CEOは，異なる哲学，新しいビジネスモデル，そしてフランチャイズを無料プレイの大きな市場に持ち込むという夢について語った。

　この発表（関連英文記事）は意外だったかもしれないが，Take-TwoがZyngaに興味を持ったのは，少なくとも理屈上では，非常に理にかなったことだった。

　Take-Two は，NBA ゲームと Grand Theft Auto Online によって，マイクロトランザクション，DLC，および彼らが「定期的消費支出」と呼ぶものによって，前世代に大きな成功を収めた。同社は，より良い実践を通じて，これを成長させ，拡大したいと考えている。そしてZyngaがそれを提供する。

　同社が得意とするPCや家庭用ゲーム機がまだ大衆に浸透していない国や市場で成長したいと考えている。Zyngaはそれを提供する。

　同社は，Grand Theft Auto， BioShock, Red Dead Redemption, Borderlands，Civilizationといった大成功を収めたAAAゲームを，モバイルプラットフォームで本当にうまく機能させられる専門家を求めている。Zyngaはそれを提供する。

　また，Zyngaは，デバイスを超えたクロスプロモーションとクロスエンゲージメントを提供する能力を備えている。両社は互いに補完し合えるスポーツタイトルを数多く持っている（大ヒットしたレースフランチャイズCSR Racingを含めて，昨年Codemastersを逃した悔しさを多少なりとも晴らすことができるかもしれない）。

Take-Two CEO Strauss Zelnick氏

　その見返りとして，Zyngaは世界で最も貴重なコアゲームのIPを手に入れ，小さいながらも利益を生む家庭用ゲーム機やPCのゲーマー層を取り込む機会を得ることができる。すべてが辻褄が合うように思える。

　しかし，1つだけ気になることがあるとすれば，それは両社がゲーム市場に対してまったく異なるアプローチをしているという事実だ。

　Zyngaは，ソーシャルゲームでFacebookにいち早く参入し，それ以来，新しいトレンド，テクノロジー，ビジネス手法にいち早く挑戦している。昨年，ブロックチェーンゲーム担当の副社長を採用したばかりだが，その方向性は完全には定まっていない。

　Take-Twoは逆のアプローチをとっている。同社は自らをAAAゲームのクリエイターとみなしており，それらのゲームをどのように収益化し，流通させるかは，消費者がどこにいるかに完全に依存しているのである。CEO のStrauss Zelnick氏は，サブスクリプション，ストリーミング，ブロックチェーン，メタバースについて意見や見解を持っているが（関連英文記事），それらに投資することに関しては，常に非常に現実的だ。

　つまり，Take-TwoとZyngaは理論上はうまく調和しているように見えるが，哲学的にはそのアプローチや文化はかなり異なっているようだ。

我々は，Zyngaがこれほどの成功をもたらした文化を追求することを奨励します。これには新しいことに挑戦することも含まれます

　Zelnick氏は，Take-Twoの運営方法からして，それは問題ではないと語っている。

　「当社は，かなり分散された方法で独自のビジネスを運営するレーベルを持つという，比較的珍しい構造を持っています」と氏は念を押している。

　「それが我々の成功の秘訣の1つです。現在T2 mobile gameにある当社のすべてのモバイルゲームを，Take-Twoの中のZynga部門が運営することを期待しています……。その部門は，（Zyngaの重役）Frank GibeauとBernard Kimが率いることになるでしょう。彼らの実績が物語っています。ですから，我々は一貫した文化，一貫した戦略，一貫したアプローチを持っており，FrankとBernard，そしてチームが日々そのビジネスを運営していきます。Rockstar Games，2K Games，Private Divisionは，まさにそのような運営をしているので，とても相性が良いと思います」

　氏は続ける。「我々は，Zyngaがこれほどの成功をもたらした文化を追求することを奨励します。それには新しいことに挑戦することを含まれます。もちろん，我々はそのチームから学びたいと思っています。彼らはモバイルのエキスパートです。我々は，モバイルの分野では，現在，はるかに小さい存在にすぎません。彼らはChartboostを所有し，優れたデータ分析を持っており，我々も何らかの資産と機会を提供できればと考えています。ですから，答えは，我々は非常にオープンマインドであり，Zyngaが当社にもたらすことができるすべての利点を歓迎するということです」

　確かに，同社の説明会では，ZyngaもTake-Twoも「新たな新興ビジネスモデルとイノベーション」に言及している。それは，彼らがNFTやブロックチェーンの可能性について話しているのとよく似ている。

　「我々はオープンマインドで，Web 3.0について言及し，ブロックチェーン上にあるNFTについて広く話していました」とZelnick氏は語る。「大きなチャンスがあると考えています。しかし，我々は，消費者が投機に走ることを助長しないようにしたいのです。我々は，素晴らしいエンターテインメント体験を提供できるようにしたいのです。しかし，我々はこの新しい仕組みに期待しています。そして，それについてはすでに発表されています」

我々の総収入の80％は米国と西ヨーロッパから来ています。その地域以外からは20％しか来ていません

　モバイルを他の部門から切り離すことは珍しいことではなく，EAが長年にわたって買収してきた無料プレイの会社でも同様のことが起こっている。あるいは，ActivisionがKingで行ったように。

　しかし，Zelnick氏は，同社の他のレーベルとこのモバイル部門（Take-Twoの他のモバイル開発会社も含まれる）とのコラボレーションを期待すべきであると述べている（SocialPointとNordeusも含まれる）。Call of Duty や PUBG のような従来の家庭用ゲームや PC ゲームだったものがモバイルに登場し，中国やインドのような地域で膨大なオーディエンスを獲得する例を，我々はこれまでにも何度も目にしていた。そしてこれは，Take-Twoが熱心に取り組んでいることでもある。

　「当社の収益の80％は，米国と西ヨーロッパからのものですが，それ以外の地域からの収益はわずか20％です。」とZelnick氏は語る。「ロシア，中国，その他のアジア，インド，アフリカ，ラテンアメリカのような市場には，膨大な未開拓の機会があり，無料プレイは，これらの市場で大きくアピールする仕組みだと考えています。Zyngaは，より広いTake-Twoファミリーのために，これらの市場への主要な楔となる可能性があると考えています」

GTA OnlineのようなIPは，Take-TwoとZyngaにとって新市場でのチャンスとなる

　中国でのGTA Online モバイルゲームの可能性について推測することはできても，具体的なゲームについて話すのは少し早すぎるとZelnick氏は語る。今はまだ，いくつかのアイデアを練っている段階だ。しかし，氏は，この買収が，新しいタイトルを考慮する前であっても，大きな収益を生み出すと考えている。

　「今後数年間で，年間5億ドルの収益シナジーを生み出すことができると話しているところです。そして，それは新しいゲームを除いたものです。これは単純に，10億人の消費者データベースをよりうまく活用できるようになることを意味します。データ分析をより効果的に行うことができ，Chartboost（広告）プラットフォームを活用し，さらに，我々の戦略の一部である効率性を提供するだけで，少なくとも1億ドルのコストシナジーを得られると期待しています」

　効率化というと気になるかもしれないが，Zelnick氏は大幅な冗長化の懸念を払拭している。

　「どんな重複があろうと」と氏は説明する。「2つの会社が1つの会社になるわけですから，重複する経費は発生します。しかし，それは将来的に避けられるはずのものです」

　「そのためには，まず第一に，プロセスや第三者の経費を削減する必要があります」

　Zyngaとの契約は，Take-Twoのモバイル市場への段階的な拡大を加速させるだけでなく，すぐにそこに到達させるものだ。NBAとGTA，AAAパブリッシャの2KとインディーズパブリッシャのPrivate Division，そして今回のZyngaを通じて，同社はゲーム市場のほとんどのコーナーで，重要な形で事業を展開していくことになる。では，さらなる買収につながるような，まだ足りないものはあるのだろうか？　

　Zelnick氏は投資家に対し，Zyngaの買収が成立したあとも買収できる立場にあり，「素晴らしいチームと素晴らしい知的財産」を常に探していると語っている。

　しかし，今や世界最大のエンターテイメント企業の1つであるZelnick氏は，我々にこう認めている。「現在我々の前には，たくさんの仕事が山積みです。ですから，それに集中します」