「Non Fungible Tokyo 2022」で語られた,大手ゲーム会社とブロックチェーンゲームの関係

 2022年7月11日,日本国内では最大級となるNFTカンファレンス,「Non Fungible Tokyo 2022」が東京・渋谷ストリームホールにて開催された。

 その中のパネルディスカッションの一つ,「既存大手ゲーム会社がどうブロックチェーンゲームに参入するか?」では,スクウェア・エニックス ブロックチェーン・エンタテインメント事業部長 畑 圭輔氏,Mythical Games Founder&CEO John Linden氏,cocone connect CEO 冨田洋輔氏,CA Gamefi 取締役 川村 猛氏が登壇し,double jump.tokyo取締役COO 松谷幸紀氏の進行のもと,業界が取り組むブロックチェーンゲームをテーマとしてトークが展開された。本稿ではその内容をお伝えする。

「Non Fungible Tokyo 2022」で語られた,大手ゲーム会社とブロックチェーンゲームの関係

 ディスカッションは登壇者の簡単な自己紹介と,各社のブロックチェーンゲームへの取り組み状況という形で進行した。畑氏はスクウェア・エニックスとして初のNFTプロジェクト「資産性 ミリオンアーサー」を2021年の10月にリリースしたこと,“低価格で手に入れやすい”をコンセプトに「NFTデジタルシール」という形で第3弾まで販売しており,すでに9万枚を発行していることをアピール。単純にアートを製作しての販売ではなく,ユーザーがカスタマイズして仕上げることで発行される仕組みとなっており,販売後もアイテムを集めて限定シールの獲得ができるイベントなどに取り組んでいることを紹介した。現在,「資産性 ミリオンアーサー」は「NFTデジタルシール」の収集が主な目的となっているものの,今後は収集した「NFTデジタルシール」を活用して楽しめるゲームコンテンツの開発に取り組んでいるとのことで,「NFTが先,ゲームが後」というチャレンジングなプロジェクトの今後の展開に注目が集まる。

 続いて自己紹介をしたのは,Mythical GamesのLinden氏だ。2018年にスタートしたMythical Gamesはゲームのステークホルダーを巻き込む形で,クリエイター側とプレイヤー側,そこに参入したいIPホルダーをターゲットにゲームを制作しているという。2021年5月にリリースした「BLANKOS」は,PCのみながら150万人程度のユーザーを擁しており,近い内にEpic Games Storeでローンチする予定であるとアピールした。また,今年と来年にリリース予定のタイトルの発表と,リリース済みの「BLANKOS」などから得た経験やノウハウから,どのようなエコノミーを作るか,どのような分析を行えばよいかといった内容をサードパーティーに提供することを目標に,独自のチェーンに取り組んでいることを明らかにした。

ゲームのプロデューサーやディレクターといった作り手側はあまり見かけない。様々な課題や問題はあるが,ぜひ一緒にやっていければいいなと考えている


 Mythical Gamesはゲーム開発で長いキャリアを持つ人員によってゲーム制作に取り組んでおり,Web3だけではなく,ゲーム自体をしっかりと作ることを最大の目標としているとも述べ,提供するタイトル全体で1億人が楽しめるエコシステムを作っていきたいと語った。松谷氏からの「日本への進出はどのように考えているか?」という質問に対しては,「アジア地域はゲーム業界にとって様々な新しい事柄を生み出している面白いマーケットであるので,今回の来日で様々なことを学び,同時に他社のメンバーと話をすることができて嬉しく思う。日本の会社とも一緒に何かをできればいいなと考えている」と回答した。

 cocone connect CEOの冨田氏は「大手のゲーム会社さんが多い中で,弊社のことを知っている人がもしかしたら少ないかもしれないんですが……」とやや自虐的にスタートし,会場の笑いを誘った。cocone connectはアバターとスマートフォンアプリをメインとしており,アバターの会社では日本でトップという自負があると述べ,月で10億,年間で100億円以上をアバターで稼げる会社は日本のみならず,世界でもあまりないとアピール。ブロックチェーンゲームに102名体制で取り組んでおり,グループ会社を含めると200名から300名体制でネットワークやNFTマーケットプレイスを含め,アバターサービスに特化したネットワークの構築をしていると現況を語った。

 現段階の事業の本体はWeb2と前置きしつつも,「これからはWeb2のゲームは作らずに,Web3に特化していくくらいの気持ちでやっている」と述べ,そのうえで「最初の手がうまくいくとは限らないが,グローバルな市場で凄まじい会社が競合相手となるため,温存している場合ではない」と,すでに人気のあるIPを活用し,自社のIP,人員,資産とフルに投資していく姿勢を示した。

 続いてはCA Gamefiの川村氏だ。CyberAgentのゲーム事業は国内でも知名度の高い様々なモバイルゲームを開発・運用しており,グループオリジナルのIPだけでなく,他社のIPを借りたビッグIPのゲームも多数手がけているとアピールした。CA GamefiはCyberAgentのゲーム事業に属する子会社であり,Gamefi,ブロックチェーン領域に本格参入することを目的に,2022年の3月に設立されたと紹介した。現在は開発中のプロダクト「Project TB」に取り組んでおり,年内には様々な情報公開ができるだろうと展望を語った。NFTに関連する事業は,CyberAgent全体でいくつか上がってきているという状況であり,その内のブロックチェーンゲームをCA Gamefiが担当する形になる。目標として「新たな事業のテスト」ではなく「最初から大きなヒット」を目指しており,社内外を含む体制,予算ともに大きな規模となっているという。

「Non Fungible Tokyo 2022」で語られた,大手ゲーム会社とブロックチェーンゲームの関係

 各登壇者の自己紹介が終了したあと,「未だに賛否あるブロックチェーンに取り組む中で,実際にやってみての課題等はあったか」というテーマのもと,ヒアリングが行われた。

 Linden氏はプレイヤーからは「儲かったらすぐに逃げるのではないか」というような目線が多く,「新しいゲームデザインであり,そのようなものではない」ということを「クオリティの高いゲームをもって示していくことが重要」だという考えを述べた。

 川村氏は「エンターテイメントとしてブロックチェーンゲームという体験をどのように作っていくのか」が難しい課題であると指摘。現状はファイナンス部分のみに注目が集まっているが,ゲーム会社としては「エンターテイメントをどのように進化させていくか。この部分を明確にし,しっかりと取り組んでいきたい」と語った。

 冨田氏は「こういったイベントには投資サイドの方は来るものの,ゲームのプロデューサーやディレクターといった作り手側はあまり見かけない。様々な課題や問題はあるが,ぜひ一緒にやっていければいいなと考えている」と述べた。

 畑氏は課題として「専用の事業部を立ち上げ少数精鋭のチームで取り組んでいるが,ブロックチェーンやブロックチェーンゲームに対して,ユーザーだけでなく社内でも距離感を持っている方がいらっしゃると思う」と述べ,「すでにあるプラットフォームに対してゲームを作るのが今までの方式だったが,ブロックチェーンはそのプラットフォームがない場合もある。そこが面白い部分でもあり,ないからこそ課題も存在している。冨田さんも仰っていたが,こういった場にゲームクリエイターが来て,今どのようなことが起きているのかを積極的にキャッチアップしてもらう」のが重要で,社内でもそういった取り組みを行っていると明かした。

「Non Fungible Tokyo 2022」公式サイト