iOS版バイオハザード ヴィレッジが示すAAAモバイルゲーム開発の未来
カプコンのプロデューサーが家庭用ゲーム機とモバイル開発のギャップを埋めるための洞察を語ってくれた。
iPad Proでバイオハザード ヴィレッジをプレイすると,カプコンのメインライン最新作がモバイルデバイス上でネイティブに動作し,家庭用ゲーム機と遜色ない出来栄えであるという事実に驚かされる。
本作の携帯ゲーム機への最新移植事例はNintendo Switchのもので,それがクラウド版だったことを考えると,まるで錬金術のように感じられる。Logitech G CloudやRazer Edgeのようなクラウド専用デバイスの台頭,さらにXbox Game Pass UltimateやGeForce Nowのようなクラウドゲームサービスを考慮すると,最先端のタイトルをポータブルで体験する現実的な方法はストリーミングのみという風潮になっていたのだ。
しかし,Appleが昨年リリースした第6世代iPad Proや直近のiPhone 15 Proを含む最新デバイスに強力なM2チップを搭載したことは,モバイルゲームデベロッパがついにハイエンド家庭用ゲーム機のパワーを手に入れたことを意味する。
とはいえ,バイオハザード ヴィレッジをiOSにスムーズに移植できたことには,いくつかの特殊な事情があった。すなわち,カプコンは昨年,M2チップ搭載機と互換性のあるMacOSにすでにゲームを移植していたのだ。
つまり,AAAゲームの移植を実現するためには,AppleのM2チップのパワーが必要だったということだ, 同じ時期に新しくリリースされたiPhone 15やAndroidの競合機種など,M2チップを搭載していないデバイス向けにそのため,Villageの移植が検討されなかったのはそれが理由である(※第3世代M1チップ搭載機種など,iPad向けの移植はされている)。
さらに重要なのは,ヴィレッジを社内で移植したカプコンの開発チームが,昨年MacOSにゲームを移植していたことで,iOSへの移植に先手を打てたことだ。
「我々は,すでに昨年,社内のRE EngineをアップデートしてMacOSでの開発をサポートするという準備段階を踏んでいました。その下地がありましたので,今年,その作業をiOSにも継続するのは比較的簡単な手順だったのです」と川田氏は続ける。「プラットフォームには一定の共通点があります。これは,一度着手しておけば,次のプラットフォームでも役立つという意味でもあります」
また,これはカプコン社内のRE Engineで作業することも大いに影響していることは間違いないと付け加えた。RE Engineは,2017年のバイオハザード7でデビューして以来,同社のタイトルで最も汎用性の高いエンジンの1つとしてすでに称賛を集めており,M2チップを搭載したiOS向けの開発は,画面サイズなど細かな配慮はあるものの,現行ゲーム機向けの開発とほとんど変わらないものになっていると感じている。
難点があるとすれば,ヴィレッジを他の家庭用ゲーム機タイトルと同じようにiOSに移植してしまったことで,タッチ,スワイプ,モーションコントロールといったモバイルならではの機能に最適化されていないことだろうか。我々のハンズオンではDualSenseコントローラを使ったが,他の操作スキームはスクリーンに重なるかなり不便なバーチャルタッチコントローラだけだった。
「ゲームには,画面上の各ボタンの位置だけでなく,互いの相対的なサイズも調整できるオプションが含まれています」と川田氏は補足する。「デフォルトではオーソドックスなスタイルにしていますが,プレイヤー自身がオプションを変更することで,よりモバイル向けにカスタマイズされた体験をできます」
iOS版ヴィレッジはMacOS版とは別に販売されているが,バイオハザード4のフューチャーポートはユニバーサル購入が保証されているため,ユーザーは複数のApple M2搭載ハードでプレイする場合でも一度だけゲームを購入するだけでよい。そして,たとえばバイオハザード9が登場する頃には,iOSが他の現行プラットフォームの1つとなり,当たり前のように新作ゲームが同時発売されるようになる可能性はないだろうか。
もちろん,これまで家庭用ゲーム機とポータブル機がそうであったように,PCや家庭用ゲーム機の次世代ハードがM2の能力より大幅に優れたものになれば,後者が同等性を追い求めるようになったとしても不思議ではない。とはいえ,神田 剛プロデューサーはこの未来に楽観的だ。
「とくに,スマートフォンやタブレット端末のモバイルハードウェアのアップグレードサイクルが年々良くなっていることを考えると,将来的には間違いなく実現可能だと思います」と氏は語る。「マルチプラットフォーム戦略の一環として,既存の現世代ゲーム機と並行して,これらのデバイスをターゲットにできるようになるかもしれません」
川田氏は,もう少し控えめな回答で話を締めくくった。「現時点では,過去に他のプラットフォームでリリースしたものをベースに考えています。ですから,今後のタイトルについて,同時発売などを約束する準備はできていません」と氏は説明する。
「このプロセスでは,我々にとって未知の部分が多かったので,懸案のAppleデバイスにそれらを持ち込んだのです。そして,それに対するフィードバックを得て,次にこのようなことをするときにどのように改善するかを考えたいと思います。こういったことを繰り返すたびにどんどん改良していきたいのです」
iPad Proでバイオハザード ヴィレッジをプレイすると,カプコンのメインライン最新作がモバイルデバイス上でネイティブに動作し,家庭用ゲーム機と遜色ない出来栄えであるという事実に驚かされる。
