説明できる点が,今回の発表で非常に優れているポイントだったと思うのだ。
もう一つ長い間謎だったことがある。上記グラフにあるように「最初に売れないとゲーム機はなぜ成功できないのか?」という命題である。
最初に売れないとどうやっても挽回できず,しかも,ハードの供給が滞ってもだめなのである。
一般的には需要があるなら品薄のほうが良いと思われているのだが,これは日本のPS5がとてもよく表していて,10万円で転売されるほど需要が強いように見えたが,結局PS4と同じような推移に落ち着いてしまい,国内の販売台数はさっぱりである。
この理由がこれまで筆者には説明できなかったが,行動経済学の観点から考えた結果,多くの人が最初に売れたゲーム機を持っていないと,そのことが損失になってしまっていると受け止めるのではないか,と考えている。
つまり最初の2週間で40万台前半がラインとして形成されているのは,この水準を超えると持っていることがステイタスになり,持っていないことが損だと認識されるためということだ。
持っていないことが損だと感じられると,何がなんでも手に入れたいと考える。
これも行動経済学では検証されていて,人間は利益が出るよりも損失がなくなったほうが喜ぶことが分かっている。
ステイタスになるゲーム機を手に入れれば損がなくなったと感じるわけなので,どんなに高くても買ってしまう。
以上の考えであれば,最初に大量に供給しないといけないことが非常にうまく説明できると思う。
Switch 2は転売対策として大量に供給すると古川社長はたびたびコメントしている。これが事実であれば,Switch 2は最初に大量供給されて売ることができたら,それはそのまま大成功になるだろう。
あとは価格と性能となるのだが,筆者は価格や性能の影響はまったくないと捉えているので,いくらになっても性能が低くても,売れるだろうと言っているのである。この点は納得できない人も多いので,発売前までには解説したい。
ここまでの理論的な背景からいえることは,Wii Uの失敗と損失で惑わされることなくハードビジネスを続けて良かったということだ。SIEと違って批判や,失敗から学べるのはいいことだと思う。故岩田氏の学びは古川社長の下で大きく花開くはずだ。