どうしてライセンスゲームは良作になってきたのか?

BD LabsのMark Caplan氏は,有名IPゲームを「怪しいモノ」から「大歓迎なモノ」に変えた業界の趨勢をたどる。

 ライセンス作品に携わってきた経歴を通して,BDLabs社長のMark Caplan氏は,人気ブランドとゲームデベロッパが作れるモノの組み合わせの結果で最良も最悪も見てきている。1993年に氏がFoxでライセンスと商品化のチームをスタートさせ,同社はちょうど2年間に8本ほどSimpsonsのライセンスゲームを作った。氏のキャリアの初期には,非常に賞賛されたライセンスゲームプロジェクト(Atari JaguarのAlien vs. Predator)ともうひとつ……それほどでもないタイトル(Atari JaguarのWhite Men Can't Jump)に携わっていた。

 最近GamesIndustry.bizとのインタビューで,Caplan氏は古いタイプのライセンスプロジェクトが業界で非常に一般的になったと語った。Batman,Star Wars,Lord of the Rings,The Walking Dead,Spider-Manなど,現在の最大級の大作ゲームシリーズのいくつかはライセンス作品である。数十年前とは違って,巨大IPゲームはもはや地雷ではなくなっている。

 「その時点では,ゲーム産業は人々の娯楽としてのもの意味が強いように見られていました。私の意見ではですが」とCaplan氏は語る。「そして,私が思うに,当時のプロデューサー,ディレクター,クリエイターたちはゲーム産業をかなり違ったものと捉えていたのです。『ああ,子供たちがキャラクターと関わろうとしているのはたぶん別のところだ』しかし,彼らはコミュニティの本当の価値を知らなかったのです。私が思うに,いまではすべてがそちら側に引っくり返っています。これはファンのところに向かうという意味で継続的な進化でした。現在作られているゲームを見たら,はるかに多くの消費者からの批判的意識があるはずです。彼らはゲームにすばらしい体験を期待しているのです」

 Caplan氏はこのような態度の変化をすべての段階で見てきた。Foxの数年後に氏はSony Pictures Entertainmentに移籍した。ここで氏は,Spider-Man,Ghostbusters,そしてThe Smurfsといった有名作品のゲームを作る手伝いをした。そこでの20年にわたる務めの末に,Caplan氏はグローバルコンシューマプロダクトの上級副社長になり,ゲームライセンシング以外の多くの仕事を担当することになった。

 しかしながら,そのような広範囲の権限は,氏をゲームデベロッパやパブリッシャとの仕事から遠ざけることになった。氏は個人的にそういったやり取りを楽しんでおり,それは氏自身が最も貢献できると感じている分野でもあった。そこで2年後にBDLabsに参加するためFoxを辞めた。BDLabsはグローバルエンタテイメントデベロップメントカンパニーだと自称しているが,平たく言うと,同社の事業の多くはIP所有者とライセンスパートナーに関わるものだった。Guns of BoomのデベロッパであるGame InsightがIPを彼らのゲームに使うのを手伝ったり,玩具会社のSpin Masterのコアブランドのひとつをゲームにするのを助けたりしてきたのだ。

 では,なにが突然ライセンスゲームを改善したのか? いくつかのものがあるが,一般的に言ってそのすべてが好ましい進歩というわけではない。

 「ゲーム機のビジネスが進歩するにつれ,開発費は増加し,リスク要因も増大します」とCaplan氏は語る。「'90年代を振り返れば,ゲームの開発費は,1000万ドル,2000万ドル……と予算が拡大していった2000年代と比べると遥かに小さいものです。ライセンスは,ゲーム機側で開発とマーケティングに有り金をすべて注ぎ込むには少し危険すぎるものになりました。

 より大きな実売数が要求されたことで,ライセンスプロジェクトの量は減っていった。しかし同時に,映画やテレビのクリエイターが時間と資金をかけるだけの商品価値を認めるようになって,スパイラル予算を正当化し十分に大作のライセンスゲームもリリースされていた。Caplan氏自身も,壁這い男としてTobey Maguireが抜擢された映画三部作をベースにしたSpider-Manのゲームのように,そのうちのいくつかに関わっていた。2002年の映画への適合の当初から,Caplan氏は制作プロセスに参加しようとする映画会社のやり方に苦しめられていた。

どうしてライセンスゲームは良作になってきたのか?
 「我々は数え切れないくらい打ち合わせをしました。ゲームのプロデューサーだけでなく映画監督のSam Raimi,映画のプロデューサーのAvi Arad,Kevin Feige,そしてその他大勢のコンセプトを売り込んでくる人たちとです」とCaplan氏は語る。

 映画側のクリエイティブがゲームを深刻にしているの明らかだった。Raimi監督には,VultureやScorpion,Shockerといった映画の悪役でゲームが映画の配役を超えることを認めてもらう必要があった(彼はそうした)。重要なシーンの撮影時にはデベロッパが招待されたので,彼らは映画の雰囲気を感覚的につかむことができた。出演スタッフも巻き込まれた。主演のTobey Maguireが音声取りでやってきたときには,契約義務の範囲を超えて熱演を行った。

 「彼は完全に夢中になっていましたね」とCaplan氏は語る。「彼にとってはサウンドスタジオで我々やプロデューサーからの指導のもとにSpider-Manを演じるのはまったく当たり前のことだったようです。それで役者や監督たちが強く参加したがっていることが分かったのです。彼らは出来栄えを気にしているので……私はSpider-Manで可能性を見出しました。私はSam Raimiの『ああ,私はゲーム産業を知ってるよ。ゲームは品質面でデジタルレンズに迫っていることを知ってるからね』という言葉の可能性を理解したのです」

 トップクリエイターのゲームに参画したいという意欲はそこから広がっていった。2009年のGhostbusters: The Video GameでCaplan氏は原作キャストの出演確保を手伝った。そのとき映画のシリーズは長期の休眠中であり,Dan Akroyd,Bill Murray,Harold Ramis,Ernie Hudson,そしてAnnie Pottsの全員が彼らの役でGhostbustersの最初の2作をゲームのために再演した。これは本質的に3本めの映画を作るようなものだった。彼らは原作の監督であるIvan Reitmanの祝辞をもらうほどだった。

 「思い起こすと,まったくDan Akroydのおかげでした。彼はほかの人たちに参加を促してくれたのです」とCaplan氏は語る。「ゲームのプロデューサーは,役者を獲得できたら,ゲームのことだけをしようと決めました。なので私がしなければならなかったのは,タレントの事務所に行って彼らを説得することでした。彼らはみんな様子見の状態でした。我々は事務所に引き返して,これは一緒にブランドを復権する素晴らしいチャンスであると説得したのです。『映画じゃないのは分かってます。映画が公開されてから何年も経ちました。しかし我々はそれをゲームにできます。我々はちゃんとしたものを作れるのです』」

どうしてライセンスゲームは良作になってきたのか?

 Akroyd,Murray,Ramisは皆ストーリーラインやゲームの脚本に協力しており,「それはもうライセンサーが指示した『じゃあちょっとゲームを作りに行って,18か月後に会おう』といったレベルより遥かに多くの作業をしてくれました」とCaplan氏が語るほどの入れ込み具合だったという。

「([Wheel of FortuneとJeopardyの)プロデューサーは」

 実際に,大物映画俳優がパブリッシャよりもプロジェクトに関わってくることが判明した。GhostbustersのゲームはもともとSierra Entertainmentのプロジェクトだったが,2008年にSierraがActivision Blizzardの合併で吸収されたとき,新たな親会社がゲームを生み出した(Atariがそれをすくい上げ,もうひとつの廃棄されていたライセンスタイトル,Chronicles of Riddick: Assault on Dark Athenaとともに2009年に両作品を発売している)。
 
 Caplan氏が携わったすべての大物ライセンスがゲームとの抱き合わせ販売の重要性に気づいていたわけではない。Caplan氏との仕事で,ゲーム対応の可能性について完全に理解していた最初のIPホルダーは,Wheel of FortuneとJeopardyを(※ともに米国の人気クイズ番組)作っている人たちだったという。

 「ショーのプロデューサーは彼らの作品が終わりそうになったため非常にはっきりした情熱を示していました。私は彼らを信用させるのに苦労しました」とCaplan氏は語った。「彼らはWheelとJeopardyの両方で,我々とデベロッパに,ゲームのすべての要素をショーで起こることと一致させようとしました。問題や回答,パズルのリズムといったものです。私の意見では,それはよりよい製品を作るのに役立ったのです」

 ゲームに参加しようというクリエイターの意欲は,間違いなくライセンスゲームの分野で目覚しい変化となっている。しかし,それだけではまったくない。ゲーム業界を定期的かつ大規模に再形成しようとするトレンドは,明らかにランセンスゲームプロジェクトにも影響を与えている。そして,それはデベロッパとIPホルダーの互いの関わり方を変えている。

 「こういった新たなプラットフォームの増殖は,自身のIPを作り,混合しようとしている多くのデベロッパにチャンスを与えます」とCaplan氏は説明した。「チャンスの海は広がっていますが,ビジネスを前進させるためにランセンスが必要だと実際に感じているような企業グループは,かなり限定されています。世の中にはたくさんのIPがありますが,現代では企業は自社で少しでも開発・所有しようとするため,非常に慎重になっています」

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら