「転職したらコミュニティマネージャーだった件」第4回:コミュニティに必要なのは愛だ


 前回に引き続き,NAVICUSのゲームチームが行った「長寿タイトルになるためのコミュニティを作る10の秘訣」と題したプレゼンから,今回は後半の5つを解説していきます。


6. 安心して楽しめる環境を守る
 いくらコミュニティ向けの施策を行っても,安心して楽しめる環境を維持できなければプレイヤーは離れてしまいます。運営側を信頼してもらうために,ゲームを遊ぶことや課金することへの不安を払拭する努力が必要です。つまり「このゲームを遊び続けても大丈夫そうだな」と感じてもらう,ということですね。

 例えばSNSでいうと,ハッシュタグで検索した際に,タイトルへの罵詈雑言ばかりが出てきたり,初心者を排除するような投稿が目立ったりする状態だと,「プレイしよう!」という気持ちにはなりづらいものです。SNSでの治安を守ることは,プレイヤーに「裏切られた」と思わせないことにもつながります。

7. プレイヤーの要求に誠実に応える
 プレイヤーの信頼感を醸成する,という先ほどの話にもつながりますが,要求に対しては誠実に応える(答える)ことを意識しましょう。
 「誠実に応える」は,要求を何でも聞き入れて対応すべきという話ではありません。可能な改善要望には迅速に対応し,対応が難しい場合には,理由をきちんと添えて説明することです。例えばプレイヤーからあがった改善ポイントを,予定より1日でも早く実装すると,プレイヤーには「自分たちの声を大切にしてくれている」と伝わります。こうした小さな積み重ねが,運営側への信頼感に確実につながるのです。

8. コアプレイヤー以外の声にも耳を傾ける
 熱心にプレイしてくれている人は,コミュニティの中でも声が大きくなりやすいものですが,彼らの意見と同じくらいライトユーザーの声にも耳を傾けましょう。新規プレイヤーにとって居心地が悪かったり,参加しづらかったりする場所になってしまうと,新たな人が入ってこず,結果的に裾野が広がらず衰退するコミュニティになってしまいます。新しく興味を持った人が参加しやすい環境を維持できるよう,ゲームの熱心なプレイヤーや,ゲームはそこまで得意でなくてもコミュニティが好きな人など,さまざまな人達の声を聞くようにしましょう。

9. 社内に共犯者を増やす
 コミュニティ構築には時間がかかります。すぐに結果が出るものではありません。限りあるリソースの中でコミュニティに向けた施策を継続するためには,マーケティング部署だけでなく,社内のさまざまな部署に「共犯者」を増やしていくことが大切です。施策の意義を理解してもらい,協力を得られる人を一人でも増やしていきましょう。そのためには,社内で積極的にコミュニケーションを取ることがまず重要です。

10. 粘り強く取り組む
 コミュニティマネジメントは即効性のある施策ではありませんが,継続することで必ず効果が表れます。まず「すぐに効果が出ない」と腹をくくり臨むこと。そしてタイトルごとに適切なKPIを設定し,定性的・定量的な計測を続けることが成功への鍵となります。「目指すコミュニティを実現するためには何の数字をどのように設定し,どう戦略を立てていけばいいのか?」を常に考え続け,愛を持って粘り強く取り組みましょう。


 さて,どれか1つでも「やってみよう」と思えたポイントはあったでしょうか?  
 コミュニティマネジメントは,プレイヤーとの強い絆を築くことで,本来影響を与えられないクチコミや評判の部分によい影響を与え,ゲームを長く愛されるタイトルに育てることができる重要な施策です。チームで「これをやってみよう!」と少しでも思っていただけたらとても嬉しいです。

 長寿タイトルで活躍中の敏腕コミュニティマネージャーの皆さんと行ったセッションレポートも公開しています。こちらもぜひご覧ください。

 ではまた次回,お会いしましょう! 感想やテーマのリクエストなどもぜひお気軽にお寄せください。

武内 一矢 株式会社NAVICUS 代表取締役。 X(旧Twitter)
2018年に株式会社NAVICUSを設立し,事業会社に近い目線で数々の企業・団体のSNS支援に携わってきたコミュニティマネジメントのスペシャリスト。株式会社ディー・エヌ・エーではソーシャルメディアチームを立ち上げ,SNSを起点としたプロモーション戦略の立案・実行を担った。某スタッフが「クラッシュ・ロワイヤル」のトロフィーで争ってくるが譲ってやるつもりはまったくないらしい。

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※次回の更新は2024年8月29日を予定しています