[TGS 2018]VR空間内の大規模遊園地を実現するハシラス「ALTLAND」の試み

 2018年9月20日から千葉県・幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ2018」。ここではVR/ARコーナーで出展していたハシラスブースの模様を紹介しておきたい。

 本題に入る前に,メインディッシュ以外の展示を先に済ませておこう。
 「トーヤラケット」は襲い来るモンスターに対してトーヤラケットでは,トマホークをぶつけて撃退するという防衛系のシューティングゲームなのだが,実装として「コントローラを投げる」という,きわめて直接的な方法が取られている。
 試遊台の前方にはネットが張ってあり,投げたコントローラの衝撃を吸収するとともに手元に滑り落ちてくるように設置されている。プレイヤーは戻ってきたコントローラを拾っては投げ拾っては投げを繰り返すのだ。


 さて,VR空間内での「投げる」処理は昔から比較的難しめだ。「手を振りながら適切なタイミングでトリガーをリリースする」といった感じのものが多いのだが,うまく投げることは思いのほか難しい。釣りゲーなどもいくつかやると微妙にクセが違ったりする。リリースタイミングと処理プログラムの問題なのだろうが,コントロール的にもスピード的にもなんとなく感覚的に合わない結果になることが多い。
 「直接投げる」場合にはそのあたりの問題がすべてすっ飛ばされて,コントローラはポジショントラッキングされた軌道でそのままVR空間で「投げ」られる。これには「VRに詳しい人ほど驚く」とのこと。まあそうかもしれない。

 コントローラではなくトラッカーのほうが安くて投げやすいんじゃないかとかいった疑問を抱く人もいるかもしれない。トラッカーでは手に持ったときにセンサーが隠れて位置を見失うことがあるのと,コントローラのほうがそもそも電池のもちがいいので,コントローラを投げるトマホークが採用されたそうだ。
 そもそも投げて問題ないのかというのも聞いてみたが,まあ,ちゃんと受け止める工夫がしてあれば大丈夫らしい(HTCの人の見解は知らないが)。とにかくVRアトラクションの可能性を広げる面白いアイデアを使ったゲームであった。
 今回の展示にはトーヤラケット以外に旧作もあったのだが,フレーム状の筐体にはコインシューターが取り付けられており,オペレータなしでの運用ができるところまで持っていく工夫がされたものとなっていた。VRアトラクションのコンテンツ部分というよりは,大規模・小規模のVRアトラクションの運営を考慮した出展内容といえるだろう。
 

狭い空間で広大な遊園地を


 本題に移ろう。ハシラスブースの目玉は,CEDECの記事でも紹介していたシステムによる「ALTLAND」だ(関連記事)。これは,ゲーム内でのロビー的な機能を備え,そこから複数のコンテンツを起動していくという大規模VRゲームシステムだ。会場では8人の同時プレイ可能になってた。

ALTLANDのイメージ
[TGS 2018]VR空間内の大規模遊園地を実現するハシラス「ALTLAND」の試み

[TGS 2018]VR空間内の大規模遊園地を実現するハシラス「ALTLAND」の試み
 ブース内に入ると最初にあるのは待合室のようなところで,ロッカーに荷物を預けて椅子に座って順番を待ちつつ,アバターの設定を行う。性別,顔,髪型,服装などをいくつかのパターンから選ぶ方式だ。身長とニックネームだけは記述式である。身長はVR空間内での視点の基準ともなるものなので正確な記述が求められていた。……のだが,ゲーム内ではなぜか爪先立って歩くというか流れていく人が多かった,身長とアバターの設定があっていなかったのだろうか。

 順番がくると,バックパックPCとVive Pro,そして2個のコントローラを装着する。ここはオペレータがどうしても必要な部分ではある。 
 手を引かれてたどり着いたのは空中に浮かんだプラットフォーム状の部分で,そこから乗り物に乗っていくといった体裁になっていた。一般的なViveでのプレイエリアよりはかなり広めだ。Vive Proならではというか,ベースステーション2でないとさすがにこの広さは無理とのことだった。
 なお,プラットフォーム部分自体も遊び場として機能するように小物が置かれていたが,制限時間なども考えるとこれは不要だったかもしれない。

[TGS 2018]VR空間内の大規模遊園地を実現するハシラス「ALTLAND」の試み

 今回のコンテンツはすべて乗り物系で,セグウェイのような乗り物に乗るジェットコースター(?)3種とトロッコだ。「セグウェイのようなもの」なので,手でつかまる部分もあってよかったのだが,一方でViveのコントローラを握ったままでもあり,ちょっと対処に困る。
 また,設置されたモノとVR空間は一致していることが望ましいが,試した限りでは10cm弱のズレもあった。
 ちなみにプレイエリアの天井には,ズラリとたくさんのViveトラッカーが取り付けられていた。SteamVRのプレイエリアはルームセットアップ時に設定するのだが,使っているうちにズレてくるそうで,それを防ぐために,フィールドそのものにトラッカーを取り付けているという感じだ。しかしそれでもまだズレが出ている。手探りでなんとかなるレベルではあるが,いっそうの研鑽が望まれる部分でもある。

天井部にずらりと並んだViveトラッカー
[TGS 2018]VR空間内の大規模遊園地を実現するハシラス「ALTLAND」の試み

 扇風機や振動などを使って,狭い空間で広大な遊園地を体感させるコンテンツは見事なものだ。遊園地のような仕立てで,複数のコンテンツを起動できるようなVRコンテンツはこれまでにもあったのだが,フリーローミングと組み合わせて限りなくシームレスに楽しめるのがALTLANDの特徴でもある。

 今回は,会場の環境なども考慮して安定して回せる8人(+オペレータ3人)という設定でデモが行われているが,ハシラス社内では24人での運用ができているそうだ。人数的にはまだ増やせる余地はあるのだが,主にWi-Fiの帯域が足りなくなってくるとのことだった。今回のデモでは,そのあたりの節約のため,1人2個使用するコントローラはバックパックPCからワイヤードで接続されている。
 VRアトラクションの新たな可能性を広げるALTLANDは,多チャンネルで多くのトラッカーを運用し,SteamVRの限界に挑むようなシステム構成でもあったようだ。

ハシラス公式サイト