【モバイルゲーム中国進出 虎の巻】第1回 中国市場とゲームプレイヤー動向

【モバイルゲーム中国進出 虎の巻】第1回 中国市場とゲームプレイヤー動向
 現在の中国は,モバイルとPCゲームにおいて世界一の市場規模であるとの調査もあり,年間評価額は320億ドルを超えます。これは全世界のゲーム市場4分の1にあたる規模です。また,スマートフォンプレイヤーは7億人以上いると言われており,中国の調査会社iResearchによると2016年の中国のモバイルゲームの売上高は1020億元(160億ドル超)に達しています。ここ数年,この大きな市場を目指して日本含め海外の多くのゲーム会社が進出しています。

 しかしながら,中国は海外企業の参入が最も困難な市場の一つでもあります。中国市場でのゲームのローカライズからローンチに至るまでの全プロセスが,簡単なアプローチでは対処できないためです。加えて,中国のゲームプレイヤーは,特定のジャンルやゲームスタイルにこだわらず,好みや傾向は日々変化しています。

 そこで今回より,モバイルマーケティングプラットフォームを提供する中国企業Mobvista(読み方: モブビスタ)の日本のカントリーマネージャーである井料武志が,日本のモバイルゲームの開発者やマーケッターの皆さまのお役に立てるように,中国進出時のノウハウを連載で紹介いたします。

 1回めとなる今回は,中国のモバイルゲーム市場の動向とゲームプレイヤーの特徴をご紹介します。


■中国 モバイルゲーム市場の現在


●Google Playのない中国
 よく知られていることですが,中国ではGoogle Playは存在しません。したがって,Android向けにゲームアプリを開発している海外企業は,Google Playの代わりに存在する複数のローカルAndroid アプリストアや,ほかの流通チャネルに対応してローンチしなくてはいけません。中国進出においては,まずこれが最初のチャレンジとなります。

 一方,中国においてもiPhone(Apple)プレイヤーは日本と同様にApp Storeを使うことが可能です。そのため,海外のゲーム会社がゲームをローンチする際は,Appleが用意するiTunes Connect内のオプション欄で中国のチェックボックスにチェックするだけで,Androidのような煩雑な手続きを回避することが可能です。ただし,アプリが中国語に翻訳されていて,禁止コンテンツやイメージが含まれていないことが条件としてあります。したがってApp Storeは,現時点では海外のゲーム会社が中国で自社の力だけでも容易にパブリッシングできる方法となっています。

 また,中国ではゲームローンチのプロセスの一部に政府が関与しています。2016年からすべてのモバイルゲームが政府の承認を受けなければならなくなりました。その結果,ローンチまでのプロセスはさらに複雑さを増しました。中国国内のルールや規制に詳しいローカルパートナーのサポートを受けることは,こうした問題を解決する一つの方法となっています。
 一方で,App Storeでは前述したiTunes Connectのチェックボックスのおかげで,政府の承認は必要ありません。


●アプリストアの特殊な傾向
 中国のアプリストアには,ほかの国と比べてもユニークな次のような特徴が見られます。

  • 中国のスマートフォン市場は,OSの86%をAndroidが占めており,残り14%がiOSなどのOSです。前述した通り,AndroidではGoogle Playはありません。その代わりに,10程度の主要なAndroidストアがあり,小さなものも含めると200を超えるアプリストアが存在します。
  • 中国のアプリストアでは,トップの200アプリのうち新作 (7日以内にリリースされたゲーム)が占める割合は13%です。トップ100のゲームランキングの不安定度の指標となるボラティリティ指数は86%です。この指標が高ければ高いほど,ランキングの変動が激しくなります。
  • 中国でのチャートブースティングビジネス(人工的にランキングを引き上げるマーケティング手法)は成熟しており,いったんアプリがトップに躍り出たとしても,ランキングを維持し続けることは困難です。
  • 中国のアプリストアのトップ20ベストセラーリストの全アプリのうち55%は,1年以上前にリリースされており,25%は6か月以内にリリースされたものです。

●中国独自の「グレートファイアーウォール」の存在
 中国には「グレートファイアーウォール」と呼ばれるインターネット上の情報統制システム「金盾(きんじゅん)」が存在し,中国でブラックリスト化されたウェブサイト,特定のページやIPアドレスとの通信をブロックします。これにより,中国のインターネットプレイヤーがアクセスできないように,多くのソーシャルウェブサイトが禁止され,禁止キーワードを含むコンテンツが除外されています。
 グレートファイアーウォールはプレイヤー体験に影響を及ぼし,プレイヤーは接続の問題なのか,禁止サイトにアクセスしようとしたために制限がかって生じた問題なのかを判断さえできません。グレートファイアーウォールのもう一つの影響は,国際仕様のアプリを含むすべての外部コミュニケーションの帯域幅が制限されることです。これにより,国際仕様のアプリのプレイヤー体験が大幅に損なわれ,画像と動画のタイムアウトが発生し,リダイレクトが遅くなり,リンク速度はほぼ0近くになります。
 こうしたことが原因で,プレイヤーは一度試したきり二度とそれらのアプリを開かなくなる可能性があります。ある調査で,中国のスマートフォンプレイヤーの37%が一度きりしか開いたことのないアプリがあると回答しているのは,おそらくこのことも影響しています。


■中国のゲームプレイヤーの特徴を分析する


 中国のゲームプレイヤーにゲームを手に取ってもらうためには,ゲームプレイヤーの特徴を押さえておく必要があります。ここからはゲームプレイヤーの特徴を紹介します。

 Mobvistaが,グループ会社でモバイルゲーム会社向けに解析ツールを提供するGameAnalyticsとともに実施した調査データをもとに,中国とほかの国のプレイヤーを比較しました。

●中国のゲームプレイヤーはより長い時間プレイする
 中国のゲームプレイヤーは1日に3.6セッションをプレイするのに対し,ほかの国では4.9セッションとなっており,1日あたりの平均が1セッション程度少なくなっています。


 しかし,中国のプレイヤーは1セッションあたり48%多く時間を費やすというデータもあります。つまり,マネタイゼーション手法が広告となっているタイプのゲームアプリでは,セッション時間が長いほどプレイヤーが広告を目にしたり関わったりする機会が増えるため,広告掲載によるマネタイズも期待ができます。

●課金ゲームプレイヤーの割合はやや少ない
 有料プレイヤーへの転換率を比較したところ,中国のプレイヤーは,ほかの国のプレイヤーの平均よりも約20%低いです。しかしながら,気まぐれなプレイヤーが多く,休日やそのほかのイベントでは,課金プレイヤーに転換する可能性があります。また7億人以上のスマートフォンユーザーがいるため,ユーザー基盤は大きなものがあります。

●課金の頻度は多い
 課金ゲームプレイヤーの割合はやや少ないものの,平均取引件数(課金回数)はほかの国よりもやや高い傾向にあります。しかし,1回当たりに利用する金額 (課金額) は他国と比べてわずかに低いです。つまり,中国のゲームプレイヤーは少額を頻繁に使うタイプのゲームを好むということを意味します。

●中国のゲームプレイヤーはよりさまざまな種類のゲームをプレイする


 上記のグラフにあるスティッキネスは,プレイヤーのエンゲージメントの程度を示します。30日以内に同じゲームに戻った中国のゲーマーは通常6-7%程度です。この数値は,週末が近づくにつれ,約11%まで増加します。中国のゲームプイレヤーはお気に入りのゲームを週末によりプレイし,それ以外のときに新しいゲームを試すことが読み取れます。

●多額の課金を行う中国ゲームプレイヤーの存在


 このグラフからは,中国で課金をするプレイヤー1人あたりの平均収益(ARPPU)と,他国のゲーマーのARPPUはほぼ同等であり,両グループの平均額は8ドル前後となっていることが分かります。しかしながら,支出額が平均を上回るゲームプレイヤーにおいては大きな違いが見られ,中国のゲームプレイヤーは他国のゲームプレイヤーより平均ARPPUを大きく上回る額を出費しています。中国ではこうした高額消費プレイヤーが多く存在し,他国の高額消費プレイヤーより11%多く出費する傾向があリます。

 以上,中国のモバイルゲーム市場とそのプレイヤーはほかの国にはない特殊な部分があります。こうした中国市場の状況を理解したうえで,適切な対応を取っていくことが,一見,遠回りに見えるようですが成功への一番の近道になることでしょう。次回はこうした中国市場に進出する際,ゲームをどのようにローカライズ(現地化)すべきかをお届けします。

【井料氏のプロフィール】
Mobvista Country Manager, Japan
関西学院大学卒。産経新聞社に新卒入社,その後2000年にリクルートと米国About.com のジョイントベンチャーであったAll Aboutのスタートアップに参加。営業マネージャー,大阪営業所長として活躍し,同社の2005年JASDAQ上場に貢献。2009年に楽天に入社,国内の広告ビジネスを営業面で大きく成長させたあとシンガポールに移り,グローバル広告ビジネスのパイオニアの役割を担った。2014年台湾本社のAI企業Appierに入社,日本法人の設立から大阪オフィス設立まで,同社の日本市場における立ち上げから急成長を3年間に渡って指揮した。2017年9月Mobvista.に入社,カントリーマネージャーに就任し,同社の今後の日本における事業の責任者を担う。

【Mobvistaについて】
Mobvistaは世界最大級のモバイルプラットフォームを運営し,プレイヤーの獲得,マネタイズの提供,分析など,世界中のモバイルマーケティングに関わる人々にサービスを提供しています。1000を超える企業がMobvistaを利用しています。
TUNEの「2016年度モバイルアドプラットフォームTOP25」に選出され,世界243の国と地域で100億以上のデイリーインプレッションがあり,優れたアドテクノロジー企業として知られています。2015年冬にNEEQに上場し,時価総額は10億ドルです。
また世界14拠点に,500人以上の従業員が働いています。