Google Play インディゲームセッションレポート,小規模開発ゲームの最新事情を聞く
登壇者は「生きろ! マンボウ!」などの開発者で,今回の「Google Play Indie Games Festival」(以下インディゲームフェス)の審査員の一人でもあるSELECT BUTTONの中畑虎也CEOと,GoogleのGoogle Play ビジネスディベロップメントマネジャー 五十嵐 郁氏だ。
少人数で開発されるいわゆる「インディゲーム」について,世界のインディゲーム事情,インディゲームをヒットさせるには,審査員からの審査のポイント,今後のインディゲームの動向などについて聞くことができた。
「インディゲームフェス」は,インディゲームをスマートフォン利用者,業界エキスパートに広く知ってもらい,ひいてはビジネスとしての成功に役立ててもらうために,Googleが開催しているイベントだ。
2016年はソウル,サンフランシスコ,ロンドンで,2017年はソウルでそれぞれ開催されたが,日本では今回が初開催となる。
インディゲームフェスではコンテスト形式でゲームを広く公募し(※今回分は3月25日で受付終了),トップ20ファイナリストの発表が4月10日にWeb上で行われる予定だ。
トップ3ゲームの開発者への副賞は,Playストアトップページでのバナー掲出,5月8日?10日に実施される Google I/O 2018 のチケットと旅費などとなっている。また,少年ジャンプ+賞に選出されると,連載作品のゲーム化ライセンスとそれに伴う制作費(最大1000万円まで)が少年ジャンプ+より提供される。
これは多くのインディゲーム作者にとって垂涎もののイベントだろう。
海外と日本のインディゲームと違いとは
ソウルでの「インディゲームフェス」を一言で言うならば,インディゲームのデベロッパがヒーローになれる「カッコいいイベント」で,そこに中畑氏は感動したという。
ゲーム開発者は普段,黙々とオフィスでゲームを作る日々で,フェスの舞台どころか,人前に出ることすらあまりないのが普通だろう。それが,実機で遊んでもらいプレイヤーの反応が見られる,プレゼンテーションができる,終わった後で参加者から歓声が起きるなど,開発者から見ると非常にうらやましい舞台だったというわけだ。
これに関しては,Google五十嵐氏も同意見で,インディゲームフェスのメリットはまさに,
- 目の前でプレイヤーに触ってもらえる
- プレイヤーへの露出の場になる。表彰もされる。
- 同じインディゲーム制作者の仲間,ライバルができるチャンスがある
ことにあると強調していた。
ところで,フェスに出てきたゲームたちだが,中畑氏によれば,韓国ではインディゲームでも3Dを多用した,友人とリアルタイムで対戦するようなタイプのゲームが多いことが特徴で,ハイクオリティでボリュームもあるゲームが多いとのこと。
また韓国のインディゲーム開発者は海外でどうしたらヒットするかといった視点で作るモノが多く。初めからデザインなども欧米よりになっていることも多いように思えるそうだ。これは,韓国内のみでヒットしてもビジネス規模問題から十分な収益が上がらないためではないかと考えられるという。
一方,氏らが現在,日本で審査している日本のインディゲームは,一つのアイデアで面白いと思えるモノ,尖ったアイデア,かつシンプル遊べるものが多い傾向にあるそうだ。
中畑氏は,海外からも収益を上げる方向で開発することを薦める(実際,SELECT BUTTONの場合,売上は7割が海外からだそうだ)一方,日本のインディの特徴であるこれらの面は捨てるべきではないという。
海外,例えば欧米でもヒットさせようと欧米のゲームをマネようとしても,本物の欧米のモノには勝てない。それならば,日本のよいコンテンツを突き詰めたほうがいいのではないかというわけだ。
また,北米欧州は1ゲームが1〜3分で終わるようなアーケードタイプ,あるいはミニゲーム系が人気がある(氏は「アーケード系」と呼ぶ)。また,Google 五十嵐氏によれば"Game as Art",つまり芸術を見るような,新規性,抽象性,今までと違う概念が期待されることが多いように思える,と補足していた。
一方,日本のインディゲームは,ユニークさ,短時間でシンプル,それを何度も繰り返すタイプのゲームが多くいわば「あのネタいいね」志向とでもいえるような違いがある。 どちらがよいとはいえないが,日本のデベロッパが作るのであれば,そのよさ,つまりネタに磨きをかけるほうがよいのではないかと,していた。
インディゲームの 審査ポイントは?
現在,日本のIndie Games Festival 2018ゲームの審査員も行っている中畑氏だが,審査員として,どういうゲームを探しているかという問には「トガり」「まるみ」のあるモノだと答えた。これは,自らゲームを企画しているときのアイデアの選択基準でもあるとして,新規性,違和感のようなものを「トガり」,親近感を「まるみ」と考えている。
例えば,自社のゲームである「生きろ! マンボウ」であれば「マンボウが死ぬ? 死ぬゲームってどういうこと?」というような不思議な違和感が「トガり」などだという。
「審査項目に沿って審査はするのですが,自分は主に(面白いと思うかどうかもちろんだが)ユニークさ,トガっているかを重視している」
しかし,トガっているだけでは一瞬で消費されてしまう(ゲームで言えば,ダウンロードされて一瞬見る,あるいはワンプレイだけして終わりになってしまう)。なので「まるみ」も非常に大事なのだという。
インディゲームの寿命の目安は,ゲームに拠るが,例えば,中畑氏らの主に作っているシミュレーション系(育成ゲームなど)はリリース30日後もそれなりにプレイヤーが残っていること。
それと,プレゼンテーションは非常に大事だという。今回のフェスティバルでも,8分程度でプレゼンテーションしてもらうが,審査員としてはそのゲームの面白さを汲み取りたい。例えば15秒の動画でゲームが分かるといった明快性が大事なのではないかと氏は言う。
韓国でのフェスでも,プレゼンがもう少しうまければ受賞できたのではないだろうかと思うようなケースもあったといっている。
SNSでの「バズり」は最も重きを置いて考えている
中畑氏は,例えば,プレイ動画を作るなど,短い時間でどれだけ面白いと思ってもらえるかなどプレゼンは非常に大事なのではないか,と話した。例えば,数十秒の動画を作って上映し,プレゼンしたときの反応を見るなどは非常に重要だろうと話した。
また,SNSでバズるかどうかは,ゲームを企画するうえで最も大きなウェイトを占めていると中畑氏はいう。
「ゲームの企画を立てているときに,『バズる』かどうかを考えて,これはダメだとボツにしたものも数多くある。この数か月でも何本もボツにした」と中畑氏も言っている。
SELECT BUTTON制作のインディゲーム「生きろマンボウ」や「はねろ! コイキング」は実に単純なアイデアをゲーム化しただけのように見えるが,実はこれだけ考えて作られているというわけだ。
さて,28日に行われるファイナルイベントでは,はたしてどのようなゲームがトップ3として選ばれるのだろうか。氏の言うようなトガりやまるみをバランスよく実現したゲームが選ばれるのだろうか。それとも,審査員・プレイヤーたちの概念を覆すようなすごいゲームがでてくるのか。
楽しみに待とう。