Dungeons&Dragonsの自由度を再現しようとするインディーズRPG「Project Witchstone」

Spearhead GamesのMalik Boukhira氏は,このゲームにより,プレイヤーがいかに「馬鹿げたことをする」ことができるようになるかについて説明している。

 相互作用はビデオゲームの魅力の中心となるものだが,それには限界がある ―とくにRPGの物語に関しては。

 プレイヤーは,本質的に開発者が提供するメカニズムに制約されており,最も徹底的な分岐構造でさえ,ゲームに記述されたストーリーのみを伝えるにすぎない。しかし,モントリオールに本拠を置くインディ系スタジオのSpearhead Gamesは,やがて登場するProject Witchstoneでこれを変えることができると考えている。

 スタジオの共同創立者でクリエイティブディレクターであるMalik Boukhira氏は,Skyrimをこのジャンルの限界の例として挙げている。Spearheadは,「すべてが因果関係によって駆動される」ゲームを作りたかったのだ。

 Project Witchstoneはおそらく注目には値しない。Neverwinter Nightsなどと同系統のオリジナルファンタジー設定のトップダウンRPGだ。オープンワールドではないが,Spearheadは,大きくて可能性に満ちた複数の場所を約束している。

「あなたは選択を通してロールプレイします。もしあなたが大量殺人者であるという冒険を選んだなら,あなたはその地域で一番のお尋ね者となり,それに対処しなければなりません」

 いくつかの手作りされたクエストを完了する必要はあるものの,プレイヤーに渡されるタスクの多くは,エリア内のさまざまなキャラクターのニーズや,支配を争う派閥の目標に基づいた動的なものだ。Boukhira氏は,ゲームにはあらかじめ決められた物語はないが,「プレイヤーが行うことを中心に動的に構築された物語がある」を主張している。

 「ある意味では,このゲームではプレイヤーによるすべての行動が意思決定であると言えます」と氏は語る。 「従来のアプローチのような,分岐点というのはありません。代わりに,ゲーム内のすべてのキャラクターは反応を出力するAIを持っています。発生する可能性のあるイベント,課題を抱えた派閥といったものがあります。これらはすべて動的です。その後,プレイヤーの入力に基づいて,物事はいずれかの方向に形作られていきます」

 Spearheadは,Dungeons & Dragonsのような卓上RPGが大きく影響していると公然と宣言しており,「ペンと紙のキャンペーンの楽しさと自由度」を提供するとさえ主張している。しかし,これは確実に技術的に不可能だ。TRPGプレイヤーは想像できるあらゆるアクションを実行できるが,ゲーマーの行動は開発者がゲームにコーディングしたものに制限される。

 「そうですね」とBoukhira氏は認める。 「アクションに関しては何もできません。それは我々が提供しなければならないものです。そこで,我々はたくさんの[システム]を提供します。人を刺したり,こっそり歩き回ったり,盗んだりできます。変装することもできます。基本的にできる限りたくさん作成します。しかし,本当に自由になる部分は,これらすべてのアクションを自由に使用して,世界で反応を生み出すことができるというところです」


 これはゲームプレイのデモを使って詳しく説明された。Boukhira氏は,2つの戦う派閥の間に挟まれた村でデモを始めた。そこで地元の男性に嫌がらせをしている兵士を発見する。これはスクリプト化されたイベントではない。ある派閥の兵士が別の派閥の支持者に遭遇したときに発生する。プレイヤーは介入することもできれば,そのまま放置しておくこともできる。Boukhira氏は警備員を呼んで,男を解放することを選択した。そして,ほとんど密告者のように,被害者はそれを覚えている。

 さらなる例は,Boukhira氏がもう一方の人に花をあげようとしたときに示された。男は逃げてしまったのだ。「それは彼が私を恐れていて,私は忘れていたからです」と氏は語る。「人々は私が彼らにしたことの記憶を持っています」


「我々の目標は,ただ馬鹿げたことをするのをサポートすることです。なぜなら,ストーリーに関心がない人もいるからです」

 「小さな出来事でさえ,あとで結果をもたらします。ですから,町は(以前)私がその男を助けたことを知っています。彼の友人はそれに好意的かもしれませんが,彼の敵はそうではないかもしれません」

 Spearheadがとくに力を入れているのは,対話システムだ。もちろん,プレイヤーが選択できる事前に作成されたオプションがあるが,より幅広い動詞を備えた一連のドロップダウンメニューを介して,独自のコマンドを提供する機能も用意されている。Boukhira氏は,別の村人に特定のキャラクターを殺すか,特定の場所で彼に会うように尋ねることでそれを実証した。すると,卓上RPGの場合と同様に,サイコロを転がして,その人が従うかどうかが決定される。

 プレイヤーは自分で目標や課題を設定することもできる。Boukhira氏は,ある派閥の近くの守備隊に潜入してリーダーを暗殺することに決め,その道中でステルスシステムを披露した。彼が失敗し,かつ守衛に殺されなかった場合,彼はその結果を受け入れていかなければならない。

 デモなのでBoukhira氏は自然にやってのけているが,ここで氏はより幅広い選択肢に直面する。

 「犯罪現場に証拠を残して,ほかの誰かを責めることもできました」と氏は語る。「それに関連するものは何も盗みませんでしたが,これも可能性の1つです。これが,システムの自由度に関して我々が言いたい部分です。我々のシステムでは回答は一つではありません。私は彼を刺すことができます,私はこっそり,証拠を置くこともできました。私は人々と話をすることができます。― おそらく入るために警備員を買収することもできました。そのため,アクションの種類は限られていたとしても,それらの使い方は非常にオープンです」

 利用するためにシステムの領域をプレイヤーに与えることは,課題の半分にすぎない。Spearheadは,それらがどのように使用されるかを何らかの形で予測する必要がある。彼らは,プレイヤーが殺人の現場に何を残すを想像し,ゲーム全体で適切な影響が感じられるようにする必要がある。Boukhira氏によると,これはNPCの背後にあるAIと,どのように物事に反応するようにプログラムされているかによってある程度処理されるという。キャラクターには性格特性と目標が与えられており,それらは彼らのリアクションに影響して,プレイヤーにさらなる多様性をもたらす可能性がある。

プレイヤーがするのは,NPCにコマンドを与えて,ある程度まで自分の対話を作成ことだけだ。そこでは重要キャラクターを殺すように指示することさえできる
Dungeons&Dragonsの自由度を再現しようとするインディーズRPG「Project Witchstone」

 「最大の難問は,物事に反応させることではなく,物事に一貫したストーリーを作成するような興味深い方法で反応させることです」と氏は語る。「これはRPGであり,何かに向けて構築したいと考えています」

「リーダーを刺し殺し,証拠を残し,おそらく守衛を買収することもできます。そのため,アクションの種類は限られていても,使用方法は非常にオープンです」

 しかし,非常に多くのシステム(対話,派fact,動的イベント)では,プレイヤーのコンテンツの大部分をロックするような方法でこの自由を脅かされる危険はないという。この村の全員を殺害することは,Skyrimで同じことをやるときよりも冒険者にとってはるかに有害であるように思える。

 「私はそれについて2つの理由でまったく心配していません。1つは,彼らがそれを破ったならば,彼らはわざとそれをしたのです。そして,それが彼らの楽しみなのです」第二に,あなたが皆を殺そうとするなら,当然それによる結果があります」

 「あなたは選択を通してロールプレイします。あなたの冒険が大量殺人者になることであり,その地域で一番のお尋ね者ということになったら,それがあなたの冒険になるでしょう。それがあなたがやろうとしたことです。あなたが村に入ると,誰もが逃げ出し,衛兵が駆けつけます。あなたはそれに対処しなければなりません。おそらく,あなたはテロリストの派閥に加わることになるでしょう。それがあなたの物語になります。我々はそれでもかまいません」

 Boukhira氏は,Project Witchstoneで何もすることがない状態にするためには「全員を殺さなければならない」ことを強調した。たとえそうしても,まだ探検すべきダンジョンは残っている。ダイナミッククエストシステムは,すべてのキャラクターが,実行するタスクを潜在的に与えることができることを意味する(ただし,すべてのメインクエストの提供者を殺すプレイヤーは,農民のために鶏を捕まえるようなことに何時間も費やすしかなくなると警告している)。

 「それは重要なすべての人を殺したあなたのせいです。しかし,それを行うのは非常に難しいでしょう。たとえば,派閥リーダーには護衛がいます。ですから,成功裏に全員を殺害することはそれ自体が成果と言えるでしょう。

 氏は次のように結論付けた。「我々の目標は,馬鹿げたことをするのをサポートすることです。なぜなら,人はときどきそれを好むからです。彼らは物語を気にせず,彼らに反応する世界で遊ぶことだけを気にかけます。そして自分だけの楽しみを見つけるのです。我々はそれで構いません。我々は,殺人浮浪者になりたいといった人を制限したくはないのです」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら