DLC:VRの熱は冷めた
Tommy Palm氏は薄れゆく馬鹿騒ぎについて語った。Take-Twoはリリース日に合わせてフィーチャーをカットすることを拒否した。などなど,我々の新しいガラクタコラムを始めることにしよう。
GamesIndustry.bizの取材ではいつも,記事の本筋の内容からは外れるのだが,興味深いネタというのがある。しかし,それらはレポートする価値がある。これを公開しない仕事としてゴミ箱に捨てるよりは,我々はさまざまなトピックに洞察を加えるコラムとして作り直して提供したいと考えた。これらのコラムの正確なフォーマットはまだ固まっていないが,我々はこれを「DLC」のラベルを付けて発表することにした。
※インタビュー記事本編に対して追加コンテンツ的な位置付けのため,「DLC」というネーミングが行われているものと思われる
私は,Resolution Gamesの創設者であるTommy Palm氏と何度も同社のVRの進捗について話し合った。今年のGDCで氏は同スタジオ初のARゲーム「Bait: Under the Surface」を披露した。ResolutionはまだVRを分離中だが(海賊をテーマにしたNarrowaが最新の作品となる),同スタジオのARへの進出は業界全体の移行を反映していると考えざるをえない。ついでに言っておくと,私は最近ブロックチェーンやAR,e-Sportsに関するメールを多く受け取っている。VRのものは遥かに少ない。
「これはまったく一般的な周期です」とPalm氏は語った。もともと多くの馬鹿騒ぎがありました。多くの人は90年代の騒ぎを思い出し,今回はその真価を見れるのではないかと思ったのではないでしょうか。しかし,馬鹿騒ぎは第1世代のハードウェアのローンチのちょうど2年前にあり,現在我々が見ているものはそれらとはまた別のカーブだと思います。社内でいつも言っているのは,VRがもっとメジャーになるには長い時間がかかるだろうというものです。しかし,デベロッパの視点では素晴らしいものです。今すぐにでもあなたは多くを理解できるでしょう。ハードウェアが安く,より効率的,そして装着がより快適になるにつれて状況はよくなっていくということを。
では,現在のVRをめぐる馬鹿騒ぎが90年代の道をたどり,すべての分野が冬眠から覚める可能性はあるのだろうか?
「いいえ,私はそんなことは起きないと確信しています」とPalm氏は語った。「しかし,同時に,多くの会社とゲームデベロッパが『ちくしょう,資金を回収できない。うちは撤退する』と興奮していうのをたくさん目にしています」
Palm氏は,今年登場したOculus Goのようなケーブルや配線に関する一般的な苦情に対処するだけでなくセットアップ時間をなくすスタンドアロンVRハードウェアに関してとくに楽天的だ。このような技術の進歩はVRの「失望の谷」(関連英文記事)
を超えることを助けるかもしれないのと同時に,Palm氏はARがこの谷間を縮めるか完全に飛び越える位置につけるかもしれないと考えている。
「モバイルARが素晴らしいのは,ヘッドセットを買う必要がない点です」と氏は語る。「ARはもっとカジュアルになる可能性があります。あなたは十分に試して気に入ったら見ればいいのです。気に入らなくてもたいした問題ではありません。のちほどほかのものを試せばいいのです。お店に行ったり,なにかに100ドル使ったり,うちに帰って「ちくしょう,やられたよ」と感じたりする必要はないのです。ですのでそういう意味でそれらは違います。しかしながらまもなくヘッドマウントARが出てきます。そうしたら,人々がそのうち使えなくなってしまうようなものに何百ドルも費やすような,現在と同じ状況になってしまうかもしれません」
パブリッシャがお互いを侮辱するのは,たとえ意図的でなくても見ていて面白いものだ。
最近の投資家へのプレゼンテーションでTake-Twoの代表であるKarl Slatoff氏は,最近のAAAゲームの遅延が続出していることと,特定はされなかったが他社のとあるシリーズでは主要機能の省略にプレイヤーが慣れてきていることについて聞かれていた。私はそれを,Activisionが今年末に従来あったシングルプレイヤーキャンペーンモードなしで発売するCall of Duty: Black Ops IIIIを指しているものと解釈した(関連英文記事)。Activisionは発売時期を早めるために省略したのではないと具体的に述べていたが,そこには密接な関係があり,それこそがSlatoff氏が取り組んでいるものだった。
「それは我々がこれまで市場に対して取ってきたやり方ではありません」Slatoff氏は語る。「さらに我々は年間のリリースを保持していますが,我々はそれに新機能を加えています。我々はゲームを1か月ないし2か月ないし数か月遅らせてでも,新機能が完成する,ないしより多機能になる,ないし予想以上に多機能になるほうがよいと考えています。『じゃあ,箱に詰め込んで期日どおりに発売するよ。ゲームの重大要素はカットしちゃうけどね』というようなことはしません。それは我々の流儀ではありません。そうすべきではないと言っているわけではありません。単に我々のやり方ではないだけです」
Slatoff氏の答えは,競合に対する明らかな皮肉とTake-Twoのアプローチの簡単な説明との間でうまく泥仕合にならないようにまとめられており,感心させられた。それは素晴らしくもっともらしい否認能力だ。
私がスパイクチュンソフトのCEOである櫻井光俊氏と話したとき(関連英文記事),私は携帯機でのゲームの問題を持ち出した。なぜなら,最新の欧米展開でヒットした同社の作品(ダンガンロンパ,Steins;Gate)はPlayStation Vitaでの成功だったからだ。これらのゲームは携帯専用機のフォーマットによく適合したものだったが,私は櫻井氏が同社の状況に影響する可能性のある携帯ゲーム機の状況にはほとんど心配していないことに驚かされた。
「我々のゲーム開発はコンテンツ作成から始まります」と氏は説明する。「コンテンツとゲームプレイのアイデアができたら,プラットフォームはその次です。ゲームコンセプトを作ったら,我々はその時点で最も魅力的なプラットフォームを選びます。我々の方針では,携帯機であるか据え置き機であるかは大きな問題にはならないのです」
一方で,PCプラットフォームは徐々にスパイクチュンソフトにとって重要さを増していると語る。「私は国際的感覚で見ると可能性は無限だと思っています。とくに東南アジアでは。現時点でマーケットに受け入れられており,多くの人々がPCでマーケットにアクセスしています」
クリエイターやエグゼクティブへの対応では,できるだけ乞食のようなみっともないことや不快なことしないように心がけているのだが,申し訳ないことに私は櫻井氏に同社のFire Pro WrestlingはSwitchに向いているのではないかと言ってみた。氏の通訳は「皆さんそういいますね」と言及し,櫻井氏自身も笑いながら「Switch? 確かに検討しているところです」と語ってくれた。
Brian Fargo氏はGDCでThe Bard's Tale IVのプロモーションをしていた(関連英文記事)。1980年代のEAから発売されたRPG,Bard's Taleシリーズの直系となる続編だ。我々はinXileの同シリーズを復活させようとする最後の試みである2004のThe Bard's Taleに関して予想以上の話を聞くことができた。Fargo氏の説明では,氏はオリジナルシリーズの著作権は持っていないものの,商標は手にしているためBard's Taleのゲームを作ることができるのだと説明してくれた。原作と本質的にかつ完全に異なったものであればだが。幸い,「完全に異なる」という部分は当時の氏が興味を抱いていた部分であった。
「私は発売されたロールプレイングゲームをすべてプレイしましたが,それらは信じられないくらい陳腐でした」とFargo氏は語った。「起動して,天井裏でネズミ退治をします。何十年も経っているのにまだネズミ退治ですか? 私には我慢できません。そこで私はこれまで作られていたものを面白く作り直したいと思いました。ですので我々は生意気な態度だったかもしれません。完成しましたがハードコアユーザーは「おいおい,これは期待していたものじゃないぞ」という感じでした。
商業的にも評価的にも我々が望んだほどの結果は出せませんでした。そして当時は失敗作として知られるようになっていました。
「十分な時間が過ぎ,我々はiOSとAndroidで発表されることでどうなるべきかに期待を持たない新しいメンバーを集め始めました」とFargo氏は語った。「ほぼ5つ星のレビューで我々は何百万本を売り上げました。なぜなら,それがどんなものであるべきか先入観を持たない人々がいたからです」
結局Fargo氏はElectronic Artsから旧作Bard's Taleシリーズの認可を得て,いつも望まれていた正統続編を作ることができるようになった。
「OKだと私は言いました。Bard's Tale IVを作りましょうと。するとなにが起こったかって? 人々はいったのです『我々がほしいのはコメディの続編だ』と」
(Fargo氏はのちにBard's Taleの正統続編を求める多くの人がいることも明らかにしている)
GamesIndustry.bizの取材ではいつも,記事の本筋の内容からは外れるのだが,興味深いネタというのがある。しかし,それらはレポートする価値がある。これを公開しない仕事としてゴミ箱に捨てるよりは,我々はさまざまなトピックに洞察を加えるコラムとして作り直して提供したいと考えた。これらのコラムの正確なフォーマットはまだ固まっていないが,我々はこれを「DLC」のラベルを付けて発表することにした。
※インタビュー記事本編に対して追加コンテンツ的な位置付けのため,「DLC」というネーミングが行われているものと思われる
こないだの「次の大物」になにが起きたのか?
私は,Resolution Gamesの創設者であるTommy Palm氏と何度も同社のVRの進捗について話し合った。今年のGDCで氏は同スタジオ初のARゲーム「Bait: Under the Surface」を披露した。ResolutionはまだVRを分離中だが(海賊をテーマにしたNarrowaが最新の作品となる),同スタジオのARへの進出は業界全体の移行を反映していると考えざるをえない。ついでに言っておくと,私は最近ブロックチェーンやAR,e-Sportsに関するメールを多く受け取っている。VRのものは遥かに少ない。
「これはまったく一般的な周期です」とPalm氏は語った。もともと多くの馬鹿騒ぎがありました。多くの人は90年代の騒ぎを思い出し,今回はその真価を見れるのではないかと思ったのではないでしょうか。しかし,馬鹿騒ぎは第1世代のハードウェアのローンチのちょうど2年前にあり,現在我々が見ているものはそれらとはまた別のカーブだと思います。社内でいつも言っているのは,VRがもっとメジャーになるには長い時間がかかるだろうというものです。しかし,デベロッパの視点では素晴らしいものです。今すぐにでもあなたは多くを理解できるでしょう。ハードウェアが安く,より効率的,そして装着がより快適になるにつれて状況はよくなっていくということを。
では,現在のVRをめぐる馬鹿騒ぎが90年代の道をたどり,すべての分野が冬眠から覚める可能性はあるのだろうか?
Palm氏は,今年登場したOculus Goのようなケーブルや配線に関する一般的な苦情に対処するだけでなくセットアップ時間をなくすスタンドアロンVRハードウェアに関してとくに楽天的だ。このような技術の進歩はVRの「失望の谷」(関連英文記事)
を超えることを助けるかもしれないのと同時に,Palm氏はARがこの谷間を縮めるか完全に飛び越える位置につけるかもしれないと考えている。
「モバイルARが素晴らしいのは,ヘッドセットを買う必要がない点です」と氏は語る。「ARはもっとカジュアルになる可能性があります。あなたは十分に試して気に入ったら見ればいいのです。気に入らなくてもたいした問題ではありません。のちほどほかのものを試せばいいのです。お店に行ったり,なにかに100ドル使ったり,うちに帰って「ちくしょう,やられたよ」と感じたりする必要はないのです。ですのでそういう意味でそれらは違います。しかしながらまもなくヘッドマウントARが出てきます。そうしたら,人々がそのうち使えなくなってしまうようなものに何百ドルも費やすような,現在と同じ状況になってしまうかもしれません」
AAAグレードビーフかピンクスライムか?
パブリッシャがお互いを侮辱するのは,たとえ意図的でなくても見ていて面白いものだ。
最近の投資家へのプレゼンテーションでTake-Twoの代表であるKarl Slatoff氏は,最近のAAAゲームの遅延が続出していることと,特定はされなかったが他社のとあるシリーズでは主要機能の省略にプレイヤーが慣れてきていることについて聞かれていた。私はそれを,Activisionが今年末に従来あったシングルプレイヤーキャンペーンモードなしで発売するCall of Duty: Black Ops IIIIを指しているものと解釈した(関連英文記事)。Activisionは発売時期を早めるために省略したのではないと具体的に述べていたが,そこには密接な関係があり,それこそがSlatoff氏が取り組んでいるものだった。
「それは我々がこれまで市場に対して取ってきたやり方ではありません」Slatoff氏は語る。「さらに我々は年間のリリースを保持していますが,我々はそれに新機能を加えています。我々はゲームを1か月ないし2か月ないし数か月遅らせてでも,新機能が完成する,ないしより多機能になる,ないし予想以上に多機能になるほうがよいと考えています。『じゃあ,箱に詰め込んで期日どおりに発売するよ。ゲームの重大要素はカットしちゃうけどね』というようなことはしません。それは我々の流儀ではありません。そうすべきではないと言っているわけではありません。単に我々のやり方ではないだけです」
Slatoff氏の答えは,競合に対する明らかな皮肉とTake-Twoのアプローチの簡単な説明との間でうまく泥仕合にならないようにまとめられており,感心させられた。それは素晴らしくもっともらしい否認能力だ。
携帯機での実用主義
私がスパイクチュンソフトのCEOである櫻井光俊氏と話したとき(関連英文記事),私は携帯機でのゲームの問題を持ち出した。なぜなら,最新の欧米展開でヒットした同社の作品(ダンガンロンパ,Steins;Gate)はPlayStation Vitaでの成功だったからだ。これらのゲームは携帯専用機のフォーマットによく適合したものだったが,私は櫻井氏が同社の状況に影響する可能性のある携帯ゲーム機の状況にはほとんど心配していないことに驚かされた。
「我々のゲーム開発はコンテンツ作成から始まります」と氏は説明する。「コンテンツとゲームプレイのアイデアができたら,プラットフォームはその次です。ゲームコンセプトを作ったら,我々はその時点で最も魅力的なプラットフォームを選びます。我々の方針では,携帯機であるか据え置き機であるかは大きな問題にはならないのです」
一方で,PCプラットフォームは徐々にスパイクチュンソフトにとって重要さを増していると語る。「私は国際的感覚で見ると可能性は無限だと思っています。とくに東南アジアでは。現時点でマーケットに受け入れられており,多くの人々がPCでマーケットにアクセスしています」
クリエイターやエグゼクティブへの対応では,できるだけ乞食のようなみっともないことや不快なことしないように心がけているのだが,申し訳ないことに私は櫻井氏に同社のFire Pro WrestlingはSwitchに向いているのではないかと言ってみた。氏の通訳は「皆さんそういいますね」と言及し,櫻井氏自身も笑いながら「Switch? 確かに検討しているところです」と語ってくれた。
2004年のThe Bard's Taleのねじくれた結末
Brian Fargo氏はGDCでThe Bard's Tale IVのプロモーションをしていた(関連英文記事)。1980年代のEAから発売されたRPG,Bard's Taleシリーズの直系となる続編だ。我々はinXileの同シリーズを復活させようとする最後の試みである2004のThe Bard's Taleに関して予想以上の話を聞くことができた。Fargo氏の説明では,氏はオリジナルシリーズの著作権は持っていないものの,商標は手にしているためBard's Taleのゲームを作ることができるのだと説明してくれた。原作と本質的にかつ完全に異なったものであればだが。幸い,「完全に異なる」という部分は当時の氏が興味を抱いていた部分であった。
「私は発売されたロールプレイングゲームをすべてプレイしましたが,それらは信じられないくらい陳腐でした」とFargo氏は語った。「起動して,天井裏でネズミ退治をします。何十年も経っているのにまだネズミ退治ですか? 私には我慢できません。そこで私はこれまで作られていたものを面白く作り直したいと思いました。ですので我々は生意気な態度だったかもしれません。完成しましたがハードコアユーザーは「おいおい,これは期待していたものじゃないぞ」という感じでした。
商業的にも評価的にも我々が望んだほどの結果は出せませんでした。そして当時は失敗作として知られるようになっていました。
「十分な時間が過ぎ,我々はiOSとAndroidで発表されることでどうなるべきかに期待を持たない新しいメンバーを集め始めました」とFargo氏は語った。「ほぼ5つ星のレビューで我々は何百万本を売り上げました。なぜなら,それがどんなものであるべきか先入観を持たない人々がいたからです」
結局Fargo氏はElectronic Artsから旧作Bard's Taleシリーズの認可を得て,いつも望まれていた正統続編を作ることができるようになった。
「OKだと私は言いました。Bard's Tale IVを作りましょうと。するとなにが起こったかって? 人々はいったのです『我々がほしいのはコメディの続編だ』と」
(Fargo氏はのちにBard's Taleの正統続編を求める多くの人がいることも明らかにしている)
※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)