Unity,開発者からの反発を受けて新料金プランを明らかに

ゲームエンジン提供会社は,体験版やチャリティーバンドルは対象外であり,インストール料金を請求される開発者は全体の10%に過ぎないと見積もっている

Unity,開発者からの反発を受けて新料金プランを明らかに


概要


  • Unityによると,別のデバイスにゲームをインストールしないなら,料金が必要となるのは最初のインストールのみ
  • 体験版はほとんど免除され,開発者はそれがチャリティ用のゲームならUnityに通知できる
  • インストール料金は配給会社に適用されるため,サブスクリプションサービスにゲームを持つ開発者は対象とならない

 Unityは,昨日(現地時間9月12日)の発表が開発者の怒りを買ったことを受け,ゲームのインストールごとに開発者に課金する計画の詳細を発表した。

 2024年1月1日から,同社はUnity PersonalまたはPlusを使用している開発者に対し,ゲームの年間収益が20万ドル,かつ累計インストール数が20万回を超えると,インストールごとに最大0.2ドルを徴収する。

 Unity ProとUnity Enterpriseのアカウントには,年間収益100万ドルと累計100万インストールのしきい値を超えた後にのみ,より低い料金(200万回を超えた分はインストールごとに0.01ドル)が課金される。

 この発表はソーシャルメディア上で炎上し,開発者はこれがGame Passへの登録,体験版のリリース,チャリティバンドルへの同梱などに影響を与えることを懸念している。

 もう一つの懸念として,ユーザーがゲームを削除して再インストールする度に開発者に課金されることで,怒ったプレイヤーがゲームの削除と再インストールを繰り返し,「インストール爆撃」によってスタジオの課金額を増やす可能性さえも指摘されている。

 Unityのクリエイトサービス担当シニアバイスプレジデントであるMarc Whitten氏は,Axiosの取材に対し,料金が発生するのは最初のインストールのみだと断言した。

 ただし,PCにゲームをインストールした後にSteam Deckでダウンロードするなど,2台目のデバイスにゲームをインストールする場合は追加料金が発生する。

「私たちは耳を傾けており,できる限り最高のものを提供し続けるでしょう」
UnityのMarc Whitten氏

 Whitten氏は,体験版のインストールには課金されないが,それがダウンロードの一部であり,ゲーム本編を含んでいる場合(例えば早期アクセスタイトルなど)は別だと付け加えた。

 Unityは,チャリティバンドルに含まれるゲームや,チャリティの資金集めとして販売されるゲームを,開発者が同社に通知する方法を提供予定であり,その場合も料金は免除される。

 また,Game Passやそのほかのサブスクリプションサービスにタイトルを提供するスタジオの場合は,Microsoftなどの配給会社に料金を請求することが確約された。

 Whitten氏は,インストール料金が適用される条件としてしきい値があるので,Unity開発者の10%のみが請求対象になりそうだと主張している。

 「私たちの核心的なポイントは,素晴らしいゲームを作るための最高のツールを提供するという基本的な使命に投資し続けられるように,適切な価値交換を行うことです」と彼はAxiosに語った。

 「ある日突然,怒りに満ちたフィードバックが大量に届くのは楽しいことではありません。そして私たちは,これらのポイントのいくつかを明確にする必要があるのだと思います。しかし,私たちは耳を傾けており,できる限り最高のものを提供し続けるでしょう」

 今回の明確化は,ソーシャルメディア上での開発者からの反発を受けたもので,多くの開発者がUnityをやめてライバルエンジンに乗り換えると脅している。

 釈明に先立ち,「Another Crab's Treasure」の開発会社Aggro CrabはX(旧Twitter)に声明を投稿し,ゲームエンジン提供会社にインストール料金の計画を撤回するようにうながした。

 同様に,「Among Us」のスタジオInnerslothもこの動きを非難し,人気のマルチプレイヤーゲームを別のエンジンに移植するために,新しいコンテンツや機能を延期しなければならないと述べ,次のように付け加えた。「多くの開発者は同じことをする時間も手段もないでしょう」

 「The Fall」の個人開発者であるOver The Moon Gamesは,Epic Games Storeでゲームを無料公開して,700万インストールを達成しており,Unityの料金では「Epicが私に支払った額の3倍を支払うことになる」と述べている。

 「スナフキン:ムーミン谷のメロディ」の開発会社Hyper GamesでCEOを務めるAre Sundnes氏は,同スタジオがUnityのライセンスやそのほかのサービスにすでに10万ドル以上を支払い,今後さらに多くのゲームを開発できるよう投資していると語る。

「『インストール』はコントロールも制限もできず,コピーライセンスの供与は,販売であろうとなかろうと,永続的な金銭的リスクを生むことを意味します」
Rami Ismail氏

 「10年以上Unityにこだわってきた私たちにとっては,背中を刺されたような気分で,今後のゲームにUnityを使うことを真剣に考え直すことになるだろう」と彼は投稿した。

 Axiosの報道後にも,著名なインディー開発者Rami Ismail氏は,Unityがインストール料金の対象外となるゲームを区別する方法について疑問を呈し,Unityの開発者がサブスクリプションサービスへと自分のゲームを登録することに,依然として警戒心を抱いていることを示唆した。

 「Unityは,すでに販売された製品に対して,条件を遡及的に変更すべきではありません」と彼はスレッドに書き込み,別の返信では,この料金は2024年まで発効しないが,それでも近年発売されたゲームに影響を与えることになると強調した。

 「彼らがこのような動きを見せるということは,その意志があることを示しており,それは恐ろしいことです」

 「Unityは,開発者やそのパートナー(パブリッシャや配給会社を含む)に対して,収益を得られないものや,コントロールの及ばないものに対して課金すべきではありません。『インストール』はコントロールも制限もできず,コピーライセンスの供与は,販売であろうとなかろうと,永続的な金銭的リスクを生むことを意味します」とIsmail氏は補足する。

 「結局のところ,信用ということになります。実質的に多くの開発者がこれによって破産するとは思いませんが,開発者がその成功によって何らかの金銭的損害を受けるようなシステムは,持続可能な未来を築こうとするビジネスにとって容認されるべきではありません」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら