Creature in the Wellの限界と無限の未知

Flight School StudiosのクリエイティブディレクターAdam Volker氏が,2人のチームがどのように制約を創造性に変えたかを語る。

 Adam Volker氏は制限にこと欠かかない。つまり自主的な規制だ。

 たとえば,複数のAAAタイトルに取り組んでサッカーアセットとスペースMMOのコントロールパネルに制限されたのち,彼は「より多くのウィザードとがらくた」を描くためにインディーズに移っている。

 そして今,好きなものを作る柔軟性を与えられて,彼は2人のチームの片割れとしてCreature in the Wellを作れるほどにスキルを伸ばしており,そのための創造的な方法を見つけている。
 彼は,仲間のクリエイティブディレクターのBohdon Sayre氏と共に,Flight School Studiosのモントリオール「サテライトブランチ」を構成している。スタジオの残りの部分はダラスに拠点を置く30人で構成されており,大半はVolker氏とSayre氏のプロジェクトには関与していない。

 その理由の1つは,Creature in the Wellが完全にVolker氏とSayre氏の生んだものだからだ。GamesIndustry.bizとのインタビューで,Volker氏は,Flight Schoolがこのペアに自分の好きなものを作るための驚くほどの自由を与えたと語っている。Volker氏は,Flight Schoolを「先端技術のIPハウス」として分類しており,現在および過去のプロジェクトの多くはVRまたはARゲームだ。だが Creature in the Wellはそうではない。


「インタラクションの開発に関しては,なにも当たり前のことだとは考えていません」

 むしろ,Creature in the WellはVolker氏とSayre氏による,Volker氏が言うところの「2キャラクターエアホッケー」のプロトタイプから発生したものだ。彼らは最終的にそれにパイロンとバンパーを追加している。

 「それは本当に少しずつでした」と氏は語る。 「夜中に目を覚まして『アイデアが浮かんだぞ!』叫ぶようなものではありません。まったくそういったものではないんです。Bo(※Bohdon Sayre氏)と私の創造的な方法は非常に分析的で断片的です」

 Creature in the Wellは,明らかなフラットスクリーン(※非VR)のデザインにもかかわらず,Volker氏は,二人はVRゲームと映像体験の両方で働いた過去の経験から多くを学んだと語る。

 「(VR体験は)デザインを非常に抽象的に見るのに役立ちました」と氏は語る。 「インタラクションの開発に関しては,なにも当たり前のことだと考えてはいません。我々は,三人称視点の肩越し射撃制御を投入したり評価したりするつもりはありません。我々は常に,取り組む媒体について基本的な質問をするよう努めています。このプロジェクトはストーリープロジェクトか?もしそうなら,ゲームプレイのために車輪を再発明しようとはしないでしょう。これがゲームプレイゲームの場合,ストーリーをオーバーライドせずにメカニズムにどのように適合させるのか? これらは,プロジェクトを確実に機能させるために,初期段階で確定させておくものです」

武器は,敵にダメージを与えたり,スイッチを起動したり,パズルを解いたり,施設に電力を供給したりするために使用できる発射体を,充電,発射,偏向するために使用される
Creature in the Wellの限界と無限の未知

 Volker氏とSayre氏の断片的なエアホッケーのアイデアは,「ピンボールハックアンドスラッシュダンジョンクローラー」と呼ばれるゲームに形を変えた。プレイヤーは,砂漠の山の洞窟に降りるロボットを制御して,内部の機械を修理および復元し,その過程で砂嵐に襲われた町を救っていく。これは,近接武器を使用して,さまざまなパズル構成で表示されるバンパーなどをピンボールスタイルの障害物で制御したり弾を発射したりすることで実現される。

 全体的にファンタジーの設定の範囲内にあるが,Volker氏はその記述の最初の部分とそれ以外の部分との著しい違いに言及している。砂漠の町,古代の機械,隠されたモンスター ― これらはすべてプレイヤーがほかのゲームで聞いたり見たりしたようなものだ。ピンボールハックアンドスラッシュダンジョンクローラーは,プレイヤーがよく知っているアイデアを融合したものかもしれないが,それ自体はかなりユニークなコンセプトだ。

 「我々はこのルールを考案しました。これは古いAmblin Entertainmentのアイデアで,30/70ルールと呼ばれる昔のスピルバーグのものです」とVolker氏は語る。「人々は慣れ親しんだもので,1つの大きなねじれがあるものを好みます。ですから,世界の70%は慣れ親しんだものであり,30%は新しいものにします。たとえば,我々のワールドには,恐竜でいっぱいの島があります。または,ロサンゼルスの郊外ですが,エイリアンが裏庭に小さな男の子と住んでいます」

「人々は慣れ親しんだもので,1つの大きなねじれがあるものを好みます。ですから,世界の70%は慣れ親しんだものに,30%は新しいものにします」

 「(ピンボールハックアンドスラッシュの)部分を思いついたとき,それが30%であると感じました。ですから我々はダンジョン部分を作ることにしました。なぜなら,トレイラーを見てゲームについて聞いた人は,『ああ,私はひねりを加えたゲームが好きだ』と言うだろうからです。新鮮で新しい感じがしますが,それほど新しくなく,威圧的で圧倒的であり,誰もそれをプレイ方法を知りません」

 Volker氏とSayre氏は2人から成るチームであるため(これは契約のおかげ),彼らの持つ専門スキルの量は限られている。古典的な訓練を受けたアーティストだったので,Volker氏は,とくにCreature in the WellのUnreal Engineでの作業を習得する必要があった。

 「ダラスにいたとき,我々はプロジェクトでより多くのサポートを受けていました」と氏は語る。「Boはルネサンス的教養人です。彼はパイプラインのすべての部分を知っており,専門的にそれを行うことができますが,我々が始めたときに私はそうではありませんでした。ゲームエンジンを実際に使ったのはこれが初めてです。以前,私は多くのコンセプトアート,たくさんの絵コンテなどをやっていましたが,生産の本質的な部分はやっていませんでした。このゲームで望んだ結果を十分快適に作るには,多くのソフトウェアを学ぶ必要がありました。それは学習曲線であり創造的なハードルではありません」

 しかし,通常,まったく新しいスキルを習得することは,小さなチームにとっては選択肢にはならない。その代わりに,Volker氏とSayre氏は,自分たちの制限に合うようにアイデアを調整し,その制限をプロセスの中で創造的な表現に変えることがよくあった。

プレイヤーは,守ろうとする砂漠の町への訪問の間に,タイトルにもなっている「井戸」を繰り返し冒険する。そこは,地元の人々が「クリーチャー」についての独自の考えてを持っている場所でもある
Creature in the Wellの限界と無限の未知

 「我々は自分たちのスキルセットに合わせてゲームを設計しています。あんまり多くのものをモデル化したくなかったので,暗闇なところもたくさんあります。そこで暗闇に隠されたキャラクターを中心にストーリーを構築しようとしました。文字どおり,クリーチャーには目と腕しかありません。なぜなら,我々には悪人全体をモデル化してアニメーションする時間がなかったからです」

 「創造性は,アイデアに適用されるのと同じくらい生産に適用されるべきだと思います。そして,自分たちで処理できないものは視野に入れません。Boのコア分野ではないのにができることの1つはアニメーションです。我々は,私たちは,大キャストでキャラクターアニメーションが重いプロジェクトを選ばないようにしていました。それを実現する準備ができていないからです」


「再利用は時間を節約できるところです。見た目が美しくても,プレイヤーはただゲームをプレイしたいだけです」

 「クリーチャーがよい例です。クリーチャーは同じ腕で構成されており,複数の腕がある場合は同じモデルを反転しました。それと一緒に動く目を作成しましたが,その決定は,クリーチャー全体をアニメーションまたはモデル化することができなかったという事実からきています。我々はゲームでの敵役を必要としていましたが,私のスケッチブックの1つにそのアイデアがあったのです。そこにはあなたに話しかけるゴミ箱がありました。我々がする必要があったのは,ゴミ箱に吹き出しをつけることだけでした。人々はどんなクリーチャーが中にいるのかと想像するのです。プレイヤーに参加する余地があるのは楽しいことです ― この暗闇にいるモノは,まったくなにも見えないという恐怖につながるのです。これは機能を作っている制限の例です」

 氏が提供した別の例は,複数のダンジョンで部屋のモデリングデータを再利用することだった。部屋は同じだが,中のパズルは異なる。

 「我々は8つのダンジョンを作成していましたが,それらを作れるほど人数いませんでした」とVolker氏は言います。「ですから,たとえば廊下や部屋を作ります。そして,ダンジョンにカラーパレットを割り当てます。部屋が再利用されると,まったく同じ廊下であっても色が異なるため,違っているように見えます。これは,我々が作ってきたものを効率的に使おうとする手法であり,たくさんデータを再利用しているのに,プレイヤーから「うーん,これは1000回見たよ」と言われなくなるようにするような手法です」

 「再利用は時間を節約できる部分です。その内部でのゲームプレイこそ,プレイヤーがそこにいるための理由です。見た目が美しくても,プレイヤーはゲームをプレイしたいだけなのです」

 Flight School Studioのモントリオールサテライトオフィスは小規模ですが,強力であり,Volker氏とSayre氏は,Creature in the Wellが終了したときに何をすべきかをすでに検討している。彼らはフルタイムの開発者を追加し,とくにCreatureが成功した場合は次回作を少しスケールアップするかもしれない。また,Flight Schoolのポートフォリオの中でもユニークなゲームなので,Creatureへの評価は,モントリオールチームが次のプロジェクトで取る方向に影響を与える可能性がある。

 「我々はあらゆる種類のインタラクティブな空間で物語を語り,アートを作ることが好きです」とVolker氏は語る。「これがスマートで良い市場になったら,我々はこれを続けます。Boと私はそれをやり続けたいですね」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら