[TGS 2019]NTTドコモが進める5G,ストリーミング+視聴者参加ゲームで真価は見えたのか?

会場内にはあちこちに「5G」の垂れ幕が。これはいわゆる中央モールバナー(一口45万円で16箇所)
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 次世代モバイル通信網,いわゆる「5G」は日本では2020年から商用サービスが開始される。それに先駆けてNTTドコモは2019年9月からプレサービスを開始する。「低遅延」「大容量」「多接続」をモットーとする5Gは,ゲームとの相性がよいと目されており,東京ゲームショウ会場では,NTTドコモが大々的に5Gを喧伝していた。会場内外のあちこちに垂れ幕が下がっており,ドコモと5Gをアピールしていた。

 NTTドコモと5G,そしてゲームの関係はドコモブースにあった文章が端的に表している。

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 うむ。さすがにいいコピーライターを使っている。
 5Gが特徴として掲げる「低遅延」「広帯域」「多接続」といった特徴をアピールする際に,ゲームというのは非常に都合がよいテーマであり,ゲーム業界としても新たなビジネスチャンスにつながる基盤となりうる。たとえあまり回線を問わないゲームであっても,アプリがサクっとダウンロードされるだけでも大きなメリットにはなるだろう。

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 会場のNTTドコモブースでは,多くの試遊スペースとイベントステージを用意しており,実際に5G回線を使ったデモも行われていた。

 ブース内のPCは100台以上があるそうだが,そのすべてが5Gで接続されているわけではないとのことだった。4Gのものも含まれている。
 ブースの裏手に行くと両端にアンテナが立てられているのが見える。その2本のアンテナは,ドコモのコアネットワークに接続されており,近くの基地局からファイバーを引っ張ってきているそうだ。ただ,接続される先はほぼコアネットワークの外側のインターネットになるようで,5G本来の意味での低遅延環境が構築されているわけではないようだ。
 2本のアンテナ間でデータをやり取りするような説明も聞いたので,デモによっては,内部だけでデータを回していたものもあったのかもしれない。そちらであれば,非常に低遅延な接続環境になっていただろう。

会場内に立てられた5Gのアンテナ
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ゲームストリーミングサービス「Hatch」の体験コーナーは残念ながら4G接続だった
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 会場ではクラウドゲームサービス「Hatch」のデモも行われていたのだが,残念ながら「5Gでクラウドゲームがこんなに滑らかに!」というデモではなかった。4G回線によるもので,外部インターネット上でサービスされているサーバーに接続されている。
 HatchはNTTドコモも出資しているクラウドゲームサービスで,5Gを見据えて開発されているというものだ(関連記事)。

 なお会場内の4G回線は,イベントに合わせて外部に基地局の車両などは配備されて万全の用意はしてあるものの,基本的に幕張メッセ内の普通の4G回線であるとのこと。

 確実に5Gが使われているのはどれかと聞いたところ,ビジネスデー2日めのコンテンツでは,ウメハラ選手vsときど選手のARコンテンツと「Space Sweeper」のデモという話だった。

多くの試遊台が並んでいたNTTドコモブースだが,大半は5G接続されていなかったと思われる
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「Space Sweeper」の作者である中嶋謙吾氏
 Space Sweeperというゲームは,聞き覚えのない人もいるかもしれない。モノビットのCTOを務める中嶋謙吾氏が個人的に制作したゲームだ。Genvidのテクノロジーを使って,ゲームプレイと実況配信を見ている視聴者間でさまざまなやり取りができるという,視聴者参加型ゲームになっている。Genvidの紹介では定番の一作ではある。

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 会場では,今日のために腕を磨いたというモリカトロンのデバッグチームが登壇しており,4人のプレイヤーによる協力プレイの模様をTwitchを使ってストリーミング配信しつつ,会場内に設置されたPCでその動画を見ている観客が応援プレイを行うといったデモが行われた。

 具体的に書くと,視聴者側のPCではTwitchからのゲーム映像が表示されつつも,配信をしているプレイヤーが破壊した敵などから出た紫色の玉をマウス操作で集めて(マウスカーソルが近づくと回収できる)ポイントを獲得し,そのポイントでアイテムを購入して,プレイヤーの画面に送ることができるといった仕様だった。

視聴者用画面には4プレイヤー分の画面が並んでいる。放出される紫色の玉をマウスで集めてポイントを溜めていく
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 会場には20台ほどの観客用PCが用意されいて,そのうち5台が5G回線で接続されているとのことだった。見える位置にはなかったのだが,5G接続の無線ルーターが用意されており,2本のアンテナからの電波を受け取ってPCに送るといった仕様だ。PC側から見ると,5Gルーターと会場内のアンテナを経由して外部インターネットにあるTwitchとゲームサーバーに接続している構図となる。

図中の「5G基地局」に相当するのが,冒頭で紹介したアンテナだ。「5Gデータ通信端末」である5G対応ルーターで電波を拾って,有線でネットワークハブにつなぎ,各PCに接続されている
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 おそらく残りのPCは対照用に4G回線での接続だったのだろうと思われるのだが,見た目的には5G回線の試遊台と差はなかった。

左は5G回線による接続,右は4G回線による接続。会場ではAilenwareの新型などの高性能ゲーマー向けPCが並んでいたが,動画の視聴がほとんどなので,視聴者側のPCがそこまで高性能である必要はないとのこと
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 寿司詰めになることは確実なTGS参加者を想定して,車載基地局などで4G回線を強化してある環境ではおそらく4G回線も十分に速くなっていたと思われる。
 さらにTwitchによる配信は5秒もの遅延があるのだが,途中経路での遅延軽減はどこまで期待できるのかが分からない。最終段の接続遅延が4G回線よりも20ms弱短かったとしても見分けるのはほぼ不可能だ。
 結果として「5Gスゲー」という感じにはならなかったのだが,動画配信を通じてゲームに参加できるGenvidはなかなか面白そうというのが感じられたデモだった。

5Gアンテナの根元。光ファイバーでドコモのコアネットワークにつながっている
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 そのほか,5Gのゲーム展開について少し話を聞いてきたのだが,低遅延での送信にMEC(エッジサーバー)は不可欠ではないとのことだった。このあたりの基本的な話についてよく分からない人は,こちらの記事を参照してほしい。
 MEC自体をどれくらいの密度で配置していくのかについては,NTTドコモでも分からないという。現在,各種サーバー業者とも実証実験を繰り返しており,9月に始まるプレサービスでさまざまなデータを取って,来年以降に本格化するのではないかといった,漠然とした回答が現状では精一杯という感じだ。まだまだ実際にやってみないと分からないことが多いのだろう。

 「4Gよりは確実に速いです」という新モバイル通信基盤が,ゲームでどのように使えるのか? それはゲーム業界がどこまで使い込めるか次第でもあるのだろう。プレサービス以降の各社の展開に期待しよう。

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