[TGS 2018]空間に本物の立体映像を描くVoxon Photonicsのテクノロジー
オーストラリアのVoxon Photonicsのブースは照明を消した暗がりになっており,1台の3Dディスプレイが持ち込まれていた。丸い透明なドームの付いた筐体が特徴的で,ドームの周りにはジョイスティックと4ボタンからなるコンパネが4台分付いており,最大4人でゲームをできる。
ドームの下の台にはDLP(DMD)デバイスが設置されており,そこからドーム内の空間に立体映像を投影している。
DLPは半導体の表面に細かい鏡をたくさん設置し,1個1個を微妙な角度に調整できるというデバイスだ。光を当てると画素ごとに濃淡をコントロールでき,それを利用して映像を作ることができる。小型プロジェクタでよく使われている技術である。今回のデバイスでも,基本的にはDLPプロジェクタを応用したものと考えていいだろう。
普通と異なるのは,映し出す先だ。プラスチックのドームの下では,投影先となるスクリーンが高速に上下している。なんと驚いたことにメカニカルなシステムであった。1秒間に15往復とのことで,行きと帰りの行程で映像を投影できるので,1秒間に30枚の絵を映し出すことができるとのこと。
スライスされた立体物を下から1層ずつ積み上げている様子は,3Dプリンタと同じだが,それを超高速に行っているのだと説明していた。
なお,使われているDLPの画素は1000×1000ドットで,高さ方向には200層の解像度を持っており,秒間4000枚の絵を出力可能だという。200×30で6000枚なら分かるのだが,何度聞いても秒間30フレームだけど4000枚とのことだったので,ちょっとコミュニケーションに齟齬があったかもしれないのだが,とりあえず,1000×1000×200の解像度で秒間30フレーム出るというスペックだけ押さえておけばいいだろう。
もっと大きいのはできないのかと聞いてみると,少し大きいのもあるとのことではあった。メカニカルな部分を含むので,ある程度の制限は出てくるのだろうが,真に立体を表示できるディスプレイというのは貴重だ。
動作の様子を見ると,ぱっと見には少しちらつきもあるのだが,実際に空間に3次元の絵を描いているだけあって,どこから見ても完全に立体に見えるのが見事だ。
ゲームではボクセルゲームのVoxatronや立体的なパックマンのようなもの,立体的なテトリスのようなもの,立体版のいわゆるスネークゲームが展示されていた。4人対戦はスネークゲームで可能となっていた。
ちなみにこのシステムはWindows上で動いており,このディスプレイ用のシェルも用意されている。それを使うとファイル構造が立体アイコンのフォルダで表示され,3Dデータやアニメーションデータなどが,写真のサムネイルのように立体で表示され,ディスプレイに表示できるのだ。
3Dマウスを接続するとオブジェクトに対するさらに細かい操作もでき,大きさや角度を変えたり立体物を輪切りにしてみたりといったこともできるようになる。このあたりは見ているだけでも楽しい。
気になるお値段は1万USドル(約122万円)とのこと。医療用などでの導入はすでに進んでいるらしいが,今回はゲーム用で使えないかというアピールが行われている。
幸い(?)ブースにはアーケードゲームメーカーや家電やゲーム機とか保険などもやっている企業など多くの来訪があったそうで,とても熱心に話を聞いていたそうだ。もしかしたら,これを使ったアーケードゲームなどが出てくる可能性もゼロではないかもしれない。