【ACADEMY】ゲーム会社のマーケティングディレクターになるには?
憧れのゲーム業界への転職を実現するために,当社の記事を役立ててほしい。GamesIndustry.biz ACADEMYでは,他にもさまざまな専門分野を網羅したゲーム業界への就職方法に関する詳細なガイドを掲載している(関連英文記事)。
デベロッパが世界最高のゲームを作っても,それを誰も知らなければ,すべてが無駄になる。
好むと好まざるとに関わらず,マーケティングはゲーム業界において常に大きな役割を担っていた。そして,リリーススケジュールがますます飽和状態にある状況において,それはこれまで以上に重要視されるようになってきている。
この重要な役割を担うゲーム業界に入るにはどうすればいいのか,AAAやインディーズゲーム会社のマーケティングディレクターにいろいろと話を聞いてみた。
- マーケティングディレクターになるには,どのような学歴が必要か?
- マーケティングディレクターの仕事に就くには,どんな経験が必要か?
- マーケティングディレクターになるためには,どんな資質やスキルが必要か?
- マーケティングディレクターに関するよくある誤解
- マーケティングディレクターになるための一般的な昇進は?
- マーケティングディレクターを志す人へのアドバイス
マーケティングディレクターになるには,どのような学歴が必要か?
ゲーム業界の多くの職種と同じように,大学の学位を持っていることはプラスになる。しかし,必ずしもマーケティングに特化した資格である必要はない。
「従来,このレベルの役職には学位が望まれることが多かったのです」とFireshineのマーケティングディレクターであるSarah Hoeksma氏は,GamesIndustry.bizの取材に対して語ってくれた。
「私は,大学ではマーケティングを専門にせず,幅広い学士号を取得しましたが,自分が好きな分野だと分かってからは,マーケティングの修士号を取得することにしました。私は,大学に行かずとも,純粋な才能と意欲でそのレベルに達した偉大なマーケティングディレクターを知っています」
Ubisoftのイギリスとカナダのシニアマーケティングディレクター,Mark Slaughter氏は,こう付け加える。「マーケティングのキャリアパスの前提条件ではありませんが,マーケティングの学位や専門的な勉強をしたことがあれば,キャリアを積むうえで重要だと思います。マーケティングという学問の基礎を学び,マーケティングがビジネスにとっていかに重要であるかを理解できるでしょう。戦略的なプランニングは,結局のところ,ビジネス関連のどのキャリアパスでも役に立つのです」
常に変化する風景や家庭用ゲーム機の世代交代にもかかわらず,「古典的な」マーケティング担当者は,基本原則の面で常に優位に立つことができます -Jamin Smith氏,Modern Wolf
マーケティングの分野で正式な教育を受けなくても,キャリアを積むことは可能だ。マーケティングディレクターのJamin Smith氏は,マーケティングの基礎となる科学に鋭い目を持つことで,この専門分野でのポジションを確保できると語る。「基本的なことを理解することは,とても大切なことなのです」
「ソーシャルメディアやゲーム機の世代交代によって,状況は刻々と変化していあすが,"古典的 "なマーケティング担当者は,基本的な原理を理解している点で常に優位に立つことができます。マーケティングに関する正式な教育を受けていることは,決して必要条件ではありません。―実際,私は公式な意味でのマーケティングを学んだことはありません。しかし,デジタルマーケティングの基礎となるものを学ぶ必要があります」
「そこから,ゲームマーケティング担当者は,ゲームのキャンペーン期間中,非常に多くのユニークなレバーを引くことができます。たとえば,家庭用ゲーム機のダッシュボードでのフィーチャリングの仕組みや,Steamのアルゴリズムの内部構造,戦術的戦略上最大のゲームインフルエンサーは誰か,Twitch Dropsの実装など,ゲーム特有のオーダーメイドのトリックを理解すること。― これらは私が知る限り,どんな教育でもカバーしきれるものではありません」
Electronic Artsでeスポーツのマーケティングとブランドのシニアディレクターを務めるMonica Dinsmore氏は,新入社員の採用担当者は通常,コミュニケーションかマーケティングのいずれかの学位を求めているが,「実務経験が学歴に勝る」ことが多くなってきていると付け加える。
「しかし,大学での経験は,その上に築き上げるための強固な基盤となり,学習への取り組みを示してくれることが多いのです」と,彼女は強調した。
マーケティングディレクターの仕事に就くには,どのような経験が必要か?
マーケティングディレクターは,企業や企業の一部分のプロモーション活動を統括する仕事だ。当然ながら,マーケティングに携わった経験は必須だ。
「マーケティングチームの中で,プロダクトマネージャーやマーケティングマネージャーとして働いた経験があることが一般的です」とHoeksma氏は語る。「私がEAにいた頃は,異業種交流が盛んで,開発チームからマーケティングに移ったり,クリエイティブサービスから移ったりする人もいました」
マーケティングコンサルタント会社HeyStephenHeyの現社長であり,EAとそのChillingoスタジオの元マーケティングディレクターでもあるStephen Hey氏は,次のように付け加える。「ディレクターレベルでは,マーケティングやブランドマネージャーとして数年経験を積む必要があります。あなたはいくつかの成功したキャンペーン成し遂げた経験が必要です。あなたが指図して,提供した要素を
詳しく説明できるような成功です」
ディレクターレベルでは,マーケティングやブランドマネージャーとして数年の経験が必要です -Stephen Hey氏
Smith氏は,マーケティングディレクターのポジションに必要なのは,とくにマーケティングに関する経験だけではないと主張している。この役割を担うには,幅広い知識が絶対に欠かせないというのだ。「ディレクターレベルでは,さまざまなジャンルのゲームを,さまざまなプラットフォームで出荷している必要があります」と氏は語る。「何が正しいのか,その直感は,十分に異なる規模,十分に異なる形態のさまざまなキャンペーンを何度も経験することで初めて得られるものです。何が正しいか,この直感が十分に強ければ,その役割に十分な経験があるはずです」
ゲームに限らず,さまざまなブランドや業界で働いた経験があることもプラスになるし,「チームを管理し,リードする」経験も必要です,とSlaughter氏は付け加えた。
Dinsmore氏の経歴は,幅広い経験がゲームのマーケティングディレクターのポジションを獲得することにつながるという良い例だ。
「優れたマーケッターになるために必要なスキルや経験に,真の意味で"完璧 "はありません」と氏は語る。「私の個人的な経歴は,これを反映しています。私は技術系からスタートし,経営に深い経験を持って,キャリアのかなりの部分を投資に費やしたあと,ビデオゲームに移り,現在はeスポーツを担当しています。このような多様な経験や体験は,マーケティングに携わるようになったときにも役に立ちました。なぜなら,優れたマーケッターは,企業の視点を適切に表現し,オーディエンスに真に語りかけるマーケティング戦略を展開するために,ビジネスのあらゆる側面を知る必要があるからです」
マーケティングディレクターに必要な資質やスキルとは?
マーケティングの専門知識はマーケティングディレクターに必要な分野の1つだが,もう1つの重要なスキルは,部門全体をいかに統括するかということだ。
「マーケティングディレクターの責任の多くは,チームを管理し,部下から最高の人材を引き出すことです」と,Hoeksma氏は語る。
「また,戦略にも注力する必要があります。キャンペーンの戦術的,実行的な要素に取り組むのはとても楽しいことですが,これはプロダクトマネージャーやマーケティングマネージャーの仕事であることが多いのです。あなたはビジネスの商業的側面をしっかりと理解する必要があります。予測,予想,売上を見て,パフォーマンスマーケティング,代理店,アクティベーションとのバランスを取るのです」
マーケティングディレクターは,人を管理する能力だけでなく,ゲームのプロモーションを行うためのさまざまなスキルに関する知識や経験を持っている必要がある。これは,現在のメディア環境でゲームやブランドを宣伝するために使用できる。
マーケティングディレクターには,共感力と,オーディエンスに対する絶え間ない集中力が不可欠です -Monica Dinsmore氏,EA
「ブランド,クリエイティブ,コミュニケーション,コミュニティ,ソーシャルなど,より広いマーケティングの権限に属するさまざまな分野に対する優れた頭が必要です」と,Smith氏は説明する。各分野の戦略的な責任者がいなければ,正しい判断を下すための "勘 "が鈍ってしまう可能性がある。マーケティングは,収益,プレイヤー数,ウィッシュリスト,ビュー,フォロワー数など,成長を促進することがすべてだ。KPIを理解し,それを動かすためにどのレバーを引くべきかを理解することが,すべての鍵になる。
「しかし,こうした専門的な知識だけでなく,どのように人々を管理するか,どのようにチームを作り,率いるかも知っておく必要があります。あなたの望む(おそらく超える)数字を実現してくれるチームです。一方で,消費者への強い共感や,自分の担当するジャンルについて何が反響を呼ぶかを学ぶことも必要です。最終的には,マーケットを熟知する必要があります」
また,マーケティングディレクターになるには,「オールラウンダー」であることが必要だという。
「マーケティングが組織の優先順位のどこに位置づけられるかを戦略的に理解する能力が必要ですが,キャンペーンレベルでは戦術的に対応する能力も必要です。キャンペーンを始める前に,マーケティング投資に対して最高のリターンが得られるのはどこか,分析的である必要があるのです。また,クリエイティブで,キャンペーンで何か特別なことをするために,十分なリスクを負うことも必要です。ディレクターになると,おそらくチームを持つことになりますので,優れたマネジメント能力と共感力が必要になるでしょう」
UbisoftのSlaughter氏にとって,重要なのは自分の直感以外のさまざまな情報を信じることだという。
一方,Dinsmore氏は,マーケティングディレクターの重要なスキルは,自社がサービスを提供する顧客層に共感できる鋭い能力だと考えている。
「マーケティングディレクターにとって重要なのは,共感力と,オーディエンスへの徹底的なフォーカスです」と,彼女は語る。「マーケティングディレクターにとって重要なのは,共感すること,そしてその対象者に徹底的にこだわることです。たとえば,ゲームでは,ゲームそのものへの情熱と敬意を持ち,プレイヤー層が何を求め,何を感じているかを理解できる人が,最高のマーケティングディレクターになれるのです」
「また,好奇心と学習意欲を持ち続け,データを戦略的判断に役立てて,業界のトレンドを把握(理想的には先取り)することも重要です。最後に,人間関係の構築と協力者であることが必要だ。社内のさまざまなチーム,クリエイター,ベンダー,代理店,ブランド,経営陣などのステークホルダーと仕事をして,彼らがブランドビジョンに沿うようサポートすることがあなたの仕事です」
マーケティングディレクターに関するよくある誤解
どんな専門分野でもそうだが,特定のポジションの人がどんな仕事をしているのか,どんな職務に就いているのか,誤解されていることがある。
Modern WolfのSmith氏が指摘するマーケティングディレクターの誤解の1つは,プロモーション活動は,実は一般に思われているよりも小さな役割にすぎないというものだ。
「最も大きな誤解は,実際のマーケティング業務がたくさんあるということでしょう」と,氏は語る。「マーケティング業務の責任者は,チームが最高の仕事をできるようにすることを第一に考えます。そして,予算,予測,職務記述書の作成,面接,契約,パートナーや代理店の管理,Cスイート/取締役会の管理などを考慮すると,これらすべてが役割の大部分を占めており,『実際の』マーケティングのための時間はほとんどありません」
また,マーケティングディレクター,あるいはより一般的な分野としてのマーケティングは,非常にテンプレート化された職業であり,あらゆるビデオゲームを正しくマーケティングするための構造があると考える人たちもいるようだ。しかし,これは完全に間違っていると,Hey氏は語る。
「誤解の1つは,マーケティングはかなり "軽い "もので,悪く言えば "色づけ "であるというものだ。これは,真実とはかけ離れています」と氏は語る。「ゲームは正しくマーケティングされなければならず,マーケティングチームは予算を効果的に使うようプレッシャーをかけられています。この経済性,創造性,市場と消費者の理解というバランスは,ときとして正当な評価を得られないことがあります」
マーケティングディレクターになるには,どのような過程を経るのか?
