クライストチャーチ大虐殺事件後のコミュニティマネジメント

ベテランプロダクトマネージャーのJames Kozanecki氏は,業界はもはや有害なトローリングの悪行を見逃すことはできないと語る。

 先週末,ネットの荒らしからテロリストに転じたオーストラリア人がモスクの中で祈っている50人(元記事掲載時)を虐殺した。彼の犯罪はFacebook上で生放送され,彼は憎悪と虐待で悪名高い8Chanのネットコメント投稿者に(Markへの叫び※)警告を発した。テロの犯行声明で,彼はさまざまな政治的話題に触れているが,最も際立っているのは,彼の「糞カキコ」と定期的なミームの投下だ。明らかに,インターネット文化は彼の信念を形作るうえで一定の役割を果たしている。

※(Soutout to Mark)はTHQが児童ポルノサイト非難で使用したことに端を発するネットミーム

 「ああ,それは単なるミームだ。無害だよ」と無知に主張することができた時代は終わった。

 私はオンラインコミュニティ管理に12年以上携わってきたが,私がキャリアを始めた頃は,各ブランドは,自分たちが直接ホストしたチャンネル上に存在するコミュニティしか想定していなかった。技術やコミュニティが進化するにつれて,我々のコミュニケーション方法やオーディエンスへの優先順位も変わった。多くの企業にとって,コミュニティ管理は今や重要な分野となっている。それによって,ファンはブランドとの信頼関係を築くことができ,将来また取引したいと思うようになる。


「この問題がコミュニティから現実の世界に広がる前に,我々は問題にどのように対処するかを決定した」

 しかしながら,投資の際にKPIと収益を測定するように,コミュニティマネージャーとして我々は,オンラインで人々が集まり対話する空間を構築する際に果たす役割を忘れてはならない。我々は,自分たちのコミュニティの言動や行動のすべてを制御することはできないが,責任を持って過激派のコンテンツにきちんと対策を実施し,適切に対応することはできる。

 方針を設定し,なにが許容されるかを決め,問題がコミュニティを介して現実の世界に広がる前にどう対処するかを決定する。

 ゲーム業界は,GamerGateやそのほかの組織的な嫌がらせキャンペーンのおかげで,公正な分け前どころではないコミュニティの反発を受けた。

※GamerGateはゲームジャーナリズムの公平性と女性差別を中心に展開される一連のネット論争。詳しくはこちら

 今日に至るまで,業界がこれらのキャンペーンに対して意味のあるスタンスを取ったことはない。いくつかの企業はあるが,それらはほとんどインディーズだ(蔑視するわけではないが,彼らは大衆への影響力を欠いている)。大手パブリッシャは有害なコミュニティに対して厳しい態度をとることに失敗しており,大手メディアもほとんど傍観を決め込み,嫌がらせに挑んでいない。これは変えねばならない。

 最終的な収益にどれほどの影響を与えるかを恐れることなく,厳格なルールを設定して積極的に運用するには,おそらく組織のプレイヤー/読者に負担を強いることになる。しかし,オンラインコミュニティの管理人としての社会的責任がそれを要求している。私は多くのブランドが,ビジネスに対する財政的,社会的重要性のために主要なコミュニティメンバーの反社会的行動を軽視ないし無視するのを見てきた。「ああ,それは単なる人種差別的または同性愛嫌悪的発言だ」と,彼らを追放するのではなく,有害なプレイヤーを改心させようとする(そして彼らを顧客として維持しようとする)。

「我々は,コミュニティマネージャーとして知っておくべき有害な行動のガイドブックを受け取った」

 先週の悲劇から脱却するための多くの知見があるが,我々は,コミュニティマネージャーとして知っておくべき有害な行動のガイドブックを受け取ったのだと思っていいだろう。我々のチャンネルにコピペを貼ったすべての人を報告しろと言っているのではない。しかし,我々はそのような投稿を評価するために,オンラインカルチャーの知識を用心深く使うべきである。さらに,我々はコミュニティから扇動的なメンバーを排除する恒久的な措置を講じることを恐れてはいけない。

 インターネットは国境を打ち破るという素晴らしい仕事をしたが,同時にそれは実生活であれば通常取るであろう我々の個人的な責任感を大幅に減少させている。これは一夜にして変わることはないだろう。そして間違いなく苦しい戦いとなる。これは傍観して何もしないことへの言い訳ではない。不作為は,我々が現在いるところへと導いてくれたのだ。

 私はこれがゲーム業界のみに責任がある問題だと言っているのではない。我々はそうは言わない。ここは少し明確にしておこう。(ゲームに限らず)オンラインコミュニティを所有または運営している人であれば誰でも,オンライン上の悪行を特定し対抗する役割を担っている。

 偉そうなことを言っていると思うかもしれない。おそらくそれは正しい。私が上で書いたことは,言うはやすく行うは難い類のことだからだ。しかし,こういったことを心に留めておいてほしい。先週の銃撃犯は,おそらく我々のプラットフォームと接触している。彼はおそらく我々のゲームをプレイし,我々のプレイヤーと交流している。あなたのチャンネルが,彼のメッセージを広める手段になったことを知ったらどんな気持ちになるだろうか?

James Kozanecki氏は,東南アジア,オーストラリア,ニュージーランドでのWorld of Tanksのプロダクトマネージャです。彼は戦略的コミュニケーションとコミュニティ管理に携わって12年以上の経験があります。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら