【ACADEMY】「すべては小さなものでできている」: ホビーデベロッパが語る集中力を維持する方法
私はCreatorCrateをリリースしたばかりだ。このゲームは,腕を持つかわいいメカが,巨大な円形の宇宙ステーションの中で大暴れするというものだ。
どうやって完成させたかをお話ししたいのだが,その前に,私のクローゼットの中から見つけたものをお見せしよう(参考URL)。
家主がビルを売却することになったので,私は引っ越さなければならなくなった。そのため,ゲームのリリースで忙しくしているにもかかわらず,私はクローゼットの中から捨てるものを探していた。その一番奥に,同心円の絵があったのだ。もう何年も見ていない絵だった。それは,私のゲームの宇宙ステーションで,プロジェクトのかなり初期の段階のアイデアのものだった。
その絵をよく見ると,小さな棒人間の隣に小さな棒人間のCreatorCrateがいた。
ときにパートタイムで,ときにフルタイムでCreatorCrateの開発には7年かかった。意味のある進歩を遂げることができないと感じて,ずいぶん苦労した
どうにかこうにか今の自分がいて,あのとき描いたプランが今ゲームになっている。その気持ちを伝える言葉がない。嬉しいと言えば嬉しいのだが,それ以上に大きくて不思議な気持ちだ。自分がここまで来るとは思ってもみなかった。それが間違っていたことがこれほど嬉しいことはない。CreatorCrateの開発には,パートタイムのときもあればフルタイムのときもあり,約7年かかった。いくらやっても意味のある進歩が得られないことに,何度も悩まされた。他の独立系ゲームデベロッパの中にも,同じような問題を抱えている人がたくさんいるだろう。
大きなプロジェクトは大変だ。去年やったプロジェクトの作業は,今日やっている作業と深く結びついている。新しい決定は,これまでに行ったことやこれから行う予定のことすべてに適合する必要がある。この積み重ねが,ゲームデベロッパがプロジェクトを完成させるまで作業を続けようとする情熱を破壊してしまうのだ。
長い時間をかけて,私は完成しないものを作っているときの恐怖感を無視できるようになった。目の前の仕事に注意を払う習慣ができた。インスピレーションがあるときにはそれを最大限に活用する方法を学び,インスピレーションがないときには続ける方法を学んだ。ここでは,プロジェクトが少しずつ完成していく中で,一瞬一瞬を集中して過ごす方法を紹介したいと思う。
私にとっての効果は,あなたにとっての効果とは大きく異なるかもしれない。自分にとって最も役立つテクニックを見つけて,それを残し,他のものは捨ててほしい。
ゲームに取り組みたくないと思ったら?
私だけでなく,ほとんどすべてのゲームデベロッパが,「もうこのプロジェクトに携わりたくない」と感じたことがあるだろう。それ自体は問題ではないが,たいていは別の問題が絡んでいる。ある程度のレベルでは,「ゲームを完成させたい」という強い気持ちがあるのではないだろうか。自分の作品が完成し,それを人々が楽しんでいる姿を見ると,とてもやりがいを感じる。
もっと別のエキサイティングなプロジェクトを始めてもいい。今度は違うことをやってみよう。それがうまくいくこともある。しかし,危険もある。半年後には,新しいプロジェクトが古いプロジェクトのように見えてきて,同じ状況に陥るかもしれない。また,経済的な理由で今のゲームを終わらせなければならない場合や,今までの作業を無駄にしたくない場合もあるだろう。
ゲームを作るということは,本当に圧倒的な考えだ。ゲームを作るということ自体が大変なことなのだ
今のゲームを作りたくないのではない。今のゲームを作りたくないのではなく,本当は作りたいのだけれど,今はやる気が出ないのだろう。自分を大切にすることが第一だ。十分な睡眠をとること。休憩したり,運動したり,ゲーム開発以外の自分の好きなことに時間を使ったり。そうすれば,リフレッシュしてプロジェクトに臨むことができるかもしれない。それでもゲームに取り組む気にならない場合は,私が見つけた作業習慣を参考にしてほしい。
●プロジェクトを開く
ゲームを作るということは,本当に圧倒的なことだ。ゲームができあがってからプレイすることを想像するといいだろう。しかし,ゲームが今ある状態から完成するまでには,信じられないほどの時間がかかり,細部に至るまで慎重に検討し,集中したり驚いたりする瞬間がある。
ゲームを作るということ自体に圧倒される。なぜなら,ゲームを完成に近づけるためにやりたいことがたくさんあるからだ。ゲーム制作とはどのようなものなのだろうか。
一度にすべてを抱え込むことはできない。
これまで「ゲームに取り組みたくない」と思ったときは,ゲームの大きさや未完成さ,完成させるためにやらなければならないことなどを考えていた。
ある時点で,"ゲームに取り組もう "とは思わなくなった。ある時点で,"ゲームに取り掛かる "という考えをやめ,"ただプロジェクトを開く "という考えに変えた
ある時点で,私は "ゲームに取り掛かる "と考えるのをやめた。「ちょっとプロジェクトを開いてみる」に置き換えた。大した変化ではないが,私の中では,何年もかけて想像を絶するほど複雑な作業をするのと,シンプルな行動をするのとでは,雲泥の差がある。私のプロジェクトを開くには,2つのクリックが必要だ。
●ここにいる間にいろいろ見てみよう
プロジェクトが開いたので,ToDoリストを見てむ。一番上には,昨夜作業していてなかなか終わらなかったことが書かれている。そこから始める。そして,リストの次の項目,さらに次の項目へと移っていく。そして,さらにやらなければならない仕事を考える。
プロジェクトを終わらせなければならないという期待に押しつぶされそうになるのを無視するには,プロジェクトの最中が一番だ。
「いつになったらこのプロジェクトは終わるのだろう」と自問している場合ではない。
あなたは,「この敵は何をすべきか?」を考えるには忙しすぎる。
「このプレイヤーはどうやって能力を発揮しようか?
「この部屋のどこにトラップを設置しようか?」
ゲーム全体は巨大で威圧感があるが,細部は小さいので,自分で何とかできる。
作業をしていても,すべては細部でできている。
計画を行動に移す
先ほどのToDoリストを覚えているだろうか? これは重要なことだ。
私の場合,非常に小さな,簡単に達成できるステップの連鎖を計画することで,仕事を整理している。そして,そのステップを1つずつ,最後までやり遂げる。そして,次の計画を立てる。
私のプロセスは,非常にライティングに特化している。あなたのプロジェクトでも,ToDoリストや開発日誌など,何らかの文章を書いている可能性がある。あなたのプロジェクトでは,コンセプトスケッチやビジュアルブレーンストーミングなど,あなたに合ったテクニックが使われているかもしれない。
私のやり方も,多くのプロジェクト計画のやり方も,基本的な考え方は同じだ。自分のやりたいことを計画する。その計画を行動に移す。行動に従って計画を完成させる。これを繰り返す。
●計画を開始する
最近,CreatorCrateにチャレンジゲームモードを入れた。プレイヤーがチャレンジモードをオンにすると,いくつかのルールが変更され,ゲームの進め方が根本的に変わる。私が気に入っているのは,「足なしチャレンジ」(クレートモード)だ。このモードでは,プレイヤーは走ったり,ジャンプしたり,登ったりすることができない。代わりに,ロボットアームを使って壁から壁へとスイングする必要がある。これにより,ゲーム全体がプラットフォーマーから「Getting Over It」スタイルの過酷な障害物コースに変わる。
やりたいことの計画を立てる。その計画を行動に移す。行動して,計画を完成させる。その繰り返し
まず,いくつかの変更を加える。私はすでに,プレイヤーがランプの上でスイングできるシステムを持っている。数行のコードを追加して,ランプを揺らすシステムを壁を揺らすシステムに変更する。また,チャレンジ中にプレイヤーが歩かないようにしたいので,歩かないようにするコードを数行追加する。たったこれだけでいいんだよね?しかし,実際にはもっと複雑だ。今回のケースでは,「アンロック可能なチャレンジモード」という考え方を理解する必要がある。
私はフリージャーナリングから始める。これはとてもラフなもので,「自分は何をしようとしているのか?」と自問することから始まることが多い。その答えはたいてい,前から考えてはいたものの,まだ明確なプランがないものだ。
私の場合はこうだ。「チャレンジモードを作って,いろいろな楽しみ方ができるようにしたい。そのためにはまず何をすればいいのだろうか?」
●プランを模索する
私は書き続ける。この段階では,多くの場合,何度も自分自身に矛盾が生じる。目標は,できるだけ自由に書いて,アイデアを追いかけ回すことだ。解決しようとしている問題が不可能に思えたら,なぜ不可能なのかを詳細に探っていけばいいのだ。
チャレンジモードのアンロックは,通常のゲームを最初に開始するようにする。
チャレンジモードがいつアンロックされるかをゲームが把握できるように,統計情報を記録する必要もある。
どのチャレンジが有効になっているかをプレイヤーに伝えるには,スタッツ画面がいいかもしれない。
スタッツ画面をチャレンジモード画面と同じにすることはできるか? チャレンジモード画面はゲーム開始時に使用され,統計画面はゲーム中に使用されるので,おそらく無理だろう。
チャレンジモードのシステムには,統計システムが必要だ。統計システムは,それだけで存在できる。つまり,私はまず統計システムを作るべきなのだ」
●計画を小さなアクションに落とし込む
結論が出たと思ったら,次のステップとして,考えたことを小さなタスクに凝縮す。これは次のようなものだ。
■統計
- 統計(プレイヤーの死亡数,タイム,現在のチャレンジモードなど)の記録 統計情報の保存と読み込み
- 統計を表示する画面の作成
- 統計にアクセスするためのメニューオプションの作成
- 死亡時のステータス表示
- ゲーム勝利時のステータス表示
- ……(他にもいろいろあるが)
- 歩くのではなく,壁にぶら下がるチャレンジモードの追加
●計画に従う
アクションを小さなアクションに分割して,次のアクションに移れるような簡単で小さなアクションにする。次から次に行動に移れるように,簡単で小さな行動に分けていこう。
物事を達成し,完了したタスクから完了したタスクへと移動することで,勢いが生まれる。この勢いは,現在の小さくて管理しやすい目標に集中するのに役立つ。これは,大きなプロジェクトにありがちな停滞感とは逆のものだ。
このプロセスを長く続ければ,古い問題の多くを解決し,新たにやるべきことがある,変化したプロジェクトになっているはずだ。
難度設定の調整
計画をこんなに細かく分ける必要があるのだろうか?
それは人それぞれだ。
私の場合,1日の中で集中力の度合が予測可能な形で変化することを知っている。朝と夜は目が覚めており,昼食後はすぐに疲れる。ある日は,ほかの日よりもエネルギッシュだったり,インスピレーションがあったりする。
1日の中で,必要に応じてツールを使い,邪魔になるものは脇に置くというサイクルを繰り返している。
●通常の難しさ
私は先ほど説明したようなプロセスでエネルギーを節約している。ときどき,ToDoリストに「Stats Systemの導入」とだけ書いて,そのままにしておくことがある。しかし,しばらくすると,次のステップに移るたびに,計画を何度も思い出すことに,余計な重さを感じるようになった。
次のステップに進めるようになるまで,行動を細分化していく。
次に何が来るかを思い出そうとする瞬間は,あなたの動きを鈍らせ,意味のある進歩を遂げられないという感覚を強める。昔の不安がよみがえってきて,無防備になってしまうだろう。このプロジェクトはいつになったら終わるのだろう?次のステップが必要なときにすでに存在していれば,そのような事態を避けることができる。書き留めておけば,計画全体を何度も見直す手間が省ける。
1つのタスクは,1分から1時間の間に終わらせるようにする。気が散っていたり,やる気がなかったりしても,たぶん終わらせることができる程度の大きさにする。とくに複雑な内容の場合は,少し時間をおいて,小さなステップに分けてみるのも有効だ。ゴールが明確でない場合は,もっと自由にジャーナリングをしてみよう。
達成方法が分からないときは,調べてみよう。新しいスキルを学ぶことも,多くのステップに分けることができる。
●イージーモードで作業する
気がつくと,何の計画もなく長時間作業していることがあるかもしれない。もしあなたが物事を成し遂げていて,1つのステップから次のステップへと流れていくことに心地よさを感じているなら,何も書き留めておく必要はないかもしれない。書かれている手順をすでに実行しているからだ。
もし,プロジェクトの大きさに気を取られたり,圧倒されたりするようなことがあれば,ステップごとに文章でプロセスを計画することに戻ってほしい。
●ハードモードで仕事をする(少しずつ)
仕事の中には,他の理由でひどい退屈なものや消耗するものがある。これをやらないと,プロジェクトの残りの部分を人質に取られてしまうだろう。
これらの作業は,こまめに休憩を取りながら進めよう。小さな作業の積み重ねが,時間をかけてこれらの課題を解決していく。何もしないよりは,少しでもやった方がずっといい。各ステップを明確に分けて,自分が思っているよりも小さくなるようにする。あまり変化していないように見えても,自分に我慢してほしい。それはそういうものだ。
●一歩離れて,別のことに取り組む
限界に達したら,しばらくの間,別の部分に取り組んでみよう。インディーズのデベロッパの中には,コーディングを休むためにアートを作ったり,音楽を休むためにコードを作ったりする人もいる。すべてが同じプロジェクトの中にあれば,プロジェクトの進行が止まることはない。
私がお勧めするのは,すぐに使える仕事だけをすることだ。計画やシステムは変わるから,今日,棚に並べたものが2年後にはゲームに合わなくなっているかもしれない。私も,CreatorCrateの中で居場所のない3Dモデルをたくさん作っていた。今,ゲームに入れているものは,ゲームの成長とともに成長していく。
すぐに使える仕事だけをすることをおすすめする
どうしても逃げ出したくなったら,ゲームジャムを使えば,プロジェクトを放棄せずに休暇を取ることができる。また,自分で小さなプロジェクトを考えれば,自分に負担をかけずに充電できる。●同じ問題を別の日に
ときどき,自分のプロジェクトでのハードワークに戻って,もう1つの塊を取り出してみよう。もしかしたら,時間が経った後に,今までなかった解決策が見えてくるかもしれない。そうでなければ,休まずにコツコツと続けてほしい。
そうでなければ,休んで,削っていけば,向こう側に行ける。
自分自身に優しく
CreatorCrateを作るのに必要な膨大な時間があったことは幸運だった。そして,今こうしてリリースすることができて,とても幸運だと思う。
このゲームをリリースするためには,私の人生において自分ではコントロールできないさまざまなことが一度に起こる必要があった。良い仕事の習慣を持っていたことは助けになったが,それ以外にも変えられなかったことがたくさんある。私がここにいることが不思議で,謙虚な気持ちになる。
また,集中力を維持するのが難しい要因はたくさんあり,他のデベロッパよりもはるかに困難な状況からスタートしている人もたくさんいる。
生産性がすべてではなく,どれだけできたかで自分の価値を決めるべきではない。プロジェクトよりも大切なのは自分自身であるということを忘れないことが,このような大事業には欠かせない。セルフケアを実践することで,困難な状況に耐え,自分の好きなことをやり続けるための適切な考え方を身につけることができるのだ。
クィアのトランス女性であるJori Ryan氏は,幼い頃からゲーム開発を趣味としており,さまざまな開発分野を独学で学んできた。多くの小規模なゲームプロジェクトを経て,7年前に初めての大規模プロジェクトCreatorCrateを立ち上げた。SFやモンスター映画への愛をインスピレーションにしている。
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※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)