Dinsmore氏は,マーケティングディレクターになるには,どのような過程を経ればよいのかを説明してくれた。その一方で,「マーケティングの分野には,従来とは異なるさまざまな道がある」ことも強調している。
「通常,最初はコーディネーターなどの初級職で,カスタマーサービスをサポートしたり,アカウントマネージャーを補佐したりします」と氏は語る。「そして,その仕事を経験したあと,次のステップとして運営に携わるのが一般的でしょう」
「ディレクターを超えると,一般的にVPやCMOレベルの役割になります。これらの幹部レベルの役割は,通常,マーケティングプロセスのあらゆる側面を主導して,全体的なビジネス戦略の推進を支援することです。人材管理,リーダーシップスキル,戦略の設計と実行はすべて,キャリアを重ねるにつれて事実上どのような役割にも移行できるスキルです」
Slaughter氏はこう付け加える。「キャリアとして,マーケティングには多くの道があります。ジェネラリスト,チームマネージャー,あるいはコミュニケーションや製品開発などのスペシャリストなど,さまざまな道があるのです。先に述べたように,マーケティングは戦略的な学問であり,それを選択すれば,多くのキャリアパスを用意できます」
マーケティングディレクターを目指す人へのアドバイス
商品を買いたいと思わせる方法を知ることは,マーケティング職の中でもかなり重要な分野だ。だから,この分野で働きたいのであれば,マーケティングディレクターになりたいと本気で思っているのであれば,自分をアピールすることが得意であるべきだ。
「マーケティングディレクターを目指す人には,自分からチャンスをつかむ努力をすることをお勧めします」と,Hoeksma氏は語る。「結局のところ,あなたは自分自身の最大の支持者なのだ。私がこれまで一緒に仕事をしてきた女性の多くは,昇進のために早くから名乗りを上げることにあまり自信を持っていなかったように思います。自分が思っている以上に,あなたは多くのことを知っており,あなたの経験がすべてを物語っています。自分の能力を信じ,飛躍を待つ必要はありません。我々は皆,自分が思っているよりもずっと強いのです」
また,ツールベルトにさまざまなスキルを入れておくことも重要だ。マーケティングへの道がたくさんあることの利点の1つは,後々役に立つかもしれない幅広い知識を持ってこの職業に就くことができることだ。しかし,Smith氏が指摘するように,これはすぐにできることではない。
Hey氏も同意見で,異なる分野でどのようにプロモーションが行われているかに注目する価値があると付け加えている。「何でも吸収しましょう。ゲームだけでなく,FMCG,エンターテインメント,エレクトロニクスなど,他の分野のマーケティングにも目を向けてください」
「常に消費者を第一に考え,市場調査やReddit,Discordなどのチャンネルで消費者の声を聞きながら,できるだけ消費者を理解し,共感するように心がけています」
Dinsmore氏にとっては,「マーケティングとクリエイティブのプロセスの内部構造」についての包括的な知識を身につけることがより重要だという。
「そうすることで,しっかりとした基礎ができるのです。クリエイティブや戦略のミーティングに同席させてもらい,リーダーやメンターをシャドーイングします。そのような会議では,臆することなく質問や提案をしましょう。自分にとって当たり前のことでも,その場にいる全員がそう思っているとは限りませんから」
最後に,UbisoftのSlaughter 氏は,マーケティング職の中でもより技術的な概念を理解することが不可欠であると語る。
「マーケティングディレクターを目指す人にアドバイスするなら,まずターゲティング,ポジショニング,消費者の行動目標を明確に設定することの価値を理解することです」と氏は語る。
「そして,消費者の生活におけるブランドの重要性を過大評価しないことが重要です。そして,クリエイティブな仕事は,優秀なエージェンシーやチームに任せましょう。明確な目標を設定し,適切なブリーフィングを行って,測定し,学び,適応させることが重要です」
リソース
●書籍
- Creative Inc - Ed Catmull著
- Shoe Dog - Phil Knight著
- Perennial Seller - Ryan Holiday著
- How Brands Grow - Byron Sharp著
- The Long and the Short of It - Binet & Field著
- Marketers Are From Mars, Consumers Are From New Jersey - Bob Hoffman著
- Best GDC 2019 marketing talks, Future Friend GamesのThomas Reisenegger氏監修
- Marketing plan template, RenGen MarketingのAndrew Pappas氏
- Pitch Decks, 「世界中のゲームクリエイターによるプレゼンテーションと各サンプルの成果のキュレーションコレクション」
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