リモートワークの試練とは
パンデミック時,多くの業界(ゲーム業界を含む)は生き残るためにリモートワークを導入せざるを得なかった。今,世界は物理的な空間を徐々に取り戻しつつあり,リモートワークの将来は不透明だ。
リモートワークには利点があるが,ゲーム業界の一部の企業では,一貫した慣行として採用することに抵抗を感じている。Games Education Summit 2022の一環として,業界ゲストがリモートワークの進化と,それを無期限に維持することの長所と短所について議論した。
AmiqusのビジネスマネージャーであるLiz Prince氏が司会を務め,Media MoleculeのプロダクトディレクターJess Gaskell氏,Bulkhead InteractiveのCEO Joe Brammer氏,Falmouth Universityの上級講師Brian Macdonald氏がパネルに登場した。
Prince氏は,パンデミックによって雇用主が求めるものがどのように変化したかを尋ね,多くのスタジオが今後,柔軟でハイブリッドな選択肢を検討していることを指摘うえで話を開始した。
Macdonald氏は,リモートワークは,現在業界が直面している人材確保に有効な手段であるとしながらも,誰もが生産的にリモートワークができるわけではないことを指摘した。
「状況は人それぞれです」と氏は語る。「たとえば,私は自宅で仕事と生活のバランスを取ることができますが,学生や親はそうではありません」
Gaskell氏は,リモートワークによって,他の方法では考えられなかったようなスタジオの選択肢が広がったと述べ,現在,Media Moleculeと協力して,企業や社員がそのような働き方に何を求めているかを検討している最中であると付け加えた。
「スタジオで必要なスキルや,柔軟性を提供する方法について検討し始めています」と彼女は語る。「それを解決するのは大変なことで,まだその途中です」
Brammer氏は,リモートワークを好むが,それが完全に完璧だとは思っておらず,物理的なスペースで働くよりもリモートのほうが全体的に良い選択肢であるという考え方が嫌いであると語る。
「個人的にはリモートのほうが好きなのですが,いくつかの問題はまだ残っています」と氏は付け加えた。「我々のスタジオには100人の人がいて,すべてが遅くなり,ミーティングも多くなりました。しかし,だからといって,それをやってはいけないというわけではありません」
また,リモートへの移行により,Bulkheadが人材獲得で競合する他の企業と同じ採用能力を得たことは,プラスに働いたと語る。
Gaskell氏は,リモートワークによって,物理的な空間で自然に起こる行動やインタラクションを積極的に考えるようになったと語る。
「我々はより意図的に物事を行うようになりました。というのも,たとえば,ある時間にランチを一緒にとるというようなことは,リモートでは起こりえないことだからです」
また,学業面では,リモート学習やハイブリッド学習が学生にどのようなメリットをもたらしたかを紹介し,それに移行することで「教材に非同期でアクセスできる」ようになったと述べている。
それはメリットである一方,学生はさまざまな時間帯にリモートワークをしており,講師やアカデミックスタッフが全員のニーズに合わせた都合で利用することは不可能であることを意味する。また,メールの返信に時間枠を設けるなど,コミュニケーションの境界線を設けて,「いつ会話が成立するかというパラメータを設定する必要があります」とも語る。
Brammer氏は,リモートラーニングからゲームのリモートポジションに移行する学生は,多くのソフトスキルが失われるため,大変な思いをすることがあるとコメントした。
また,ゲームに特化した学位には一般的に専門性が欠けていることを強調し,学生は複数の分野でいくつかのスキルを身につけることができるが,1つの分野に強く集中することはできないことが多いと述べた。
「情熱はあるのですが,1つのスキルに集中する機会があれば,もっと良くなるはずです」と氏は説明した。
Macdonald氏は,リモートワークによって,より多くの卒業生と志望者が職を得ることができるようになり,これはリモート大学のコースにも当てはまると付け加えている。
「ゲーム開発やUXデザインのオンラインコースでは,さまざまなバックグラウンドを持つ人が受講できるようにしています」と氏は説明する。「リモートであることで,受講者は全国に広がり,さまざまな事情を抱えた人が受講できるのです」
さらに,こうしたリモートでの提供は,ゲーム開発をまったく考えていなかったような人にも届くかもしれないと付け加えた。
採用が決まっても スタジオにとって,人材の確保は重要な課題だ。そして,リモートワークによってコミュニケーションがうまくいかず,離職につながるケースも増えている。
Brammer氏は,スタジオの規模が大きくなると企業文化の管理が難しくなると述べ,パンデミック時にBulkheadでチームとその必要性を理解し,企業文化を育む努力をした例を挙げた。
「22歳のプログラマにセルフリッジのジャムを送ろうとは思いませんでした」と氏は語る。「その代わりに,eスポーツのプロを雇って,Xboxのプレゼント付きでスタジオ内でOverwatchのトーナメントを開催したのです」
Gaskell氏は,リモート環境やハイブリッド環境に移行したあとで,スタジオがどのように従業員の面倒を見るべきかについてもアドバイスしている。
「(Media Moleculeで)必要なサポートの多くは,プロダクションがチームの面倒を見たり,スタジオ全体でコミュニケーションが一貫していることを確認したりすることです」と彼女は述べた。
「そのためには,会議のメモを配布し,Slackのチャットを使いすぎないようにして,情報が埋もれないようにすること,そして,我々が持っているツールを有効に使うことに多くの時間を割くことが必要です」
リモートワークには利点があるが,ゲーム業界の一部の企業では,一貫した慣行として採用することに抵抗を感じている。Games Education Summit 2022の一環として,業界ゲストがリモートワークの進化と,それを無期限に維持することの長所と短所について議論した。
AmiqusのビジネスマネージャーであるLiz Prince氏が司会を務め,Media MoleculeのプロダクトディレクターJess Gaskell氏,Bulkhead InteractiveのCEO Joe Brammer氏,Falmouth Universityの上級講師Brian Macdonald氏がパネルに登場した。
Prince氏は,パンデミックによって雇用主が求めるものがどのように変化したかを尋ね,多くのスタジオが今後,柔軟でハイブリッドな選択肢を検討していることを指摘うえで話を開始した。
Macdonald氏は,リモートワークは,現在業界が直面している人材確保に有効な手段であるとしながらも,誰もが生産的にリモートワークができるわけではないことを指摘した。
「状況は人それぞれです」と氏は語る。「たとえば,私は自宅で仕事と生活のバランスを取ることができますが,学生や親はそうではありません」
家庭と仕事を分けるという選択肢が必要です。同僚が置かれている状況を理解し,彼らが何を必要としているかを理解する必要があります -ファルマス大学 Brian Macdonald氏
「人々は家庭と仕事を切り離す選択肢を必要としています。そして,同僚が置かれている状況と彼らが必要としているものを理解する必要があります」Gaskell氏は,リモートワークによって,他の方法では考えられなかったようなスタジオの選択肢が広がったと述べ,現在,Media Moleculeと協力して,企業や社員がそのような働き方に何を求めているかを検討している最中であると付け加えた。
「スタジオで必要なスキルや,柔軟性を提供する方法について検討し始めています」と彼女は語る。「それを解決するのは大変なことで,まだその途中です」
Brammer氏は,リモートワークを好むが,それが完全に完璧だとは思っておらず,物理的なスペースで働くよりもリモートのほうが全体的に良い選択肢であるという考え方が嫌いであると語る。
「個人的にはリモートのほうが好きなのですが,いくつかの問題はまだ残っています」と氏は付け加えた。「我々のスタジオには100人の人がいて,すべてが遅くなり,ミーティングも多くなりました。しかし,だからといって,それをやってはいけないというわけではありません」
また,リモートへの移行により,Bulkheadが人材獲得で競合する他の企業と同じ採用能力を得たことは,プラスに働いたと語る。
Gaskell氏は,リモートワークによって,物理的な空間で自然に起こる行動やインタラクションを積極的に考えるようになったと語る。
「我々はより意図的に物事を行うようになりました。というのも,たとえば,ある時間にランチを一緒にとるというようなことは,リモートでは起こりえないことだからです」
また,学業面では,リモート学習やハイブリッド学習が学生にどのようなメリットをもたらしたかを紹介し,それに移行することで「教材に非同期でアクセスできる」ようになったと述べている。
それはメリットである一方,学生はさまざまな時間帯にリモートワークをしており,講師やアカデミックスタッフが全員のニーズに合わせた都合で利用することは不可能であることを意味する。また,メールの返信に時間枠を設けるなど,コミュニケーションの境界線を設けて,「いつ会話が成立するかというパラメータを設定する必要があります」とも語る。
Brammer氏は,リモートラーニングからゲームのリモートポジションに移行する学生は,多くのソフトスキルが失われるため,大変な思いをすることがあるとコメントした。
また,ゲームに特化した学位には一般的に専門性が欠けていることを強調し,学生は複数の分野でいくつかのスキルを身につけることができるが,1つの分野に強く集中することはできないことが多いと述べた。
「情熱はあるのですが,1つのスキルに集中する機会があれば,もっと良くなるはずです」と氏は説明した。
情熱はあるのですが,学生が1つのスキルに集中する機会があれば,もっと良くなるでしょう - Joe Brammer氏, Bulkhead
パネルディスカッションでは,学生がゲーム業界に参入するための準備や,より多様な志望者に仕事を紹介する方法について議論された。Macdonald氏は,リモートワークによって,より多くの卒業生と志望者が職を得ることができるようになり,これはリモート大学のコースにも当てはまると付け加えている。
「ゲーム開発やUXデザインのオンラインコースでは,さまざまなバックグラウンドを持つ人が受講できるようにしています」と氏は説明する。「リモートであることで,受講者は全国に広がり,さまざまな事情を抱えた人が受講できるのです」
さらに,こうしたリモートでの提供は,ゲーム開発をまったく考えていなかったような人にも届くかもしれないと付け加えた。
採用が決まっても スタジオにとって,人材の確保は重要な課題だ。そして,リモートワークによってコミュニケーションがうまくいかず,離職につながるケースも増えている。
Brammer氏は,スタジオの規模が大きくなると企業文化の管理が難しくなると述べ,パンデミック時にBulkheadでチームとその必要性を理解し,企業文化を育む努力をした例を挙げた。
「22歳のプログラマにセルフリッジのジャムを送ろうとは思いませんでした」と氏は語る。「その代わりに,eスポーツのプロを雇って,Xboxのプレゼント付きでスタジオ内でOverwatchのトーナメントを開催したのです」
Gaskell氏は,リモート環境やハイブリッド環境に移行したあとで,スタジオがどのように従業員の面倒を見るべきかについてもアドバイスしている。
「(Media Moleculeで)必要なサポートの多くは,プロダクションがチームの面倒を見たり,スタジオ全体でコミュニケーションが一貫していることを確認したりすることです」と彼女は述べた。
「そのためには,会議のメモを配布し,Slackのチャットを使いすぎないようにして,情報が埋もれないようにすること,そして,我々が持っているツールを有効に使うことに多くの時間を割くことが必要です」
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)