モバイルでナンバーワンになるには何が必要か?

AppLovinのLion StudioがインディーズタイトルのFlip Tricksterをトップチャートに押し上げた秘訣を語る。

 モバイルはゲーム業界で最も競争の激しい市場であり,あらゆる規模の会社が抜きん出るための新しい方法を常に模索している。

 先般,モバイルマーケティング会社のAppLovinが,パブリッシャ部門のLion Studioで,この競争に新しいアプローチを試みた。「Ultimate Game Changers(究極のゲームチェンジャー)」と名づけられたこのコンテストでは,すでにリリースされているものの10万回以上ダウンロードされていない有望なモバイルタイトルをLion Studioで再びローンチし,ランキング1位を狙うことを目標とする(関連記事)。

 勝者となったのは「Flip Trickster」だった。App Annieによれば,21歳のスウェーデン人開発者Oliver Erikkson氏によるこのカジュアルな体操ゲームが,先週,米国と英国でフリー(無料)タイトルのランキングで最高位を獲得した。

Lion Studios社長Rafael Vivas氏
 我々GamesIndustries.bizはLion Studioの社長であるRafael Vivas氏にこの成功について話を聞いた。面白いことに,我々のインタビューは何度か延期されていたが,このゲームがちょうどNo.1になるタイミングで実現した。さて,最大級のモバイルゲームのスタジオですら確約できないランキング1位,Lion Studioはどうして獲得できるると思ったのだろうか?

 「いや実際のところ,状況は同じですよ。トップを取れるかどうかは分かりません」とVivas氏は認めた。「Kingの(Candy Crush Friends Sagaの)ローンチとかぶったので熾烈な競争になりましたが,我々はコンテストをやっている間もマーケティングを行うことができましたので,ある程度の自信はありました」

 「我々が今まで見た中でFlip Tricksterは最も優れたリテンション,エンゲージメント性,市場性があったので自信はありましたが,ナンバーワンを取れるかについては,絶対の自信があったわけではありません」

 モバイルゲームにとって米国と英国はもちろん重要な市場だが,Vivas氏はこれがFlip Tricksterの各国での連勝ストーリーの始まりにすぎないと確信している。

 「『Happy Glass』は,25か国以上でNo.1を達成しました。『Flip Trickster』ではローンチに向けてより多くのローカリゼーションを行いましたから,必然的に前例を超えることが目標です。私個人でのゴールは50か国ですが,実際どうなるかは見てみないと,というところです」

「人々が自然に探し出そうとするような素晴らしいコンテンツを持っていること,または選別的なマーケティングを行うことが重要です。そこから参加してきたプレイヤーは価値が高いのです」

 リテンションとエンゲージメントはモバイルタイトルが継続的に成功するための鍵だが,これは市場で競争力を発揮するうえで重要な役割を果たすことが実証されている。Lion StudiosがFlip Tricksterのプロモーションに費やした金額は教えてもらえなかったが,彼らが強調したのは,モバイルプレイヤーの獲得は,費やした予算に比例するものではなく,いかに効率的にコストをかけたかということだった。

 今回のローンチでLion Studioはバナー広告,インタースティシャル広告(interstitial),報酬つき動画広告(rewarded video ads)など,主要な広告媒体をすべて使用した。そして,意外性はないだろうが,報酬つき動画(rewarded video)とインタースティシャルの全面広告が最も効果的であることが判明した。ただし,どのプラットフォームにマーケティング予算をかけるのかを選ぶことに一層の注力をしたとVivas氏は語る。

 「Facebook,Google,AppLovin,我々独自のものなど,大きいマーケティングチャネルをすべて活用することも戦略の一つでした。すべてを活用し,マーケティングキャンペーンを打ち上げることで,No.1を達成することができたと思います」

モバイルでナンバーワンになるには何が必要か?

 しかし,Vivas氏また,はマーケティングだけではモバイルチャートでの成功を保証するには不十分だと強調する。一番大切な決定要因はもちろん,ゲームそのものだ。Match-3ゲーム(※3個揃えて消す系),ベースビルダー(※Crash of Clansなどの基地作る系),エンドレス・ランナー,そして無数のFree-to-Playタイトルによる競争であふれかえる市場では,独創性と高い品質の両方で目立たなければならない。

 「まず最初に,ユニークで,これまであまりなかったようなゲームを作ること。例えば『Flip Trickster』です。過去に体操やパルクールのゲームはありましたが,このスケールの規模のものはありませんでした。ハイパーカジュアルのジャンルの消費者にとって新鮮なものであったことが,このゲームがコンテストのすべてのカテゴリで勝った理由の一つでもあります」

モバイルでナンバーワンになるには何が必要か?
 「次に,適切なパートナーを見つける必要があります。インディーズは頭数と現金がいつも懸念事項です。我々が(前出の)Oliver (Erikkson氏)に対して,より市場性のあるゲームを作ったり,ちょっとした微調整をしたりするためのアドバイスをしたように,適切なパートナーを探す。そして,ゲームができたら,そのパートナーがマーケティング担当として,持っているリソースでゲームを世に出す手伝いもできます」

 モバイルでNo.1を獲得するのは素晴らしいことだが,そのポジションを維持することはまったく別の話だ。Lion Studiosは「Flip Trickster」を引き続き販売し,Erikkson氏をサポートし彼のゲームのプレイヤーが長く留まりゲームのエバンジェリストになるように計画している。いずれもモバイルとしては非常にスタンダードなやり方だ。同社はナンバーワンの座を防衛できると確信しているが,どのくらいの期間できるだろうか?

 「皆さんは『永遠に』と答えてくれると思いますが,現実的に見れば我々の防衛記録は『Happy Glass』での4週間弱です。App Annieによればこのゲームは,先月,iOSで世界で最もダウンロードされたゲームですが,それでもその程度です」

 「Flip Tricksterではこれまでの成功経験を踏まえると,少なくとも1か月は維持できると思いますが,それ以上は無理でしょう」

 AppLovinとLion Studiosは,今のところ次の「Ultimate Game Changers」を開催する計画はないとするが,このコンテストを行ったことで多くの貴重な教訓を学んだ。すなわち,世の中には若くて素晴らしくて,助けを必要としているインディ開発者がたくさんいるということだ。

 このイニシアチブが最初にローンチされたとき,両社はこのプロジェクトが成功するのかどうか確信を持ってはいなかった。しかし,ふたを開けて見れば40以上の国々から何百ものエントリーがあった。同時にそれはまた,モバイルゲームの競争は世界的ものであるということを示していた。

 「Flip Trickster」以外の選ばれなかったスタジオ,また,モバイルゲームにインパクトを与えようとしているインディ開発者に対し,チャートで高いランキングを獲得することだけがゲームの成功に不可欠なのではないとVivas氏は言い切る。

 「毎年10億ドル以上の収益を上げるSupercellを見てください。彼らは決してトップテンにはランクインしていません。人々が自然に探し出そうとするような素晴らしいコンテンツを持っていること,または選別的なマーケティングを行うことが重要です。そこから参加してきたプレイヤーは価値が高いのです」

 「実際,Flip Tricksterや我々のほかのゲームをプレイすると分かりますが,たとえハイパーカジュアルでも,我々はエンゲージしているプレイヤーにとっては深みがあるエコノミーを構築していきます。我々はゲームの寿命を延ばし,エンゲージしているプレイヤーにさらなる深みを提供することができます」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら