Cory Barlog氏「俳優たちに,声優としてだけでなく,もっと濃密に役割を演じきってもらえるようになりました」
ゴッド・オブ・ウォーのディレクターはキアヌ・リーヴスのような俳優がもっと多くゲームに出演してくれることを期待している。
ゴッド・オブ・ウォーのディレクターを務めるCory Barlog氏は,著名俳優のキアヌ・リーヴス氏がサイバーパンク2077のJohnny Silverhand役を演じること,これが今後のトレンドのはしりになるだろうとして,将来的にますます有名俳優らがゲームに登場するだろうとGamelabカンファレンスの壇上で語った。
Sony Worldwide Studios London StudioのStuart Whyte氏と共に壇上に上がったBarlog氏は,昨年のゴッド・オブ・ウォーでKratosの役を演じるのにふさわしい俳優を探し出すのがどれだけ骨の折れる仕事だったかを説明した。問題は,役に適した声を見つけることだけではなく,モーションキャプチャ技術を使うのに適した身体的特徴を持つ人物を探すことだったという。
「実に2年かかりました。諦めるところでしたよ。(Kratos役を演じた)俳優クリス・ジャッジを見つけた頃は,毎日会議に出るよう追いたてられていました。『このプロジェクトがうまくいかない場合のことを話そう,(過去の)この時点まで戻って,スケールを縮小して,いろいろ削減しなければならない』と」
実際,クリスは,自分が選ばれたとき,台本や深みのあるキャラクター設定を見て,ゴッド・オブ・ウォーは映画であると思ったそうだ。Freya役を演じた女優のダニエラ・ビスッティも同様だったという。
「クリスも同じでした。彼は『これはゲームじゃないよね,映画だよね?』と。事実を伝えるべきか悩みましたよ。映画じゃないと彼は出てくれないのだろうか? 映画だと言っておいて『ところでクリス,これはゲームだったんだ,いま発売になったよ』というところまではたして嘘をつき続けられるのか? と」
クリスとダニエラはともに,声の出演だけでなく,アクション能力も踏まえて抜擢された。しかしどちらもキアヌ・リーヴスほど有名な俳優ではないと言っていいだろう。ゴッド・オブ・ウォーで最も有名な俳優はおそらくジェレミー・デイヴィスで,Barlog氏がテレビドラマ「Justified」での彼の演技に感銘を受け,Baldur役に抜擢された。しかし,ゴッド・オブ・ウォーのキャスティングでは著名俳優を起用しようとしてネガティブな前例があり,出演依頼というものはほとんど行われていなかった。
「有名な俳優たちにコンタクトしたら,出演料は1000万ドル(10億円強)と言ってきました。プロジェクトの予算総額ですら1000万ドル以下です。無理に決まっているではありませんか」
「とどのつまり,俳優たちはゲームで良い経験をしたことがなくて,この仕事はやりたくない,すなわち断りの文句だったんです。「ゲームの仕事はしません」と,もっと率直に言ってくれる人もいました。そういう人たちには説得を試みましたが,うまくいきませんでした」
PSVRのタイトルであるBlood&Truthのディレクターを務めたWhyte氏は,技術の進歩がLondon Studioで制作されるゲームのキャスティングに対する考え方を変えたことに同意した。歴史的に,(ゲームの)キャスティングといえば,実質的には声を選ぶことだったが,Blood&Truthではそれがはるかに難しいことが分かった。
「俳優をスキャンして,フォトグラメトリを試してみたかったのです。そこで急遽,キャスティングの観点からもっと高い要求レベルを設定しました。役にぴったり合う声だけでなく,見た目が似ていて,アクションもできる俳優を見つけねばならなかったのですが,すべてを満たす俳優を探すのは至難の業でした」
「ゲーム業界では長らく,俳優と役柄は似ている必要はない,だから,セレブリティは必要ないと思ってきました。でも,バランスが取れているほうがいいと思います。ぴったりな役者がいるかもしれません。よく知られた名前が,ゲームの登場人物としてもパーフェクトかもしれませんから」
「最終的にはいつも『そんなの必要なくない?』という業界における多くの暗黙の了解と不毛な戦いをすることになります。しかし,キアヌ・リーヴスがサイバーパンク 2077に登場するJohnny Silverhandを演じることを見ても,明らかに今は受け入れられるようになりました。DEATH STRANDINGのキャストは全員,文字通り素晴らしいですよね」
「私にとっては,本当にエキサイティングなことです。映画とゲームの業界同士のつながりも強くなり始めたように思います。以前はつながりがなく,かなり壁がありました。でも最近はゲーム好きの若い映画監督たちが登場していて,この事実に気づいています。そしてより多くの俳優たちは完璧に状況を理解しています」
そして,ゲーム業界は,その創造的価値への認識の高まりと,現在使うことができる技術的なツールによって生み出された課題に立ち向かっている。サイバーパンク2077のキアヌ・リーヴスの出演料は間違いなく相当な額だろうが,その演技はほんの数年前では考えられなかったような深さと詳細さでキャプチャされる。
「ただ声を出してもらうだけではなく,今はもっと,濃密に役を演じきってもらうことができます。素晴らしい声優は宝です。もし見つけられたらそればそれで素晴らしいことです。しかし今は,完璧に役を演じきってくれる俳優を見つけることもできます。ありえない戦闘用のヘルメットをかぶったり,レオタードを着てくれさえして」
GamesIndustry.biz はGamelab 2019のメディアパートナーです。主催者のサポートを得てイベントに参加します。
ゴッド・オブ・ウォーのディレクターを務めるCory Barlog氏は,著名俳優のキアヌ・リーヴス氏がサイバーパンク2077のJohnny Silverhand役を演じること,これが今後のトレンドのはしりになるだろうとして,将来的にますます有名俳優らがゲームに登場するだろうとGamelabカンファレンスの壇上で語った。
Sony Worldwide Studios London StudioのStuart Whyte氏と共に壇上に上がったBarlog氏は,昨年のゴッド・オブ・ウォーでKratosの役を演じるのにふさわしい俳優を探し出すのがどれだけ骨の折れる仕事だったかを説明した。問題は,役に適した声を見つけることだけではなく,モーションキャプチャ技術を使うのに適した身体的特徴を持つ人物を探すことだったという。
「実に2年かかりました。諦めるところでしたよ。(Kratos役を演じた)俳優クリス・ジャッジを見つけた頃は,毎日会議に出るよう追いたてられていました。『このプロジェクトがうまくいかない場合のことを話そう,(過去の)この時点まで戻って,スケールを縮小して,いろいろ削減しなければならない』と」
実際,クリスは,自分が選ばれたとき,台本や深みのあるキャラクター設定を見て,ゴッド・オブ・ウォーは映画であると思ったそうだ。Freya役を演じた女優のダニエラ・ビスッティも同様だったという。
「ゲーム業界では長らく,俳優と役柄は似ている必要はない,だから,セレブリティは必要ないと思ってきました」
「ダニエラは(大ヒット映画)ゲーム・オブ・スローンズのオーディションだと思っていたそうです。映画じゃなくてゲームだと知り,落ち込まないようにするのが大変だったとか」「クリスも同じでした。彼は『これはゲームじゃないよね,映画だよね?』と。事実を伝えるべきか悩みましたよ。映画じゃないと彼は出てくれないのだろうか? 映画だと言っておいて『ところでクリス,これはゲームだったんだ,いま発売になったよ』というところまではたして嘘をつき続けられるのか? と」
クリスとダニエラはともに,声の出演だけでなく,アクション能力も踏まえて抜擢された。しかしどちらもキアヌ・リーヴスほど有名な俳優ではないと言っていいだろう。ゴッド・オブ・ウォーで最も有名な俳優はおそらくジェレミー・デイヴィスで,Barlog氏がテレビドラマ「Justified」での彼の演技に感銘を受け,Baldur役に抜擢された。しかし,ゴッド・オブ・ウォーのキャスティングでは著名俳優を起用しようとしてネガティブな前例があり,出演依頼というものはほとんど行われていなかった。
「有名な俳優たちにコンタクトしたら,出演料は1000万ドル(10億円強)と言ってきました。プロジェクトの予算総額ですら1000万ドル以下です。無理に決まっているではありませんか」
「とどのつまり,俳優たちはゲームで良い経験をしたことがなくて,この仕事はやりたくない,すなわち断りの文句だったんです。「ゲームの仕事はしません」と,もっと率直に言ってくれる人もいました。そういう人たちには説得を試みましたが,うまくいきませんでした」
PSVRのタイトルであるBlood&Truthのディレクターを務めたWhyte氏は,技術の進歩がLondon Studioで制作されるゲームのキャスティングに対する考え方を変えたことに同意した。歴史的に,(ゲームの)キャスティングといえば,実質的には声を選ぶことだったが,Blood&Truthではそれがはるかに難しいことが分かった。
「俳優をスキャンして,フォトグラメトリを試してみたかったのです。そこで急遽,キャスティングの観点からもっと高い要求レベルを設定しました。役にぴったり合う声だけでなく,見た目が似ていて,アクションもできる俳優を見つけねばならなかったのですが,すべてを満たす俳優を探すのは至難の業でした」
「今は,完璧に役を演じきってくれる俳優を見つけることもできます」
体を使った演技をを完全にスキャンし,ゲーム内でキャプチャすることを可能にする技術によって,Barlog氏が「壁を低くする」と形容するように,業界内で有名な俳優を採用しやすくなった。「ゲーム業界では長らく,俳優と役柄は似ている必要はない,だから,セレブリティは必要ないと思ってきました。でも,バランスが取れているほうがいいと思います。ぴったりな役者がいるかもしれません。よく知られた名前が,ゲームの登場人物としてもパーフェクトかもしれませんから」
「最終的にはいつも『そんなの必要なくない?』という業界における多くの暗黙の了解と不毛な戦いをすることになります。しかし,キアヌ・リーヴスがサイバーパンク 2077に登場するJohnny Silverhandを演じることを見ても,明らかに今は受け入れられるようになりました。DEATH STRANDINGのキャストは全員,文字通り素晴らしいですよね」
「私にとっては,本当にエキサイティングなことです。映画とゲームの業界同士のつながりも強くなり始めたように思います。以前はつながりがなく,かなり壁がありました。でも最近はゲーム好きの若い映画監督たちが登場していて,この事実に気づいています。そしてより多くの俳優たちは完璧に状況を理解しています」
そして,ゲーム業界は,その創造的価値への認識の高まりと,現在使うことができる技術的なツールによって生み出された課題に立ち向かっている。サイバーパンク2077のキアヌ・リーヴスの出演料は間違いなく相当な額だろうが,その演技はほんの数年前では考えられなかったような深さと詳細さでキャプチャされる。
「ただ声を出してもらうだけではなく,今はもっと,濃密に役を演じきってもらうことができます。素晴らしい声優は宝です。もし見つけられたらそればそれで素晴らしいことです。しかし今は,完璧に役を演じきってくれる俳優を見つけることもできます。ありえない戦闘用のヘルメットをかぶったり,レオタードを着てくれさえして」
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