Game Changers:Safe In Our WorldのRosie Taylor氏

我々はチャリティのコンテンツ&コミュニティマネージャーに,メンタルヘルス支援と,ヘルスケアからゲームへの経歴についての話を聞いた。

Game Changers:Safe In Our WorldのRosie Taylor氏

 GamesIndustry.biz Game Changersは,ゲーム業界をより良い場所にするために一歩先を行くグループや個人のプロフィールを紹介するシリーズだ。このインタビューでは,多様性,公平性,包括性,アクセシビリティ,メンタルヘルスなどに関する状況や態度の改善を支援する世界中の人々を取り上げている。

 ほかのGame Changersのインタビューはこちらで読むことができる。

 Rosie Taylor氏のゲーム業界の経歴は,ほとんど偶然に始まった。当時,彼女はパンデミック時にロンドンに設立されたナイチンゲール病院の傍らでチャリティ活動をしていたという。

 当時,Safe In Our World(ビデオゲームの活用に特化したメンタルヘルスの慈善団体)は設立から1年未満で,最初の正規雇用者を探していたところだった。

 「元評議員の1人と,私のお気に入りのゲームの1つであるThe Last of Us Part 2について話をしたことがあります」とTaylor氏はGamesIndustry.bizに語ってくれた。「そこで彼らがSafe In Our Worldの後援者でもあると聞いて,とても興味が湧いたのです。そして,ちょうどそのとき,彼らは最初の従業員を募集していたのでした」

私は,もっと包括的で,アルコールフリーで,もっと感覚に優しいイベントを探求したいと強く思っています

 「ここ数年,私は自分の脳について,さまざまなことを経験していました。不安から始まりや鬱や悲痛などです。パンデミックでも大変な思いをしました。その話を,自分が育ってきて絶対に好きなゲームと組み合わせるというのは,最高にクールなことだったのです」

 その結果,Taylor氏はSafe In Our Worldの最初のコンテンツおよびコミュニティマネージャーになった。

 この組織は,企業や個人と協力して,このトピックに関する会話を促進することで,業界内のメンタルヘルスに関する偏見をなくすために活動をしている。Taylor氏は,イベントのオーガナイザーでもあり,他の業界関係者とともに,彼女の出身地である英国北部で,より多くのネットワークとソーシャルの機会を作るために活動しているという。

 「私の仕事は,ゲームコミュニティがメンタルヘルスについてもっとオープンに話せるように,対話を促進するためのWebサイトを管理することです」とTaylor氏は説明する。

 「また,Safe In Our Worldというポッドキャストを運営していますが,これは業界内の他の人々の声やストーリーを増幅させることを目的としたものです。その目的は,我々が何をすべきか,業界内でどのような変化が必要なのかについて,人々と対話を始めることなのです」

Safe In Our WorldのWebサイトの更新やポッドキャストの運営に加え,Rosie Taylor氏は,このチャリティが設立された人々を支援するイベントも開催している
Game Changers:Safe In Our WorldのRosie Taylor氏

 医療業界からゲーム業界への転身は異例かもしれないが,生涯のゲームファンである彼女にとっては,納得のいくものだったようだ。

 「私は,ボランティアや,ある目的に対して本当に情熱的な人たちと一緒に働くことに慣れていますので,その点ではよく似ています」と氏は語る。「しかし,その背景や,なぜ人々がそれに熱中しているのかという点では,大きく乖離していました。私は,ゲームに対してより個人的な感情移入ができるようになりました」


私は不安や鬱から悲痛まで,さまざまなことを経験しました。その議論とゲームを組み合わせることは,これまでで一番クールなことでした

 ヨークシャーで育ったTaylor氏は,ゲーム業界やその中で働くことに触れる機会が少なかった。氏は最終的に大学では動物学を専攻しており,その間,ゲームに携わる人と宿泊先をシェアしていたそうだ。

 「大学に入るまで,ゲームを職業として考えたことはなかったのです。世界的に見ても,ゲームはエンターテインメントの大きな部分を占めていますので,とても馬鹿げていますよね。しかし,どういうわけか,教育現場ではまったく話題になりませんでした。科学や数学,英語は重視されて押されているのに,あなたがなにかクリエイティブなことをやりたいと思っても,そちらは副業みたいな扱いになっていて,とても悲しくなりました。ですから,グランドレベルから物事が変わり始めることを期待しています。ゲームでの経歴には大きなチャンスがあるんだということを,みんなに知ってもらいたいのです」

 Taylor氏は,業界が関与できるイベントの種類を増やすことをとくに熱望している。メンタルヘルスとアクセシビリティは,その最たるものであり,彼女は,業界が一緒に何をするか,どこでするかについて,より多くの選択肢を与える計画を持っている。

 「一般的に言って,ゲームのイベントの多くはアルコールを中心としたもので,夜に行われることが多いのですが,それはそれでかまいません」と氏は語る。「でも,お酒が飲めない人や,夜の移動が苦手な人には,ちょっと物足りないかもしれません」

 「ですから,ネットワーキングを促進するようなイベントや,ネットワーキングを標榜しながら実は単なるパーティではないイベントをもっと増やしていきたいですね。アルコールフリーのイベントで,明るい照明や重い音楽だけでなく,感覚に優しいイベントなど,より包括的で利用しやすいイベントを模索していきたいと思っています。とくにメンタルヘルスやニューロダイバーシティ(神経多様性)は,私の仕事にとって重要な要素です」

 Taylor氏には,業界をより良くしたいという大きな野望があるが,文化の変革の小さな一端でも担えれば素晴らしいことだと語る。

 「私は,ゲーム業界の大企業に耳を傾けさせ,チームをあるべき形で評価させ,彼らが作るキャラクターや世界観に偏見を持たせない方法でメンタルヘルスを表現させるという,大きな機械のとても小さな歯車なのです」と氏は付け加える。

 「もし,この業界のすべての会社が,福利厚生ポリシーをきちんと持っていたら,どんなに素晴らしいことでしょう」


もし,すべての会社がゼロから始めた福利厚生ポリシーを持っていたら,どんなに素晴らしいことでしょう?

 Safe In Our Worldの活動と並行して,Taylor氏はSuper RareのAnni Valkama氏とイベントを共同開催している。2人は2022年に手を組んだばかりだが,すでに北部業界のミートアップをいくつか成功させている。Taylor氏は,英国の代表的でない地域で作りたい機会について,より大きな目標を持っている。

 「このプロジェクトは,もともとAnniが立ち上げたものです。―皮肉にも彼女が北部に住んでいないので― とても親切に私を参加させてくれました」とTaylor氏は語る。「しかし,私はヨークシャーで育ちました。この業界に入ったときはヨークシャーにいなかったのですが,戻ってきたときには,すべてがロンドンか主要都市にあることに気づいたのです。これでは,旅行する余裕のない人たち,とくにインディーズの人たちにとっては,たまったものではありません」

 「また,手頃な価格の宿泊施設を見つけるのも本当に大変です。ロンドンには素晴らしいところがたくさんありますが,多くの人にとって最もアクセスしやすい場所ではないのです」

 Taylor氏は,イングランド北部ではゲーム業界に参入する人が増えているが,それに対応するイベントが非常に少ないと指摘する。

 「我々は,この業界をもっとつなげたいと思ったのです。パンデミックの影響が続いているため,イベントもまだ違和感があります」と氏は語る。「イベントに対するコンセンサスが変わってきたと思います。なぜなら,とくにパンデミック時に業界に入った人たちは,再び人とつながれることに大きな喜びを感じているからです。しかし北方ではその機会が比較的少ないのです」

 Safe In Our Worldは,ゲームにおけるメンタルヘルスについての会話を深めることに情熱を持っている新しい評議員を常に探している。詳しくは,こちらを見てほしい。

 また,ポッドキャストで経験を共有する業界ゲストも募集している(参考URL)。

 今後数週間のGame Changersに期待してほしい。全シリーズはこちらでご覧いただける。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら