Margot Jamesデジタル大臣はLoot Boxを擁護する

しかし,下院議員はゲームと賭博の関連性についてはさらなる調査を求めており,積極的な収益化を行っている企業に「足並みを揃える」べきだと述べている。

 英国のデジタル&クリエイティブ産業大臣は,Loot Boxが賭博を構成するかどうかについて議論しており,十分な知識を得ぬままそれらを規制することを避けようと努力している。

 (※デジタル&クリエイティブ産業大臣である)Margot James下院議員は,今日の英国議会の下院委員会の前に没入型技術や中毒性技術に関する継続的な調査の一環として来訪し,― Loot Boxが午後の公聴会の大半を占める話題となった。

 ある委員はJames大臣にLoot Box―「EAは『サプライズメカニズム』と奇妙な名前で呼んでいますが」と付け加えつつ― それについての考えを尋ねた。2週間前に委員会がパブリッシャと話をして以来(関連英文記事),彼と同僚は何人かのゲーマーから,この収益化メカニズムは賭博の一形態であると主張する連絡を受けたというのだ。

 彼はまた,オランダやベルギーでは,Loot Boxの禁止が厳格化されていることを指摘し,英国の規制当局は「遅れを取り戻し,Loot Boxが実際に賭博なのかについて認識する必要があるのか?」と問うている。

「Loot Boxは商品を購入する手段であり,追加の金銭的な報酬ではありません。それらはオフラインで換金することはできません。私は,Loot Boxが賭博であるというのは正しいとは思いません」

 James氏は,彼の質問には同意しがたい「多くの仮定」があったとし,ベルギーとオランダではオンライン賭博へのアプローチに影響を及ぼす,オフライン賭博用の異なる規則があったと述べている。あとで詳しく説明することを約束して,具体的な詳細に入ることを控えたが,彼女は,純粋な偶然のゲームであるかどうかを中心に展開する英国の賭博法との重要な違いを強調した。

 「ほかのヨーロッパ諸国が行動を起こしたという事実は,彼らのオフラインの賭博法をオンラインに適用したことと強い関係があると思われます。そして私たちの賭博法は異なるのです」と彼女は語った。

 「私は,Loot Boxが賭博だという仮定にも異議を唱えます。委員会の公聴会で読んだ証拠も,その仮定を支持するとは思いません。Loot Boxは,ゲーム体験を向上させるために,人々がアイテム,スキンを購入する手段であり,追加の経済的報酬を期待させるものではありません。そしてさらに重要なことに,それらはオフラインで換金することはできません。ですので,私は大きな違いがあると思います。そしてLoot Boxが賭博だというのは正しくないと思います」

 その後,委員会のメンバーがLoot Boxについて心配していないのかと尋ねたところ,James氏は「そんなことは言ってません」と応えた。

 彼女は,「Loot Boxが賭博依存の玄関口であるという証拠が私に提示されたのであれば,私はそれを心配するでしょう。あなたは,ゲームコミュニティと多くの若い人々について話しているだと思います ―もちろん,若い人だけというわけではありませんが。ゲームはすべての年齢層が楽しめる娯楽です。しかし,とくに若者には注意が必要です。Loot Boxが賭博依存への入り口になり得るという証拠が出てきたら,それを真剣に受け止め,行動を起こす必要があります。

 「しかし,まだ証拠があるとは思えません。それほど多くの研究はありません ― それ以上の研究を始めるべきではないという意味ではありませんが……。[しかし]行動を起こすことの正当性を示すには,証拠が必要です。とくに規制を行おうとするのであれば」

デジタルおよびクリエイティブ産業大臣 Margot James氏,
 別の委員会メンバーは,Loot Boxと賭博の関連性を特定したDavid Zendle博士の研究を引用したが(関連英文記事),Zendle博士も自分の研究は相関的だと言っているとJames氏は警告した。

※こういったものの研究でのアプローチに,複数の要素の間の関連性を調べる「相関的研究」と要素を変化させて因果関係を調べる「実験的研究」がある。因果関係を問うには実験的手法による研究が必須である。

 「注意しなければなりません。AとBの間には相関があるからといって,必ずしもそこに因果関係があると仮定することはできません。これら2つの研究モードは異なり,私たちはそれを尊重すべきだと思います」

 James氏は,自分の部署と賭博委員会との間に継続的な対話があるだろうと確信している ― 委員会のメンバーによれば,Loot Boxは偶然のゲームであり,したがって賭博によく似ていると述べている。(委員会は後にGamesIndustry.bizに賭博との関連はないと語った:関連英文記事

 委員会はそれからJames氏の部門に不満があるか,そして行動する前に何かが起こるのを待っているのかどうかを尋ねた。

 「あなたは『非常に似ている』という言葉を使っていましたが,おそらくそれが我々現状だと私は思います」とJames氏は語った。「私たちは関連を見ています,私たちは現れている証拠を見ています。それはかなり新しい研究分野です。我々は不満ではありません,我々はこれを非常に詳しく見ています……。しかし,そのような性質の規制や行動を試みる前に,あなたがほのめかしているような問題の根本的な原因をよりよく理解することが重要だと思います」

 「賭博依存について話しているのであれば,それは最悪の場合中毒になる可能性があります。しかし,中毒の1つの側面を扱うことによって ― つまり,それがなんであれ,あなたがLoot Boxやゲームやアルコールに夢中になっているか ― あなたが実際の症状を治療しようとしているだけなのなら,あなたはその振る舞いを駆り立てている根本的な問題を見落とすのも無理はありません。ですから我々は,ただ座って証拠を待つのは最善ではないと思っています。我々は前向きに証拠を探しますが,我々は冷静で客観的です」

 会話は,世界保健機関による最近の「ゲーム障害」の分類を参照しつつ(関連英文記事),ゲームへの嗜癖およびプレイに費やされた過度の時間を網羅するように広がっていった。James氏は,「スペシャリスト間の一般的な見方」は,そのような問題を抱えているのは1%のゲーマーだけであると強調した。

 「私は非常に深刻な問題を抱えうるという意見を否定します ―あなたは公表できる症状についての情報を共有した専門家から話を聞いたはずです」と彼女は語った。

「とくに規制について話している場合は,行動を起こすことの正当性を示す証拠が必要です」

 「我々はただ座って証拠を待っているのではなく,証拠を精査しています。私は,それがこの分野にはほとんどないのは奇妙だと思ったと言いました。ゲームは長い間(20年もの間)大きな事業でしたが,この分野では多くの証拠がありませんでした。さらなる研究が行われるべきだと思います」

 WHOのGaming Disorder分類についてさらに尋ねられたとき,James氏は,「WHOレベルでさえ,彼らはさらなる研究の必要性を認めている」ことを考えると,業界がこれを真剣に受け止めるべきであることに同意した。

 「しかし,これはゲーム企業が真剣に取り組むべき問題だですが,1つのゲームで過剰なスクリーンタイムを警告するにも,ユーザーサポートで導入できるさまざまな方法があります。私は,それをこの分類が言及していた懸念への合理的な対応だとみなすでしょう」

 委員会は,(とくに)子供たちがビデオゲームに夢中になるのを防ぐために制限時間が導入されている東南アジアを見習うべきであると提案した(関連英文記事)。

 James氏は,潜在的に中毒性のある何かについて話すときは,3つの要因に注意することが重要であると強調した。中毒になる個人とその傾向,彼らのいる環境,そして潜在的な中毒性のアイテムや物質の特定の性質の3つだ。東南アジア市場の場合,「ほかのものをすべて排除した」学術的な成功を非常に重視しており,環境 ―社会的および家族的の両方で― は非常に異なっている。

 「その地域の一部の家族からの報告では,実際には子供たちがゲームをしているのを見るとほっとするという話を聞いたことがあります。子供たちは強迫観念とも言える目標に集中しており,そうでもないと,試験勉強以外に何もしないからだそうです」と彼女は言った。「これらの文化では,ゲームは気晴らしと見なすことができます」

 彼女はまた,ゲームへの嗜癖に関する研究の多くが東南アジアから来ていることを強調した。「そこではさらなる研究の必要性が強調されています」。

 James氏は委員会に対し,英国では中毒が精神保健の責任の下にあると述べ,政府はこの分野のために特別にNHS(※国民健康保険)予算にさらに20億ドルを追加したと述べた。―この予算が研究に使われることを彼女は願っている。願わくばゲーム障害の可能性を探るために。


「ゲームを作成し,潜在的な結論との関係を断つだけでは十分ではないと思います。しかし,それは確かに私の邪魔をする多くのゲーム会社の態度ではありません」

 「現時点では,この国で行われている研究は不足しています。私は,それがこの分野を抑制し,人々の治療を妨げていると思います。しかし,このメンタルヘルスへの追加投資を得られたのは良いことだと思います」

 議論はゲームでの賭博の概念に戻り,たとえゲーム外に持ち出せる賞品や金銭的価値がなくても,Loot Boxとその中でのロールチャンスプレイは,依然として賭博の感情を呼び起こすと主張している。

 「ゲームをプレイする多くの人々は,(ゲームには)多くのスキルが関与しているという事実を認めるでしょう。それは純粋な偶然のゲームではありませんので,私はあなたが偶然という点で定義を解釈し,ゲーム環境に当てはめた手法に反論したいと思います。私はそれを問題視しています」

 その後,彼女はアバターアイテムだけのLoot Boxと,FIFA Ultimate Team(委員会によって提供された例)のようなゲーム内でのパフォーマンスに影響を与えるものとの間に違いがあることを受け入れた。

 「賭博の傾向と賭博依存の発生との相関関係の点で,潜在的により危険なものもあるかもしれません」と彼女は言った。

 しかしJames氏は,Loot Boxについての彼女の最大の懸念は賭博についてではなく,「子供または若い人たちがオンライン購入やゲーム内購入でをするために,過剰には持っていないお金を使っていないか」かどうかにあると述べた。

 「もし若い人たちに賭博をする傾向があるならば,Loot Boxがそれを引き出すかもしれないほどの過度なゲームユーザーが,他の問題を引き起こす可能性があるLoot Boxを使うことに対して潜在的に大きな熱意を引き出しうることを,私は受け入れられます」

 委員会は,Epic GamesとFortniteの潜在的に中毒性の品質に関する世界的な懸念についての公聴会について言及し,James氏は,この調査に関わったことのあるゲーム会社の中には,ゲームがユーザーに与える影響よりもむしろゲームが成功したかどうかだけを気にかけているという印象を与えているところがあったことを認めている。

 「これは,この業界では中期的に広がる可能性のある意見ではありません。なぜなら,いくつかの製品は大成功しているため,人々が睡眠やその他の通常の日常生活を犠牲にするほどの時間を費やす原因にもなっているからです」とJames氏は語った。

 「オフラインで仕事をしたり勉強したり社交したりする能力を損なうとき,我々は問題を抱えています。ですので,潜在的な結論との関係を断つだけでは十分ではないと思います。それは確かに私の邪魔をする多くのゲーム会社の態度ではありません。しかし,私はそれが彼らのうちの一部の問題だと思います」

「企業は非常に豊富なデータを伏せており,それらを共有していないのであれば,おそらくもう共有すべき時期に来ています ―少なくとも彼ら自身がそこから学ぶです」

 彼女は,ゲーム会社は「収集しているデータから学ぶ」責任があり,前述の時間制限のように「合理的に導入できるさまざまな手法」があることに同意している(彼女はこれを主張しているわけではなく,可能性として使っているだけだと主張しているが)。そしてまた,彼女はさらなる研究の必要性を強調した。

 「私は,この研究に投資すべきなのは業界のみだという仮定には警戒します」とJames氏は述べた。「政府として,我々は,研究は独立したものであり,委託されたものであることを満たしている必要があります。そして公的資金の果たす役割がここにあると思います」

 「しかし,メーカーは確実にデータを収集する必要があります。そして,オンライン被害規制の対象になるのであれば,やがてはユーザーベースに注意を払う義務があると予想されます。そして,もっとも合理的な人々は,規制の有無にかかわらず注意義務を負うと考えていると思います。そして,それは(オンライン被害)規制当局設立前の18か月間にわたって実証するために我々が彼らに求めているものです」

 彼女は続けた:「私は,企業が大量のデータを秘匿していることについてあなたの懸念を共有しています。彼らがそれを共有していないならば,おそらく,もう共有すべき時期 ― 少なくとも彼ら自身がそこから学ぶときがきているのでしょう。あなた方の1人は,脆弱な人々を保護することに関して,ゲームは賭博より数年遅れていると以前言っていました。それが事実であるならば,それは嘆かわしいことであり,業界にはやるべき仕事があります」

 最後に,委員会メンバーは,フリーミアム(※基本無料)のビジネスモデルに懸念を表明した。―彼らが指摘しているように,これはゲーム内購入の可能性を高めるために,過剰なプレイタイムを奨励する経済的インセンティブを企業に与えるモデルだ。

 「あなたが今説明したそのモデルが,そのような商業目的を生み出すことができることに,私は同意します。しかし,それは常にではありません」とJames氏は語った。「より成熟した会社では,あなたが説明した方法でユーザーのサポートを実演することの利益を理解しているはずです」

 「それはどの産業でも同じです。あなた方が私の(製品)により多くの時間を費やすほど,より多くのお金が稼げるといった短期的視点を持った会社がいくつかあります。その分野のすべての企業が当てはまるわけではありません。ほかのどの分野でもです。ユーザーに対して短期間でより積極的な商業的視点を持った企業と比較して,より長期的で責任感のある顧客への対応を行う企業もあります。そして前者は足並みを揃える必要があります」と述べた。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら