Robot Squid and Spilt Milkは，無料で遊べるモバイル-PCバトルロイヤルゲームKing of CrabsのPC版の売り上げに関するデータを共有してくれた。

[GameDiscoverCoのゲームディスカバリーニュースレターは，「人々があなたのゲームを見つける方法」の専門家であり，GameDiscoverCoの創設者であるSimon Carlessが執筆しており，2020年代に人々がどのようにビデオゲームを発見し，購入するかを定期的に紹介している]

　今回の記事で，ある特定のSteamゲームの詳細な分析を紹介できることを嬉しく思う。この分析結果は，Steamの無料ゲームの「舞台裏」データセットとしては初めてのものなので，とくに期待している。

　問題のタイトルは，マルチプレイヤーの「カニのバトルロイヤル」ゲームKing of Crabs（参考URL）で，4900件のSteamレビューで79％の肯定的な評価を得ている。Robot Squidの（参考URL）Chris Dawson氏とSpilt Milk（参考URL）のAndrew Smith氏に感謝しつつ，早速，紹介していきたい。

King of Crabs：Steamの舞台裏？

　まず，経緯を説明する。King of Crabsは，2020年半ばにSteamに登場したゲームだが，それ以前に，すでにiOS（参考URL）とAndroid（参考URL）の両方で成功していたモバイルゲームだった。アーケードゲームのような楽しいゲーム性と操作性（そして良質なアートディレクション）は，PC版にも十分に活かされている。これは，ほかの多くのタッチ中心のモバイル向けF2Pタイトルとは異なっている。

　基本的には，ほかの甲殻類（99匹！）と一緒に島にいて，ほかのプレイヤーを食べたり殺したりして体を大きくしていき，最も巨大なカニが勝つ（このゲームはCrab Rave（参考URL）に何か影響を受けているのだろうか？）。 また，Steamのレビューでは興奮気味にこう書かれている。「このゲームはカニだけではなく，ロブスター，カメ，クモも出てくる！」

　始める前に，いくつかの免責事項がある。デベロッパは，正確な収益を公開しないように求めたが，それは当然のことだ。彼らは他のすべてのことを透明にしているのだから（収入曲線については抽象的に説明する）。しかし，まず最初にビデオを見ていただいて，十分に理解していただいたうえで開始したい。

Steam F2Pタイトルの内部：全体的な統計データ

　まず，King of CrabsのSteam概要ページを見てみよう。このページには，プレミアム（有料）タイトルに慣れている人にとっては，ちょっと奇妙に思える点がいくつかある。


　まず，100万件近いダウンロード数は非常に素晴らしいものだ。そして，見てくれ。返品件数は0件だ。返品できないからね。― これは通常の有料ゲームでも見てみたいものだ（笑）。累計ユニークユーザー数は76万人で，このゲームをライブラリに追加することを決めたプレイヤー数の約82％にあたる。

　また，注目すべきは King of Crabsの無料のSteamライセンスとレビューの比率は187：1，ユニークユーザーとレビューの比率は153：1となっていることだ。これらの比率は，追加，ダウンロード，プレイの間に多少の遅れがあるにもかかわらず，有料ゲームの売上/レビューの比率（参考URL）が20〜60であるのに比べてはるかに大きい（ほとんどのF2Pゲームは100以上の比率で運営されていると聞いていたのだが？）。

　余談だが，この「ライブラリに追加した人の82％がプレイした」という数字は，バンドルや極端なディスカウントがない限り，購入/プレイ比率が90％以上になる有料ゲームに比べると少ない。しかし，有料ゲームの無料版プロローグではどうだろうか？　私のところの例では，ライブラリに追加した人のうち63％しかプレイしていない。だから，さまざまな可能性がある。

　前述のとおり，実際の収益を挙げるわけではないが，King of Crabsの収益曲線がどのようになっているかを紹介する。


　背景として，このゲームにはSteamで直接販売されるストアDLCはない。すべての収益は，Steam Wallet を通じてゲーム内で個別に購入可能なアイテムから得られる。それぞれのアイテムの価格は1ドルから120ドルで，主に「パール」と呼ばれるゲーム内通貨で購入する。

　Robot SquidのChris Dawson氏にSteamでの収益化について質問したところ，次のように答えてくれた。「Steamとモバイルとの最大の違いは，プレイヤーが有料ゲームに敏感であることです。我々は多くのものを提供しており，すべてのものは時間が経てば無料で獲得できます。しかし，ネガティブなレビューを減らすためには，この部分のデザインとコミュニケーションを少し変えなければなりませんでした」

　このように，サービスとしてのゲームやマイクロトランザクションのアプローチは，Steamのプレミアムゲームよりもはるかに安定した収益をもたらす。サービス型ゲームやマイクロトランザクションは，Steamのプレミアムゲームよりも安定した収益を上げている。ここでは，Academia: School Simulator（参考URL）の深層分析の例を紹介する。


　もちろん，Academiaの収益が急上昇する理由の1つは，ゲームをセールに出すことであり，Steamプレイヤーにウィッシュリストメールやアラートを送ることができることにある。

　しかし，SteamのF2Pゲームの場合，Steamからウィッシュリストに登録したユーザーにメールが送られるのは，ゲームの発売日に一度だけだ（！）。これでは，King of Crabsのようなゲームが，発売後にSteamプラットフォームで追加のプロモーションを行うことは難しい。

Steam F2Pゲームのダウンロード数と国……

　次に，無料のKing of CrabsのSteamクライアントが発売されてから数か月間のダウンロード数の推移を見てみよう。もちろん，他のゲームと同様に，リリース後は尾を引いている。そのため，1日の平均ダウンロード数は3700となっている。

　しかし，現在でも1日2000件前後のダウンロードが毎日行われている。これはすごいことだ。


　Spilt MilkのAndrew Smith氏にダウンロード数の急増について尋ねたところ，当然のことながら，その多くはストリーマーに関連したものだと考えているようだった。同氏は，7月と8月の好調さについて，「とくにxQcOW（参考URL）とSodapoppin（参考URL）のような大物PCストリーマーが取り上げてくれたから」だと語る。

　他のいくつかのスパイクも，暫定的に同じような原因であると考えられる。Andrewは，タイの著名なストリーマーであるTakadoto（参考URL）を挙げている。また，ベトナムを拠点とするMixiGamingのビデオ（参考URL）が100万回以上再生されていることから，11月のスパイクとのタイミングが合うのではないかと考えている。同じく，中国では TikTok のインフルエンサーを使ったプロモーションが行われていた。

　また，Robot SquidのChris Dawson氏は，PCストリーマーの話題がゲーム全体の盛り上がりに貢献していることを指摘している。「もう1つの興味深い観察結果は，Steam版を発売したことで，モバイル版のダウンロード数と支出を引き上げるという，意図せずして持続的な効果があったことです。これは，このゲームが大きくBuzzったことによるものだと思います」

　過去3か月間のKing of Crabsのダウンロード数に限って言えば，とくに興味深い傾向がある。それは，Steamのウィンターセールの期間中は，F2Pゲームのダウンロード数が実際に減少するということだ。


　今年のSteamウィンターセールは2020年12月22日から2021年1月5日までだったので，アクティベーションの落ち込みと同期しているのが分かるだろう。また，SteamのUIはウィンターセールのプロモーションに合わせて大きく変更されているので，これも納得だ。

　ちなみに，ほかのSteam F2Pデベロッパとは，「Steam有料DLC」のルートを取る価値があるかどうかについて話をしたことがある。少なくとも，それらをSteamのセールに出せば視認性を高めることはできる。しかし問題は，DLCではウィッシュリストの追加があまりできないので，アップサイドが限られてしまうということのようだ。これが間違っていると思われる人は連絡してほしい。

　次に，King of Crabsのプレイヤー数を見てみよう。Steamによると，本作のSteamでの1日あたりの平均アクティブユーザー数は7284人で，過去の最大値は2万1383人だった。プレイヤー数の推移グラフを見てみると，ここ数週間はデイリーアクティブユーザー数が5000人前後で安定していることが分かる。


