【ACADEMY】ゲームにおける女性へのハラスメントを撲滅するために男性ができること
内容に関する警告: この記事には,ハラスメント,虐待,性的暴行に関する記述があります。
ここ数年,ゲーム業界では多くのハラスメントや虐待の事例が明らかになり,こうした行為への対処が求められている。それにもかかわらず,大きな事件が起こるたびに新たな報告がなされ,問題のシステム的な根源が浮き彫りにされ続けている。
こうした問題の根の多くは,今年初めに開催されたReboot Develop Blueの「WTF, it's 2023: Conversations we (still) need to have about being a woman in the games industry.」と題されたセッションで議論された。イベント後にGamesIndustry.bizがパネリストに接触したところ,彼らはこのハラスメントを未然に防ぐだけでなく,ターゲットにされている女性をよりよくサポートし保護するために,男性が行動を変えるべき多くの方法を提案してくれた。
彼らは何よりもまず,セクシャルハラスメントにはさまざまな形があることを,男性はなかなか認識しないことを強調した, (We Have Always Lived In The Forestの創設者兼ゲームディレクターであり,人類学者でもある)Chantal Ryan氏は,「自覚なき差別の多くは,自分が捕食されていることに気づいていない人たちによるものです」と指摘する。
もう1人の同乗者は,その男性に自分の言っていることをよく考えるように言うべきであり,Ryan氏がその繰り返される招かれざる賛辞に興味も喜びも感じていないことを認識すべきだった。しかし,彼の不作為はより深い問題を示唆している。
「(同僚の男性は)自分のすぐ隣でセクハラを受けている女性を認識できなかったのです」と氏は語る。「私は,多くの男性はその兆候を認識する方法を知らないと心から信じているので,私は彼を恨んでいません。なぜなら,彼らは我々と同じように物事に脅かされることがないからです」
BackerKitのゲームコンサルタントであるAnya Combs氏は,これを別の視点から見ている: 「多くの男性は,それを見たくない,認めたくないだけだと思います。この業界は男性が多いので,あなたの周りは男性ばかりです。もし私が男性だったら,『統計的に私の知っている人,親しい友人や知り合いが女性を傷つけたり,ハラスメントをした可能性がある』ということになります……。我々は,ときには苦痛を伴うので目の前にあるものを見たくないことがあります。それはそれで妥当なレベルではありますが,それを見過ごすための作業が必要だということでもあります」
自覚なき差別の多くは,自分が略奪的であることに気づいていない人々によるものです -Chantal Ryan氏,We Have Always Lived In The Forest
Andromeda EntertainmentのCOO,Ashley Blake氏も同意する: 「捕食者であることを自覚していない男性もいるのですが,実際に自覚している男性もおり,そのような目的で特別に会議に参加する男性もいます。略奪者は意図的です。痴漢は非常に意図的です。彼らは非常に弱い人々を狙います。社会から疎外された人々,クィア(同性愛者),有色人種,そういった人々が不釣り合いに被害を受けるのです」「『見たくない』と『隠す方法を知っている』という2つの組み合わせは非常に危険です。とくに,自分が何をしているのか分からず,ちょっと社交的でない人たちだけでなく,あからさまにそれを試みている人たちに関しては」
とくに男性は,こうした行動がどのようなものかを学び,それを見せないようにするだけでなく,そうする人を呼び止める「努力」が必要だとCombs氏は指摘する。
もし私がAshleyに「あなたのシャツ,かわいいわね」と言うのと,初対面の男性が「ねぇ,君のシャツいいね」と言うのとはまったく違う文脈になるのです」と氏は説明する。「あなたの意図が善良であれば,あなたが悪人になるわけではありません, しかし,時と場所をわきまえましょう。仕事の場での褒め言葉と,バーで女性を口説こうとするのとでは,文脈がまったく違うのです」
そのために,我々の会話は,どうすれば業界で女性をよりよくサポートできるかを男性にアドバイスすることに移った。
自分自身を教育する
セクハラのさまざまな形態について自分自身を教育することに関して,Ryan氏は,男性が女性のように「必ずしも仕事をするきっかけがなかった」ことを認めている。
「我々は,自分を守るために,成長する過程で仕事をしていました」と氏は説明する。「ほとんどの女の子は,10歳か12歳になるまでにセクハラを経験するでしょう。年上の男性にセクハラされた私の最も危険で怖い経験は,10歳から14歳の頃でした。我々が仕事をするのは,そうしなければならないからです。しかし男性たちは,セクハラがどのような行為なのか,ハラスメントがどのようなものなのかを知る必要はないのです」
「もし阻害されていないグループとしてそれを求めていないのであれば,もしくは,もしそれを学んでいないのであれば,それはアクセスできないだけであり,それを見つける努力をしなければなりません」
このような行動が女性にどのような影響を与えるかを知るためには,実際に女性と話し,彼女たちの経験についてもっと知ることが必要だ。しかし,それはすでに信頼関係を築いている相手であることが重要であり,そのような会話をすることに抵抗がない相手でなければならない,とパネルディスカッションでは強調されていた。
「パネルから誰かを見つけるだけではいけません」とBlake氏は語る。「これらの問題について話したいとか,もっと知りたいのですが,どのようなことならいいですか?」と切り出したのなら,その人が何をしたいのかを確認して,この仕事を手伝ってくれそうかどうかを彼女にコントロールさせてください」
また,Reboot Develop BlueでBlake氏, Combs氏,Ryan氏が参加したパネルや,GamesIndustry.bizにGina Jackson氏が寄稿した「なぜ男性は女性をターゲットにした毒性に対して声を上げる必要があるのか」(関連英文記事)に続く,Develop Brightonで最近行われた座談会などにも参加する価値がある。
有害な行動を訴える
Blake氏, Combs氏,Ryan氏は皆,男性に他の男性の行動を呼びかけることを奨励している; これは,無意識に,あるいは無自覚に有害な行動をとっている人たちを教育するのにも役立つという。
また,ターゲットにされている女性をサポートすることも勧めており
Combs氏はこう提案する:「変だと思うことを言われたら,(その女性を)脇に寄せて『大丈夫?』と聞いてください。もし彼女が大丈夫でないなら,その人が周りにいないことを確認するのを手伝ってください。慎重に対処が必要です」
Ryan氏も同意する:「そういうのは私の人生で数回しか起こったことがありませんが,私を完全に感動させてくれました ― とくに,私が何か不快なことがあるかどうかを確認するために男性に頼まれたときには」
(業界のリーダーたちは)どのイベントに参加するかにもっと気を配る必要があります。クラブや(飲み会の)イベントに行くのか?そのような文化からの脱却に貢献できるでしょうか? -Chantal Ryan氏, We Have Always Lived In The Forest
氏は,誰かに自分のことをチェックしてもらうことは有効だと付け加える: 「どう受け止めていいのか分からないこともあり,敏感になりすぎているのか,あるいは何かを本来解釈されるべきものよりも脅威的な方法で誤解しているのかも分かりません」男性もまた,女性がどのような状況でも目に見えて不快に感じている場合に気を配り,必要な場合には介入すべきである。
「誰かがあなたのところに来て,『私はクールじゃなかったのだけど,その理由は次のとおりです」と言ってきたら,彼らの話を聞いて,それを自分の中に取り入れてください」とCombs氏は語る。
「課題はソーシャルな合図を読むことで,誰もがそれができるわけではないことは分かっています。私は,ソーシャルな合図を読み取れない人を悪者扱いしたくはありません」
アルコールの影響
必然的に,アルコール飲料が使用されるネットワーキングイベントや業界パーティの話になった。
「アルコールがあれば,(自分の行動に)責任を持てないと思っている人もいるようです」とCombs氏は語る。「アルコールがあなたを捕食者に変えるわけではありまえん。ビールを飲んで誰かの尻をつかまないように努力してください。そんなに難しいことではありません」
氏はこう付け加える: 「このようなイベントでは,お酒を飲まなければならないという同調圧力がたくさんあります。男性陣がみんなそうしているのであれば,私がそのような行動を取ることを厭わない限り,私はその場にいることさえ許されないような気がします。そういう部屋には入りたくないと気づくまで,長い時間がかかりました」
「飲むようにプレッシャーをかけてはいけません」と氏は語る。「私はなぜ飲まないのかとよく聞かれます。私は言い訳ができますし,以前はアルコール依存症で,今は断酒していると気楽に言えますが,多くの女性はそうではなく,同調圧力は本当に大きいのです」
Ryan氏は,西洋文化はダンスや音楽など,かつては地域社会を1つにまとめていた社会的儀式のほとんどを本質的に根絶してしまったため,一緒に酒を飲むことが絆を深める残された機会のように感じられるのだと指摘する。
このことがプレッシャーとなり,女性がキャリアを変えるような重要な人脈を作ることができる "生きるか死ぬか "の人脈作りの機会を逃すことを恐れている。Ryan氏は,このような機会を与えてくれるような新しい社交の儀式を探すよう業界に勧めている。GamesIndustry.biz ACADEMYは以前,包括的な業界イベントを開催する方法を模索したことがある(関連英文記事)。
Ryan氏はまた,業界のリーダーたち,つまり権力を持つ人たちが,自分たちが果たすべき役割について考えるよう呼びかけている。
「どのイベントに参加するか,もっと気を配る必要があります」と氏は説明する。「彼らはクラブや(飲酒)イベントに出かけているのでしょうか? そのような文化から脱却し,自分たちが問題の一端を担っていることを認識する手助けができないでしょうか。もっと安全で,もっとつながりのあるイベントを開催することはできないでしょうか?
毒性を助長するアルコールの役割は,イベントだけに限ったことではないとCombs氏は指摘する: 「多くの会社,とくにアメリカでは,オフィスでアルコールが飲まれています。人々がそのようなことをしないように奨励してください。代替ソリューションを用意します。 なぜ職場でお酒を飲むのですか? 職場ですよ」
プロフェッショナルに徹する
パネルディスカッションでは,ネットワーキングイベントやカンファレンスは,社交の場での女性との出会いとはまったく異なるシナリオであり,そのように扱われるべきであると繰り返し述べられている。彼らは,仕事で旅行している間に親密な関係を始めたいという一般的なファンタジーを認めているものの,こうしたイベントに参加する人は皆,何よりもまず仕事上の立場で参加しているのだ。
仕事上のイベントでの出会いから本物の関係が始まる可能性はあるかもしれないが,それは女性が興味を持っている場合にのみ追求されるべきで,これはほとんどの人が明言しているものである。
女性があなたとセックスしたいと思っているかどうかを頻繁に探ろうとしているなら,それは赤信号です -Ashley Blake氏, Andromeda Entertainment
「女性があなたとセックスすることに興味があるかどうか,非常に頻繁に見極めようとしているなら,それは赤信号です」とBlake氏は語る。「とくに言葉にしていない場合は,捕食的な行動をしている可能性があります」「もしあなたが頻繁にそのような状況の主導権を握っていて,女性が最初にあなたに声をかけてこないのであれば,それは本当に大きな赤信号です。我々は社会として,男性は追いかける側でなければならないと教えられていましたが,そうではありません。女性はとても積極的で,自分のセクシュアリティをとても意識しています」
その場合,Blake氏は男性にこうアドバイスする: 「押し付けないでください……。女性が近づいてきて,『私の部屋でセックスしない?』と言わない限り,女性があなたをホテルの部屋に誘っても,セックスを望んでいると思わないでください」
職場での自覚なき差別や不均衡を避ける
ハラスメントの防止について話すとき,多くの焦点は出来事に向けられるが,職場で日常的に起こる自覚なき差別や無意識の偏見に対処することも同様に重要だとCombs氏は強調する。これについては,無意識のバイアスを特定し回避するためのACADEMYガイドを見てほしい(関連英文記事)。
「もしあなたが会議で部屋に座っているなら,女性がメモを取ると決めつけないでください」と氏は語る。「全員が順番に時間が重ならないようにメモを取るようにするのです。とても些細なことですが,私はそれが気になります。以前はいつもそうでした」
Blake氏は,彼女が働いたことのあるスタジオで気づいた赤信号として,女性を表現するのに "感情的 "や "警戒心が強い "といった形容詞が使われることを挙げた。同じような反応や行動を示す男性には,このような言葉は使われないのにだ。
アルコールがあなたを捕食者に変えるのではなく,あなたはすでに捕食者だったのです。ビールを飲んで誰かの尻をつかまないように努力してください。そんなに難しいことではありません -Anya Combs氏,BackerKit
Ryan氏はさらに,誰かの身体に関するいかなるコメントも望まれないものかもしれないと繰り返す。「それについてコメントする理由はありません。人の体のことは褒めません。私には関係ないことです。それは避けるのは簡単なことです」Blake氏は最後に,自分の周囲や所属するチームをもっと意識するよう促している。
「女性や社会から疎外された人たちが頻繁に解雇されていることに気づいたり,スタジオでそのような人たちの入れ替わりが激しかったら,要注意です」と氏は語る。「もし,あなたのスタジオが白人男性ばかりなら,それには理由があるはずです」
「もしあなたが,男性が不釣り合いに昇進し,女性が同じ仕事で考慮されないことに気づいたら,それは通常,何か深い問題があることを示しています。昇給もそうです。報酬について透明性を保つ文化は非常に重要です」
女性のための安全な空間
ほとんどの大手企業には,社内に女性を支援するグループがあり,社外にもそういった団体が増えている。これらの団体が女性に安全な空間を提供し続けることが不可欠だ。
「女性問題チャンネルや,社会から疎外された人たちの声や意見,彼女たちの経験を聞くことに特化したカルチャークラブを持つことは重要です」とBlake氏は語る。「もしそれが(会社で)行われていないのであれば,実現できるかもしれません。(女性が)話し合える場を設けるだけでいいのです」
Ryan氏はこう付け加える: 「女性グループでは,私はただの1人の人間です。自分のコミュニティに行けば,履歴書と実績を持って,自分らしくいられます。これはクィアコミュニティやさまざまな人種のコミュニティでも同じです」
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