しかし,Appleが昨年リリースした第6世代iPad Proや直近のiPhone 15 Proを含む最新デバイスに強力なM2チップを搭載したことは,モバイルゲームデベロッパがついにハイエンド家庭用ゲーム機のパワーを手に入れたことを意味する。
とはいえ,バイオハザード ヴィレッジをiOSにスムーズに移植できたことには,いくつかの特殊な事情があった。すなわち,カプコンは昨年,M2チップ搭載機と互換性のあるMacOSにすでにゲームを移植していたのだ。
現行ゲーム機と並んで(モバイルを)ターゲットにできるところまで到達できるかもしれません -神田 剛氏,カプコン
「バイオハザードヴィレッジのプロデューサーの1人である川田将央氏は,GamesIndustry.bizの取材に対して,「Appleとは,この最新ハードウェア(iPhone 15 Pro)が発売される以前からの関係がありました」と語ってくれた。「そして,我々は新しいM2チップの登場は,世界中のより多くのプレイヤーにバイオハザードを提供する絶好のチャンスだと考えていたのです。M2がこれほどまでにパワフルで,今回の移植を実現させてくれたことにも非常に満足しています」つまり,AAAゲームの移植を実現するためには,AppleのM2チップのパワーが必要だったということだ, 同じ時期に新しくリリースされたiPhone 15やAndroidの競合機種など,M2チップを搭載していないデバイス向けにそのため,Villageの移植が検討されなかったのはそれが理由である(※第3世代M1チップ搭載機種など,iPad向けの移植はされている)。
さらに重要なのは,ヴィレッジを社内で移植したカプコンの開発チームが,昨年MacOSにゲームを移植していたことで,iOSへの移植に先手を打てたことだ。
「我々は,すでに昨年,社内のRE EngineをアップデートしてMacOSでの開発をサポートするという準備段階を踏んでいました。その下地がありましたので,今年,その作業をiOSにも継続するのは比較的簡単な手順だったのです」と川田氏は続ける。「プラットフォームには一定の共通点があります。これは,一度着手しておけば,次のプラットフォームでも役立つという意味でもあります」
また,これはカプコン社内のRE Engineで作業することも大いに影響していることは間違いないと付け加えた。RE Engineは,2017年のバイオハザード7でデビューして以来,同社のタイトルで最も汎用性の高いエンジンの1つとしてすでに称賛を集めており,M2チップを搭載したiOS向けの開発は,画面サイズなど細かな配慮はあるものの,現行ゲーム機向けの開発とほとんど変わらないものになっていると感じている。
難点があるとすれば,ヴィレッジを他の家庭用ゲーム機タイトルと同じようにiOSに移植してしまったことで,タッチ,スワイプ,モーションコントロールといったモバイルならではの機能に最適化されていないことだろうか。我々のハンズオンではDualSenseコントローラを使ったが,他の操作スキームはスクリーンに重なるかなり不便なバーチャルタッチコントローラだけだった。
「ゲームには,画面上の各ボタンの位置だけでなく,互いの相対的なサイズも調整できるオプションが含まれています」と川田氏は補足する。「デフォルトではオーソドックスなスタイルにしていますが,プレイヤー自身がオプションを変更することで,よりモバイル向けにカスタマイズされた体験をできます」
新しいM2チップは,バイオハザードを世界中のより多くのプレイヤーに届ける絶好のチャンスだと考えています -川田将央氏,カプコン
いずれにせよ,10年以上前の初代バイオハザード4の悪名高きモバイル版から,状況は大きく進歩している。さらに,Mortal Kombat 1のような大作タイトルのSwitch移植が危ういという論争が続いている中では,iOS版ヴィレッジが現行家庭用ゲーム機版と同等であることは目を見張るものがある。iOS版ヴィレッジはMacOS版とは別に販売されているが,バイオハザード4のフューチャーポートはユニバーサル購入が保証されているため,ユーザーは複数のApple M2搭載ハードでプレイする場合でも一度だけゲームを購入するだけでよい。そして,たとえばバイオハザード9が登場する頃には,iOSが他の現行プラットフォームの1つとなり,当たり前のように新作ゲームが同時発売されるようになる可能性はないだろうか。
もちろん,これまで家庭用ゲーム機とポータブル機がそうであったように,PCや家庭用ゲーム機の次世代ハードがM2の能力より大幅に優れたものになれば,後者が同等性を追い求めるようになったとしても不思議ではない。とはいえ,神田 剛プロデューサーはこの未来に楽観的だ。
「とくに,スマートフォンやタブレット端末のモバイルハードウェアのアップグレードサイクルが年々良くなっていることを考えると,将来的には間違いなく実現可能だと思います」と氏は語る。「マルチプラットフォーム戦略の一環として,既存の現世代ゲーム機と並行して,これらのデバイスをターゲットにできるようになるかもしれません」
川田氏は,もう少し控えめな回答で話を締めくくった。「現時点では,過去に他のプラットフォームでリリースしたものをベースに考えています。ですから,今後のタイトルについて,同時発売などを約束する準備はできていません」と氏は説明する。
「このプロセスでは,我々にとって未知の部分が多かったので,懸案のAppleデバイスにそれらを持ち込んだのです。そして,それに対するフィードバックを得て,次にこのようなことをするときにどのように改善するかを考えたいと思います。こういったことを繰り返すたびにどんどん改良していきたいのです」
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)