[TGS 2019]NTTドコモが進める5G,ストリーミング+視聴者参加ゲームで真価は見えたのか?
NTTドコモと5G,そしてゲームの関係はドコモブースにあった文章が端的に表している。
うむ。さすがにいいコピーライターを使っている。
5Gが特徴として掲げる「低遅延」「広帯域」「多接続」といった特徴をアピールする際に,ゲームというのは非常に都合がよいテーマであり,ゲーム業界としても新たなビジネスチャンスにつながる基盤となりうる。たとえあまり回線を問わないゲームであっても,アプリがサクっとダウンロードされるだけでも大きなメリットにはなるだろう。
ブース内のPCは100台以上があるそうだが,そのすべてが5Gで接続されているわけではないとのことだった。4Gのものも含まれている。
ブースの裏手に行くと両端にアンテナが立てられているのが見える。その2本のアンテナは,ドコモのコアネットワークに接続されており,近くの基地局からファイバーを引っ張ってきているそうだ。ただ,接続される先はほぼコアネットワークの外側のインターネットになるようで,5G本来の意味での低遅延環境が構築されているわけではないようだ。
2本のアンテナ間でデータをやり取りするような説明も聞いたので,デモによっては,内部だけでデータを回していたものもあったのかもしれない。そちらであれば,非常に低遅延な接続環境になっていただろう。
HatchはNTTドコモも出資しているクラウドゲームサービスで,5Gを見据えて開発されているというものだ(関連記事)。
なお会場内の4G回線は,イベントに合わせて外部に基地局の車両などは配備されて万全の用意はしてあるものの,基本的に幕張メッセ内の普通の4G回線であるとのこと。
確実に5Gが使われているのはどれかと聞いたところ,ビジネスデー2日めのコンテンツでは,ウメハラ選手vsときど選手のARコンテンツと「Space Sweeper」のデモという話だった。
具体的に書くと,視聴者側のPCではTwitchからのゲーム映像が表示されつつも,配信をしているプレイヤーが破壊した敵などから出た紫色の玉をマウス操作で集めて(マウスカーソルが近づくと回収できる)ポイントを獲得し,そのポイントでアイテムを購入して,プレイヤーの画面に送ることができるといった仕様だった。
会場には20台ほどの観客用PCが用意されいて,そのうち5台が5G回線で接続されているとのことだった。見える位置にはなかったのだが,5G接続の無線ルーターが用意されており,2本のアンテナからの電波を受け取ってPCに送るといった仕様だ。PC側から見ると,5Gルーターと会場内のアンテナを経由して外部インターネットにあるTwitchとゲームサーバーに接続している構図となる。
おそらく残りのPCは対照用に4G回線での接続だったのだろうと思われるのだが,見た目的には5G回線の試遊台と差はなかった。
寿司詰めになることは確実なTGS参加者を想定して,車載基地局などで4G回線を強化してある環境ではおそらく4G回線も十分に速くなっていたと思われる。
さらにTwitchによる配信は5秒もの遅延があるのだが,途中経路での遅延軽減はどこまで期待できるのかが分からない。最終段の接続遅延が4G回線よりも20ms弱短かったとしても見分けるのはほぼ不可能だ。
結果として「5Gスゲー」という感じにはならなかったのだが,動画配信を通じてゲームに参加できるGenvidはなかなか面白そうというのが感じられたデモだった。
MEC自体をどれくらいの密度で配置していくのかについては,NTTドコモでも分からないという。現在,各種サーバー業者とも実証実験を繰り返しており,9月に始まるプレサービスでさまざまなデータを取って,来年以降に本格化するのではないかといった,漠然とした回答が現状では精一杯という感じだ。まだまだ実際にやってみないと分からないことが多いのだろう。
「4Gよりは確実に速いです」という新モバイル通信基盤が,ゲームでどのように使えるのか? それはゲーム業界がどこまで使い込めるか次第でもあるのだろう。プレサービス以降の各社の展開に期待しよう。