[TGS 2019]剣と盾でガチの戦闘を行うVRアクション「Duel of Gargantua」の可能性

VR/ARコーナーはちょっと縮小
[TGS 2019]剣と盾でガチの戦闘を行うVRアクション「Duel of Gargantua」の可能性
 2019年9月12日,千葉県・幕張メッセで「東京ゲームショウ2019」が開催された。ショウ全体での規模は昨年を上回ったとのことなのだが,VR/ARコーナーは少し縮小気味だ。体験の整理券が瞬殺されるようなこともなく,ビジネスデーらしい比較的落ち着いた雰囲気での展示となっていた。

 VR/ARコーナーの入り口近くに展示されていたのが,よむネコの「Duel of Gargantua」(以下,DoG)だった。最初は,Gargantuaって既存作品かとスルーしてしまいそうになったのだが,新作のデモであった。危ない危ない。
 「Sword of Gargantua」(以下,SoG)は,Oculus QuestとRiftで展開されている同社の作品だ。剣と盾を使った本格的なアクションゲームということで,VRゲームの中でも独特な位置を確保している感があるタイトルである。会場でデモされていたのはその戦闘部分を対戦用に仕上げたものだったのだ。


 SoGと同様に右手と左手それぞれの剣と盾で戦うが,スキルっぽいものは使えない。現時点では,ガチの殴り合いである。攻撃が防がれてばかりいると,剣の輝きが鈍ってきて威力も下がるようで,しばらく離れて回復しなければならない。チュートリアルで聞いた注意はそれくらいのものなのだが,実際にはもっと細かい部分で判定が行われているようではあった。
 プレイヤー画面からは見えていたのかどうか確認できなかったのだが,外部スクリーンにはプレイヤーのスタミナ推移が表示されており,無駄に叩いているとスタミナが減っていくことが分かる。スタミナがないと,攻撃の威力がかなり落ちるようだ。
 また,盾で剣が止められても,VRだから手自体は振り切ってしまうのだが,それを振り切らずに止めるとスタミナが温存されるといったフィーチャーもあるとのこと。見ていると「たくさん振ってるほうがお得?」とやっていると威力が落ちすぎてたいてい負けてしまうようだった。

左右のバーがスタミナらしい。上のものが最新のデータで下にスクロールしていく
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 ただ剣を振り回しているだけだと,こういった見えにくい仕様を理解しにくいので,できればゲーム内でもう少し分かりやすく提示されるとよいのだが。現時点では,同じように当たったように見えても,与えるダメージ,受けるダメージの違いがどこからきているのか分からない。振動……はあるのだが,通常ヒット時にも当然フィードバックはあるので差が分かりにくい。振動デバイスの表現力の低さが問題か。もう少し自由度の高い効果音や画面エフェクトを有効に使うなど,攻撃や防御に対するフィードバックを適切に行い,どういった行動が効果的なのかが明確になるともっと楽しくなりそうだ。少なくとも現時点では,まだ勝負のポイントがちょっと分かりにくい。

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 ちなみに,会場で使用しているのはRift SとTouchコントローラであり,頭と両手の先の動きしか取れない。全身の表示に際しては,それ以外の部分の動きも何とかしなくてはならないのだが,足の動きはプロシージャルに生成しているという。
 ゲーム中に相手を見るとそこまで不自然には感じなかったのだが,外部視点からのリプレイデータを見ると,かなり足がガクガクしているのはなぜだろう。視点位置の問題もあるのだろうが,重心の前後位置が不自然で下半身と上半身の動きが合っておらず,足の動きも細かすぎだ。対戦時にはほとんど正面しか見ないから分かりにくかったのだろうか。こういった「剣」を使った戦闘での足裁きがどんなものになるのかはよく分からないが,単純な座標値で近いとことろに足を置くみたいなアプローチではなく,剣道やフェンシングなどのような基本的なポジションからの足裁きに落とし込むような仕組みが必要だろう。技術的にこのあたりはまだまだ発展途上なようだ。

 現状では,リアルタイムの対戦ができるかどうかラグの影響などを検証しているところであり,どのような形で製品化するのかなどはまったく未定とのことだった。しかし,e-Sports種目としての展開は現時点でも視野に入れているようで,より競技的な面白さを追及していきそうな気配は感じられた。VRでのe-Sports展開というのも今後は必ず出てくる方向性だろう。VR競技をVR観戦するのは,実際のスポーツ観戦以上の臨場感を演出してくれるイベントになるかもしれない。そんなこんなで,よむネコの新作が今後どのような展開を見せるのかは楽しみなところだ。

 さて,SoGのほうは,今後アドベンチャーモードなどが追加されるとのことで,コンテンツは今後も拡充されていくとのことだった。
個人的に壁殴り対策で導入したフィッシンググローブ。親指,人差し指,中指の先端だけ露出する。第2関節まで覆ってくれることが重要(何の記事だ……)
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 かなり余談だが,SoGについては,いろんな人と話すと「壁にぶつかる」「壁を殴る」「ものを壊す」という話題になることが多い。私も殴った。
 これはOculusのガーディアンシステムの問題でもあるのだが,壁際の危険表示が見えたときはすでに遅いという状況が多いためだ。Viveなどと同様に,動ける領域の境界に近づくと,仮想的な壁が格子状に表示されるようになっているものの,近づくのが身体ではなく,振り回した手の先になるので,比較的簡単に境界を越えてしまい,格子が表示されたときはすでに手遅れという状況になるからだ。
 SoGはRiftとQuestで展開されているが,圧倒的にQuestのほうでそのような報告が多いと,代表の新 清士氏は語っていた。ガーディアンシステム自体はほとんど同じなのだろうが,Questはケーブルレスなので比較的自由に動き回れる分,いつの間にか壁際に寄ってしまうことも多いのだ。

左の大きな画面は第三者視点,右の小さな画面がプレイヤー視点
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 ちなみに,SoGもDoGもプレイヤーの移動は左スティックか自分の足で行うのだが,スティックを使うと,かなり酔う人も出るだろうなあというヌメっとした動きになる。一方で足を使ってのゲーム体験は非常に素晴らしい。広い部屋でプレイするなら,QuestでのSoGは非常にお勧めだ。逆に狭い部屋だとあまりお勧めできない。わりと本気で振り回した手で壁を殴ると洒落にならないくらい痛いのだ。
 これが,Riftの(Rift S用ではない)旧式Touchコントローラであれば,リング状の部分がちょうどナックルガードの役割を果たすので,壁を殴ってもほとんどダメージはこない(昔も書いた気はするが,過去にもかなり壁を殴ったことはある)。新型Touchコントローラの,当初から懸念されていた欠点でもある。
 ちなみに,Viveコントローラも先端にリング部があるので,振り回して壁を殴っても手にダメージはこない。

 SoGをリリースして,「VRでの剣の戦い」に対して持っているイメージには,人によって非常に大きな幅があるのが分かったと新氏は語っていた。とくにアメリカからは「もっと動きの速度を速く」などといったアクション性を上げてほしいという意見が多いとのことだった。動きとしてはまったくVR向きではないのだが,VRでそれをやりたいという気持ちも分からないではない。しかし,おそらくそういったコアな人は少数派だろう。
 e-Sportsまで視野に入れるなら,DoGは快適かつ理不尽でない戦いが展開できるようなゲームに仕上げて,競技人口拡大を目指してほしいところである。

よむネコ公式サイト