【ACADEMY】「アクセシビリティはビジョンを妨げるものではなく,創造性を高めるものです」

アクセシビリティの専門家が語る,インクルーシブデザインの追求と,小難しい話ではないアクセシビリティについて。

 アクセシビリティは,ゲーム業界では比較的最近話題になったものだが,その重要性はますます高まっている。

 XboxやNaughty Dogのような一握りの先駆者たちの努力により,より多くのスタジオがより多くの人にゲームを提供できる道が開かれた。

 Team17がOvercookedの専用トレイラーでアクセシビリティの選択肢を示し,UbisoftがAssassin's Creedの最新作でますます包括的なアプローチをとり,Insomniac Gamesが最近の作品でアクセシビリティを不可欠な要素にするなど,ゲーム業界は長い道のりを歩んできたのだ。

 しかし,それとはまったく逆の理由で,ゲームが新聞の見出しを飾ることもある。CD Projekt RedのCyberpunk 2077,発売から3か月後に一部のオプションにパッチを適用したBend StudioのDays Gone,発売時には字幕がなかったSpyro Reignited Trilogyなどがそうだ。

 最近,アクセシビリティの欠如で注目されているゲームは,Arkane LyonのDeathloopだ。主流のゲーム雑誌では絶賛されているが(関連記事),アクセシビリティに焦点を当てたレビューはどれも同じ結論に達している。Deathloopには,障害のあるプレイヤーがアクセスできるようにするための最低限の要素が含まれていないのだ。

何度も何度もそんなことを感じているうちに,「何のためにやっているんだろう? 誰も私のニーズに耳を傾けてくれないのか?」と思うようになります -Courtney Craven氏,Can I Play That

 コンテンツ制作者のKennedie 'Dynamic Reactions' Griggs氏は,レビューの中で(参考URL),とくにオートエイム機能の問題点を強調している。Deathloopには2種類のエイムアシストが用意されており,それらを組み合わせることができるが,どちらも期待したとおりには機能しないため,アクセシビリティの向上にはつながらない。

 また,Can I Play Thatの創始者であり運営責任者であるCourtney Craven氏参考URL)や,アクセシビリティコンサルタントでありコンテンツクリエイター兼プロデューサーであるSteve Saylor氏参考URL)のレビューでも,同じような問題が取り上げられていた。具体的には,文字の大きさ,敵のマークの付け方,コントラストの低さ,ライフの制限,音声の問題,そしてPS5ではコントロールをリマップするオプションがないことなどが挙げられ,障害のあるプレイヤーがArkaneのゲームをプレイして楽しむことはもちろん,最後までプレイすることも非常に困難になっているという。

 「このゲームのデザインには,アクセシビリティを困難にする要素が多く含まれています」とSaylor氏はGamesIndustry.bizに対し語ってくれた。「主に,一人称視点のシューティングゲームの特徴として,非常に正確に照準を合わせなければならないことや,敵の周りをこっそり移動したり,敵を倒したりするために敵を素早く見なければならないことが挙げられます」

 Craven氏は,今年の初めにReturnalのアクセシビリティについて同様の論争があったことを思い出させた。しかし彼らは,Deathloopとは異なり,Returnalは難易度が重要なポイントとなるゲームとして明確に販売されていたと指摘する。

 「何度も何度も死ぬことを覚悟してゲームに参加しなければ,あなたは敗北感を味わうことになるでしょう」と彼らは語る。「難しいことを前提としたゲーム性を売りにしているわけではありません。Returnalのように,それがゲームの核心部分であるとは感じられないのです」

Deathloopは最近,そのアクセシビリティの低さを指摘された
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 このようなアクセシビリティの欠如により,潜在的に何十億人もの人々がプレイできなくなる可能性があるとCraven氏は続ける。

 「アメリカだけを見ても,字幕がうまく表示されなかったり,ゲーム機でコントローラのリマッピングができなかったりすることで,何百万人もの人がゲームをプレイできません。このように多くの人がアクセスできない大作ゲームを発売した場合,より根深い問題として,そのような人たちはゲームの宣伝に参加できず,業界全体に対して不信を感じられてしまうことがあります。これは非常に期待されていたゲームでした。それを何度も何度も繰り返すことで,『なぜ私は努力するのだろう? あるいは,私の要求を聞いてくれる人はいるのだろうか?』と感じ始めてしまうのです。つまり,ゲームから隔離された状態になり,それに対して敗北を感じるという2つの弊害があります」

多くの障害者プレイヤーが,人との交流をゲームに頼っており,それは彼らの生活の中で本当に大きな部分を占めています -Stacey Jenkins氏

 ゲームアクセシビリティのスペシャリストであり,コンテンツ制作者でもあるStacey Jenkins氏は,大作ゲームが発売されたときに,友人と一緒にプレイしたり,会話に参加したりできないことが,社会的に非常に大きな影響を与えることを強調している。

 「多くの障害者の方々が,人との交流をゲームに依存しており,それは彼らの生活の大きな部分を占めています」とJenkins氏は語る。「私は8年前に障害者となり,ほとんど家に閉じこもっていましたが,そのときにTwitchでストリーミングを始めました。人と話をしたかったのです」

 Jenkins氏は,ゲームストアのページにもアクセシビリティ機能に関する情報を掲載するよう,ストアフロントに呼びかけている。アクセシビリティ機能の情報を掲載することで,障害者がゲームを購入後にアクセシビリティの問題を知って返品するような手間を省くことができると語る。


アクセシビリティオプションの先にあるもの


 Saylor氏は,業界でアクセシビリティが話題になると,一般的にはゲームに利用できるオプションの数が多いのだろうと考えられていると指摘する。しかし,それだけではない。

 「もちろん,The Last of Us Part 2には60以上のオプションが用意されていて,それが今後のアクセシビリティの基準になると考えられています」と氏は語る。「しかし実際には,アクセシビリティはデザインプロセスの一部でなければなりません」

 「Deathloopでは(アクセシビリティは)デザインの一部ではありませんでした。たとえば,ゲームの中で,1回のプレイで3つのライフがあるとしましょう。このアイデアが出てきたら,能力に関係なく,できるだけ多くのプレイヤーが利用できるようにするにはどうしたらいいか,少なくともアクセスできるようにするにはどうしたらいいか,ということを考えるべきです。そのときに,そのアイデアがデザイン段階を経て,アクセス可能なものになるように,ちょっとした工夫をできるのです」

Arkaneがアクセシビリティを無視していることを非難しているのではなく,今のデベロッパはアクセシビリティをそのように考えていないということです -Steve Saylor氏

 「そして残念ながらDeathloopはそれをしませんでした。アクセシビリティを無視したArkaneを非難しているのではなく,今はデベロッパがそのような特別な方法でアクセシビリティを考えていないというだけのことなのです」

 アクセシビリティは,開発の過程で考慮され,ゲームと一緒に構築されなければならない。「たくさんのオプションを入れて,基本的には体験そのものにバンドエイドをするようなものではありません」とSaylor氏は続ける。

 Saylor氏とCraven氏は,Naughty DogのThe Last of Us Part 2が,プレイヤーが自分の体験をカスタマイズできるようにした点で非常に優れていることに同意している。しかし,Deathloopの論争を受けて彼らが伝えたいメッセージは,この種の作業はアクセシブルなデザインと一緒に行われなければならないということだ。

 「私が言いたいのは,The Last of Us Part 2のようになろうとするなということです」とCraven氏は語り,これが議論を呼ぶ意見であることを認めている。「あれは素晴らしいゲームでしたし,障害者がプレイできるようにするという点で,業界の基準となったのは間違いありません。しかし私は,Ghost of TsushimaやAssassin's Creed Odyssey,Watch Dogs Legionのように,アクセシビリティのための強力なオプションがなくても包括的なゲームのようになるよう努力することが最善だと考えているのです。彼らは多くのことを正しく行っていました」

 「Watch Dogs LegionのGPSナビゲーションは,pingを実行して敵を確認したり,レベルの移動やクエストへの参加を手助けしてくれるなど,とても優れていました。また,Assassin's Creed Odysseyでは,鷲がとても役に立ちました。敵にタグを付けたり,エリア内を検索してさまざまな情報を得ることができますが,これは,障害者のためだけに販売されるアクセシビリティオプションとして設計されたものではなく,コアゲームプレイの一部であり,誰もがプレイできるゲームにするためのシステムの一部として考え抜かれたものが,アクセシビリティにも貢献しているのです」

The Last of Us Part 2は,ゲームアクセシビリティの金字塔と言われている
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 Saylor氏がDeathloopのレビューを投稿し,3つのライフシステムの問題点を説明したとき,一部の人々は,Arkaneがのちのパッチでライフの数を増やしたり,ゴッドモードを搭載したりすればいいのではないかと提案した。しかし,彼は,ゲームのデザインの核心部分を修正することはできないと主張している。

 「私はArkaneがゲームにそのようなものを追加することを望んでいません。
なぜなら,それは誰にとってもゲームの遊び方を根本的に変えてしまうからです。ゲームをクリアしたあとに,突然,3つのライフではなく5つのライフを持つことができると追加されたら,プレイヤーは不満を感じてしまうでしょう」

 「ゲームのビジョンが根本的に変わってしまうのでえす。すると,『デベロッパは,アクセシビリティのためにビジョンを変える必要はない』という意見も出てきます。できるだけ早い段階でアクセシビリティについて考えるというのが,私が支持するビジョンです。アクセシビリティはビジョンを阻害するものではなく,むしろ創造性を高めるものなのです。私はゲームに成功してほしいと思っていますが,アクセシビリティを追加するために,設計段階で考えられていたはずのゲームの遊び方を根本的に変えてほしくはないのです」

 Jenkins氏も,オプションを追加しても問題が解決するとは限らないことに同意している。

 「我々は,すでに開発プロセスの途中にあるゲームに,このような場当たり的なものが追加されるのをよく目にします。しかし,プロジェクトの初期段階でアクセシビリティが導入され,すべての段階で構築できるようになれば,ゲームに大きな違いをもたらすことになるでしょう」


アクセシビリティが当たり前になるまでの障壁


 Deathloopは,アクセシビリティのオプションを巡って論争を巻き起こした最初のAAAゲームではなく,残念ながら最後のゲームにもなりそうにない。

 「しかし,Naughty DogがThe Last of Usを発表したことで,障害者である我々に『もう言い訳はできない』というお墨付きを与えてくれました」とGriggs氏は語る。「すぐにやらなければなりません。彼らがやったことを見れば,我々にもできることがあるはずです。誰かがここで気にかけてくれているのですから,我々は自分たちのためにもう少しだけ主張し,もう少しだけ大きな声を出すべきです。みんなで集まって知識を共有することは,大きな助けになります」

 ゲームにおけるアクセシビリティの標準化を阻む最大の障壁は,単に人々が知らないということだとCraven氏は語る。

Naughty DogがThe Last of Usを発表したことで,我々障害者はゲームに参加する許可を得たのです。もう言い訳はできません」 -Kennedie Griggs氏

 「アクセシビリティコミュニティで活動していたり,何らかの形で関係していたりすると,これは当然誰もが知っていることだと思いがちです。しかし,実際にはそうではありません。ゲーム開発の大枠の中では,まだまだ小さな分野です。ほとんどのスタジオが,Ubisoftやスクウェア・エニックスのような専門のチームを持っているわけではありません」

 「また,担当者がいるスタジオでも,超少人数のチームですべてを解決しようとしています。1人でできる仕事,2人でできる仕事は限られています。また,ゲーム開発には,予算や時間,何を優先させるかなど,さまざまな問題があります。さらに投資対効果の問題もある。アクセシビリティについてあまり知らない人や,アクセシビリティの恩恵を受けている人がどれくらいいるのかを知らない人からは,投資に見合わないという反発を受けることがあります」

 Jenkins氏は,AAAゲームのほとんどが制作に数年を要することから,アクセシビリティに対する最近の関心の高まりがもたらす影響は,数年後には実を結ぶと考えている。

 「ゲームによっては開発期間が長すぎて意味のある変更ができないものもあります」と氏は語る。「しかし,アクセシビリティに関する認識や宣伝は良いことだと思います。なぜなら,スタジオのスタッフが賛同してくれることを期待しているからです。しかし,それをどのように行うか,また,アクセシビリティの成熟度をどのようにして自分の望む段階に持っていくかは,より厄介な問題であり,まだ解明されていないのです」


アクセシビリティへの取り組み方


 Saylor氏は,障害には3つの種類があることを強調している。

  • 永久的なもの:たとえば生まれつき目が見えないとか,何かのきっかけで障害者になってしまい,それが一生続くもの
  • 一時的なもの:たとえば,腕を骨折して右手や左手を使うことが困難な場合など
  • 状況的なもの:たとえば,子供が生まれたばかりで,子供を寝かしつけたいが,子供の邪魔にならないようにゲームをしたいので,すべての音声をオフにしなければならないようなとき

Steve Saylor氏
【ACADEMY】「アクセシビリティはビジョンを妨げるものではなく,創造性を高めるものです」
 「業界として,まだゲームをしたいけど,そのために自分の障壁と戦うことまでは考えないプレイヤーを中心に,どうデザインするのかを再学習していくのか本当にあなた方次第です」と氏は語る。「アクセシビリティがすべての人に役立つ側面もありますが,今はまだ,何が最善の方法なのかを学ぼうとしている段階であり,各スタジオも試行錯誤していて,完璧にこなしているスタジオはありません。The Last of Us 2は,現在あるゲームの中で最もアクセシブルなゲームと言われていますが,それでもプレイできないプレイヤーはいます。私の友人には,PlayStationのコントローラを持てないために,ゲームをプレイできない人もいます」

 インタビューに答えてくれた人たちからの主なアドバイスは,アクセシビリティについて最初の段階からトップダウンで考え,プロセスを通してさまざまな障害を持つコンサルタントを参加させることだった。リソースがあれば,スタジオにアクセシビリティチームを作ってほしい。

 また,フィードバックを受け入れること,障害のあるプレイヤーの声に耳を傾けること,そのフィードバックを処理することも重要だ。

 「Ubisoftのアクセシビリティ部門はとても優秀です」とGriggs氏は語る。「私は純粋に彼らにメールを送り,『このゲームや他のゲームのアクセシビリティに関する意見は必要ですか』と尋ねました。すると,彼らは「どうぞ,送ってください」と言ってくれます。あるいは,私が問題について話すと,彼らは『それについて話してもらえますか? 障害者の方々と実際に話をして,我々が何を必要としているのか,そして彼らがそれをどのように実現できるのか,そのレベルにまで到達することが必要なのです』と言ってくれるのです」

 「障害者の方々と実際に話をすれば,それは難しい話ではありません。我々ができないことはこういうことで,それを解決するにはこういう方法があるということを教えてくれるでしょう。自分ができないことを目の当たりにすると,自動的に『どうすればこの状況に適応できるか』と考えてしまうのが,社会の仕組みなのですから」

Kennedie Griggs氏
【ACADEMY】「アクセシビリティはビジョンを妨げるものではなく,創造性を高めるものです」
 「もし,デベロッパが障害者の方と話をして,既成概念にとらわれない発想をする手助けをしてくれたら,それ自体がツールになります。そこからブレイクスルーが生まれるのです」

 Jenkins氏によると,苦情の多い4つの問題は,コントロールリマッピング,テキストサイズ,色覚障害,字幕表示だそうだ。また,効果音,スピーチ,BGMの音量用のコントロールを個別に調整することも重要だ。

 「ですから,これらの問題をすべて解決することができれば,良い結果が得られるでしょう。コントロールリマッピングは,片手でプレイしていたり,手の震えや弱さがあったりして,何かを変えたいと思っている人に役立ちます」

 脳性麻痺を患うGriggs氏は,ゲーム内で再設定が可能であることが重要だと指摘する。

 「多くのユーザーは,PS5にボタンリマッピングを追加していません。なぜなら,PS5のネイティブ環境でボタンのリマッピングを行うことができるからです」と氏は語る。「しかし,私はゲームの中でボタンリマッピングを変更したいのです。なぜなら,ボタンのリマッピングはプレイするゲームによって変わるからです」

 「また,ターゲットロックもほしいですし,それが当たり前になることを目指したいと思います。私にとってゲームでの最大の問題はそこなので,ターゲットをロックして,それをヒットできるようにしてほしいのです。私の理想の世界では,それは一般的に最低限のことです。非常に分かりやすい字幕,優れた触覚フィードバック(PS5ではこれを目指している),ボタンの再設定,優れたターゲットロック,優れたカメラコントロールなどです。これで,すべての人のニーズを満たすことができます」

Stacey Jenkins氏
【ACADEMY】「アクセシビリティはビジョンを妨げるものではなく,創造性を高めるものです」
 Jenkins氏は,字幕のサイズを変更するオプションが一般的に見られるようになってきた一方で,ミッションタグやメニューテキストなど,画面に表示される他のフォントのサイズを大きくするオプションが提供されていないことが多いことを指摘する。

 「字幕を表示する場合は,その背景を表示できるようにしてほしいです」とも付け加えた。「さらに言えば,背景の不透明度を変えられるようにして,透明にしたり,ベタにしたりできるようにしましょう。また,銃声やうなり声などの不気味な音などといった,環境音にも対応してください」

 また,Ubisoftの調査によると,Assassin's Creed Odysseyのプレイヤーの95%が字幕を表示していたそうだ(関連英文記事)。前作Assassin's Creed Originsでは,60%のプレイヤーがオプション画面で字幕をオンにしていることに気づいたため,このオプションはデフォルトで有効にしているという。

 「これは,アクセシビリティが一部の人々だけに恩恵をもたらすものではなく,すべての人々に恩恵をもたらすものであることを示すものです」とJenkins氏は次のように続ける。「我々は高齢化社会に突入しています。ゲーマーの平均年齢は35歳くらいだと思いますが,我々は年を重ねるばかりです。皆さんはどうか知りませんが,私は年老いて白髪になるまでプレイし続けたいと思っています。我々は障害者のためにデザインしているのかもしれませんが,実際にはもっと多くの人に広げて,すべての人がゲームを楽しめるようにしているのです」とJenkins氏は続けた。

 「間違った質問をすることが多いようです。色覚異常の人は何人いるのか,世界には何人の人がいるのか色覚異常の人は何人いるのか,といった具合ですが,これは正しい質問ではありません。問いたいのは,何人の人が字幕を使っているのか? 何人の人がその機能を使っているのか? なのです。なぜなら,そのほうがずっと役に立ちますし,もっと面白くなるからです」

Courtney Craven氏
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 さらに,デベロッパはWebアクセシビリティなど,他のタイプのアクセシビリティに関するリソースにも目を向けるべきだと語る。なぜなら,他の業界から学べることもたくさんあるからだ。

 もちろん,すべての選択肢がすべての人の助けになるわけではないが,デベロッパには,障害のあるプレイヤーの立場になって考えてみることをアドバイスする。

 「聴覚障害者,弱視者,アイトラッカーを使用している人の立場になって,ゲームをプレイし,オプションメニューを見て,どれくらい時間がかかるかを確認してみてください。オプションメニューの中だけでも,どれだけのバリアが提示されているか? 自分のゲーム体験をカスタマイズする自由度はどれくらいあるのか?」

 「そして,障害者コンサルタントと話し,協力して意見を聞く―。というのも,いくら自分をその気にさせたところで,すべての質問に答えられるわけではないからです。すべての質問に答えられるわけではありませんし,ゲームの中での他人の経験を正確に表現することもできません」

 最後に,ゲーム業界がアクセシビリティを向上させるために何かできることはないかとCraven氏に尋ねてみた。

 「これは賛否両論あると思いますが,字幕サイズのオプションやコントローラのリマッピングなどは,ゲーム審査の一部にするべきだと思います」と彼らは語ってくれた。「なぜなら,これらは最も基本的なことだからです。色覚障害者用のオプション,コントローラのリマッピング,そして字幕のオプションです。ただ字幕があればよいのではなく,字幕があっても出来が悪ければ,誰の役にも立ちません」

 「あるプラットフォームでゲームをリリースするために必要な3つの核となるものであるべきです。そして,それが年齢別レーティングを行うESBRのようなものになることを期待しています」

 「さらに,ゲーム開発コミュニティの中で,さらにアドボカシー活動を行います。ゲーム開発コミュニティは,仕事をしている我々の目に留まるようになってきました。しかし,成長して(問題を)認識するには時間がかかると思います。だからこそ,人の話に耳を傾け,自分がその問題について言いたいことがなければ,彼らにマイクを渡してあげてほしいのです」


リソース



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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら