【ACADEMY】オリジナルのインディーIPが,ゲームの枠を超えてオーディエンスを引きつける方法
この記事を読んでいるあなたは,オリジナルのIPをすでに作成しているか,あるいはオリジナルタイトルの開発を計画していることだろう。ゲームのパフォーマンスは順調で,定着したファンもいるが,次のステップは何だろうか?
近年,新たなオーディエンスを引きつける手段として,多くのゲームIPがハリウッドに進出している。「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は興行収入記録を打ち立て,「Fallout」や「The Witcher」もテレビの視聴者にアピールしている。インディーIPも例外ではなく,「Among Us」のアニメシリーズや「Vampire Survivors」のTV番組が企画されている。
しかし,ハリウッドに頼らずとも,オリジナルのインディーIPを拡大する方法はある。多くのインディー開発者たちは,スクリーンを超えてオーディエンスにリーチする新しい方法を探求している。この記事では,そのアプローチについて詳しく紹介する。
ゲーム内に目を向ける
オリジナルIPを構築するには,ロア(世界観)が欠かせない。ゲームが拡張され,物語が豊かになるにつれて,追加されるキャラクターやバックストーリーがプレイヤーとの結びつきを強め,IPも強化されていく。ロアを発展させることは,ゲームに個性を与え,コミュニティを形成するために重要だ。
「Minecraft」はその一例だ。今では歴史上最も人気のあるゲームのひとつとされているが,元々はインディータイトルとしてスタートした。時間とともに,新しいモブやアイテム,さらには並行する異次元までが追加されたのだ。例えば,ローンチ時には存在しなかった「Nether」という炎の世界は,現在ではタイトルの重要な要素となり,多数の「LEGO」セットを生み出している。
プレイヤーベースを育て,彼らの意見を取り入れることは,IPに対するプレイヤーの関心を高める効果的な方法だが,すべての要求に応える必要はない。
ゲーム全体をひとつのIPとして捉えるのではなく,ゲーム内の特定のキャラクターやグループに焦点を当てるのもひとつの手だ。単一のマスコットに限らず,複数の要素を際立たせることができる。
音楽の力
ゲームの外でもオーディエンスにリーチする方法として,音楽がある。インディータイトルにはエンターテインメントの中でも最高のオリジナル音楽が詰まっており,「Gris」のサウンドトラックを聴くだけでもその素晴らしさがわかる。
音楽は,ファンがどこにいてもゲームとつながる手段として活用できる。ストリーミングプラットフォームでサウンドトラックをリリースするのは,新たなリスナーにゲームを紹介する良い方法だ。ゲームのサウンドトラックは,その多くがインストゥルメンタルであるため,勉強やリラックス用のプレイリストに含まれることが多い。これにより,プレイヤーでない人々が最初に音楽と出会い,それをきっかけにゲームを発見できる。
これらのリリースに遊び心を加えるのもひとつの手だ。私たちは各部族の独自性を祝う際,その部族の個性や地域的な影響に合わせたカバーアートを開発してきた。
もちろん,すべてがデジタルというわけではない。最近では,「Citizen Sleeper」を手掛けたJump Over The Ageのように,インディー開発者がレコードレーベルと提携し,サウンドトラックをレコードでリリースするケースも増えている。プレイヤーがどのように音楽を聴くにしても,サウンドトラックをプレイヤーにアクセス可能にすることで,ゲームを常に意識させる効果がある。
インディー同士のパートナーシップ
パートナーシップも新たなオーディエンスにリーチするための有効な手段だ。ゲーム内でのパートナーシップもそのひとつである。インディー開発者たちは,数多くのゲーム内IPを他のタイトルで登場させることでコラボレーションを行っている。最も大きな例のひとつが「Indie Pogo」であり,50以上のインディースタジオのキャラクターを集めて「大乱闘スマッシュブラザーズ」風のタイトルとして展開している。また,「Shovel Knight」のファンダムページには,ほかのゲームでプレイ可能なキャラクターやカメオとしての登場が,果てしなくリストアップされている。
ほかのタイトルに自分のIPを共有することにためらいがあるかもしれないが,プロジェクトの進行状況について密にコミュニケーションを取り,定期的にチェックすることで,自分のIPがどのように表現されているかを十分に把握できる。
ゲーム外でのパートナーシップ
ゲーム外でのパートナーシップでも,新たなオーディエンスにリーチできる。慈善活動への寄付はその一例であり,私たちはスキンの売上の一部を再植林プロジェクトに寄付してきた。また,Humble BundleやFanaticalの慈善バンドルを通じて,ゲームを新しいプレイヤーに提供しながら,ポジティブな社会貢献に取り組む方法もある。慈善活動の主な目的は地域社会や世界全体に利益をもたらすことであるべきだが,ブランド価値やゲームをポジティブな活動と結びつけることにもメリットがある。
ここでは具体例が少ないが,私たちの「The Battle of Polytopia」について紹介しよう。私たちのコミュニティでは,4X戦略ゲームがチェスと比較されることが多いため,チェスのスウェーデン代表チームのスポンサーとなった。これは自然な流れであり,コミュニティの会話に入り込み,チェスチームが戦略ゲームに興味を持つという自然なつながりを生み出したのだ。ゲームと関連がある場合は,近くのスポーツ組織やクラブを調査し,地域レベルやその先の可能性を探ってみる価値がある。
1990年代から2000年代にかけて,セガ,任天堂,Xbox,Atariなどの大手ゲームブランドは,スポーツチームのスポンサーを務めていた。インディーによるカムバックの時が来ているのかもしれない。
商品展開
先ほど,フィジカルサウンドトラックのリリースについて触れたが,IPを構築するための商品展開の方法はほかにもたくさんある。
「Stardew Valley」のボードゲームのリリースにより,このゲームはデジタルプラットフォームだけでなく,ボードゲームショップの店頭にも並ぶようになった。流通は重要だが,直接販売も効果的だ。多くのインディー開発者にとって実店舗の設立は難しいが,ゲームイベントで物販ブースを設けることで,通りすがりの人々の目を引き,プレイヤーは誇りを持って自分のタイトルを友人に紹介できる。
デザインのアドバイスや生産プロセスに関する具体的な情報については,Grace Buxnerの「Frog Detective」に関する記事が参考になるだろう。
これまでの例からわかるように,ゲームの枠を超えてIPを拡大するための絶対的な方法は存在しない。このプロセスは必ずしも高額なものではなく,パートナーシップやサウンドトラックのリリースは低コストで行うことも可能だ。結局のところIPを構築するには,プレイヤーを中心に据え,徐々に進化するアプローチが求められる。ほかのコンテクストでゲームを紹介することは,新規プレイヤーがゲームを発見するきっかけにもなる。
Midjiwan ABのCEOであるChristian Lövstedt氏は,ストックホルムを拠点とするスタジオで,4X戦略ゲーム「The Battle of Polytopia」のビジネス運営およびマーケティングを担当している。このゲームのインストール数は,すでに2000万件を突破した。彼は,スウェーデンゲーム開発者協会の理事でもあり,同国および北欧地域全体のスタジオを支援している。
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)