【ACADEMY】より良いプロデューサーになるための5つのTips
プロダクションについて考えるとき,我々は何を思い浮かべるだろうか? アジャイルとウォーターフォール? TrelloとJIRAの違い? スプリント,タスク,マイルストーン?
どれも重要だが,それらは単なるツールであり,ルールでしかない。プロダクションやプロデューサーを成功に導くものではないのだ。では,どうすればいいのだろうか? 基本的には,自分のフィールドを知る必要がある。しかし,それが分かっているとき,ほかに何が重要なのだろうか?
13年間,チームやプロジェクト,スタジオを管理してきた私が,良いプロデューサーになるための5つのポイントを紹介する。
Tips 1:組織を別のレベルに引き上げる
プロデューサーは,たくさんの皿を回さなければならない。それがこの仕事の基本的な定義だ。全員のタスクを常に把握していなければならない。
忘れないようにする必要がある。納品物を追跡し,納期を守り,経営陣へ報告し,チームメンバーを調整し,スプリントを計画し,ミーティングに参加して ミーティングのメモとアクションの記録する ― それが月曜の朝に行われるのだ。
では,どうやってそれを行うのだろうか? 驚異的な記憶力を持っていない限り(私は持っていないが),すべてを記録する方法を見つける必要がある。以下に,私が長年かけて学んだTipsをいくつか紹介しよう。
To Doリストの目的は,あなたのために物事を記憶することだけではなく,物事を保持したり,次に何をしなければならないかを心配することなく,脳を解放して他のことをさせることにある。
つまり,リストを完全に信頼できないのであれば,リストを持たないほうがよいということになる。なぜなら,脳を自由にすることができず,覚えておかなければならないと知っている場合よりも,実際には物事を忘れる可能性が高くなるからだ。
●ダンプリストを作る
To Doリストを最新の状態に保つには時間がかかる。毎日,リストを更新する時間が必要になる。しかし,1日中忙しくて,新しいタスクが入ってきてもリストを更新する時間がないこともあるだろう。そこで,どんなリマインダーでも,どんなフォーマットでもいいので,ダンプリストを用意しておき,毎日時間をかけてそれに目を通し,タスクをトリアージするのだ。
●唯一の解決策は存在しない
私はタスクを管理するためにいくつかの異なるツールを使っている。
- 個人的なTo Doリスト:重要なのは,1日に3つのタスクだけを目標にすることだ。それ以上になると圧倒されてしまうだろう
- プロジェクトごとのTo Doリスト:プロジェクトの重要なタスクを整理し,追跡できる(開発ロードマップとは異なる)
- メールの整理:スヌーズ機能は親友のようなもので,少なくとも週に一度は受信箱をゼロにすることを目標にしよう
- 他の人に割り当てられた行動のリマインダー(その人がやったかどうかを追いかける必要がある):私はSlackアプリのTaskOnBotを使っているが,これはミーティングやSlackチャットでのアクションにリマインダーを設定するのに最適だ
Tips 2:バカげた質問をする
とくにプロデューサーになりたての頃や,仕事をうまくこなさなければならないというプレッシャーを感じているときには,分からないことがあっても賢そうにうなずき,重要そうに見えるメモを取りたくなるものだ。知っているはずなのに,もしかして忘れているのではないか,質問したら誰かを困らせたり,バカにされるのではないかと不安になり,そうせずにはいられないのだ。
現実には,バカげた質問をすることが,デキるプロデューサーになるための鍵だ
実際,デキるプロデューサーになるためには,くだらない質問をすることが重要だ。このような質問をしないと,思い込みや誤解が生じ,プロジェクトが間違った方向に進んでしまうだろう。私はよく,自分が何も知らないかのように人に説明を求める。また,相手が言ったと思われることを繰り返し言って確認することもある。
重要なのは,「自分はその話題を本当に理解しているのか」ということだ。あとで誰かに聞かれても,自信を持って説明できるだろうか?
Tips 3:決定事項の記録
ゲーム開発には長い時間がかかる。多くの人が多くのことをし,ご承知のとおり,前もってすべてを設計することはできないので,プロジェクトの方向性を決める決定は常に行われる。
そのとき,ある決定が最高の決定に見えることもあれば,最悪の決定に見えることもある。しかし,今行われた決定はあとに影響を与える可能性があり,その影響がマイナスであれば,上司であれ顧客であれ,利害関係者はその理由を知りたがるだろう。
だから,決定事項を記録することは,プロデューサーの重要な役割だ。また,プロジェクトの進行状況を記録するために,すべてのミーティングのメモを取ることも必要だ。何が話し合われたのか,何が合意されたのか,誰が関与したのか,そしてその根拠を記録することが最も重要だ。
そして,その決定が影響を与える利害関係者に,その決定を確実に伝える。場合によっては,明確な「OK」が必要かもしれないし,ただ知らせればいいかもしれない。我々はSlackアプリCloverpopを使って決定事項を追跡している。このアプリでは,関連するプロジェクトチャンネルに詳細を追加したり,関係者をタグ付けできる。
Tips 4 複雑なことはシンプルに
プロデューサーの仕事では,主にコミュニケーションが重要だ。チームと協力して納品すべき開発やアートのタスクを特定するにしても,チームのために新しいプロセスを構築するにしても,明確に,分かりやすい方法で伝えることが重要となる。
しかし,伝えようとしている情報が複雑で,多くの流動的な部分,依存関係,未知数,見積もり,人が関わっている場合,それは容易なことではない。
複雑なものを分かりやすく伝えることは,私にとって何年もかけて学んだスキルだ
複雑なものを分かりやすくすることは,私にとって何年もかけて習得した技術であり,今でも常に学び続けている。私の場合は,次のような点が役に立った。
- 物事に構造を持たせることは,将来的に時間の節約になるだけでない。伝えたい情報に一貫したフォーマットを提供することで,自分自身のコミュニケーションを容易にし,定期的に一緒に働くチームが何を期待しているのかを理解するのに役立つ
- 相手が理解したかどうかではなく,自分がきちんと説明できたかどうかを常に確認する。これは微妙なラインだが,重要なことだ。くだらない質問をしてもいいという許可を常に与える
- 新しいプロセスを作るときには,システムで考えよう。上位の要素は何か,それはどのように流れているのか,それらはどのような要素で構成されているのか,下位の要素はどのような要素で構成されているのか……。上位の概要を簡単に見られるようにすることで,その後に受け取る複雑で広範な情報を文脈に沿って整理することができ,より理解しやすくなる
Tips 5:どのレベルの詳細が必要かを知る
すべてのチーム,すべてのプロジェクト,すべての利害関係者,そしてすべてのプロデューサーはそれぞれ違う。どのようにプロダクションを管理すればよいのか,「1つで万能」なものはない。
プロジェクトやチームを最適に管理するためには,どのようなレベルの詳細が必要かを考えることが重要だ。たとえば,チームメンバーの中には,自分のタスクをより細かく管理したい人もいれば,より自由に管理したい人もいるだろう。プロジェクトによっては,他のプロジェクトよりもリスクが高かったり複雑だったりするので,より詳細な検討が必要だ。また,クライアントや上司によっては,より多くの報告を求める人もいる。
プロデューサーの仕事は,基本的には,チームが最高の能力を発揮できるようにすること,そしてチームが最高のプロジェクトを,可能な限り予算どおり,スケジュールどおり,仕様どおりに提供できるようにすることだ。
だから,プロジェクトやチームの具体的なニーズに合わせて,自分のアプローチを調整できるようにすることが重要なのだ。新しい人と初めて仕事をするときには,それを見極めるための時間が必要になるだろう。
要するに,プロデューサーとは,JIRAのベストユーザーであるとか,アジャイルを熟知しているとかいうことではなく,可能な限り最高のプロジェクト結果を得るために,人々が彼らの能力を最大限に発揮できるように促進することであり,それを実現するためのシステムとプロセスを設定する人のことなのだ。
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Ella Romanos氏は,Fundamentally Gamesの最高執行責任者だ。Fundamentally Gamesは,デベロッパや組織に戦略的なサポートを提供し,より良いゲーム,より成功するゲーム作りを支援している。
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