【グローバル市場から見るe-Sports最新動向】世界最大級のe-Sports大国,中国の現状

 Tencentの調査によれば2017年時点で,e-Sportsの視聴者はグローバルで3億9千万人存在し,中国が占める割合はそのうち64%と,中国は世界最大数の視聴者を抱える国となっています。
 また,ゲーム市場の調査会社,Newzooによると,2019年のグローバルのe-Sportsの市場規模は,前年比で27%増加し,11億ドルに達すると予測しています。
 世界で一番大きなe-Sports市場は米国で,2019年の市場規模は4.09億ドルにのぼり,次いで中国が2.1億ドルの位置につけています。

 市場規模は世界で2番めですが,その勢いは非常に強く,さまざまなe-Sportsの展開では,すでに中国が世界を牽引しているといっても過言ではありません。
 熱心な視聴者,パブリッシャの強力なサポート,対内投資などの恩恵により,中国のe-Sports市場は急速な成長を続けており,グローバルのe-Sportsの注目拠点の一つになっているのです。
 現在中国では非常にたくさんの動きが起きており,もちろんそのすべてが成功するわけではありません。しかし,なにが成功しなにが失敗したのか,それを把握することが今後の世界的なe-Sportsの潮流を見極めるうえで重要になることは間違いないでしょう。

 では,その中国のe-Sports市場はどの程度の規模を持ち合わせているのでしょうか。また,どういったゲームが視聴者の興味を引いているのでしょうか。そして,急成長中の中国のe-Sportsシーンにはどのような将来が待ち受けているのでしょうか。
 今回は,グローバルゲーム市場において最大の好機が潜む中国e-Sports市場の最新の調査結果を紹介します。


中国で人気のe-Sportsは?


 中国の人気のスポーツタイトルの代表的なのは,Riot GamesのLeague of Legends(リーグ・オブ・レジェンド,略称:LoL)」です。中国の新聞,China Dailyによると,2017年時点でLeague of Legendsプロリーグのライブ配信は70億回視聴され,合計視聴時間は18億時間にのぼっていました。

LoL World Championshipの放映を賑わせたARによるエルダードラゴン
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 Tencentのモバイル向けMOBAである王者栄耀も人気のタイトルです。王者栄耀は,2017年には中国の1億2000万人のプレイヤーを魅了し,19億ドルもの収益を生み出し, King Pro League(KPL)と呼ばれるe-Sportsトーナメントを開始しています。2018年のスプリングシーズンのコンテンツは40億回視聴され,前年比で42%も増加しました。

 中国で支持されているe-Sportsはこれらに留まりません。2017年末から配信された潜入系FPSのCrossfire(クロスファイア)は,ワールドチャンピオンシップが3750万人のユニークビューワーを動員し,前年比で50%の伸びを見せました。
 また,今や中国は世界中のe-Sportsチームの拠点となっています。Shanghai DragonsはOverwatch Leagueに参戦した初の中国のフランチャイズチームの一つであり,中国国内におけるOverwatchの運営元であるNeteaseがスポンサーとなっています。


中国のe-Sports視聴者の属性は?


 カナダ出身の実業家のCalvin Ayre氏のレポートによると,中国のe-Sportsの視聴者は80:20の男女構成比であることが分かっています。
 年齢層は驚くほど多岐にわたります。若年層が多くを占めるものの,e-Sportsファンの29%は子育て世代であり,そのうちの59%が31〜40歳の年齢層に属しています。
 また,こうした視聴者はe-Sportsにおけるリテラシーが高いことも分かっています。また,e-Sports視聴者の36%が過去2年以内に視聴を始めたと回答しています。
 現在,世界一のe-Sports視聴者数を抱える中国ですが,今後もその数は増加の一途をたどり,さらなる成長を続けていく可能性が非常に高いことが見込まれています。


中国の視聴者はe-Sportsをどのように視聴しているか?


中国最大のe-Sportsトーナメントの一つとして成長を続けるKPL
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 欧米諸国では,Twitchが動画ストリーミングのプラットフォームとして広く支持されています。しかしながら,中国においては,中国独自のストリーミングプラットフォームが市場を独占しています。
 中国のe-Sports市場で首位を占めるストリーミングプラットフォームは,Huya,Panda.TV,Doyou TVなどです。例えばHuyaはKing Pro League(KPL)の配信独占権を持っており,DoyouはInvictus Gamingのようなローカルの主力e-Sportsチームと独占的パートナーシップを組んでいます。

 中国のe-Sportsの視聴理由に注目すると興味深い事実が浮かび上がってきます。Tencentの調査によると,自分のゲームプレイの改善を目的としてプロのe-Sportsを観戦するプレイヤーは47%いますが,その残りの多くは娯楽目的で視聴していたのです。

 e-Sportsを流すプラットフォームは,今後,広告を流す媒体としても外せないものとなるでしょう。これほど多くの人が,積極的に視聴する動画プラットフォームはそれほど多くは存在しないため,広告主にとっては魅力的な媒体なのです。


中国におけるe-Sportsの賞金プールの規模は?


 中国は莫大なe-Sportsの賞金プールを抱えています。e-Sportsearnings.comによると,e-Sports史上最大規模の賞金プールを誇るe-Sportsイベントのうち3つは中国で開催されていました。
 少し古いデータになってしまいますが,2016年と2017年に開催されたLoLのファイナルチャンピオンシップや,2015年のDota2 Asian Championship (DAC)の賞金総額は1300万ドルでした。グローバルな規模ではまだ大きな金額とはいえないものの,中国の賞金プールの総額は,ヨーロッパの各イベントよりもはるかに大きいです。

 世界のe-Sportsイベントで誰がが賞金を獲得しているかを知ることで,中国がグローバルのe-Sports経済全体に及ぼしている影響をおのずと理解することができます。
 たとえば,2018年のe-Sportsで獲得した賞金のランキングのTo10の中に,中国のプレイヤーが4人もランクインしていました。

 中国国内の大会では,Newbee,LGD,Vici Gaming,Invictus Gamingなどの中国に拠点を置くトップグローバルe-Sportsチームが,賞金の多くを獲得しており,中国のe-Sportsシーンをさらに盛り上げています。

中国トップクラスのe-SportsチームNewbee
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まとめ


 今後の中国のe-Sportsはどのように発展していくのでしょう? 中国のe-Sports市場の成長予測は簡単ではありません。巨額の投資とブランドキャッシュが同市場に流れ込んでいるものの,今後どういった中国国内の産業分野が台頭するか予測することは困難を極めることでもあるのです。

 とはいえTencentなどの中国企業は,中国のe-Sportsの成長見通しにおいて強気の姿勢を保っています。Tencent,中国におけるe-Sports市場は2020年までに15億ドルに達すると予測しており,これは2017年比で約2倍の規模に相当します。
中国はすでに巨大なe-Sports市場を抱えながらも,今後も加速度的な成長が見込まれています。


 e-Sportsタイトルそのものを投入して勝負するだけではありません。巨大なオーディエンスと市場では,その周辺に新たなビジネスチャンスも広がっているのです。多くの企業がそのメリットを享受し,また,モバイルe-Sports開発者やブランド,膨大な視聴者へのリーチを狙う広告主にとっても,大きな可能性を秘めた市場となっていくのではないでしょうか。

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■執筆者プロフィール
王 亚婕(オウ アショウ)
 Mobvista Japan シニアビジネスデベロップメントマネージャー。中国およびイギリスで学び,東アジアの発展とグローバル経済を専攻。2016年12月にMobvistaの日本チームの最初のメンバーとなる。ディマンド側の主力セールス担当者として,日本での売り上げをゼロから伸ばす。2018年11月に日本に常駐,アドテックマーケテイングで日中の架け橋になるよう取り組んでいる。