ボスのように:素晴らしいボスキャラデザインの秘密
その獣のような特性とは異なり,ボスバトルは単純に死ぬことはない。
悪役と闘うことは何十年もの間ゲーム業界の定番であり,かつてほど普及していないかもしれないが,それでもほとんどのジャンルのプレイヤーに満足のいく挑戦を提供している。
伝統的なボスキャラがいなくても,開発者は,状況に応じてプレイヤーが直面する特別に厳しい敵を投入する。
「ゲームでは昔から大きな緩急がありました。静かなときがきたら,次にボスが来るのです」と,JagexのシニアゲームデザイナーであるMarie Mejerwall氏は述べている。「最近では,もう少しスケールが大きくなっています」
「たとえば,Dead Risingシリーズでは,サイコパスをミニボスの形で使用しました。ほかの多くのゲームには副官タイプの敵がいるため,少し進歩があり,バリエーションが増えます。― (ボススタイルの挑戦で)常にすべてを方法を行う必要はありません。あなたはまだ強さを持っています」
Breath of the Wildは,もう1つの代表的な例だ。ゼルダシリーズは独特なボスで有名だが,Switchのデビュー作では,マップ全体に強化されたライネル,ヒノックス,ロックを配置して,その路線から離れている。
Mejerwall氏は続けた。「しかし,ボスはいまだに多くのストーリーゲームやRPGで活躍しています。彼らには目的があり,MMOでは目的が少し異なります。彼らはマルチプレイヤーゲームではあまり普及しておらず,業界全体は少しPvPに向かっています。 Twitchを見ると,人気のゲームはPvPゲームであり,ボスや世界に関係するものではなく,プレイヤーがチャレンジを提供しています」
Mejerwalls氏は,ボスのデザインに多大な時間を費やしてきた。彼女はBatman:Arkham Originsのボスの作成に貢献した。そのボスは,未発表のDead Risingゲーム(残念ながら日の目を見なかった)でのすべてのボスの能力を持っていた。現在はRuneScapeのデベロッパであるJagexで秘密プロジェクトに取り組んでいる。
「(ボス戦は)プレイヤーがこのタイプのゲームプレイをマスターしたかを確認する卒業試験のようなものです」
ボスは時代遅れのシステムだと主張する人もいるかもしれないが,Mejerwall氏は,ボスキャラはストーリーに素晴らしいリズムを与え,マルチプレイヤータイトルのエンドゲームで皆を結集させる契機となり,そしてとくに注目すべきは,その時点までにプレイヤーが学んだすべてのことに対するテストとして機能しうると主張している。「ゲームプレイを頻繁に切り替えるようなゲームでは,プレイヤーが何かを効率的に学んだかを確認したいと思うのが普通です」と彼女は説明する。「プレイヤーがこのタイプのゲームプレイをマスターしたかを確認する卒業テストのようなものです。― ヘッドショットを学んでいますか? もしくは『武器と資源をちゃんと管理する方法を学びましたか?』― これは,目の前にある課題に彼らが本当に準備できているかを確認するためのものです。そうすれば,彼らを実際に処理できない今後のエリアに行かせなくてすみます」
彼女は続けて「これは綱渡りです。一方で,あなたは彼らをテストしたいと思っています。― 彼らの反射神経をテストしたいのですか? 彼らは一緒に調整するのですか? 彼らはターゲットをどのように選んだのですか? しかし,あなたは彼らに彼ら自身の方法を見つけてほしいとも思っています」
すべてのボスには弱点がある。 ― 任天堂のゲームで育った人なら,光るビットを撃つことが勝利への最短ルートであると言うだろう ― しかし最適な戦略(ゲームによっては戦略群)を示すことは開発者が非常に慎重に検討しなければならない事項である。
チームの幅広い開発スキルが重要な要素になる可能性があるとMejerwall氏は語る。ビジュアルFXアーティストがいる場合,弱点や受けたダメージを示すためにシーンに織り込める微妙な合図がある。ムービーシーンを使用すれば,今後の戦闘の戦略を実証または予見できる。十分なローカリゼーションリソースがあれば,テキストと音声などで,オーディオの専門家が独自の方法で貢献できるだろう。理想的には,ボス戦を設計するときには,プレイヤーの勝利に必要なすべての情報を確実に渡せるように,できるだけ多くのリソースを使用したいと考えるでしょう。
「デザイナーとして言うと,通常,プレイヤーが理解する必要のあるものについて,3つのフィードバックポイントが必要です」とMejerwall氏は語る。「それは,ヘッドアップディスプレイに表示されるなにか,視覚効果,音である可能性があります。理想的には,あらゆる種類のことを試します」
「変数が多いほど,バランスを取るのが難しくなります」
彼女は,Arkham Originsの初期のボス戦の1つである Killer Crocを例に挙げた。前述のワールド内の要素に加えて,ワーナーブラザーズモントリオールは獣を麻痺させるキックスタンの試みを促すHUDによるヒントを追加した。しかし,これは,その戦闘をゲームのチュートリアルの一部として機能させるためだけに行われたものだ。「理想的には,あなたはすべての異なる手段を使用しますが,プレイヤーは物事を自分で解決することも好きです」とMejerwall氏は語る。「あなたのゲームが子供向けの場合は,あらゆる方法を使用して(標識を)出してください。しかし,ベテランプレイヤー向けの場合は,ボスを倒す方法として与えたさまざまな情報を切り分けることができるかもしれません。Batmanでは,しばらく経ってプレイヤーが解決できていない場合でないと画面にヒントを表示しませんでした」
ボス環境の形状さえも,設計の重要な部分になりうる。ゲームで巨獣の多くが円形のアリーナや洞窟で見つかることは偶然ではない。― 四角い環境では,ボスがコーナーにを閉じ込められて攻略が簡単になってしまうかもしれない。ボスがテレポートできる距離,ジャンプできる高さ,攻撃の幅など,敵が遭遇する空間に関連して,これらすべてのパラメータとそれ以上のものを検討する必要がある。
Destiny,The Division,Anthemなどのマルチプレイヤータイトルや,とくに従来型MMOの場合,開発者によるバランスを調整はさらに難しくなる。Mejerwall氏が説明するように,「変数が多いほど,バランスを取るのが難しくなります」
タイトルに応じて,各ボスと対戦するプレイヤーのチームは,― とくにエンドコンテンツのボスでは― 無数のスキル,能力,武器に加えて,それらを使ったさまざまな戦略を駆使する。当然のことながら,スタジオはそれぞれのバトルで独自の方法による攻略を可能にしたいと考えているが,それはボスに代表される挑戦を犠牲にしてではない。彼らはそれぞれに「いくつかの最適な戦略」をデザインする必要があるが,そのどれもが対戦が簡単になりすぎないように保証するものである。
「それが悪用されないことを確認する必要があります」とMejerwall氏は説明する。 「たとえば,fear(恐怖)の呪文を実行するたびに逃げるボスがいたとして,fearの呪文を持っている5人のプレイヤーと一緒に行った場合,攻撃を受けている間中,ずっと隅に隠れているボスがいるだけになってしまいます。ボスは少し弱くする必要がありますが,弱くしすぎてはいけません。同様に,ボスを難しくしすぎてもいけません。適切なスキルを持たないプレイヤーにとっては罰ゲームになってしまいますので」
彼女は続けた。「あなたの最小値と最大値を知らなくてはなりません。あなたは装備をそろえ始めたばかりのカジュアルプレイヤーについても考える必要があります ― 彼らはどれくらいのDPSが出せるのか? どれくらいうまくスキルを使用するのか? どれくらい完璧な装備のローテーションを期待できるのか?― 一方で,隅々までゲームを極めたハードコアゲーマーがいて,入手可能なすべての種類のギアを持っています。最初に,ボスをどういう規模にしたいのかを決定する必要があります。あなたが目指しているプレイヤー体験のターゲットグループは何ですか? それが決まったら,それを正直に調整してテストすることです」
ボスが今後数十年にわたってゲームのハイライトであり続けることを保証するような新しい武器は,開発者の兵器庫に徐々に進出している:AIだ。機械学習の進歩と,ゲーム内のエンティティをプレイヤーに対してより反応的にする機能により,ボス戦のルールブックを書き換える可能性がある。
Mejerwall氏は,これがシングルプレイヤーゲームで最も顕著になると予想している。シングルプレイヤーゲームでは,ボスとの遭遇が「ダンスのようなもの」となり,プレイヤーの動きは独立したクリーチャーによって迎え撃たれ,続いていく。
「プレイヤーが同じことを続けている場合,彼らは最適な戦略を持っていると思うかもしれませんが,より賢くなるボスがいて,プレイヤーが何をしているかを識別して戦略をターンごとに変更できるなら,あなたはボスを人間の動きに近づけるようにするでしょう」と彼女は結論付けた。
「これらの値を読み,プレーヤーが何をするかが理解できれば,これらのすべての機械学習アルゴリズムから多くを得ることができます。より良い応答ができるようになれば,プレイヤーを驚かせるような,より充実した体験を提供できるでしょう」
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)