（同時接続ユーザーについても一言。これは非常に重要な統計であり，SteamCharts （参考URL）で King of Crabs の Steam CCU が過去 30 日間で平均 200 人であることが分かる。しかし，このゲームにはAndroid版やiOS版があり，プレイヤー数が何倍にもなっているため，Steam版のみのCCUはあまり意味がない。マルチプラットフォームのプレイヤーベースは，「このゲームは死んだ」という苦情を退けるのに十分な規模だ……）

　さらに良いことに，現在のプレイヤーを地域別に見ることができる。ここでは，有料ゲームの数字とは大きく異なることが分かる。

　注目すべきは，アジア（中国，タイ，ベトナム，韓国），ロシア，ブラジルといったF2Pフレンドリーな地域が，アメリカと並んで，King of Crabsをプレイしている国の50％以上を占めていることだ。


　しかし，多くの国がそれぞれ1〜2％の割合でプレイヤーを提供しており，参入コストの低さ（というかゼロ！）による真の地理的多様性を示している。これは，これまで見てきた多くのSteamの有料ゲームとは大きく異なる。

　また，有料ゲームでは，米国と中国が上位を占めていることが多いのだが，ドイツ，フランス，英国，カナダ，オーストラリアなども上位に含まれている（また，タイやベトナムがSteamゲームの有料版の上位5カ国に入ることはほとんどない）。

ウィッシュリストと結論

　F2Pタイトルとしては異例のことだが，King of Crabsのウィッシュリストも紹介しよう。別のF2Pデベロッパが，F2P Steamゲームではウィッシュリストよりもフォロワーが重要だと言っているのを聞いたことがある。フォロワーは重要なニュースアップデートを受け取ることができるからだ。それにもかかわらずだ。


　ウィッシュリストの削除は，有料ゲームで予想されるよりも割合としては少し低い。しかし，アクティベーションは，Steamウィッシュリストの残数よりも大きいのだ。これは，購入者がウィッシュリスト残数の3分の1から5分の1程度になる有料タイトルとはまったく異なる。これは，Steamのウィッシュリストが「ブックマーク」に多く使われ，F2Pタイトルでは変換しやすいことを示している。

　ちなみにウィッシュリストのアクショングラフはこちらだ。気になる人は参照を。


　最後に，毎日のウィッシュリストの行動グラフを見てほしい。前述した7月と11月の急上昇が見られる。また，ウィンターセールではウィッシュリストの追加がほとんどなかったことが分かる。


　以上が，成功したF2PタイトルのSteamでの舞台裏を示すグラフだ。もちろん，無料でゲームをリリースすれば良い結果が得られるほど簡単ではない。F2P スペースで注目を集めるのはそれほど簡単ではないのだ。とくにモバイルでは，本格的な有料ユーザー獲得の裏付けがなければ，そうはいかない。

　では，広告はどうだろうか？　SteamのF2Pゲームでは広告を掲載しないことが多いのだが，これは多くの広告ネットワークが最近ではモバイルに特化していることと，プレイヤーのネガティブな反応のためだ。しかし，Robot SquidのChris Dawson氏は次のように語る。「King of CrabsのiOS版とAndroid版では広告を表示していますが，そのほとんどがインセンティブ付きです。これはSteamにはない収益源です」

　しかし，「……Steamのプレイヤーはモバイルよりも平均してIAPを多く使うので，それを補っています」と付け加えた。

　King of Crabsのようなタイトルは，適切な手を打てば，評価の高いSteam F2Pタイトルを成功させることができることを示している。また，Steamだけで75万人のプレイヤーを獲得したことは（PC，Android，iOSの合計では1000万人以上！），喜ばしいことだ。とくに，Steamの有料ゲームが5000本の販売に到達するのに苦労することもあるこの業界では。

　もちろん，King of Crabsは収益の大半をSteam外で得ていることは間違いない。しかし，Steam版の存在は，デベロッパにとっては有益で利益をもたらし，プレイヤーにとっては楽めるものとなっている。

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