【ACADEMY】ゲーム業界で有能な人材マネージャーになるには
人材の管理と指導は,健全なスタジオにとって必要不可欠なものだ。それは,人々が仕事を楽しみ,必要なサポートを受けることにつながり,開発チームの存続を左右する。
また,それは非常にやりがいのある複雑な役割でもある。あなたは,もはやゲームに可能な限り最高の働きを提供することだけを目指すのではなく,誰もが効果的に仕事をこなせるよう,ほかの人やチーム全体にとって健全な環境を維持しなければならない。
本当にマネージャーになりたいのか?
これは,その職務を考えている人なら誰もが自問すべき最初の質問だ。答えは意外なものである可能性が高いので,次のステップに進む前に必ずすべてを検討してほしい。
マネジメントは,あなたのキャリアにおいてまったく異なる分野であり,まったく新しいスキルと課題を伴う。上手になるには,時間,経験,幅広いトレーニングと勉強が必要だ。
実作業をする時間は減り,場合によってはまったくできなくなる。開発者の中には,このことをなかなか受け入れられず,より多くの時間を割くことで両方の責任を両立させようとする人もいる。これは日常的に,両者において劣悪な結果をもたらす。
その代わり,自分の期待や責任を自分にも同僚にも明確にしておき,自分が引き受けられなくなったものを引き継ぐべきである。
昇進や昇給の唯一の方法だからではなく,他人をサポートし,引き上げることが好きな人がマネージャーになるべきだ。ゲーム業界には,キャリアの後半で管理職になることを押し付ける傾向があり,あたかも一定の年功序列レベルに達したあとの自然なステップのようになっている。
長い間,上級開発者をやってきて天井に達したと感じ,キャリアを向上させるための唯一の道として管理職に就く人もいる。これは間違っているし,逆効果となる。
優れた開発者が必ずしも有能なマネージャーになれるとは限らないし,その逆もまた然りだ。この業界は人々を好きな仕事から遠ざけ,ほとんど興味のない仕事へと追いやっている。これは,経験の浅い,あるいはやる気のないマネージャーによって,管理される側の人々にも不利益がある。
このような状況を緩和するために,業界は代わりとなるような,経験を反映したキャリアパスと,昇進を提供する必要がある。すでに,テクニカルリードや主任(スタッフとも呼ばれる)の役割を設置している企業もあるが,さらなる努力が求められる。
マネージャーになるということ
マネージャーとして成功するための第一歩は,その役割の内容を実際に理解することだ。
これは見かけほど明確ではなく,経験の浅い人は誤解しやすい。とくにスタジオでは,マネージャーとは何か,マネージャーの責任とは何かについて,異なる解釈がされていることが多い。
マネージャーとしてのあなたの目標は,部下が活躍し,目標を達成し,成長するために最高の環境を提供することだ。あなたは,部下の仕事上の幸福,キャリアアップ,業績,そして悩みをケアすることになる。これらのうち一部だけを選ぶことはできず,効果的に役割を果たすためには,あらゆる分野をカバーする必要があるのだ。
このことが組織に与える影響は計り知れない。優れたマネージャーは,チームメンバーが幸せで,効果的に協力し合い,フィードバックや懸念事項を遠慮なく共有し,仕事をやり遂げるような環境に導ける。逆に,マネージャーの不在や不注意は,チームの士気やモチベーションに強い悪影響を及ぼし,職場の機能不全,納期の遅れ,離職率の高さにつながる。
こうした影響力のある役割であるため,マネージャーとしては部下を持ちすぎないようにし,一人ひとりに適切な注意を払えるようにする必要がある。ゲーム業界でよくあるように,管理だけでなく実作業を伴う仕事ならなおさらだ。
適切な部下の数は,あなたの役割や責任によって異なる。私自身は5人が人間関係を把握しやすく,各人に必要な時間を割くことが可能な,管理しやすい人数だと感じている。
部下を指導する
人はそれぞれ異なるので,マネージャーとしてのあなたの役割やアプローチを合わせる必要がある。時が経てば,あなたとあなたの部下に合った管理スタイルが見つかるだろう。
重要なポイントのひとつは,管理するすべての人に包括的なテーマが必要だということである。大学を卒業して入社したばかりのエンジニアは,チームのシニアメンバーとは全く異なるニーズを持っているはずだ。それに応じて,コーチングやメンタリングの取り組みを調整しよう。
同じように,管理する関係全体を通して,継続性のあるラインを保つようにしよう。あなたが管理している人物は昇進の可能性があるのか。別の分野に進むことに興味があるのか。新しいエキサイティングなプロジェクトのリーダー候補で,そのための指導が必要なのか。彼らのニーズと目標を理解し,目標達成のためにどのようなサポートができるかを考えよう。
昇進や昇給の唯一の方法だからではなく,他人をサポートし,引き上げることが好きな人がマネージャーになるべきだ
話し合った内容は必ず記録し,必要なときはいつでもタイムリーにフォローアップすること。前回のミーティングで何を話し合ったかをほとんど覚えていない上司は,士気の低下につながりかねない。しかし,あなたの仕事は,彼らが遭遇するかもしれないすべての問題に解決策を提供することではないことを心に留めておこう。とくに大きな組織では,あなたの手が届く範囲は限られており,解決策がほかの人や部署に依存することもある。このため,透明性のある直接的な方法で,部下との期待関係を適切に管理するようにしよう。
同様に,すべてを知らなくても構わない。すぐに答えられない質問も多いだろうし,その場で何かを考え出そうとすると,信頼されなかったり,不誠実だと感じられたりするだろう。「分からないけれど,調べて返事します」と言ってもいいのだ。
効果的な1対1を持つ
1対1のミーティングは,部下との関係を築くうえで欠かせない。それは,部下の心に起こっていることの話し合いに全面的に取り組み,フィードバックや最新情報を共有し,彼らの懸念に耳を傾ける時間となる。
効果的な1対1を行うための第一歩は,適切な周期を見つけることだ。忘れてしまわない程度の頻度である必要があるが,話すことがあまりないような頻度であってはならない。これは各人の好みやニーズによって異なるので,明確なルールはない。私の経験では,2〜3週間に1回がちょうどいいと感じている。
時間が来たら,ミーティングに全神経を注ごう。上司が実際にその場にいないように感じたり,あなたの発言に注意を払わなかったり,上司の側からの洞察を提供しなかったりするほど最悪なことはない。会議中にSlackをチェックしたり,メッセージに返信したり,コードを見たりしていると,周囲はそれに気づくだろう。
アクティブリスニングを実践し,より深く理解し,トピックを掘り下げることを目指し,必要に応じてサポートを提供する。相手に考える時間を与え,質問したり,フィードバックを共有したりし,ある意味1対1を相手にリードさせよう。あなたがそこにいるのは彼らをサポートするためであって,コントロールするためではないと忘れないように。
フィードバックはタイムリーであるべきだということを忘れてはならない。言及すべきことがあるなら,次の1対1まで2週間待つのではなく,それに対処しよう。スケジュールは,オープンで活発なコミュニケーションチャンネルを保つためのものであって,コミュニケーションやフィードバックの流れを実際に制限するための制約ではない。
最後に,あなたの仕事は1対1だけで終わるものではないことを,心に留めておいてほしい。数週間ごとに30分から60分,部下を管理しても,その関係から価値あるものは得られない。必要なときに,いつでも部下のために時間を割けるようにしよう。
こまめにフィードバックを交換する
フィードバックは,私たち全員に,何がうまくいっているのか,何を変える必要があるのかを理解させる主要なメカニズムだ。マネージャーとして,あなたは頻繁にフィードバックを交換し,ほかの人にも同じことを奨励すべきである。
フィードバックは明確で,実行可能で,具体性を持つことが求められる。具体的な出来事や行動,仕事の一部と関連付けられないような一般的なフィードバックは役に立たない。その代わりに,具体的な例を挙げ,起こった行動や出来事,観察したそれらの行動の影響や結果を説明しよう。
最後に,早合点して結論を出すのではなく,相手が自分の言い分を説明できるような余地を残し,相手の性格や人柄ではなく,仕事や行動についての観察を共有することを目的として,客観的な表現に努めよう。
このガイドラインに従ったフィードバックの良い例として,次のようなものがある。
「チームミーティングでは,この機能のゲームデザインドキュメントについて,最終決定を下すことを目指しました。現在の草案には,収集品やアップグレードのリスト,今回の決定に不可欠だったコントロールスキーム案など,多くの欠落があります。このため,最終的な作業ができず,リリースを延期せざるを得なくなりました。草案が最新でなかった理由について,背景を教えていただけますか?」
建設的なフィードバックがサプライズとなることは,ほとんどないはずだ。私が見た最悪のシナリオのひとつは,部下が自分は良い仕事をしていると信じていたのに,人事考課のときに上司が自分の結果に満足していないことを知るというものだ。
そうなった場合,それを防ぐために必要なサポートを提供しなかったマネージャーに大きな責任があると私は主張する。管理関係が機能していれば,早期にフィードバックを共有し,軌道修正を図る機会は十分にあるはずだ。
最後に,肯定的フィードバックは,建設的フィードバックと同じくらい重要である。この種のフィードバックが無視されることが多いのは,マネージャーが,部下は自分自身のしていることを,よく分かっていると思いこんでいるからだ。あなたの部下は,その素晴らしい仕事ぶりを評価され,褒められる必要がある。
ほかのマネージャーと経験を共有する
マネージャーになることは苦労を伴い,この仕事を始めて最初の数か月はなおさらだ。自分が部下に良い影響を与えているのか,部下は自分のマンツーマンが役に立っているのか,部下は自分が提供しようとしている人間関係やサポートに価値を感じているのかなど,仕事に二の足を踏んでしまうことも多いだろう。
自分の役割や影響を,より良く理解するための重要な方法のひとつは,組織内のほかのマネージャーと話をすることだ。比較的小さな会社でない限り,あなたと同じような経験を持った人がいるかもしれない。
自分の経験を話すことは,疑問を解消し,異なる視点を持ち,マネージャーとしてのアプローチを改善することに非常に役立つ。
Attilio Carotenuto氏は,14年以上のリーダーシップと技術経験を持つゲーム開発のエキスパートであり,何百万人もの人に毎日プレイされ,受賞歴のあるタイトルを生み出している。彼は,Unity,Yager,King,EA Playfishなどの大手企業に勤務していた。
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