【月間総括】Nintendo Switchの品薄はいつまで続くのか

 今月は,PlayStation 5のスペックについてお話しする予定だったが,変更して3月20日に発売された「あつまれ どうぶつの森」の人気過熱とNintendo Switchの品薄について触れたい。以前,新型肺炎の影響でNintendo Switchの生産が滞っていることは述べた(関連記事)。
 その際は,新型肺炎の影響が生産基地である中国に留まっていたため,生産面での話に終わったが,今回は需要の急増について話を進めたい。

 現在,Nintendo Switchは店頭でほとんど見かけない状況になっている。しかも,これは国内だけでなく世界的な現象である(関連記事)。

 とくに日本では,3月以降のSwitchの争奪戦は過熱の一途をたどっている。BCNも報道したように,Switchはフリマアプリでの価格が,新品を1万5000円以上も上回っており,発売から3年が経過したゲーム機とはとても思えない状況にある(参考URL)。

 ファミ通のデータによると,3月のSwitchシリーズの販売は83万台だが,3月第3週はローンチの数字をも上回り,月末には店頭から在庫がほぼ一掃されたなかでの数字である。供給があれば3月の実売はクリスマス商戦期並みあるいはそれ以上だったと推測される。Switch Liteの国内販売は,決算説明会での古川社長の発言から,任天堂の想定を下回る推移だったと見ており,年末時点で在庫がやや過剰だったことも幸いしたと考えている。Switch Liteがこの時点で在庫が乏しい状態だったなら,さらに売り場は混乱していただろう。
 現在,政府は三密の状況を避けるように,企業や一般に要請している。この状況下でSwitchを店頭に並べるとこの三密の状況を作りだしかねない。かといってすべてを通販にするわけにはいかない。宅配便も含めた物流は自粛によって逆に負荷が強まっており,さらに負荷を増すわけにもいかないからである。

(出所)ファミ通
【月間総括】Nintendo Switchの品薄はいつまで続くのか

 また,米国も似たような状況にあるようで,NPDの調査によると2020年3月のSwitchの販売は,2017年のローンチ時の台数を上回る台数となったようだ(参考URL)。欧州は明確な調査データが一般には出ていないため,任天堂の決算発表待ちだが同じような状況だと推測している。

 エース経済研究所では,Switchの需要がこれほど高まった要因はおそらく3つであると考えている。

  1. 「あつまれ どうぶつの森」の発売効果
  2. 新型コロナウイルスの影響による巣ごもり消費需要の増加
  3. Switch Liteが発売されて以降,Switchの魅力が高まったこと

である。

【月間総括】Nintendo Switchの品薄はいつまで続くのか
 多くの方は,1.の「あつまれ どうぶつの森」効果だけと見ているかもしれない。たしかに,「あつまれ どうぶつの森」は発売3日間でダウンロードカード込みの実売が188万本に達したが,これよるハード牽引効果は15万台〜20万台といったところである。
 そして2.については,世相を反映した巣ごもり的な消費が増えていること,さらに店頭に在庫がないことで,ユーザーがよりゲーム機を欲しくなるという現象が起こっているのであろう。

 3.は,Switch Liteの登場で,逆に,テレビに繋げられて自由度の高いSwitchの販売数が増える現象が見られるようになっていたことによるものである。いつもここで取り上げるグラフであるが,発売からの250週の週販の動向を見ても明らかで,Switchの販売トレンドがDSのブームと同様に上方にシフトしている。このままで推移すれば,3DSにはキャッチアップできるだろう。

 Switch,Switch Liteと「あつまれ どうぶつの森」は,いつでもどこでも遊べるうえに,新型コロナウイルスで暗くなりがちな世相に対して明るい雰囲気が大いに受けたということであろう。その結果は,「あつまれ どうぶつの森」はパッケージとダウンロードカードだけで361万本のセールスとなっており,3DSの「とびだせ どうぶつの森」を大きく上回る初動にも表れていると言えるだろう。

●発売から250週のゲーム機販売推移
(出所)ファミ通
【月間総括】Nintendo Switchの品薄はいつまで続くのか

 最後に,Switchシリーズの品薄がいつまで続くか? である。
 自分の知り得る範囲内で,発売から4年めにここまで極端な品薄になったゲーム機を見た経験がなく,類似の事例は小型化で再活性化したゲームボーイぐらいしかない。ゲームボーイにしても極端な品薄になったわけではないので,今後の予想は非常に難しい面がある。
ただ,こちらの記事でもあるように,任天堂は増産を目指す方針のようだ。
 エース経済研究所として言えることは,増産は容易ではないということだけだ。中国のサプライチェーンについては,新型肺炎の封じ込めに成功しつつあることもあり,生産は回復しつつある。しかし,今年は5Gが本格始動することもあり,スマートフォンメーカーは5G対応端末の準備を進めている。そのため,DRAMの搭載容量が増える傾向が強まっており,製造台数が一桁以上少ないゲーム機用DRAMの調達が難しいのである。しかも,足元の米国・国内需要はクリスマス商戦期並みであるが,例年,この時期は閑散期であり,生産量自体それほど多くないため,よほど周到に準備していないと生産に時間がかかる半導体の調達は難しいのだ。

 2017年のSwitch発売後の品薄も解消までほぼ1年を要した。
 新型コロナウイルスの影響が長引くと,品薄解消には相当な時間がかかる可能性もあるだろう。