「転職したらコミュニティマネージャーだった件」第2回:コミュニティをやるのに,予算がいるかい?


 前回,「今はコミュニティ施策をしている場合ではない」タイトルこそコミュニティ施策をやろう,とお伝えしました。

 しかし……
 前回の記事を読んでくださった方の中には,こう思った方もいるのではないでしょうか。

 「3か月から半年で一定の成果を出す取り組みが可能なら,コミュニティ施策をやってみたいな……,でも予算がないんだよなあ」


予算はどこに割いている?


 新規ユーザーを獲得するため,DAUを維持するために,広告を回さないゲームタイトルはほぼないでしょう。それはつまり「広告に割く予算はある」ことを意味します。

 確かにタイトル立ち上げ初期など,広告出稿が優先されるべきタイミングは存在します。コミュニティ施策の中でも,キャンペーンの拡散を促進するために広告を使うことはよくあります。

 ただ,立ち上げフェーズが終わりタイトルが長期化するにつれ,広告は効果が出づらくなってきます。広告が思うように効かなくなってからコミュニティ施策に注力しようとする企業様も多いですが,それでは遅いのです。なぜなら,ファンの運営に対する期待値を後から上げていくのは非常に難度が高いからです。

 タイトルを長く愛される存在にしようと思うならば,いずれ重要度が上がることが目に見えているコミュニティ施策は最初からやるべきです。最初からやっていれば効果が中長期的に出てくるので,広告が振るわなくなってきたときにも,コミュニティがタイトルを支えてくれる状態を作り出せるのです。

50万円でそれなりのことができます!


 ぶっちゃけた話をしてしまうと,月に50万円の予算があると,コミュニティ施策としてはそれなりのことができます。Xの運用を100%引き受け,毎日投稿を作成し実行しキャンペーンも……といった完全お任せスタイルの運用支援は流石に難しいですが,最低限のコミュニティ施策を行う予算としては十分だと我々は考えています。

 広告で月額50万円を割り当てても,正直大した効果は出せません。でもコミュニティ施策であれば必要十分です。広告費を50万円削り,最低限の予算で薄くコミュニティ施策もやっておく,という選択肢は非常に有効性が高いでしょう。


やるべきことは千差万別


 では,月あたり50万円をコミュニティ施策に割いたとして,やるべきことは何なのか。それはタイトルによってまったく異なります。タイトルとコミュニティの相性は,同じジャンルや似たようなゲーム性であったとしても,タイトルごとに異なるからです。

 例えば,コミュニティ施策の効果が出やすいタイトルかどうか。ソロプレイしかないやりこみゲーや,コミュニティ的な要素がまったくないタイプのタイトルは,そもそもコミュニティ施策に向いていません。

 また,キャラクターを愛でるなど,愛着要素がないタイトルも効果が出づらいです。コミュニティ施策は,あくまでゲームタイトルを基盤に行うものなので,そもそも人と対話する楽しさがUXの中に盛り込まれているかどうかは重要なポイントです。

 コミュニティ施策の戦略や戦術を考える際は,タイトルの特徴やコミュニティとの相性,リリース済みの場合は既存コミュニティの様子を見て判断していくのがよいですね。

 そしてもうひとつ重要な点が,コミュニティ施策をどこまで社内で考え,動かしていくことができるかという点です。ファンにとっては,愛するタイトルを開発した人達から出てくる言葉に勝るものはありません。最初は私達のような支援会社が完全にサポートする形でスタートしたとしても,内製するとしたらどうすべきかを常に意識しておきましょう。私達もご支援する場合は,内製につなげるためのノウハウ提供を積極的に行っています。

 では,コミュニティやSNSと向き合う担当者はどんな人が適任なのか。ここはまた別の記事でお話しましょう。


 また,6月5日に渋谷ベルサールファーストで開催される,ゲーム業界のマーケティングやプロデュースに特化した大型リアルカンファレンス「GAME FUTURE SUMMIT 2024」で,セッション「敏腕コミュニティマネージャーが語る,タイトルが長く愛されるためのコミュニティとの向き合い方」を実施します。


 エイリムの宣伝担当“かおりんご”こと原田 香さん,「逆転オセロニア」のコミュニティーマネージャーを務めるディー・エヌ・エーの小倉菜七さん,ゲームのユーザーコミュニティを牽引するコミュニティリーダー・コットン太郎さんの3名をお迎えしてのセッションです。NAVICUSからは,シニアコミュニティマネージャーの窪が登壇いたします。ゲームコミュニティについてご興味のある方は,ぜひいらしてください!

 ではまた次回,お会いしましょう。感想やテーマのリクエストなどもぜひお気軽にお寄せください。

「GAME FUTURE SUMMIT 2024」特設サイト


武内 一矢 株式会社NAVICUS 代表取締役。 X(旧Twitter)
2018年に株式会社NAVICUSを設立し,事業会社に近い目線で数々の企業・団体のSNS支援に携わってきたコミュニティマネジメントのスペシャリスト。株式会社ディー・エヌ・エーではソーシャルメディアチームを立ち上げ,SNSを起点としたプロモーション戦略の立案・実行を担った。最近「ブロスタ」で挑もうとする社員も出てきたので,正直仕事をしている場合じゃないと思っている。

ゲームチーム・ドゥメンバーX(旧Twitter)アカウント
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※次回の更新は2024年6月24日を予定しています

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