【グローバル市場から見るe-Sports最新動向】e-Sportsシーンを席巻する4大モバイルゲーム
伝統的なスポーツ競技大会において,e-Sportsが初のプレゼンスを獲得したのが,この大会です。アジアオリンピック評議会(Olympic Council of Asia, OCA)が,Asian Electronic Sports FederationおよびIndonesian Asian Games Organizing Committeeと協業し,6タイトルのe-Sports競技が繰り広げられたのです。
注目すべき事実は,6本中2本もモバイル専用のタイトルが含まれているということでしょう。Clash RoyaleそしてTencentの大ヒットタイトルArena of Valorといったゲームが,観客を魅了したのです。
●アジア競技大会2018でのe-Sports種目と対応プラットフォーム
- Arena of Valor(iOS,Android,Switch)
- Clash Royale(iOS,Android)
- Hearthstone(Windows,Mac,iOS,Android)
- League of Legends(Windows,Mac)
- Pro Evolution Soccer(PS3,PS4,Xbox 360,Xbox One,Windows,Linux,iOS,Android)
- StarCraft II(Windows,Mac)
最近ではゲーム市場はモバイルを中心に拡大しており,モバイルゲームは今後のe-Sports界を席巻することになるでしょう。
そこで今回のコラムは,e-Sportsで人気の高い4つのモバイルゲームを順に見ていきます。
Clash Royale(クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ))
フィンランドのゲーム会社Supercellが開発し,2016年3月2日に全世界でリリースしたタワーディフェンス型のリアルタイム対戦カードストラテジーゲームのClash Royale。世界で最も広くプレイされているe-Sports種目の1つです。昨年8月に開催されたクラウンチャンピオンシップでは,2700万人という,他のe-Sportsタイトルを圧倒する人が大会の模様を視聴しました。
Clash Royaleは多くのe-Sportsのタイトルと異なり,モバイル専用のゲームとなっており,現時点ではPCや家庭用ゲーム機には対応していません。大会の模様はモバイルでの視聴を促すためにポートレートモード(縦向き)で配信され,また若年視聴層へのアピールを目的として,TwitchではなくYouTubeでストリーミング配信されました。
興味深い点は,Clash Royaleのライブ配信は,ユーモアを交えた親しみやすいトーンでプレイヤー個人に焦点を当てており,緊迫した空気が漂う一般的なe-Sportsの配信スタイルとはかなり趣を異にするということです。
Supercellが9週間にわたって実施するClash Royale Leagueには,Cloud9,Team Dignitas,Complexityといった強豪チームを含む,全36チームが参加しました。また,賞金総額100万ドル(約1億833万円) という巨額の賞金プールがあるなど,Clash Royaleはe-Sportsシーンを牽引しています。
Arena of Valor (アリーナ・オブ・ヴァラー(王者栄耀))
「王者栄耀」はTencent・天美スタジオが開発したゲームで,2015年11月26日にリリースされました。中国において最多の売上を誇るマルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)型のモバイルゲームです。同タイトルでは,2億人以上の月間アクティブユーザーが,毎週平均2時間以上のプレイを行っています。
その王者栄耀のキャラクターなどを西洋化して,国際版として作られたのが「Arena of Valor」です。
こうした大規模なファン層を抱えることから,Arena of Valorのe-Sportsトーナメントがアジア地域で膨大な視聴者を魅了することは想像に難くありません。2018年,中国で行われた王者栄耀のe-Sportsイベントは1950万人もの視聴者を動員しました。
また,マクドナルドがメインスポンサーとなったKing Pro Leagueが開幕しており,賞金総額50万ドル(約5400万円) をかけて,APAC(アジア太平洋地域)各地から強豪チームが集っています。APAC各国で競技を行うことから,今後一層の盛り上がりを見せると見込まれています。2018年に開かれたInternational Championshipでは,16チームが参加し,Tencentの最多賞金提供額となる60万ドルの賞金プールが用意されたこともあります。Arena of Valorの盛り上がりは,アジアだけではありません。欧米でも大規模な大会を2回開催しており,昨年夏にロサンゼルスで開催されたWorld Cupの賞金総額は50万ドルでした。
しかしながら,Arena of Valorはほかのe-Sportsにはない課題も抱えています。それは中国政府です。中国の国営メディアが,Arena of Valorを中毒性の高い「毒」とみなしており,厳しい批判にさらされています。こうした批判が,中国政府による規制などにつながってしまうリスクを抱えているのです。
Hearthstone(ハースストーン)
Hearthstoneは,2014年にリリースされたFree-to-Playのコレクティブルカードゲームで,League of LegendsやOverwatchと並び,最も多く視聴されるe-SportsのタイトルのTop5に入ります。
モバイルとPCの両方でプレイが可能なため,場所や時間を選ばずプレイでき,幅広い層にアピールするゲーム内容となっています。Hearthstoneは,グローバルe-Sportsシーンで安定した人気を保っています。
2016年から開催されているHearthstone World Championshipは,世界最大級のHearthstoneのトーナメントであり,16プレイヤーが総額100万ドル(約1億円)の賞金プールをかけて競い合いました。2018年の1月に開催されたHearthstone World Championshipでは,7月に開催されたOverwatch League Grand Finalsよりも長い視聴時間が費やされ,その人気の大きさが明らかになりました。
Hearthstone を開発するBlizzardは最近,自宅や外出先でHeathstoneを楽しむ登録プレイヤー数が,当初の目標数であった1億人を突破したとの発表を行いました。
Hearthstoneのトーナメントは,依然としてPCに焦点を置いた構成となっていますが,AmazonのMobile Mastersといったイベントを中心に,モバイルのHearthstoneプレイヤーコミュニティが着実に拡大しています。モバイルプレイヤーにとってのさらなる朗報はBlizzardがモバイルのエコシステムのサポートに真の価値を見出しているということです。
たとえばBlizzardは,e-Sportsファンが,スコア,開催日程,最新ニュース,およびその他のゲーム関連の中心の最新ニュースをアプリでチェックできるBlizzard Esports Mobile Appのサービスを開始しました。このサービスは,Heathstoneのコミュニティのゲーマーがお気に入りのゲームにまつわる最新のニュースを得られる素晴らしいリソースとなっています。
Guns of Boom(ガンズ・オブ・ブーム)
Guns of Boomは,リトアニアのGame insight が手掛ける人気急上昇中のゲームタイトルです。モバイル向け対戦型マルチプレイヤの一人称シューティング(FPS)ゲームで,3000万人ものプレイヤーがいます。競技的なアクション要素と,カジュアルゲームのプレイ要素を巧みに融合させている点から,e-Sportsでも高い人気を維持しています。
このゲームを最も楽しむ方法の1つが,AR Spectator Mode(ARスペクテイターモード)です。このモードをモバイル端末で利用すると,AR空間にミニチュア版のバトルフィールドが再現され,プレイヤーはあたかも自身の眼前で戦いが繰り広げられているような臨場感を味わえます。テーブルや床などの平らな面があれば,そこにゲームのマップを表示して,ゲームの様子を再現できるのです。
Game Insightの戦略責任者を務めるNikita Sherman氏は,次のようにコメントしています。「AR Spectator Modeは,これまで誰もが実現しえなかった手法です。この分野のほかのタイトルはARを目新しいものとして扱っているようですが,Guns of Boomではプレイヤーにより良いゲームの観戦体験を提供するためにARを活用しています」
なお,Game Insightは,ARを活用した配信と常時アクセスが可能なFPSゲームプレイで革命をもたらしつつ,e-Sportsトーナメントにも力を注ぎ続けています。たとえば2018年には,Game InsightはESLと組んで初のトーナメントを主催しました。11月にロサンゼルスで開催された「Guns of Boom Finals」では,8チームが12万ドル(約1300万円)もの賞金プールをかけて競い合いました。
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マルチプレイヤーゲームに対応するネットワークの開発や高パフォーマンスのゲーム対応スマホの開発が容易になったことで,今後モバイルデバイスではより多くのことを実現できるようになります。その結果,e-Sportsにおいてもモバイルがさらなる注目を集めるようになるでしょう。
その一方で,モバイルゲームやモバイルでのe-Sportsには課題があるのも事実です。一部のゲーマーの間では,モバイルゲームは操作性に問題があると感じていたり,モバイルのe-Sportsに偏見を持っているファンもいたりします。
しかしながら,こうした見方はモバイルのe-Sportsがこれらの問題をクリアし,さらに独自の強みを獲得したことを見逃しています。Clash RoyaleやHearthstoneは,Twitch的なリアクションに向くゲームであるとはいえないものの,戦略的思考を刺激することで,思慮深いe-Sports体験を提供しています。また,モバイル端末を持つ人は,PCや家庭用ゲーム機を持つ人と比較するとはるかに多く,さらに広範なエリアに存在していることから,適切な時期やタイミングでモバイルe-Sportsを開催すれば,近い将来により幅広い層のプレイヤーがe-Sportsを楽しむようになるでしょう。
つまり,今後のe-Sports業界においては,モバイルゲームは欠かせない成長要素の1つとなる可能性を多いに秘めた存在であるといえるのです。
【グローバル市場から見るe-Sports最新動向】いまe-Sportsの世界で起きている6つのこと
■Mobvistaについて
Mobvistaは,世界を牽引するモバイルマーケティングのプラットフォームを提供する,アジア最大のモバイルアドテク企業です。ブランドマーケターやデベロッパがワールドワイドなパフォーマンスを実現するための,プレイヤー獲得や分析のソリューションを提供しています。包括的ソリューションを通して3000を超えるブランドをサポートし,グローバルに消費者エンゲージメントを向上させる支援を行っています。イノベイティブな技術と優れたカスタマーサービスの融合により,1日に100億を超える広告インプレッションを提供しています。世界12拠点にオフィスを構え,500人以上の従業員が在籍しています。
■執筆者プロフィール
王 亚婕(オウ アショウ)
Mobvista Japan シニアビジネスデベロップメントマネージャー。中国およびイギリスで学び,東アジアの発展とグローバル経済を専攻。2016年12月にMobvistaの日本チームの最初のメンバーとなる。ディマンド側の主力セールス担当者として,日本での売り上げをゼロから伸ばす。2018年11月に日本に常駐,アドテックマーケテイングで日中の架け橋になるよう取り組んでいる。
Mobvistaは,世界を牽引するモバイルマーケティングのプラットフォームを提供する,アジア最大のモバイルアドテク企業です。ブランドマーケターやデベロッパがワールドワイドなパフォーマンスを実現するための,プレイヤー獲得や分析のソリューションを提供しています。包括的ソリューションを通して3000を超えるブランドをサポートし,グローバルに消費者エンゲージメントを向上させる支援を行っています。イノベイティブな技術と優れたカスタマーサービスの融合により,1日に100億を超える広告インプレッションを提供しています。世界12拠点にオフィスを構え,500人以上の従業員が在籍しています。
■執筆者プロフィール
王 亚婕(オウ アショウ)
Mobvista Japan シニアビジネスデベロップメントマネージャー。中国およびイギリスで学び,東アジアの発展とグローバル経済を専攻。2016年12月にMobvistaの日本チームの最初のメンバーとなる。ディマンド側の主力セールス担当者として,日本での売り上げをゼロから伸ばす。2018年11月に日本に常駐,アドテックマーケテイングで日中の架け橋になるよう取り組んでいる。