【ACADEMY】開発者が素早く失敗すべき理由とその方法
あなたのゲームが面白くない,もしくは実現可能ではないのなら,それをボツにしましょう。
これは,Free LivesのDominique Gawlowski氏,Ant WorkshopのTony Gowland氏,インディーゲーム開発者でコンサルタントのRami Ismail氏からのアドバイスであり,彼らは新シリーズ「GI Sprint」の一環として,ゲーム開発費の削減について経験を共有するために集まってくれた。
ゲームのアイデアに命を吹き込むこと(そして,それに終止符を打つタイミングの見極め方)についての率直なディスカッションで,パネリストたちは,参入障壁が低くなったとはいえ,コストや競争,困難の増加によって,ゲーム制作はかつてないほど難しくなっていることを強調した。
前例のない雇用の喪失やスタジオの閉鎖のなか,チームが見返りのないプロジェクトを追いかけ,時間やお金を無駄にしないようにすることが,これまで以上に重要になっている。この記事では,素早く失敗し,あらゆる敗北から学ぶために知っておくべきことすべてを紹介する。
- うまくいっていないのなら,できるだけ早くやめよう
- プレイするのも,作るのも楽しいか?
- 必需品をないがしろにして,“あるといいもの”に時間を費やすのはやめよう
- あるいは,あなたやあなたのゲームのためになっていない,時間を浪費する機能
- あなたのアイデアが,時間とお金を費やす価値があるかどうか,何度も確認しよう
- 小規模なゲームを作り,ニッチを知ろう
- 正しいことをしても,うまくいかない場合がある
うまくいっていないのなら,できるだけ早くやめよう
ゲームを放棄するベストなタイミングは? Gawlowski氏のアドバイスは簡潔だ。「できるだけ早く」
駆け出しのうちは自分の直感を信じるのは難しいかもしれないが,例えばプロトタイプ(試作品)の制作に1か月など,厳しい早めの期限を自分に課して,それを過ぎたらプロジェクトを続けるかどうかを判断すべきだというのが,パネリストの総意だった。
「5分間プレイして面白くなければ終了。次のゲームに移ります。それが今でも私が教えていることです」とIsmail氏は話す。
「今でも自分でゲームを作るときはそうしています。1週間,2週間で面白くできなければ,核となる何かがあると確信を持てません。次のゲームに進むべきタイミングです」
Gowland氏も同意見だ。「厳しく早い決断が求められます。試行錯誤し続けることはできませんし,新要素を投入し続けることもできません」
「『作れるものにしなければ』と,最初から考えていました。パブリッシャが興味を示さないのなら,6か月の時間とお金を費やして何かを作る,という状況にはなりたくありません。追加資金を得られないのなら,やめるべきです」
プレイするのも,作るのも楽しいか?
ゲームがうまくいっているかどうかを判断する方法は? 人ごと,ゲームごとにも少しずつ異なるが,Ismail氏は「楽しさ」に尽きると考えている。
「私が見るポイントは2つあります」と彼は言う。「ひとつは,人々がゲームとの対話を楽しんでいるかどうか。もし彼らがゲームの可能性に興奮しているなら,それが私たちの探している指標です。これは科学ではなく,感覚的なものです」
「もうひとつは,作っていて楽しいかどうか。これは方程式の本当に大きな部分です」
「ゲーム1本に2〜3年かかると仮定して,私が65歳になるまでに残された時間を計算すると……そんなに多くは作れません」と彼は続ける。「だから,その時点で取り組んでいて楽しいと思えるようにしたいのです。それには,もう少し時間がかかりますが」
必需品をないがしろにして,“あるといいもの”に時間を費やすのはやめよう
Ismail氏はまた,後で解決できるような細部に迷うことなく,ゲームの核となる部分,つまりこれがないと成り立たないものに優先して取り組むようアドバイスする。
「ゲーム業界に入ってくる人は,剣でドラゴンと戦うようなことに,夢中になっている場合が非常に多いです」とIsmail氏は話す。「そして彼らは,そこに到達するまでの部分を拡張し,間違ったことに集中します。例えば,グラフィックスをとても美しくするとか,ストーリー全体の伝承を書き上げるとか……」
「そして,実際にプログラムを組むときになって,『ああ,これはうまくいかない』と気づきます。率直に言って,2日でテストできるような北極星を,半年から1年かけて追いかけているんです」
代わりに,楽しさと,どうすればそこに到達できるかに集中することを彼は勧める。
「大きな正方形に長方形をぶつけることを楽しくできますか。イエスなら,おそらくドラゴンのようなことができます。ノーなら,ドラゴンのようなことはできないので,それをどうするか考えましょう」
あるいは,あなたやあなたのゲームのためになっていない,時間を浪費する機能
何がうまくいき,何がうまくいかないかを確認する効果的な方法は,アイデアをプロトタイプ化することである。チームのスキルセットや快適さの範囲内にあるものと,そうでないものを特定するのに役立つだけでなく,反復して初期のコンセプトを確立するのにも役立つ。
「プロトタイピングで,ゲーム全体,またはゲームのアイデア全体を一度に作る必要はありません」とGowland氏は言う。「機能をプロトタイピングするようなものです。そして,その機能がうまくいかなければ,それを取り除くか,あなたが求めているものと似た結果をもたらす別のアプローチを考え,そのバージョンがよりうまくいくのかを確認しましょう」
Ismail氏も同意見で,機能には常に目的が必要だと強調する。
「開発が進めば進むほど,物事を修正するための費用は高くなります。そのため,『一方通行のドア(あるアイデアや機能にコミットしたら,もう戻ってこられないかもしれないという考え方)』は,機能においてとても重要です」
「確かに,土壇場で状況が変わることはあります。これはゲーム開発ですし,完璧なやり方があるように見せかけるつもりはありません。しかし,その時点でのトリアージは本当に重要です。でも,これについては別の『GI Sprint』で話しましょう」
あなたのアイデアが,時間とお金を費やす価値があるかどうか,何度も確認しよう
しかし,たとえあなたのアイデアが楽しくて,プレイヤーが喜ぶような目的に沿った機能を備えていたとしても,結局のところ,時間と資金を投資する価値のないプロジェクトを追いかけても意味がない。
「ゲームを作るには2〜3年かかります」とGawlowski氏は言い,Free Livesが外部ダウンロード数2万回の初期プロトタイプを放棄したのは,本格的な開発に踏み切るのに十分な,価格や時間効率が得られなかったからだと認めた。「だから,これが自分の人生を費やしてまで作りたいものなのかどうか,よく確かめたほうがいいです」
「Steamの上位10%のゲームは,Steamのすべてのお金を稼いでいます。残りの90%は儲かっておらず,閉鎖するか,かなりの額を失ったか,おそらく二度とゲームを作らないスタジオのものです。そのため,自分のアイデアが優れていることを確信しなければなりません。アイデアにあぐらをかき,このアイデアは上位10%のアイデアではないかもしれないと降参するのを拒んでいるような,無駄な時間はありません」
「そして,ある種の人々にとって,それがいかに不可能であるかということに驚くでしょう。不都合なことに,彼らは腰を落ち着けて『よし,次に進もう』と思う前に,このひどいアイデアで首に縄をかけるのです。人々は自分のコンセプトに固執します」
Gawlowski氏は,ビデオゲーム開発が,彼女がキャリアを始めた音楽業界に似ているという。とくに「より多くの子供たちが,プレイ可能なゲームを絶対に作れるソフトウェアを使うようになり,激しい競争心がうながされている」ところが。
「美しいゲームが参入し,うまくいく余地はまだあります」と彼女は語る。「『Call of Duty』のような何億ドルも稼ぐゲームではありませんが,自分の次のプロジェクトに資金を提供でき,自立できるようになり,今後数年間は確実にリリースできるようビジネスを管理し,さらに美しいゲームを作れるという,ゆるやかな成長曲線がまだあります」
Gowland氏はこう付け加える。「高価で大きいカゴにすべての卵を入れておくよりも,もっと小さな賭けをするほうが,物事に対するアプローチとしてはずっといいです」
彼は,Zeekerssの「Lethal Company」が,業界で起こっていることすべてにもかかわらず,大成功を収めたことを指摘する。
「成功したのは,ちょっと変わったことをやって,人々に新しいものを与え続けたからです」と彼は続ける。「しかし,それに『Call of Duty』や『アサシン クリード』のような予算はないですし,その必要もありません」
「人々に新しいものを提供し,クールで多くの人々を惹きつける何かをすることは,必ずしも200万ドルの予算を必要としません……。私個人としては,多くの開発者はそこに向かうべきだと思います。もっと小さなことに挑戦して,何がヒットするのか見てみましょう」
「前作の『Dungeon Golf』? あれを作るのに2〜3年費やしましたが,正直なところ,発売時には全然ダメでした。それで『よし,もう二度とできない』となったんです。あのやり方は,持続可能ではありません」
小規模なゲームを作り,ニッチを知ろう
現実的な期待値を設定することは,早く失敗するうえで非常に重要だ。
Ismail氏は,業界のベテランでさえ失敗と無縁ではないという事実を振り返る。例えば,AAAスタジオから独立して1人でやってみたものの,最初のハードルでつまずいたシニア開発者たちのように。
「みんな失敗しますが,とはいえ小さなものを作ることが,今のところ絶対に正しい答えです……。小規模なゲームというのは,プレイ時間が短いという意味ではありません」と彼は明確にする。「つまり,迅速に開発し,迅速にテストできる,分類しやすいゲームということです」
「今,多くのヒット作を見てみると,小ささと,エレガントなシステムが目につきます。その中心にあるのは,かなり短時間で試作できるものです。そして,それがうまくいってから,本当に良いもの,本当に面白いものになるまで,時間を費やし始めます」
「本当に複雑なことをやりたいのなら,自己資金に余裕があるか,パブリッシャに頼むかです。そうするのもいいでしょう。ハードルが高いので,その分野での競争はあまり激しくないです。しかし,平均的なインディーデベロッパにとっては,小規模なゲームが正解だと思います。早期アクセスや,ライブ開発などで自分が正しいことをいつでも把握できます。Itch.ioに載せるという戦略もいいです。人々がそれに反応すれば,すぐにフィードバックを得られますし,すぐに方向性が見えてきます」
Gowland氏は,ニッチを知ることの重要性を強調する。「だから最近,サバイバルゲームが爆発的にヒットしたんだと思います。ゲームプレイの核となる部分を持ち,そのあとにモンスターやパッシブ,アビリティなどの追加コンテンツがあります。しかし,その上に構築されているものは,非常にシステム的です。そして,あっという間に,200時間も費やせるゲームになります」
「小さなものを作っているなら,あるいは開発費が低いなら,開発費を回収するために『Call of Duty』のような規模のオーディエンスにアピールする必要はありません」
「あなたのサバイバルゲームが,農場で奇妙なカエルになるものだとしたら,2万人が夢中になれば十分かもしれません。Microsoftが,この冬に売らなければならない『Call of Duty』の本数よりも,ずっと達成可能です」
正しいことをしても,うまくいかない場合がある
しかし,今日ここで述べたアドバイスに最後まで従ったとしても,成功を保証するものは何もないということを肝に銘じておいてほしい。
実際,唯一の保証は最終的な失敗だ。その失敗をどう受け止め,そこからどう学ぶか,それが重要である。
「みんなの話を聞いて早く失敗することが,良いアイデアであるだけでなく,小さなスタジオを経営するときにこだわるべき唯一のアイデアであることが分かると思います」とGawlowski氏は話す。
しかし,すべてを正しく行ったとしても,成功が保証されることはない。
「私たちは決して確実性を買っているわけではありません。私たちは起業家であり,つまりリスクをとっているのです」とIsmail氏は締めくくった。
「Itch.ioでのゲームのテスト,パブリッシャの獲得,効率的なゲーム制作,迅速さ,プロトタイプ……最高のプロセスのすべてが揃っていても,成功に犠牲はつきものです。どんなやり方であれ,ゲームを慎重に開発し,うまく作り,拡張性を持たせ,モジュール化しましょう。私はチームに言います。あなたが買っているのは点であり,コインであると。旅の最後にはコインを投げられます。そして,10枚,15枚,20枚以上のコインのうち,表が出れば,十分に儲かるかもしれません。つまり,あなたが正しい決断を下したとしても,成功を買っているのではなく,コインの裏表に賭けているのです。そして最後に,コインを投げましょう」
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)