App Annieが提供する分析ツール「Game IQ」のオンラインセミナーをレポート。市場分析を簡単かつ高精度に行えるツールが登場
「Game IQ」では,2万8000本以上のゲームタイトルそれぞれに細かくタグ付けをして分類している。タグには,コアゲーマーやカジュアルゲーマーといったそのゲームが対象とするプレイヤーを示す「クラス」,RPGやFPSといった「ジャンル」,同じRPGでもアクションRPGなのかターン制RPGなのかなどを示す「サブジャンル」,IPを使っているかどうかやアートスタイルなど独自要素を示す「属性」がある。
これらのタグ付けにより,「Game IQ」はユーザーが本来知りたかったデータを示せるという。似たようなツールは他社にもあるが,ここまで多くのタイトルをカバーし,詳細なタグ付けをしているのは「Game IQ」だけとのこと。
「Game IQ」は,App Annieが提供しているスマートフォンゲームのマクロトレンドのデータ作成に使われている。セミナーでは,ハイパーカジュアルゲームのマクロトレンドの事例が示された。
例えばここ数年,注目を集めているハイパーカジュアルゲームであるが,「成長している」と感じる人は多くとも,その詳細な推移まで知っている人はそんなにいない。そこで「Game IQ」を使うと,「ハイパーカジュアルゲームは,2020年上半期におけるカジュアルゲームのダウンロード数の約30%を占める」「2年前の同時期から5倍近く増加」といった詳細なデータが得られる。ほかにも「マッチ3パズルの成長推移は?」「この国では人気だが,ほかの国ではどうか?」といったさまざまな分析が可能だ。
また「世界でもっともプレイ時間の長いサブジャンルと,その中でもっとも遊ばれているタイトルは?」「もっともマネタイズがうまくいっているジャンルとサブジャンル」といった逆引きの分析や,「このジャンルやタイトルのプレイヤーは,ほかにどんなジャンルやタイトルを遊んでいるのか」といったクロスジャンル分析もできる。
AppAnnieが,「Game IQ」を企画・開発した理由は2つある。1つは,アプリストアにおけるゲームのカテゴリー(ジャンル)分けが機能していないこと。これはパブリッシャが自由にカテゴリーを登録できることが原因で,例えば「Minecraft」はアーケードゲームに分類されているのが現状だ。
もう1つは,業界のスタンダードとなるような客観的な分類がないこと。例えば「RPG市場を調べたい」と考えたときに,収集するデータが個人の認識に依存しているので,どうしても主観が入ってしまう。仮に客観的なデータを収集できたとしても,日々変化する数字を継続的に追いかけるのは困難である。
そこでApp Annieは,データサイエンスと機械学習を活用してゲーム市場の客観的なデータ分析を可能にする「Game IQ」を開発した。開発にあたっては,さまざまなゲーム企業が協力しており,その中には日本の大手企業も含まれるという。そうしたゲーム企業の社内にも分析チームは当然あるが,その膨大なデータ収集作業を「Game IQ」で自動化したいというのが本音のようである。
それでは「Game IQ」は,ゲーム企業において具体的にどのようなケースやタイミングで活用できるのか。セミナーでは,3つの使いどころが示された。
1つめは,「新しい市場や,フィットする市場を発見する」。今,日本のゲーム市場は海外企業の参入などの理由から非常に厳しい状況となっており,ゲームを作ってもランキングに入らず,当初の試算どおりの収益が見込めない。そうなると海外進出も視野に入れなければならないが,そのときに「Game IQ」を使えば,実際に投資価値がある新しい市場や自社タイトルがフィットする国や地域をいち早く見つけられるというわけである。
2つめは「確度の高いゲームを開発する」。IPやコンセプトなどゲームの核となる部分や,パブリッシングする国や地域が確定していて,それらに沿った適切なジャンルやマネタイズをどうするか考えるときに,「Game IQ」のデータがあればヒットの精度を上げる意思決定が可能となる。
3つめは「正しい情報で意思決定して収益性を高める」。例えば,昨今では開発コストが膨大になり,回収リスクがあることから海外展開に消極的になっている企業も少なくない。そのとき,日本国内と同じくらい収益が見込める国や地域があることをデータで表せれば,より正しい意思決定ができる。そうしたケースで役立つのが「Game IQ」である。