【ACADEMY】ユーザー獲得における5つの致命的な罠

Phoenix GamesのJustin Stolzenberg氏が,モバイルゲームの収益性向上に悩むスタジオに,サバイバルガイドを提供する

【ACADEMY】ユーザー獲得における5つの致命的な罠

 独立系ゲームスタジオは,しばしば綱渡りをする。一方ではユニークなゲーム体験を創造するスリルを感じ,他方では財政破綻の崖っぷちに立たされる。このリスキーなベンチャーにおける命綱は? そう,ユーザー獲得だ。

 正しく飼いならせば,これはゲームの人気上昇に拍車をかける獣だ。しかし,管理を誤れば,リソースを飲み込み,スタジオを屈服させる強欲なモンスターとなる。

 私は毎年,約50の独立系ゲームスタジオをレビューしている。この記事では,私がユーザー獲得の世界で観察してきた,無防備なスタジオを陥れる5つの致命的な罠を明らかにし,この危険な地形をナビゲートする現実的で,実戦的な戦略を提案する。

 一切の手加減をするつもりはない。これは,収益がそこそこのゲームを持ち,基本的なユーザー獲得の運営もしているが,ゲームの収益性をレベルアップさせることに奮闘するスタジオのためのサバイバルガイドだ。


1. 見えないプレイヤー:iOSのアトリビューション(貢献度の測定)不足


 多くのスタジオは,AppleがApp Tracking Transparency(ATT)を導入した後,iOSのユーザー獲得における貢献度を測定することは完全に不可能となり,広告の費用対効果(ROAS)は,すべてのiOS収益を費用と比較することでしか測定できないと思っている。それは誤りで,非常に限られたリソースでも,ユーザー獲得のパフォーマンスをある程度は可視化できる。

独立系ゲームスタジオにとってユーザー獲得の世界は戦場だ。しかし,あなたには罠を回避する能力が備わっている

 最初に,まだやっていないなら,ATTの同意ポップアップを実装しよう(Appsflyerによると,同意を求めるゲームは85%のみ)。これは無料で,ユーザーの20〜30%(同意した人)から直接アトリビューションが得られる。そして,これらの直接アトリビューションユーザーから追跡した収益をATTの同意率で割れば,コーホート(観察対象の集団)全体の価値が分かる。なお,私たちのゲームでは,価値あるプレイヤーの同意行動に体系的な偏りはなかった。

 第二に,基本的な収益トラッキングにはSKAdNetwork(SKAN)を使用しよう。SKANには多くの欠点もあるが,最もシンプルな形では,ユーザー登録後24時間以内の収益を捕捉するようにコンバージョン値を設定し,異常値をコントロールするための補正因子として,この値を最初のステップで計算したコーホートの合計値と比較できる。このステップでは,週ごとのコーホート集計をお勧めする。

 iOSのユーザー獲得は,以前よりはまだ難しいが,挑戦してみてほしい。その際は,すべてのオーガニックをユーザー獲得にカウントする「Blended ROAS」を使えと説得されないように。


2. お金を燃やす熱狂:予算を配分する欲望


 ユーザー獲得には資金を使う必要があるが,支出の決定はトップダウンではなくボトムアップで行われるべきだ。ゲームの純収入の30%をユーザー獲得に再投資したいからといって,そのゲームに有益な良い機会があるとは限らない。

 まずは,チャネル(経路)とプラットフォームの組み合わせごとに区別しよう。チャネル間の予算配分の一般的なアプローチは,パフォーマンスの低いところから,高そうなところへと予算を移すことだ。しかし,チャネルAから予算を引いても,チャネルBにその分の予算を投入する実際の機会があるとは限らない。チャネルBで獲得できるユーザーがわずかなら,現在チャネルAで獲得しているユーザーよりも少ないという可能性は十分にある。代わりに,各チャネルを個別に評価するのだ。

 次に,FacebookとGoogleを機能させよう。Facebookでキャンペーンが成果を上げ始めるための金額は数百ドル台前半で,Googleの場合は数千ドル台半ばだ。多数のチャネルに予算をばらまくのではなく,慎重に狙いを定める必要がある。

 とくに,(多くのネットワーク広告のように)互いに重複が大きく,多額の「学習予算」を先行して必要とするチャネルは避けよう。少なくともFacebookとGoogleを使い切るまでは。


3. 偽りの救世主:ユーザー獲得への非現実的な期待


 「もっと費やせばいい」というのは,ほとんど解決策にならない。あるゲームにおいて,少ないユーザー獲得費用でパフォーマンスが悪く見える場合,より高い費用では費用対効果が低下することがほとんどだ。素晴らしいユーザー獲得は,成功したゲームを増幅することができるが,(スタジオの利益から見て)低業績のゲームを好転させることはできない。


4. 羊の皮を被った狼:ネットワーク広告に組み込まれたコンバージョン測定への依存


 ネットワーク広告は狡猾だ。彼らはしばしば,すでにアクティブユーザーだと主張し,彼らが報告する広告の費用対効果を大幅に膨らませる。

 モバイルのユーザー獲得について真剣に考えるのであれば,アトリビューションコーホートと生のアトリビューションのどちらも出力できる優れたモバイル測定パートナー(MMP)に投資しよう。私たちのポートフォリオでは,AppsflyerとAdjustの両方を使用している。Appleでは過去,Googleでは将来のプライバシー変更によって,MMPによる貢献度の測定効果は減少したが,それでも私はMMPは絶対に必要だと考えている。


5. パペットマスター:サービスプロバイダの不確実性


 サービスプロパイダに対する知識やコントロールの不足は,スタジオを操り人形のように感じさせる。

「もっと費やせばいい」というのは,ほとんど解決策にならない。あるゲームにおいて,少ないユーザー獲得費用でパフォーマンスが悪く見える場合,より高い費用では費用対効果が低下することがほとんどだ

 糸を切るには,ユーザー獲得の指標を管理することが求められる。外部企業にオーガニック収益を主張させたり,「Blended ROAS」(全収益をUA費で割ったもの)のみを報告させたりしないことだ。彼らの予測を信じるな。それは,同じレベルの収益性で支出を倍増させる。

 いくら費やしたか,いくら純収益を達成できたかに話を集中させるのではなく,サービスプロパイダがあなたのために生み出した利益の絶対額(iOS上で推定される直接アトリビューション収益から対応する支出を差し引いたもの)を注視することをお勧めする。オーガニックの上昇効果(Kファクター)も存在するが,ほとんどの場合,時間の経過とともに現象する動的な値であり,比較的小さいことが多い。

 結局のところ,独立系ゲームスタジオにとってユーザー獲得の世界は戦場だ。しかし,これらの洞察を武器に,罠を避け,落とし穴を乗り越え,成功への道筋を描き,有益なユーザーを獲得できる。

 これは単に生き残るだけではなく,ゲームをマスターし,運命をコントロールし,競争の激しいモバイルゲームの世界で勝利するということだ。あなたならできる!


Justin Stolzenberg氏は2002年からゲーム業界に携わっており,主に基本プレイ無料ゲームのパフォーマンスマーケティングと収益化を担当してきた。現在はCPO兼共同設立者として,Phoenix Gamesのデータサイエンスおよびエンジニアリングチームと共に働いている。

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